働き方改革が叫ばれるなか、会社に属し雇用される働き方の大きな課題の1つとなっているのが「子育て」です。中でも男性の「イクメン」としての育児への参加と育児と仕事の両立は、家族の中においては、家事と育児のバランスをとるという意味でも重要ですし、少子高齢化の社会においては、女性の出産意欲の向上や就業意欲の維持にも大きく関わってきます。

 

会社に属して育児をするには、企業側は就業の継続を支援する制度や、妊娠出産の際に業務量を見直し、働き手が共に支え合うといった「風土づくり」も必要です。人事労務や管理職の方、経営者の方は難しさを実感されているのではないでしょうか。

 

また、「風土づくり」は最重要課題でもあり、醸成するのには時間と組織の人間感情を変化させる必要があります。今一度「イクメン」と企業との関係を再確認し、企業と社会にもたらす影響を考えていきましょう。

「イクメン」とは?

小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)によると

 

イクメンとは、育児を楽しみ、積極的に行う男性、または、将来そのような人生を送ることを望む男性の略称で、イケメン(イケてるメンmen、またはイケてる面(顔)の両説あり)をもじった造語。

 

と記載されています。

 

「イクメン」とはただ単に子育てをするのではなく、積極的に育児を行うというのが1つのポイントといえます。「積極的な育児」となると、育児休業を取得し、産前産後の妻のサポートとフォローを行いながら、我が子に対して十二分に愛情を注ぐ様子が思い浮かべられます。また、「イクメン」は自分の子供をたくさんの写真に収めたり、家族旅行に出かけたりとまさに育児を満喫し心に余裕を持ち楽しんでいる様子が浮かびます。

 

企業人、組織人としての人生を考えた時、定年退職や再雇用修了までの数十年の間で、育児に関われる期間というのはほんの十数年しかありません。いかに「仕事も頑張りつつ、限られた時間しかできない育児を存分に楽しむか」が重要となってきます。

 

女性が求める現代の父親像である「イクメン」は、まさに仕事と育児のバランスをとり、ベストを尽くした生き方を目指し努力をしている父親のことを意味するといえます。

 

女性が求める現代の父親像である「イクメン」

育児休業で「イクメン」パパを増やす取り組み

育児は女性が行うものという価値観ではなく、今では「イクメン」という単語も浸透し、「仕事も育児も夫婦共同で行いたい」という価値観も一般的になってきました。また、子育てをしたいという男性の希望の実現と、女性のキャリアの維持、働きたいという希望を実現するためにも、国や企業は様々な取り組みや制度を採用し、実施しはじめています。

 

働き手が減り、急速に進む少子化の流れによって、人材不足により企業活動を維持し続けることも難しくなりつつある日本社会。年金や医療などの社会保障制度についても、立ち行かなくなるかもしれないという不安感が社会全体に漂っています。

 

とくに企業において、女性の出産や育児中の就業の壁を低くし、次世代を担う子どもたちの育児に安心して取り組めるように、制度や従業員の労働環境を整えることが急務とされています。

男性の育児休業取得率は13%を目標

平成19年12月に、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。

 

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章には、

 

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

 

との記載があり、いかに社会全体が「仕事と生活の調和」を図っていくことが重要なのかが表現されています。

 

平成29年度雇用均等基本調査(速報)の事業所調査によると、男性の育児休業取得者割合は、平成27年10月1日から平成28 年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、平成29年10月1日までに育児休業を開始した人の割合は5.14%となり、前回調査より1.98%上昇しています。

 事業所調査結果概要

(引用事業所調査結果概要

 

仕事と生活の調和推進のための行動指針の中の数値目標では、2020年の男性の育児休業取得率の目標を13%としています。目指すべき「男性が仕事と育児を両立できる社会」は企業だけでできるものでも、労働者だけで実現できるものでもありません。

 

男性が「イクメン」となり、女性も出産意欲が向上し就業意欲の維持もできる良い循環が生まれる社会では、国の政策をはじめ地方公共団体の賃金と社会補償を労働者に還元でき、国の政策をはじめ地方公共団体の働きが重要になります。企業・労働者・国・地方公共団体がそれぞれに役割を担い、果たしていくことによって良い循環が生まれ、成り立っていくのです。

育児休業給付金とは?

育児休業を取得するにあたって労働者が気になるのは「休業中の給与補償」です。収入が無くなることを極力避けたい、減ることを可能な限り避けたいと思うのは自然なことといえます。

 

育児休業を取得したい旨を働き手が上司などに伝えた際、事業主は支給の申請手続きを公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。給付金は社会保険料の一種である雇用保険料から捻出されており、国が負担しているため企業側として頭を悩ませる必要はありません。

 

労働者の強い味方が育児休業給付金なのですが、これは申請しても全員が無条件で取得できるわけではないので注意が必要です。

 

育児休業給付金の受給資格は、1歳未満の子どもがいることと、雇用保険に加入しているかどうか。そして、育児休業取得前の2年間、1カ月 に11日以上働いた月が12カ月以上あるということです。正社員として雇用されているのであれば、満たしている方が多いかと思います。

 

また、育児休業期間中に就業日数が各月10日を超えると給付除外となってしまいます。休業中はしっかりと休み、育児と仕事のバランスをとることがポイントです。

 

育児休業給付金の支給額は公益財団法人生命保険文化センターによると、労働者の育児休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67%(※子どもが生まれて6カ月経過後は50%)となっています。

 

直近6カ月間の月平均給与額が30万円だった場合で仮定すると、

育児休業取得~6カ月間は

30万円×0.67=20万1000円

それ以降は

30万円×0.5=15万円

となります。

 

このように、育児休業を取得したとしても、収入面の安定をはかることができるのは働き手にとって大きなメリットといえます。男性も育児休業を取得した際には、育児休業中の補償として受給資格を満たしている方はしっかりと受給し、余裕を持って育児に取り組めるように環境を整えましょう。

「イクメン」企業アワード」「イクボスアワード」とは? 

厚生労働省は、2010年に「「イクメン」プロジェクト」を立ち上げています。各種セミナーやシンポジウムなどの企画・運営にはじまり、男性の育児体験談の掲載など様々な情報が発信されています。労働者・企業ともにサイトを見るだけで有益な情報が多く掲載されており、「制度はあるけれど使えない」社会から「制度を利用し、家庭もキャリアも大事にして生きる」という社会に変えようという国の明確な目標がわかります。

 

また、2013年からは「「イクメン」企業アワード」を実施し、男性の育児休業取得率を促進するプロジェクトの一環として該当する企業を表彰しています。また2014年から「イクボスアワード」として「部下の仕事と育児の両立を支援する管理職」も表彰しています。

 

これらプロジェクトの根底には、男性の育休取得率を上げるという狙いがあります。就業意識や意欲を損なわずに家庭も大事にしてもらうという社会の良い循環を作るために、男性の労働環境を充実させ「イクメン」にスポットライトを当てているのです。

男性の育休取得率

企業は「イクメン」を増やす風土づくりが大切

厚生労働省は、「イクメン」の必要性と重要性を率先して発信しています。今や「イクメン」は家庭にはもちろん、企業や社会にとっても必要不可欠な存在となっているのです。

 

企業は働きながらの育児が可能になるように育児休業取得を促進したり、育児休業明けのキャリアの相談、取得中の職場復帰面談を実施し、フレックスタイムなどの制度を整えテレワークやクラウドツールなどで環境の整備を行います。一方で、最大の課題は「育児参加への寛容な風土」が組織に根付かなければ育児に積極的に関わる男性は増えていきません。

 

組織の風土を醸成するための方法の1つに、まずは管理職から育児に積極的に関わることがあげられます。管理職自ら、クラウドツールでの勤怠管理やテレワークを実践、組織に浸透させていき風土を醸成させていきます。それにより、組織が育児に寛容になり、積極的に育児に関わる「イクメン」が増えていくのです。また、テレワークで空いた通勤時間を育児や家事に当てることで、家庭での女性の育児や家事の負担軽減と就業を促すことができます。テレワークなどの新しい働き方は、仕事と育児とのバランスを効率よく取ることが可能になるため、今後も多くの企業が導入していくと予想されます。

「イクメン」と企業の関わり

今や企業にとって「イクメン」は、大変重要な存在です。「イクメン」を積極的増やすことで、人材確保、労働意欲改善に直結し、周囲から先進的な取り組みを行っている企業ということでも注目されます。

 

また、社会にとっても「イクメン」が増えていくことによって、女性が妊娠出産に前向きになり、そして働き続ける選択ができるようになります。多くの子育て中のパパ・ママが就業することによって、現在は職に就いていない若い育児世代も社会進出の壁が低くなり、優秀な人材の創出に繋がります。その結果、少子高齢化問題での人手不足の解消や最適な労働環境・子供たちにとっての安定した家庭環境など、望ましい未来の実現が見えてくるのです。