ビズリーチが“オンライン営業”をはじめた理由 スピード成長の舞台裏とは?

ビズリーチが“オンライン営業”をはじめた理由 スピード成長の舞台裏とは?

人差し指をピンと立てて「ビズリーーーチ!」――このテレビCMを目にしたことがある人は多いだろう。ハイクラス向け転職サービスを手がけるビズリーチ(東京都渋谷区)。2009年の創業からわずか8年ほどにもかかわらず、いまや全国で人と企業の出合いをサポートしているという気鋭のベンチャーだ。

一般的に、同社のようなベンチャー企業の場合、サービス提供エリアは創業地中心(同社の場合は東京)にとどまってしまうことが多い。しかも、法人向けに転職サービスを提供する企業はこれまでなかったわけでもない。むしろ大手などの競合がひしめくレッドオーシャンとも言える。

そんな中、なぜビズリーチは全国規模での成長を遂げられているのか。その答えの1つは、日本企業として珍しい「オンライン営業」の取り組みにある。

成長の裏で感じていた「歯がゆさ」

同社は09年、社名と同じ看板サービスである会員制転職サイト「ビズリーチ」の運用を開始。その後、14年4月に20代向け転職サイト「キャリアトレック」、同年5月にキャリア女性のための転職サイト「ビズリーチ・ウーマン」、翌年5月には求人情報検索サービス「スタンバイ」と、さまざまなニーズに合わせて新サービスを展開してきた。

この全てに共通することがある。これらのサービスがユーザーにとって価値あるものとして機能するためには「魅力的な求人情報」が必要なのだ。つまり、さまざまな企業に営業し、より多くの求人情報を掲載してもらう必要がある。

営業といえば、日程を調整してどちらかのオフィスを訪問するのが一般的だが、そこには課題もある。お互いの距離が離れているほど移動に時間がかかるため、商談できる地理的範囲はどうしても限られてしまうのだ。

 

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ビズリーチ キャリアカンパニー
ビズリーチ事業本部ビジネスマーケティング部
マネージャーの下村亮介さん

 

「商談の機会をいただいても、ご訪問が可能なエリアが限られていることに歯がゆさを感じていました」――同社の下村亮介さんはこう話す。「せっかくWebサービスを提供しているのに、Web上で(サービス提供準備を)完結できない。そうするとサービスエリアも関東圏に集中してしまい、全国展開できないと考えていました」。

この課題感を打ち破るために同社が注目したのが「オンライン営業」。従来なら商談のために訪問していた営業活動を、オンライン上のミーティング、つまりWeb会議に置き換えてしまおうというチャレンジだ。

初のスタイルに不安も……「革新的な取り組みになる」

ビズリーチは15年6月、Web会議サービス「V-CUBE セールス&サポート」を導入。顧客からの電話やメールによる問い合わせを起点とする商談で、オンライン営業の第一歩を踏み出した。

V-CUBE セールス&サポートは、顧客の顔を見ながら対話し、資料や画面も共有できるツールだ。お互いが画面のどこを見ているかを示す「指差し」という機能もあり、「実際に訪問して商談するのと変わりない雰囲気で話を進められる」(下村さん)と判断して導入を決めたという。

 

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V-CUBE セールス&サポートの利用イメージ

 

オンライン営業を始めるに当たって、同社が注意したことがある。それは専任スタッフを置くことだ。専任スタッフではない場合、訪問による外出があり、オンライン営業のためにオフィスに戻る必要があり効率性が上がらないからだ。ほかにも専任スタッフを置くメリットはある。1名体制だったため責任も明確になり、業務改善に向けたPDCAを高速で回しやすく、資料やトークスクリプトの見直し、事前準備事項の改善などにスピーディーに取り組めたという。

しかし、オンライン営業を進めるに当たって課題はなかったのだろうか。「最初は全て手探りでした。Web会議までの誘致方法や操作など慣れないことも多かったと思います。ただ、オンライン営業が実現できれば『革新的な取り組みになる』と考えておりました」(下村さん)。

オンライン営業の成果は数字にも表れている。問い合わせを受けてから商談成立までの期間は、従来「約1カ月」だったのが「約2週間」と、約2倍のスピードに。さらに、商談1件当たりの成約率は訪問の場合と変わらないため、営業スタッフ1人当たりの生産性は大幅に向上したという。

しかし、移動時間などを差し引くとしても、なぜここまで効率的にできるのか。その理由は3つあると下村さんは分析する。「まず、アポイントメントをいただいてから面談までの時間が短くなったことが挙げられます。訪問営業の場合、電話をいただいてから訪問するまで平均すると1週間程度かかっていました。でも、オンラインなら当日か翌日には商談ができます。早い場合だと30分後ということもありました」。

それでも短縮できるのは5日から1週間程度だろう。2つ目の理由とは何か。それは「お客様の熱意」だという。「問い合わせてくださっているということは、サービスのお申し込みを検討されているということ。いわば“熱い”わけです。その段階ですぐにお話しさせていただくため、スムーズに契約へと進めるのです」(下村さん)。

「最後の理由はWebのアクセスログです。お客様が当社のWebサイトやメールマガジンなどの中でどのようなコンテンツにご覧になっているか確認し、そこから想定される課題は何か仮説を立てた上で、お電話をさせていただいております。お客様の課題を的確にヒアリングできるため、すぐに本題に入ることができ、訪問時に必要なアイスブレイクや過剰なヒアリングを最小限に抑えることができます。事実、従来なら1時間程度かかっていた商談が、オンラインの場合は30~40分で可能になりました」(下村さん)

「名刺交換、しなくていいの?」を乗り越えて

この成功例を踏まえ、16年5月、オンライン商談専任者を1人から3人に増員。問い合わせに対する一次営業を訪問からオンラインに大きく転換した。同社のオフィスをのぞくと、社員が当たり前のようにヘッドセットを着用し、画面越しに商談を行っている光景が目に飛び込んでくる。

 

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オンライン営業の様子

それでも「オンライン営業の発想に初めて触れたときには、問い合わせてくださったお客様に失礼なのではと感じていました」と下村さんは振り返る。「わたし自身、営業畑の人間です。ごあいさつの意味も込めて訪問し、まずは名刺交換、それから商談するのが当たり前だったので……」。

しかし、その心配は杞憂だったという。「お客様にオンラインでお話ししたいと伝えると、普通に対応していただけるだけでなく、『ビズリーチさん、先進的ですねえ!』と感動していただけたり、ときには『このツール、何をお使いですか?』と問い合わせをいただいたりすることもあるほどです」と下村さんは笑う。

オンライン営業のコツは、下村さんいわく「堂々とご案内すること」だ。「こちらが当たり前のようにWeb会議をご案内すれば、お客様も『ああ、これが当たり前なのか』と受け止めてくださる。逆にこちらが不安を抱いていると、お客様も違和感を覚えてしまう」という。

「自分たちも、今まで常識だと思っていた考えを変えたり、思い込みをなくしたりすることの大切さに気づけました。いまは欲しい情報を自分で調べ、判断するまでをネット上で完結できる時代。お客様が望んでいるのは名刺交換ではなく、欲しい情報に素早くリーチすることだったのです」(下村さん)

訪問しない「オンライン営業」を“憧れの職業”に

オンライン営業を取り入れてからますます成長を続け、ついに全国で転職サービスを展開するまでになったビズリーチ。「地方創生を掲げるわたしたちにとって、感慨深いものがあります。訪問営業しかしていなかったころにはとても考えられませんでした」と下村さんは話す。

さらに同社はいま、営業活動だけでなく、遠隔地でのセミナーにもオンライン化の仕組みを取り入れている。

同社はこれまでも、企業の人事担当者などを対象にセミナーを行ってきた。だが東京、大阪、名古屋、福岡の国内4拠点だけでは対応が手薄だと言われてしまう地域もあったという。そこで、そうした地域では現在、Webセミナーサービス「V-CUBE セミナー」を活用。都内にある本社オフィスなどから遠隔でセミナーを開いている。

ビズリーチがオンライン営業を導入してから約1年半。日本企業にとってまだまだ“異端”な取り組みを進める同社からは、どんな景色が見えるのか。下村さんは、こんな未来像を描いている。

「いま、働き方や労働力不足など、仕事にまつわる社会問題が多く存在しています。例えば、営業として優秀なのに、育児や家庭の事情といった制約でキャリアを断念したり、能力を生かせなかったりするのは、非常にもったいないことだと考えています。

ITエンジニアのかたが好きな場所・好きな時間で働ける会社が増えつつあるように、営業の方も働き方や場所を選べる時代へ、そして、オンライン営業が憧れの職業とみなされる、そんな世の中にできればと考えています。

これは働く人だけでなく、採用する企業側も優秀な人材の確保につながるという点でメリットになるはず。V-CUBEのようなオンラインツールが普及し、そんな社会が実現すればよいと思います」

転載元:ITmedia NEWS

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