2018年に経済産業省がデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するガイドラインを公表してから、日本でもDXの実現を目指す企業が増えました。特に営業分野でDXを推進することを「営業DX」といい、営業を効率化するデジタルツールの導入やデータの蓄積と活用が求められています。
この記事では、営業DXが重視されるようになった背景や取り組み例、営業DXを進めるステップを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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営業DXとは、デジタル技術やデータを活用した営業活動の変革のことです。デジタル技術を駆使して組織や業務プロセス、企業文化などを変革することをDXといい、特に営業活動における取り組みを営業DXと呼んでいます。
営業DXでは、営業に役立つデジタルツールの導入やデータ分析などを行い、営業活動の効率化や生産性の向上、提案力の強化などを図ります。
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営業DXが重視されるようになったのは、以下のような背景があるためです。
上記3点について、以下で詳しく見ていきましょう。
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、多くの企業がオンライン商談を導入しました。2021年のエン・ジャパン株式会社による調査では、オンライン商談を活用している企業の88%が導入の背景に「新型コロナウイルス感染拡大を受けて」と回答しています。
オンライン商談は営業DXを実現する手段のひとつで、移動にかかる時間・コストの削減や商圏を拡大しやすいなど多くのメリットがあります。感染症の流行をきっかけに普及が進んだオンライン商談ですが、営業のデジタル活用のメリットを実感した企業も多いでしょう。
なお、2023年のamptalk株式会社による調査では、新型コロナウイルス感染症の5類移行後も86.6%の企業がオンライン商談の活用を継続していると回答しています。
顧客ニーズが多様化したことも、営業DXが重視される背景のひとつです。IT技術の進歩と普及によって多くの情報が手に入りやすくなり、顧客のニーズは多様化しています。商品やサービス自体の特徴だけでなく、そこから得られる経験や販売経路、決済方法まで、消費者はさまざまな要素を加味して購入するかどうかを判断します。顧客の多様なニーズを汲み取ったアプローチが求められる中、担当者の勘や経験だけに頼った営業スタイルでは通用しません。
そこで、データを分析して市場動向や顧客ニーズを探る手法が重視されるようになりました。営業DXの柱はデジタル活用とデータ分析のため、データの収集や分析を積極的に進めることは営業DXの実現に直結します。
日本で少子高齢化が進み、市場の縮小が懸念されていることも営業DXが求められる背景のひとつです。限られた消費者を各企業が奪い合う構図となるため、今後ますます市場競争は激化していく見込みです。市場競争が激しい中で売り上げを確保するには、データ分析による顧客ニーズの把握や、営業活動の効率化が必要といえます。
営業DXは、企業にさまざまなメリットをもたらします。期待できる主な効果として、以下が挙げられます。
上記3つの効果について、以下で解説します。
営業にデジタルツールやデータ分析を取り入れると、営業活動の効率化が可能です。例えば、過去の受注実績を分析して成約可能性の高い見込み顧客を特定できれば、効率的に売り上げを伸ばせます。また、オンライン商談を上手く取り入れれば移動時間を省くことができ、より多くの商談をこなせるようになります。
営業人員が限られている企業では特に、営業活動を効率化できるのは大きなメリットでしょう。
顧客情報や商談履歴、受注実績やクレーム対応の内容など、営業にまつわるさまざまなデータを収集・分析するのも営業DXの取り組みのひとつです。データ分析を行うと、顧客の購買傾向やニーズについてより深く理解できます。
また、デジタルツールを活用して業務プロセスを効率化できれば、顧客対応により多くの時間をかけられます。顧客と密なコミュニケーションを取ることで、より顧客への理解を深められるでしょう。
デジタルツールを活用して営業DXを実現すると、柔軟な働き方ができるのもメリットのひとつです。ネットワークに接続した端末が手元にあれば、場所を選ばずに仕事ができます。以下のような働き方が可能になれば、営業社員はより働きやすくなるでしょう。
なお、リクルートエージェントの調査では、「労働時間・環境が不満だった」が転職理由の1位でした。営業DXによって柔軟な働き方を実現することは、人材流出を防ぐ効果も期待できます。
ここからは、実際に営業DXを推進するための方法を解説していきます。営業DXの主な取り組み例には、以下のようなものがあります。
上記4点について、以下で詳しく見ていきましょう。
営業DXではデータの分析・活用が重要なため、商談に関する情報はITシステム内でデータで管理を行いましょう。例えば、Web会議システムやクラウド電話には録画・録音機能が備わっていて、商談の流れや顧客との電話の内容をデータ化できます。
また、音声データを自動で文字起こしできるツールを使えば、議事録の作成もスムーズです。AIによる自動テキスト化機能を搭載したクラウド電話などもあるので、デジタルツールを活用して効率的にデータを蓄積しましょう。
そのほか、AIが議事録を自動作成したり、商談内容を分析して成果につながる話し方や表情を可視化したりできる商談解析ツールの導入もおすすめです。
例えば、Zoomの提供するクラウド電話「Zoom Phone」は、通話データの録音が可能で、商談解析ツールやCRMと連携することで、手軽に商談データの蓄積・管理が可能となります。
具体的な費用・ランニングコストについては、以下の参考プラン集を御覧ください。部署単位、または全社導入などのケース別にプランと費用の概算をご紹介しています。
CRMは「Customer Relationship Management」の頭文字を取ったもので、直訳すると顧客関係管理という意味です。顧客ごとの商談情報や購買履歴などの情報を管理・分析して営業に活用するマーケティング手法で、顧客情報を管理・分析するシステムそのものをCRMと呼ぶことが多いです。
CRMを導入すると、以下のようなことが可能です。
ECサイトやコールセンターの問い合わせ管理システムなど、顧客に関する情報が複数のシステムに分かれていると、データを十分に活用できません。そこで、顧客情報を一元管理できるCRMが営業DXに活用されています。
リードスコアリングは購入につながる可能性に応じて点数をつけ、見込み顧客(リード)を評価する手法です。顧客ごとの購入意欲をスコアとして可視化すると、購入意欲が高い顧客に対して優先的にアプローチできるため、営業活動の効率化が目指せます。
リードスコアリングでは「商品詳細ページを3回閲覧したユーザーは3点」「Webから資料請求を行ったユーザーは5点」など、ユーザーの行動に応じてスコアを計算します。
顧客の購買意欲をスコア化すると購入可能性の高い顧客を特定できるだけでなく、スコアごとに顧客のグルーピングが可能です。購入意欲の高さに応じて異なるアプローチができるため、やみくもに全顧客に対して同じ戦略をとるよりも効率的で高い効果が期待できます。
SFAは「Sales Force Automation」の頭文字を取ったもので、顧客情報や商談の履歴、案件の進捗状況など営業にまつわるデータを管理できるシステムです。顧客情報を管理する点はCRMと共通ですが、SFAでは特に営業活動を主軸にデータを蓄積・管理します。
SFAで管理できる情報として、以下が挙げられます。
SFAで営業活動に関するデータを一元管理することで情報共有がスムーズになり、業務の効率化や属人化の防止など多くのメリットがあります。
営業DXの実現を目指す場合、以下のステップを順に進めるのがおすすめです。
それぞれのステップで取り組む内容について、以下で解説します。
デジタイゼーションは、アナログで行っている業務をデジタル化することです。例えば、営業報告書・顧客リスト・契約書などを紙で管理している場合は、デジタルデータとして扱うようにしましょう。デジタルデータならキーワード検索などで必要な情報をすぐに見つけられるので、業務効率が向上します。
そのほか、ExcelのマクロやRPAなどを活用し、手作業で行っている業務を自動化するのも効果的です。定型的な作業で時間を奪われることなく、顧客対応などより重要な業務に時間を充てられます。
デジタライゼーションは、デジタル技術を活用して業務プロセスを効率化することです。具体的な取り組みには、以下のようなものがあります。
単なるデジタル化ではなく、業務プロセスのなかにデジタルツールを組み込んで業務効率化やデータ活用を進めます。
デジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術を軸にビジネスモデルや組織文化を変革することです。具体的な取り組み例として、以下が挙げられます。
このように、デジタルトランスフォーメーションでは、ビジネスのあり方そのものを変革するためにデジタル技術を取り入れます。
顧客ニーズの多様化や市場競争の激化などにより、営業DXの必要性が高まっています。新型コロナウイルス感染症の流行による一過性のブームではなく、今後もオンライン商談をはじめとした営業DXは必要不可欠といえます。
CRMやSFAといったデジタルツールの活用やリードスコアリング、AIを使った顧客の行動予測など、営業DXを実現するための手段は多種多様です。いきなり高度なツールを導入すると現場の負担になる可能性があるため、まずはデジタイゼーションから徐々に進めていきましょう。
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