インサイドセールスとはどんな営業?メリットや成功の秘訣、導入事例まで徹底解説!

近年、訪問を必要としない営業、「インサイドセールス」が注目を浴びています。

インサイドセールスは、「もっと営業を効率化したい」「営業のコストを削減したい」「人手不足に悩んでいる」といった悩みを抱えている企業には特に有用です。

インサイドセールスは営業活動の場所を問いません。パソコンさえあれば、Web会議を通してオフィスでも自宅でも、見込み客へのアプローチや商談が行えます。アフターコロナの時代においても、生産性の向上や少ないコストで多くの商談を効果的に行うために、インサイドセールスの知識はは必須だといえるでしょう。

特に、契約後のフォローが重要な継続的サービスや、低価格な製品を扱う企業には、インサイドセールスが適しています。

そこで、本記事では、インサイドセールスの概要、インサイドセールスが注目される背景、インサイドセールスのメリット・デメリット、インサイドセールスの導入事例を詳しく解説していきます。

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インサイドセールスとは?

自身が外資系企業でインサイドセールスの立ち上げ・運営に関わってきたという水嶋 玲以仁氏(以下、水嶋氏)の著書「インサイドセールス 究極の営業術」によるとインサイドセールスとは以下のように定義されています。

インサイドセールスとは、”主にBtoB営業のシーンにおいて、メールや電話を用いて顧客とコミュニケーションを図る手法。顧客の元へ訪問しないのが特徴”

言い換えれば、「訪問しない営業」です。インサイドセールスは営業活動の一環に導入することで、営業全体の効率性向上が望めるものです

今までは潜在顧客の発掘から情報収集、アポイントメント、また商談からクロージング・受注まで、営業担当者が成約までの一連を担当するのが当たり前でした。そのため営業担当者の負担が多く、非効率的であるだけでなく、コストもその分かかっていました。

そこで、インサイドセールスの出番です。

具体的にインサイドセールスは組織内でどのような役割を果たすのか、本章では詳しく解説していきます。

訪問営業は時代遅れ!「訪問しない営業」の導入方法と3つの企業事例

「訪問しない営業」というスタイルは、日本でも多くの企業で注目されつつあります。関連記事「訪問営業は時代遅れ!「訪問しない営業」の導入方法と3つの企業事例」では、インサイドセールスで成功した企業事例を合わせて詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

インサイドセールスの役割とは?

インサイドセールスの役割とは?

インサイドセールスの役割は、一言で表すと「マーケティングとフィールドセールス(外勤営業)の橋渡し役」です。

広告やセミナーなどで商材を認知したばかりの見込み客に対して、メールや電話・Web会議システムなどで働きかけ、より受注確度の高い顧客へと育て、その後フィールドセールスに流します。また、既存顧客に対しては次回購入や追加提案が見つかるまで、営業担当者に代わって繋ぎ留めておく役割もあります。

インサイドセールスの機能していない組織では、マーケティングが集めた見込み客を直接フィールドセールスに渡すのが一般的でしょう。

しかし、その時点では、誰が見込み客なのか、またその比率も明らかになっていない場合もあります。その場合、手当たり次第にアポ取りや訪問営業などを行っていくことになるため、作業効率が落ち、企業としての生産性が下がってしまいます。

そこでインサイドセールスを導入することで、購買意欲や受注確度の高い顕在顧客と、まだ検討段階にある潜在顧客をあらかじめ洗い出し、各ユーザーにより適したアプローチをすることができます。これによりフィールドセールスのデメリット「リードナーチャリングの時間が長い」という点を克服し、圧倒的に短い時間で見込み客を育てていくことが可能なのです。

テレアポとはどう違う?

インサイドセールスと混同されるものとして、「テレアポ」があります。確かに営業手法だけに着目すると、訪問せずに電話やメールで顧客にアプローチするという点では一緒です。

しかし、テレアポとは「数多くの電話をかけ、できるだけ多く見込み顧客とのアポイントメントを取り付けること」が一番の目的でしょう。一方で、インサイドセールスはアポを取ることだけが目的なのではなく、あくまでテレアポを「顧客育成の手段の一つ」として扱うところに違いがあります

インサイドセールスは主に法人営業で用いられる特性があるため、相手の業界や業界内での立ち位置などもリサーチした上で、顧客と柔軟に対話する能力が求められます。このように、主に個人営業などで用いられるテレアポとは、手法は似つつも求められる役割はまったく異なります

インサイドセールスが注目される背景

それでは、なぜ現在日本でインサイドセールスが注目されているのでしょうか。その背景には、大きく分けて3つあります。

  • 人手不足の深刻化
  • 企業のコスト削減
  • サブスクリプションサービスの台頭

本章ではそれぞれを詳しく解説していきます。

①人手不足の深刻化

インサイドセールスは、国土の広いアメリカを発祥とした営業手法です。日本では都心を中心に交通機関が発達しており、顔を合わせて話してこそ誠意が伝わる、などの理由からこれまで訪問型の営業が一般的でした。

しかし現在の日本では、働き方改革が叫ばれ、働く環境そのものが変化してきています。なかでも労働人口の減少にともなって、人手不足が深刻化しています。

2020年に株式会社帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、実際に現在49.5%もの企業が正社員の人手不足を感じていることが分かっています。

①人手不足の深刻化

出典:株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査

2019年度からはやや減少してはいるものの、依然として約半数の企業において、充分な人手が確保できていない現状にあると伺えます。

またリクルートワークス研究所によって行われた、大卒の求人倍率を測る「ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)」を見てみましょう。

①人手不足の深刻化

出典:リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)

全国の民間企業の求人者数は前年度の81.4万人から80.5万人へと0.9万人減少しているものの、学生の割合は前年43.2万人から44.0万人へと0.8万人増加しており、求人に対して企業全体で36.5万人もの人材が不足していることが分かります。

人手不足の深刻化で営業部門担当者として就職してくるそもそもの母数が少なくなっているため、インサイドセールスを導入し、業務効率化によって人手不足をカバーすることが今後必要となってくるのです。

中小企業で深刻な人手不足!今すぐ取り組める施策3選と企業成功事例

人手不足にお困りの企業担当者の方は、関連記事「中小企業で深刻な人手不足!今すぐ取り組める施策3選と企業成功事例」で、取り組みやすい施策を紹介しています。合わせてご覧ください。

②営業のコスト削減

2つ目には、「営業のコスト削減」があります。法人営業担当者や企業の経営者・役員などを対象としてHubspot Japanが発表した「日本の営業に関する意識・実態調査」(2019)によれば、営業担当者は「働く時間のうち25.5%はムダ」と感じていることが分かりました。

②営業のコスト削減

出典:Hubspot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査

この全国的に発生している「ムダな時間」を金額にすると、上記の図のように、年間で約8300億円にも昇るといいます。

さらに、ムダだと感じる業務を尋ねた項目では、「社内会議(33.9%)」や「社内報告業務(32.4%)」などといった社内の情報共有に関する事柄や、商談に行った時に「キーパーソンと会えず再訪問(26.6%)」というトラブル、また「日々の商談の移動時間(24%)」といったものも課題として上がっていました。

以上のアンケートの結果からも、従来の営業活動には多くの営業担当者たちが課題を感じていることが伺えます。

インサイドセールスは日本においては未だ導入数が多くはありません。しかし、インサイドセールスを導入することで、「上記のような無駄なコストを削減するできる」と考えていることが、注目の背景に考えられるでしょう。

③サブスクリプションサービスの台頭

インサイドセールスが注目される背景として、「サブスクリプション」型のビジネスモデルが業界・業種を問わず広く浸透しつつある点も挙げられます。

サブスクリプションとは、買い切りや従量制ではなく、定額制の料金体系を前提にしたビジネスモデル。モノやサービスを買い取るのではなく、それらを利用した期間や、契約したライセンス数などに応じて、月額・年額で料金が発生します。

多くの場合、申し込みからサービスの利用開始までWebで完結できるので、ユーザーにとっては煩雑な手続きが不要。低価格かつ、今すぐ使い始めたいというニーズにも対応できることがメリットです。

一方、サービス提供側にとっても、自社サイト・チャット・メールを使ったWeb対応で申し込みから利用スタートまで完結。営業コストを抑えつつ顧客獲得までつなげられるため、インサイドセールスを成立させやすいビジネスモデルです。

低額な料金で、多くの顧客が継続して契約するサブスクリプション制度は、低コストかつ既存顧客のフォローが得意なインサイドセールスと非常に好相性だと言えるでしょう。

BtoCに限らずBtoBサービスでも、クラウドやSaaSを活用してサブスクリプションで提供されるサービスが増加傾向にあります。それに伴い、サブスクリプションサービスや、後述するような低価格な商品を継続的に提供・展開する企業で、インサイドセールスを導入する企業が増えています。

④コロナ禍でのオンライン商談の普及

新型コロナウイルスの影響により、対面ではなくオンラインで商談を行う機会が急激に増えたこともインサイドセールスが注目される理由の1つといえます。

感染対策で働き方が変化し、テレワークへ移行する企業が増加。対面商談が制限されるなか、Web会議システムなどのツールを活用した非対面による営業ニーズが高まりました。

株式会社インターパークが2021年に実施したテレワークに関する実態調査によると、インサイドセールスによって商談まで行っている企業の割合は51.2%と半数以上です。また、コロナ収束後も継続してインサイドセールスによる営業を実施したいと回答した企業は。83.3%にものぼります。

インターネット回線やオンラインツールの進化により、オンライン商談でも対面商談にちかいアプローチが可能な点もオンライン商談が普及した要因といえるでしょう。

インサイドセールス5つのメリット

インサイドセールスを立ち上げる5つのメリット

インサイドセールスには主に以下の5つのメリットがあります。

  1. 移動時間の短縮による業務効率化
  2. 少人数でも成果を挙げられる
  3. 場所や時間の制約がないため育児や介護と両立しやすい
  4. 営業手法の分析やノウハウの共有につながる
  5. 低価格な製品やサブスクリプションサービスと好相性

本章ではそれぞれを詳しく解説していきます。

メリット1:移動時間の短縮による業務効率化

まずインサイドセールスのメリットとしては、移動時間の短縮が挙げられます。従来の直接訪問する手法は、顧客先への移動時間、さらにゆとりを持って到着するための余白となる時間などのコストがかかっていました。

しかしインサイドセールスを実施すれば、顧客先へ訪問するまでの移動時間を削減でき、その分多くの見込み客にアプローチできるなど業務の効率化を図ることができます。

実際に、オンライン営業ツール「V-CUBE セールスプラス」を活用してインサイドセールスを行った「ブリッジインターナショナル株式会社」では、ストレスなくオンライン商談が行えるようになり、業務効率化に繋がったという事例もあります。

メリット2:少人数でも成果を挙げられる

従来のフィールドセールスでは、アポ取りや顧客先までの移動時間、アフターフォローまでの時間を含めると、かなりの時間を要します。

しかし、インサイドセールスではオフィスのみでほとんどのプロセスが完結できるため、少ない人員でも業務は回ります。その後、受注確度の高い顧客のみにフォーカスして商談を行えるので、人手不足の企業であるからこそ効果的な営業スタイルといえます。 

実際に「株式会社東地開発 omoieizo事業部」では、「V-CUBE セールスプラス」を使うことで、営業担当者2名という少人数でインサイドセールスを開始し、全国規模で見込み客を拡大することを成功させました。詳しい事例はこちらをご覧ください。

メリット3:場所や時間の制約がないため育児や介護と両立しやすい

人手不足が深刻化するなかで、子育てや介護などなんらかの事情で労働時間に制限のある人材を起用できるという点でも、インサイドセールスは優れています。

電話やメール、Web会議システムなどを手段として営業を行うインサイドセールスは、パソコンや電話さえあれば時間や場所の制約なく実施することが可能だからです。

これまで営業として働いていた女性が、出産で休職したあとに復帰したとしても、従来の訪問型の営業では体力面や、場所・時間などの制約から育児との両立が難しいといった課題がありました。

しかしインサイドセールスを導入すれば、外出や、アポイントの時間が決まっているといった時間の制約もないため、テレワークなどを利用しながら育児との両立もできます

育児中の社員にテレワークを導入するメリットやデメリットと成功事例

インサイドセールスはテレワークとの親和性も高く、昨今の人手不足の状況にもコロナ禍の影響下でも、かなり有用な営業手法であるといえます。関連記事「育児中の社員にテレワークを導入するメリットやデメリットと成功事例」で育児中の社員がテレワークを行う場合の対策を詳しく開設しているので、ご覧ください。

メリット4:営業手法の分析やノウハウの共有につながる

営業職では、「実際に顧客先へ行って先輩の営業スタイルを学ぶ」という教育方針を取っている企業も多いでしょう。オンライン商談などを利用することで、先輩やベテランの営業担当者の商談を録画し、誰でもその様子を見られるようにすることでより効率よく教育を行うことができます。例えば、Web会議システムを利用してインサイドセールスを行えば、営業内容が可視化されることで、これまで属人的になりがちだった営業手法を分析することができます

分析の結果、一部のトップセールスマンが持っているノウハウを他者に共有しやすくなり、営業力の強化に繋がるでしょう。

メリット5:低価格な製品やサブスクリプションサービスと好相性

低価格な製品やサービスは、それ以上のコストカットが難しいことも少なくありません。

ただしそうした状況でも、営業の手法をインサイドセールスにシフトすることで、従来価格に占める営業コストを下げられる可能性があります。むしろ低価格な製品やサービスこそ、インサイドセールスに向いていると言えるでしょう。

また、先述したようなサブスクリプション型のビジネスモデルも、インサイドセールスとの相性が良いものの一つです。継続契約を前提としたビジネスモデルであるサブスクリプションは、契約後も顧客とのコミュニケーションが重要です。メールや電話・Web会議システムなどで、継続的に働きかけるインサイドセールスは非常に適しています。

低価格あるいは継続的なサービス提供を行っている業種・業態の場合は、ぜひインサイドセールスを検討してみてください。

インサイドセールス2つのデメリット

インサイドセールスの2つのデメリット

インサイドセールスを実施することでコスト削減や業務効率化、また営業部門全体へのノウハウ伝授の円滑化など、さまざまなメリットが生まれることが分かりました。

しかし、そんな便利なインサイドセールスにもデメリットは存在します。インサイドセールスをこれから導入しようと考えている方は、以下に挙げるデメリットも把握して対策を考えておかねばなりません。そこで本章ではインサイドセールスのデメリットについて詳しく解説していきます。

デメリット1:顧客情報・営業情報の管理や、オンライン商談を行えるツールが必要になる

これまで、見込み客へのアポイントから訪問までをフィールドセールスが行う場合、顧客情報などに関しては1人の営業担当者が管理すればよかったかもしれません。しかしインサイドセールスを取り入れるとなると、見込み客の情報をフィールドセールスに共有する手間がかかります。

その際、情報を一元化した上で、インサイドセールス・フィールドセールスの双方に共有できるようなシステムや仕組みを構築する必要もあるでしょう。マーケティングからセールス部門に情報が共有されるための導線も考えなければいけません。

そのため、

  1. オンライン商談システム
  2. MAツール(マーケティングオートメーションツール)
  3. SFAツール(セールス・フォース・オートメーションツール)
  4. CRMツール(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)

などのツールが必要になります。

ツールについては、後述「インサイドセールの実施に必要なツール」で詳しく解説していきます。

デメリット2:扱う商品やクライアントとなる企業によって向き不向きがある

顧客側での決断が重くなる高額商品(車や不動産など)を扱う場合や、対面での営業が浸透している商品などについては、インサイドセールスが不向きとなる場合もあります。

また、対面営業が根付く旧体質の企業・業界をメインの顧客ターゲットとしている場合は、習慣の違いによって、インサイドセールスそのものが受け入れられないケースもあるでしょう。

その際はケースバイケースです。顧客一人ひとりに合わせた営業手法を取るようにしましょう。

インサイドセールスの実践に必要なツール

インサイドセールスのデメリットについての章で、インサイドセールスを効果的に実施していくにはいくつかのツールを導入する必要があるとお伝えしました。

インサイドセールス実施の際に必要になるのは、主に以下の4つのツールです。

ツール名

目的

1. オンライン商談システム

資料や画面を共有しながらオンライン上で商談を行う

2. MAツール(マーケティングオートメーションツール)

獲得した見込み顧客の情報を整理し、リード育成のプロセスの一部を自動化させる

3. SFAツール(セールス・フォース・オートメーションツール)

営業活動の情報をデータベースとして管理し、営業活動の分析などができる

4. CRMツール(カスタマー・リレーションシップ・マネジメントツール)

顧客のプロフィールや自社との関係性を管理する

本章ではそれぞれを詳しく解説していきます。

1.オンライン商談システム

電話による営業や商談も可能ですが、資料や画面を共有しながら説明できるオンライン商談ツールがあると便利です。代表的なオンライン商談ツールには「Zoom ミーティング」や「Google Meet」などがあります。

導入の際にはインターネット環境の整備やシステムの運用設定が必要です。また、商談には顧客情報や機密情報が含まれているため、セキュリティ対策がしっかりとしたツールを選ぶことも重要なポイントになります。

利用するオンライン商談ツールによってさまざまな機能が搭載されていますが、選ぶ際には次のような機能があるとスムーズに商談を展開できるでしょう。

機能

メリット

Web会議機能

・カメラとマイクを使用して、映像・音声でやり取りができる

・音声のみよりも多くの情報を伝えやすい

・対面と同じように相手の表情を確認しながら商談が可能

画面共有機能

・オンラインでも相手と同じ資料を見ながら話を進められる

・紙の書類を用意する必要がなく、ペーパーレス化になる

録音・録画機能

・録音や録画データを議事録にできる

・営業成績がよい人の商談方法を実際の動画で学べる

チャット機能

・テキストによる情報伝達ができる

・電話番号やメールアドレスなど正確な情報を伝えたい時に有効

・映像や音声が乱れた際の代替手段としても活用狩野

外部ツールとの連携

・MAツールやSFAツールに連携すると、自動的に商談の文字起こしや顧客情報などの記録ができる

・営業部門、マーケティング部門など複数部門にわたっての効率化となる

また、近年ではクラウドPBXと呼ばれるクラウド型の電話サービスのをオンライン商談ツールとして利用するケースも増えています。

クラウドPBXはスマートフォンやPCなど様々なデバイスから利用でき、商談管理ツールとの連携が可能な製品もあるため、より効率的な商談を実現できます。

また、Web会議システムとの連携が可能なサービスもあり、例えば、Zoomの提供する「Zoom Phone」では通話中にWeb会議システムの「Zoom ミーティング」へスムーズに移行できるため、電話での会話をしながら、途中で資料を共有して会話をすることが可能です。

2. MAツール(マーケティングオートメーションツール)

MAツールとは、獲得した見込み顧客の情報を一元管理し、興味関心度合いに応じて、適切なマーケティング施策を自動で導き出す機能をもったソフトウェアのことです。

例えば

  • ホームページを数回閲覧しているのに、問い合わせがない顧客に対して資料請求の案内を送る
  • 導入事例のページを閲覧した顧客に対しては、オンラインセミナーなどより具体的な案内を送る

などの作業に適しています。

マーケティングオートメーションツールを活用することで、上記のようなマーケティング施策を手動で考える必要がなくなり、新規顧客とのタッチポイント獲得や商談など、別の業務に集中できるというメリットが見込めるでしょう。

主なツールには「HubSpot」や「SATORI」などがあります。

3. SFAツール(セールス・フォース・オートメーションツール)

SFA(Sales Force Automation)ツールは、日本語では「営業支援システム」などと呼ばれています。企業の営業部門における営業活動の情報を一元管理し、業務プロセスをデータ化・蓄積することで、現在の営業活動の傾向などの分析が可能です。

営業担当者の行動や、成約率や提案商材数などの結果もツール内で管理することができるため、手動で新しく表を作成する必要もありません。データベースで営業活動を管理できるので、営業担当者の評価をする1つの指針としても活用が可能です。

 主なツールには「SalesForce sales Cloud」や「ネクストSFA」などがあります。

4. CRMツール(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)

CRM(Customer Relationship Management)ツールとは、顧客のプロフィール情報の管理・購買履歴や志向、どのような段階で商材を購入したか、営報業担当者は誰だったかなど、顧客との関係性に関する情報を管理しやすくするツールです。「顧客情報管理システム」とも呼ばれています。

顧客情報やその顧客に対してのアプローチ方法をデータベース化し、顧客を営業部門全体で「見える化」することで、インサイドセールスを円滑にします。

主なツールには「Sales Cloud」などがあります。

インサイドセールスを実施する際のポイント

本章では実際にインサイドセールスを実施するにあたってのポイントを解説していきます。

1.目的と責任の範囲を明確化させる

一口にインサイドセールスといっても、先で紹介した水嶋氏によれば、その組織内での立ち位置は以下の4パターンに区分できるといいます。

パターン名

役割

①リード発掘型

電話などを通じてさらなる見込み顧客の発掘に注力する

②リード育成型

すでにある程度商材が関心のある人に向けて、より受注確度を高めるためのフォローを行っていくことに注力

③営業クローズ特化型

すでに商材の導入を検討している顧客に向けて、具体的な提案から成約までをインサイドセールスで行ってしまう

④フィールドセールス協業型

フィールドセールスと連携を取りながら、見込み顧客の創出や育成などを役割分担しながら行っていく

出典:インサイドセールス 究極の営業術

そこで自社の組織構造に合わせて、インサイドセールスの目的や責任の範囲を明確化するところから始める必要があります。

以下で上記の表4つのタイプを分類して説明していますが、どれが適しているかは自社の営業部門やマーケティング部門など、組織文化や営業活動の特徴などによって異なるため、自社に合ったタイプを検討することが必要です。

①リード発掘型

まず、現在よりもとにかく見込み客の数を増やすことを目的としたいのであれば、前述した4パターンのなかで「リード発掘型」のインサイドセールスを取り入れる必要があります。この場合、電話やメールなどを通じてより多くの見込み客を獲得していくことに注力する必要があります。

あわせて、フィールドセールスとの責任の範囲も明確化しておきたいところ。見込み客へのアプローチから成約までの流れのなかで、どの部分をインサイドセールスが担い、どの部分をフィールドセールスが担うのか役割を事前に決めておくことも重要です。

実際に「インサイドセールス 究極の営業術」のなかで紹介されている「株式会社セールスフォース・ドットコム」でも、テレアポまででいいのか、また見込み客の関心度合いがどのような状態になったらフィールドセールスに渡すのかなど、責任の範囲を明確化しているといいます。

②リード育成型

リード育成型では、①の場合とは異なり、「既にある程度商材に興味を持っている見込み客」がターゲットになります。

そのため、電話やメールなどで見込み客と直接対話するなどの手段を使い、商談を行える状態になるまでリードナーチャリングをしていきます。ここでもフィールドセールスとの作業区分に線引きをしておく必要があるでしょう。

③営業クローズ特化型

営業クローズ特化型では、上記で挙げた2パターンの見込み顧客のタイプとは異なり、「商材について既に認知しており、他社商材と比較中、あるいは自社の商材の導入を検討している」見込み客にフォーカスします。

受注確度が高い見込み客であるため、相手の課題のヒアリングから商材提案、また商談➡成約までのプロセスをインサイドセールスのみで行うことができます。

④フィールドセールス協業型

インサイドセールスとフィールドセールスを完全分離させるのではなく、フィールドセールス協業型では、リードの創出から成約までを上手く役割分担しながら行います

①のタイプと少し似ていますが、このタイプでは最初にフィールドセールスが見込み客へ訪問営業をし、反応が良くなければインサイドセールスに回してナーチャリングを行っていく、というように、作業を分担しながら成約までのプロセスを協業していきます。

2.正しい行動目標を設定する

インサイドセールスを取り入れるにあたっては、具体的な行動目標も設定しておきたいところです。例えば、訪問型の営業で言う「1日に〇〇件に訪問する」と同様に、「アポイント獲得数を1日に○○件」などが考えられます。

一方で、アポイント数のみを最優先にしてしまうと、聞き込みが不十分なままでフィールドセールスにパスしてしまうといった課題も考えられます。その結果、フィールドセールスはただ訪問数が増えるばかりで、いたずらに体力を消耗してしまう事態にもつながりかねません。

前述した通り、インサイドセールスの役割がマーケティングとフィールドセールスの橋渡し役であることを考えると、フィールドセールスには受注確度の高いパスを出す必要があります。

そこで、アポイント獲得数のみならず、獲得したアポイントのうち何割が成約につながったのかといった部分も目標として設定しておきましょう。その結果、アポイント獲得数という量に囚われずに、質に目を向けたインサイドセールスにつながるはずです。

3. 顧客の購買意欲から適切なアプローチをする

インサイドセールスの目的は、広告やセミナーなどで自社サービス・商材を認知した顧客に対して、メールや電話・Web会議システムなどを活用し、より受注する可能性の高い質の良い顧客へと育てることです。

ただし、自社と接点を持ってもらえた顧客は、すぐに成約に繋がる有望な見込み客から成約に結び付く可能性の低い潜在客まで様々です。

見込み客と潜在客とでは、購買意欲に差があり、アプローチの方法や回数、商談の設定方法なども異なります。

そのため自社の売り上げに繋がる効果的な営業活動のためには、顧客が見込み客なのか潜在客なのかを判断し、購買意欲や興味関心の程度に応じて適切なコミュニケーションを取っていくこと大切です。

メールや電話などの時点でのこちらに対する問いかけや反応などを考慮して顧客の購買意欲を判断し、適切なアプローチができるようにしていきましょう。

まとめ|インサイドセールスは、これからの営業活動には必須

ここまでインサイドセールスの役割や立ち上げ方などを紹介してきましたが、組織のなかで取り入れる際は、他部門との連携を前提とすることでより効果が高まります。

例えば前述した通り、商品への関心度合いが高い見込み客の傾向がわかれば、その情報をマーケティングに共有することで、潜在層により響く広告を打つことができるかもしれません。

またインサイドセールス単体でのアポイント数のみを優先させるのではなく、受注確度の高い顧客をフィールドセールスにつなぐことに目を向けることで、無駄足を防ぎ、業務の効率化にもつながります。このようにインサイドセールスは、他部門との連携も見据えた上で取り入れることを検討していきましょう。

戸栗 頌平
著者情報戸栗 頌平

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在東京在住。2019年はフィリピンに在住し日本企業のBtoB活動を遠隔支援、場所にとらわれない働き方を通じ、マーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。Facebookは こちら。Twitterは こちら。LinkedInは こちら。ウェブサイトは こちら

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