目の前の業務をいかに効率化できるか。多くのビジネスマンの方にとって関心のある問題でしょう。
しかし日々の業務の中には生産性向上には直結しないが、やらなければいけないことも多々あります。例えば、長時間の定例会議や印刷・捺印が必要な書類、交通費の清算など。こうした細やかなタスクに時間を取られてしまっている、という方も多いのではないでしょうか。
これまでは就業時間後の残業や人手を増やせば、雑務をこなす時間を捻出することができました。ところが近年では働き方改革の推進や人手不足の加速により、従業員は限られた時間やリソースの中で成果を出さなければいけなくなりました。
一方で、そうした課題を解決する業務効率化ツールも次々に登場してきて、現場の生産性を高められる方法が増えてきています。とは言え、それらを自分で全て調べるのは一苦労です。
そこで本記事では、業務の効率化を計りたい企業の担当者向けに、業務効率化ツールを導入するメリットや、会社や部署・チーム別に業務効率化ツールを選ぶポイントを解説します。
また、Web会議システム、クラウド型データ管理システム、ビジネスチャット、電子契約サービスなど業務効率化に欠かせない26種類のITツールを紹介します。
本題に入る前に日本の労働を取り巻く状況について見てみましょう。
超少子高齢化社会の日本において、企業における人手不足は深刻化しています。もともと知名度やブランドが確立されている大企業を除く、大部分の中小企業は働き手が集まらず困っています。
中小企業の人手不足がどのくらい深刻なのか、リクルートワークス研究所が発表した「第36回 ワークス大卒求人倍率調査(2020年卒)」をもとに解説していきます。
まずは以下の図をご覧ください。従業員を300人未満、300~999人、1,000~4,999人、5,000人以上と4つの区分に分けた※求人倍率(求人倍率とは、1倍を基準としその数が増える求職者側が複数の求人から会社を選べる立場(就職がしやすい)となり、逆にその数が1倍を下回ると企業側が求職者側を選べる立場(就職がしにくい)となります。)の推移です。
企業の人数規模が少なくなればなるほど、倍率は上昇していることがわかります。例えば、2020年の300人未満の倍率を見るとその数は約8倍で、求職者はどの企業からも引く手あまたであることが分かります。
逆に、人数規模が増え、大手になればなるほど企業側が求職者を選べる立場になり採用を進めやすい状況であることがわかります。
2010年3月卒から2020年3月卒の約10年で年々この数値が上昇していることや、今後ますます超少子高齢化が進んでいくことを考えると、中小企業の人材不足は深刻である言えます。
当然ですが、労働力不足になれば会社は回りません。また、人が足りないことで従業員一人ひとりの作業量は増します。作業量が増えればその分ストレスや健康被害も増え、職場環境が悪化します。
業務が増え従業員のストレスが増えることによりさらなる離職者を生む、という負のスパイラルに陥ることも容易に想像できます。
とは言え、どの企業でも課題となっている採用の応募数をすぐに何倍も増やすことは簡単なことではありません。
そこで、「人材確保は難しいが、このまま従業員の離職を黙って見ているのは避けたい」という方のために、低コストかつお手軽に現場の生産性を向上させることができるのが、「業務効率化ツール」です。
人手不足を解消する手段の一つとして、業務効率化ITツールを導入することは有効です。
ただし、闇雲にツールを導入すれば良いわけではなく、自分の会社またはチームの課題解決に適したツールを選ぶ必要があります。
中小企業を様々な角度から支援している中小企業庁では、業務プロセス見直しによる効果について調査結果を発表しました。
業務見直しのきっかけについて調査を行った結果、 「人手不足対応」の割合が最も高く 46.5%となっている。次いで、「業務に非効率・無駄 を感じた(41.0%)」、「働き方改革への取組(31.4%)」となりました。
多くの企業が人手不足や働き方改革に課題を抱え、業務の見直しを行っていた背景が分かります。
(画像引用元:中小企業庁「Q30 業務見直しのきっかけ」)
同調査内の業務の見直しによる、生産性向上や人手不足対応への効果についても見ていきましょう。 調査結果から「ある程度の効果は得られている」の割合が最も高く 59.3%となっています。次いで、「効果が得られたかはわからない(19.2%)」、「取り組んでいない(9.2%)」となりました。
業務を見直した結果、企業の約6割が人手不足や労働生産性の向上を実感しています。業務プロセスを見直すことで従業員を増やなくても、十分に労働力の底上げが期待できると考えられます。
(画像引用元:中小企業庁「Q31 業務の見直しによる、生産性向上や人手不足対応への効果」)
業務効率化ツールを導入すれば、無駄な会議の削減や定例化されたタスクの自動化ができ、結果として人件費を削減することができます。
例えば、組織内の情報を共有できる「グループウェア」を導入すれば、社内の報連相をリモートで行うことができます。積極的に活用することで、情報を共有するためだけの無駄な会議の時間を削減できます。
また、Web上で会計や経理申告を行える「freee」は、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取得し、仕分け・記帳を行ってくれます。
自動で記帳・仕分けを行うことで、それまで人力で入力していた仕分け業務を限りなくゼロにすることが可能。作業担当者のコストを削減し人件費を削ることができます。
(画像引用元:freee)
「Trello」「Backlog」などのタスク管理ツールを利用すれば、依頼された「仕事漏れ」を減らすことができます。
タスク管理ツールとは、タスクをリストに記入して進捗状況に応じて整理するツールのことです。チームの進捗状況をシンプルに可視化することで、優先度付けや、タスク漏れを防止することができます。
管理者が部下の仕事の進行具合を目視で確認ができたり、報連相による業務ミスも業務管理ツールを使うことで未然に防ぐことができます。
(画像引用元:trello)
上述の「Trello」「Backlog」などのタスク管理ツールや、「V-CUBEミーティング」「whereby 」などのコミュニケーションツールを利用すれば、会社に居なくてもタスク管理やミーティングを行うことができます。
例えば、子育て中で出社が難しい女性・男性社員でもコミュニケーションツールがあることでリモートワークで仕事ができます。また、地方と都心で離れた場所にいる従業員同士でも遠隔で仕事ができるようになります。
テレワークを推進することで、働きたいけど働けない従業員の新たな雇用機会を創出することができます。
業務効率化ツール一つをとっても、その機能や特徴はそれぞれです。本章では、業務効率化ツールの選び方を解説します。
業務効率化を考えるのであれば、まずは自社やプロジェクトチームの課題を知る必要があります。
例えば、日々の業務の中で誰でもできる入力作業を行っている従業員がいるのであれば、入力をシステム化することで業務効率化ができます。仮に全てを自動化することが難しくても、業務フローの一部を効率化できるのであれば、それらにかかっていた労働時間を短縮することができます。
また、出社が困難、通勤ラッシュを回避したいというのであれば、Webミーティングツールやチャットツールを使ってコミュニケーションの効率化をはかれます。
業務効率化ツールを選ぶ際はクラウドを導入する場合が多いです。多くの企業が導入しているツールは、万全なセキュリティ対策を施しており、下手に自社でセキュリティ管理をするよりも強固なものとなっています。
ただ一部の決裁者は未だに、クラウドツールに不安を持つ人も少なくありません。
業務改善ツールの導入を上司に提案する際は、「運営会社」や「利用しているデータセンター」「サーバーの管理体制」が万全かどうかを必ず確認してから話をしましょう。
大体の業務効率化ツールは、一から自社で業務システムを導入するよりも、費用や管理コストがそれほどかかりません。
しかし、実際に使ってみなくてはそのツールの良し悪しが判断できかねます。そのため、まずはおためし版や少人数分だけ導入をしてみるなど、スモールテストをおすすめします。
そこで数ヶ月試験的に運用を行ってみて、本格的な導入を検討してみましょう。
またスモールテストを行うメリットは、何も予算だけが理由ではありません。
ツールを導入したはいいものの、「業務フローがおかしくなって、かえって仕事が増えた」「今使っている社内のシステムと合わない」というトラブルも考えられます。
そのような万が一のリスクを踏まえて、少数規模で試験的に導入して、問題がないかをチェックしましょう。
ここでは、業務効率化ツールを、組織やチームのニーズ別に分類して紹介します。
Web会議システムを導入すれば会議室に集まらなくても、パソコン、スマートフォンやタブレット経由でどこからでも会議に参加することができます。地方や海外拠点との会議、取引先とのミーティング、在宅ワーカーとの打ち合わせにも便利です。
近年は手軽に使えて高機能でしかも安価なWeb会議システムが多く市場に出ています。無料お試し期間があるサービスがほとんどなので、まず試してみるとその便利さが実感できるでしょう。国内・海外で評価されている5種類のWeb会議システムを紹介します。最良のビデオ会議およびオンラインミーティング「Webex」
サービス名:Webex Meeting
対象企業:中小企業~大規模な多国籍企業、公共機関まで
価格:
特長:
実績:Fortune100にランクインする米国優良企業の93%がCisco Webex製品を利用
提供元:シスコシステムズ合同会社(Cisco Systems, Inc.)
製品名:Zoom ミーティング
対象企業:個人〜大企業まで幅広く利用可能
価格:4タイプで異なる。
特徴:
提供元:V-CUBE
Web会議ツールZoomの有料版を使うべきメリットについては、「Zoomの有料版を使うべきメリットとは?無料プランとの違いや決済方法を解説」のページでも詳しく紹介しています。ぜひあわせてお読みください。
サービス名:Go to meeting
対象企業:小規模企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:Marketo、SOLIDWORKSなどの有名企業ほか約45000社に導入
提供元:LogMeIn, Inc.
商品名:Appear.in
対象企業:中小企業~中堅企業
価格:
特長:
実績:shopify、Trelloなどの大手企業も導入。2018年の会議実績は1000万件以上
提供元:Appear.in team(20人以上のプロフェッショナルチーム)
近年ロボットによる業務の自動化(RPA)が注目を集めています。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、業務プロセス自動化技術の1つです。
日常的な定型作業を記録させて、自動で行わせることができます。
自動化ツールを導入すれば、
などの定型業務と言われている、誰が作業しても同じ結果がでる業務を自動化することができます。
「日々の単純作業に追われていて、本来の仕事ができない」という方は自動化を検討してみてはいかがでしょう?
サービス名:Robo-Pat(ロボパット)
対象企業:中小企業~中堅企業
価格:非公開(直接お問い合わせください)
特長:
例えば、世の中のWebサイトから更新日の日付や文章などの情報を収集しエクセルに自動入力したり、受信したメールの項目を自動で判断して必要なファイルに書き出すなど、様々な業務を直感的にロボットに覚えさせて自動化することができます。
実績:株式会社フルキャストホールディングス、芝パークホテルなど
近年は給与明細、稟議書、申請書、経費精算書類などの社内用書類だけでなく、外部企業との契約書、お客様用の保証書、宣伝のためのカタログなどもデジタル化しペーパーレスになりつつあります。ペーパーレスを進めると印刷費用、郵送費用が削減できます。従業員の手間も軽減し、より重要な業務に時間を割くことができるようになります。
サービス名:Create!Webフロー
対象企業:中堅企業~大手企業
価格:
※パッケージソフト版もあり
特長:
実績:ミサワホーム株式会社、小田急電鉄株式会社、北里研究所など大手企業に導入実績多数。
アサヒ飲料株式会社はCreate!Webフローを利用し稟議時間の短縮、稟議書を回覧・保存する労働時間(年4,000時間)とコスト(約800万円)の削減に成功。
提供元:インフォテック株式会社
製品名::ebook5
対象企業:中小企業~大企業
特長:
価格:
実績:ジェトロ、東急ハンズ、楽天、JR北海道など大手~中小企業まで導入数20000件以上
提供元: 株式会社ルーラー
サービス名: SmartHR
対象企業:中小企業~従業員数万名規模の大企業まで
価格: 従業員数と選択機能により異なる3プラン
特長:
実績:テレビ朝日、星野リゾート、オンワードほか大手企業が多数導入
提供元:株式会社SmartHR
サービス名:freee
対象企業:スタートアップ~成長中の中堅企業
価格:
特長:
実績:KDDIなどの大手企業をはじめ、SmartNewsなどのベンチャー企業が多数導入。Freee社が従業員300人時点で経理1.5人、労務1名という人数でバックオフィス業務を完結。
提供元:freee株式会社
サービス名: クラウドサイン
対象企業:小規模企業~大企業まで
価格:
特長:発注契約書、NDA(秘密保持契約書)、雇用契約書、個人情報取扱同意書ほか
さまざまな書類に対応可能。電子契約利用企業の約80%がクラウドサインを利用。
実績:30000社以上の導入実績
提供企業:弁護士ドットコム株式会社
ペーパーレス化の取り組みは関連記事「紙を必要としない会社へ!ペーパーレスの解説から保管が必要な書類を電子化する方法を紹介」で詳しく解説しています。
近年は企業が収集したさまざまなデータを一元管理できるシステムが登場し、業務が効率化できるだけでなく、収集したデータを紐づけて商品開発、営業活動、人事管理、マーケティングなどに活かせる発展性のあるシステムが増えています。
総務省の「ICT利活用と社会的課題に関する調査研究(平成29年)」によると、データを利活用している企業の割合は三大都市圏、地方ともにまだ3割未満ですが、目的別でみると社内情報の共有など人材活用、営業力向上を目的とした領域では、比較的活用されているようです。
おすすめのクラウドデータ管理システムを紹介します。
サービス名:Sansan
対象企業:中小企業~大企業まで
価格:
※Sansanスキャナ月額10000円/台を拠点数分導入要
特長:
実績:北九州市役所、住友商事、三菱地所、沖縄ツーリストなど6000社以上が導入
提供元:Sansan株式会社
サービス名:カオナビ
対象企業:中小・ベンチャー企業から大手企業まで
価格:
特長:
実績:ANA、サイバーエージェント、パナソニックなど大手企業~中小企業まで導入実績あり。
提供元:株式会社カオナビ
サービス名:ジョブカン勤怠管理
対象企業:中小企業~中堅企業
価格:初期費用・サポート費用0円。「出勤管理」「シフト管理」「休暇・申請管理」「工数管理」から機能選択(組み合わせ自由)
特長:
実績:導入実績30000社以上
提供元:株式会社Donuts
サービス名:HRMOS採用
対象企業:中堅企業~大企業
価格:オープン価格
特長:
実績:オイシックス、エイベックス、セブン銀行ほか成長企業を中心に導入実績多数
提供元:ビズリーチ株式会社
サービス名:Sales Cloud
対象企業:中小企業~大規模企業
価格:
特長:
実績:ビズリーチ、コニカミノルタジャパンなど大手企業が多数導入。世界15万社の導入実績
提供元:株式会社セールスフォース・ドットコム
社外には「お世話になっております」、社内には「お疲れ様です」の出だしで書き始めるメールも大量になるとかなり時間を使います。メールは気配りのない文章だと誤解のもとになりやすいため意外と考えてしまい予想以上に時間がかかるのです。近年はビジネスチャットを有効活用し、社内外コミュニケーションを簡略化する企業が増えています。
サービス名:Chatwork (チャットワーク)
対象企業:中小企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:導入企業225000社以上
提供元:Chatwork株式会社
サービス名:Slack
対象企業:中小企業~大規模企業まで
価格:
特長:
実績:TIME、BuzzFeed、ebay、ORACLE、DeNA、cookpadなど150カ国85000社以上に導入
提供元:Slack Technologies Inc.
サービス名:LINE WORKS
対象企業:中小企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:大成建設、みずほ銀行、しまむらなど大手企業の導入実績も多数
提供元:ワークスモバイルジャパン株式会社
サービス名:Microsoft Teams
対象企業:中小企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:SAP、TELSTRAなど大手企業が多数導入
提供元:Microsoft Corporation
サービス名:asana
対象企業:中小企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:SONY MUSIC、Google、NASAほか大規模企業や公的機関、スタートアップまで実績あり
提供元:Asana, Inc.
営業マンのクライアント先への直行直帰を管理するためには、社員から上司への報告や経費精算、日報作成などが出先で行える必要があります。また、帰社するほどでないミーティングにはWeb会議システムを活用してオンラインミーティングで対応したり、出先からもログインして作業を行えるシステムを導入したりすると、営業職に限らずいろいろな部署の社員が直行直帰できるようになるでしょう。
サービス名:gamba!
対象企業:中小企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:デロイトトーマツ、NTTデータ、日本通運などの大手企業他多数。※累計10000社以上
提供元:株式会社gamba
サービス名:kincone
対象企業:中小~中堅企業
価格:200円/1アカウント(1従業員)/月
特長:
提供元:株式会社ソウルウェア
サービス名:TOKIUM経費精算
対象企業:中小企業~大企業
価格:基本料金0円、領収書の枚数により異なる
特長:
実績:リクルートマネジメントソシューションズ、川崎汽船、他
提供元:株式会社TOKIUM
サービス名: Google G-Suit
対象企業:スタートアップ企業~大企業まで
価格:
特長:
実績:横浜ゴム、森ビルほか小規模企業からFortune500の企業まで多数の導入実績
提供元:Google LLC
サービス名:OneDrive for Business
対象企業:中小企業~大企業
価格:
特長:
実績:アクセンチュア、HP、フィリピン航空をはじめ大企業に多数導入実績あり
提供元:Microsoft Corporation
生産性向上や業務効率化だけでなく、従業員のワークライフバランスについても、今後企業は十分配慮していく必要があります。
そうした現代の労働環境に関する課題を解消する手助けをしてくれるのが、本記事で紹介したような業務効率化ツールです。
いまの組織やチームに必要な要素を洗い出して最適なツールを導入し、労働生産性を高めていきましょう。