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自席を持たない「フリーアドレス」とは?

自席を持たない「フリーアドレス」とは?

近年は、働き方改革が進むなか、オフィス内で社員が自由に席を選べる「フリーアドレス」を導入する企業が増えつつあります。しかし、最近は成功例だけでなく上手くいかなかった例や問題点などもメディアでよく紹介されます。

フリーアドレスと一口に言っても個々の企業の予算、実際のオフィスレイアウト、運用手法はさまざまであり成否が別れるようです。本記事では、改めてフリーアドレスを導入する目的、メリットとデメリット、成功するフリーアドレスの始め方について解説します。

フリーアドレスとは?

フリーアドレスとは、オフィス内で社員が固定席を持たず自由に仕事をする席を選択できるオフィススタイルです。Free(自由)+address(所在)という語源どおり、上司と部下が離れた場所に座るのも、違う部門の同僚と隣り合わせに座るのも自由です。

フリーアドレスは、大きく以下の3種類に分けられます。

フリーアドレス(オープンスペース型)

オープンスペース型のベーシックなフリーアドレスです。イメージとしてはコワーキングスペースのフリー席や図書館のようなレイアウトが近いでしょう。席と席のパーテーションや仕切りがあまりない開放的なレイアウトが特長であり、多くの部署の従業員が広いフロアを共有で使用します。コミュニケーションやコラボレーションが促進されると言われています。

ABW(アクティビティ・ベース・ワーキング)

ABWはオープンスペース型のフリーアドレスがさらにが進化したスタイルです。オープンスペースもあれば集中できる個室、リラックスできる部屋、コミュニケーションに適したスペースほか多様な空間があります。

人間工学に基づいたデザインの椅子やスタンディングチェアがあるなど備品も工夫されています。働き方に合わせてさまざまな席を選択できます。フリーアドレスの成功モデルとしてよく紹介されるマイクロソフト社Google社のオフィスは、ABWの最も豪華なタイプに該当すると言えるでしょう。

グループアドレス、チームアドレス

グループアドレスやチームアドレスとは、部門単位やチーム単位でフリーアドレスを導入するスタイルのことです。部署のフロアは決まっており、その中で自由に席を選べます。同じ企業内でも当然フリーアドレスに合う職種と合わない職種があるため、部門を限定してフリーアドレスを導入する場合や試験的に導入するときに適しています。

フリーアドレスが増えている背景

フリーアドレスを導入する企業が増加している背景には働き方改革の推進があります。

在宅ワーク、テレワーク、サテライトオフィス勤務、フレックスタイム制、1日6時間勤務などのフレキシブルな働き方をする社員が多くなると、オフィスに全員の固定席を用意しておく必要性は少なくなります。

さらに、今の時代はビジネスチャット、管理用システムなどを使えば上司と部下が必ずしも顔を合わせていなくてもマネジメントは可能です。データや資料もクラウド上で共有できます。Wi-Fi環境があり全員がPCさえ持っていれば、社員がどこに座っていても大きな問題はありません。このようなIT技術の進歩もフリーアドレス普及を後押ししています。

では、実際最近の企業はオフィスをどのような観点で捉えているのでしょうか? 世界的な不動産サービス企業CBRE社の「オフィス利用に関するテナント意識調査2019」によると、企業がワークプレイスを変革する目的は、「多様な働き方への対応」「生産性向上」「従業員満足度向上」が上位3位を占めています。

フリーアドレス1.ワークプレイスを変更した理由

(画像引用元:CBRE

「イノベーションやクリエイティブな社風づくりの促進」という回答も多く、企業が社員の働きやすさの追求、生産性向上のための投資としてオフィス環境をとらえていることがうかがえます。

フリーアドレスのメリットとデメリット

フリーアドレスにもメリットとデメリットがあります。前述のCBRE社の調査において、ABW(フリーアドレス進化型)を導入した企業の「導入後の効果」についてアンケート結果は以下のとおりです。

フリーアドレス2.ABW導入後の効果

(画像引用元:CBRE

メリット1 従業員満足度の向上

企業がもっとも効果として感じているのは「従業員の満足度の向上」であり、回答した企業は71%にものぼります。ABWはオープンスペース、集中できる個室、リラックスできる部屋、コミュニケーションスペースなど多彩なスペースがある従業員にとって恵まれた環境です。そのため、満足度は極めて高いようです。

メリット2 コミュニケーション、コラボレーションの促進

「コラボレーションの促進」と回答した企業も64%と高い比率です。

もっとも、ABWではないベーシックなフリーアドレスもコラボレーション促進、コミュニケーション向上については効果があると言われてきました。固定席のレイアウトではどうしても人間関係が狭くなります。自分の部署=会社という感覚になりがちであり、セクショナリズムが起きてくるリスクもあります。

フリーアドレスは隣に違う部署の人が座ることもあります。仕事では他部署と連携することも多いものです。人間関係が自然に広がるためコミュニケーションを円滑し、会社全体のチームワークをよくする効果はあるでしょう。

メリット3 コスト削減、生産性の向上

「コスト削減」という回答も57%にのぼります。フリーアドレスにすることで、これまでより少ないスペースになるため光熱費が削減できます。デスク、椅子、文房具などの備品の数も減るため経費削減につながり、生産性にもプラスになります。

また、前述の調査ようにオフィスが快適なスペースになると従業員満足度が高くなります。

従業員満足度と生産性については因果関係は判明していません。しかし、従業員満足度が高くなると、離職率が低下し顧客満足度が向上することは研究で明らかになっています。フリーアドレス導入により従業員満足度が高くなることが、間接的に生産性にプラスになることは十分考えられます。

メリット4 ハラスメントの防止

日本のハラスメント問題は深刻です。パワハラ、セクハラはもちろん、一見わかりづらいモラハラ、最近は逆ハラというものまで登場しています。人間関係が原因でメンタルヘルスの不調になる人が増えています。昔も今も離職の理由には人間関係が多いのですが、最近は売り手市場ということもあり、あまり我慢せず辞める若い社員が多く企業の重大な課題となっています。

ハラスメントは閉鎖された空間で起こりがちです。フリーアドレスは他部署の人たちの目があるためハラスメントをしにくい環境です。また、自由に席を選べるためハラスメントする相手と距離を置くことができます。 フリーアドレスを導入し解放的なレイアウトにすることは職場風土の改善につながり結果的にメンタルヘルス防止にもなるでしょう。

フリーアドレスへの移行は単なるレイアウトの変更ではなく、フラットな組織風土の醸成、業務の効率化、情報の共有化、職場環境の改善などさまざまな副次的なメリットが期待できるのです。

一方、フリーアドレスを実際に導入してうまくいかなかったという意見や懸念されている点も出ています。以下にフリーアドレスのデメリットや運用上起きやすい問題をご紹介します。

デメリット1 席の固定席化

フリーアドレスを導入しても同じ人が同じ席を使い続けると次第に周囲が遠慮しはじめ、実質固定席になることは少なくありません。カフェやコワーキングスペースなどでも起きる現象です。

コワーキングスペースの場合は、定期的にレイアウトを変えて席が固定化しないように工夫している例があります。企業の場合は先にルールを決めておくことが大事です。

「1日ルール、3日ルール、1週間ルール」など、同じ席に連続で座る日数を決めたり、退室時はすべての書類や持ち物をロッカーにしまうことを徹底してもらうことが必要です。

とはいえSNSなどを見ていると「フリーアドレスだから、お気に入りの席をゲットするために早く出社する!」というような微笑ましいコメントも散見しています。自由に席を選べるという社員のささやかな日々の喜びをなくさないためにもルールは緩めが望ましく、むしろできるだけ快適なスペースを増やすことがポイントでしょう。

デメリット2 朝の席探し時間、誰がどこにいるのか探す時間のロス

毎朝、社員が席を探すのにかける時間をロスとみなす意見もあります。実際、それほど魅力的なレイアウトでないフリーアドレスのオフィスでは席を選ぶ喜びを感じることはできず、単に面倒に感じてしまう可能性があります。

フリーアドレスを導入するとどこに誰がいるのかわからず探す時間がムダに発生するという指摘もあります。

オフィスの広さにもよりますが、フリーアドレスの場合は社員がPCもしくは会社支給のモバイルを持って移動しないと緊急連絡時はたしかに困ります。

また、頻繁に連絡を取り合わなければならないような相互依存的な仕事の場合は何人かで集まっていたほうが合理的であり、無理にフリーアドレスを導入する必要もないと言えます。

フリーアドレスもオフィスのレイアウトだけを真似して導入すると、朝のオフィス探し、仕事中のメンバー探しに無駄な時間をかけてしまい、結果的に生産性が低くなる可能性はあります。

デメリット3  集中力が散漫になり生産性が下がるという意見

仕切りのないオープンオフィスには弊害が多いという実験結果も出ています。プライバシーがあまり守られず、音が気になり従業員が集中できないためです。実際、オフィスがあまりに見晴らしの良いレイアウトだと落ち着かなさを感じる人は少なくないかと思います。

経済産業省が出している「ワークスタイル変革モデル事業調査」という資料に興味深い実験結果があります。半オープンの会議室と個室会議室では、個室のほうが集中度がアップしているという結果が出ています。

フリーアドレス3.会議室の集中度比較

画像引用元:平成30年度経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業(ワークスタイル変革モデル事業調査)

また、音、光、アロマ、植物など五感に刺激のある環境のほうが、何もない人工物に囲まれている状況よりも集中を促す効果があるという結果が出ています。この実験は参加者に特殊な眼鏡をつけてもらい、生体反応を分析したものです。

フリーアドレス4.各要素ごとの集中度

画像引用元:平成30年度経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業(ワークスタイル変革モデル事業調査)

何もかもオープンにするのではなく、オープンスペース型のフリーアドレスの場合でも会議室をクローズドにしたりパーテーションで独立スペースを設けるなど工夫するとよいかもしれません。五感への刺激を促すためにオフィスに観葉植物を増やすこともなかなか効果的なようです。

フリーアドレスの始め方

ここでは、フリーアドレス導入のステップを説明します。

社内調査(従業員の意識調査、在席率の調査)

フリーアドレス導入の最初のステップは従業員にオフィスについての希望を調査することです。

単純にフリーアドレスと説明するとイメージが個々の社員で異なる可能性があるため、自社が想定しているフリーアドレスがベーシックなタイプのフリーアドレスかABWをイメージしているかを明示したうえでアンケートをとることが望ましいでしょう。

総務、経理、研究職などフリーアドレスにあまり適さない部門もあります。管理部門は営業部門のように外勤時間が長くテレワークや直行直帰が合理的な部門とはワークスタイルが異なります。部署によって仕事の進め方も状況も異なるため、フリーアドレスもアンケートの結果を踏まえ、希望者が多い部門から試験的に運用するとよいでしょう。

実際にどの程度固定席が使われているかなど各部署の在席率を把握することも必要です。

ペーパーレス化

フリーアドレスに移行するためには資料のペーパーレス化が必要です。それまでデスクに保管していた資料の類をすべてロッカーに保管できる量に減らす必要があります。

紙の処分が一番大変です。しかし、近年はペーパーレス化をすすめるためのITツールも増えています。カタログや取扱説明書も電子化することが可能です。

申請や承認業務もクラウド化すると合理的です。例えば稟議書を印刷して押印し、承認をもらうために回覧するというプロセスはコストも時間もかかります。フリーアドレスに移行することをきっかけにペーパーレスを推進すれば、業務合理化も同時に進めることができます。

ツール例:ジョブカンワークフロー

フリーアドレス5.ジョブカンワークフロー

サービス提供会社:株式会社Donuts
特徴:社内のあらゆる申請書に対応するワークフローシステム。テンプレートの書類は50種類以上でカスタマイズも可能。スマートフォンからも操作可能で、30日間の無料お試しがあります。

コミュニケーションやツールのクラウド化

社内のどこにいても仕事ができるようにするためには、まず社内に無線LAN環境を整備する必要があります。また、コミュニケーションのクラウド化も必要です。連絡手段を固定電話からスマートフォンにしたり、ビジネスチャットやWeb会議システムなどを活用し、社員とクラウド上でいつでもコミュニケーションがとれる状態にしておくことがポイントです。

ツール例:V-CUBEミーティング

blog_v5_screenshotサービス提供会社:株式会社ブイキューブ
特徴:クラウド型Web会議サービス。テレビ会議や固定電話、携帯電話とも対応しているのでインターネットがない地域との会議にも活用可能。Office365 とも連携しています。

文房具などの共有化とロッカー制度

フリーアドレスのオフィスでは席に私物を置いて帰宅することができないため、PCも文房具も全てしまえる個人用ロッカーが必要になります。また、共通の文房具、持ち運び用のバッグも用意するとよいでしょう。

バッグの例:キャビネットバッグ A4PC対応

フリーアドレス7.SONICキャビネットバッグ

運営会社:株式会社ソニック
特徴:最大15.6インチまでのノートPCが収納できます。仕切り版があるためパソコンと書類を分けて収納でき、最大10kgまでを運ぶことが可能です。バッグごとキャビネット・ロッカーにしまえるサイズなのでフリーアドレスオフィスに適しています。デザインもすっきりと洗練されていますので、男女問わず持ち運びをしても違和感がありません。

まとめ

昨今は、インターネット環境とパソコンさえあれば大げさに言えばどこでも仕事ができる時代です。日本の人口減少スピードや、女性の就労率の向上、懸念されている介護離職の問題なども考えると、近い将来は在宅ワーク、テレワークを希望する社員はますます増加していくでしょう。

とはいえ、ビジネスにおいて仕事で顔を合わせるメリットは大きいので、今後も完全な在宅ワークというよりは週何日かのテレワークを選ぶ社員が多いと思います。

これからのオフィスは多様な働き方をする社員がほかの同僚と顔を合わせるときに、よりコミュニケーションやコラボレーションが促進されるような空間であることが望ましいと言えます。フリーアドレスを導入する際は合理性だけでなく社員の快適さを十分意識することが大切です。

戸栗 頌平
著者情報戸栗 頌平

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在フィリピンに在住、場所にとらわれない働き方を通じ、日本企業のマーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。Facebookは こちら。Twitterは こちら。LinkedInは こちら。ウェブサイトは こちら

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