リモートワークの普及や複数拠点での業務が当たり前になった今、電話インフラにも変革が求められています。災害対策やBCP(事業継続計画)の観点からも、「どこでも同じように使える電話網」は重要性を増しています。
一方で、従来のオンプレミスPBXは老朽化や保守終了のリスクを抱え、柔軟な対応が難しくなりつつあります。こうした背景から、インターネットを通じて電話機能を提供する「クラウドPBX」への移行を検討する企業が急増しています。
本記事では、クラウドPBXの基本から、代表的な機能、導入時のチェックポイントまでを総務・情シス部門向けにわかりやすく解説します。自社にとっての最適な選択肢を見極めるヒントとして、ぜひお役立てください。
クラウドPBXの導入を検討する際は、どのベンダーが自社にとって最適かを見極めることが重要です。
当社では、クラウドPBXの代表的な選択肢である「Zoom Phone」の機能・料金・導入タイプを網羅的に解説した『Zoom Phoneサービス紹介資料』をご用意しています。
BCP対策、マルチ拠点対応、テレワーク強化など、幅広いニーズに応える内容となっております。クラウドPBX導入の検討材料として、ぜひ以下より無料でダウンロードしてご活用ください。
クラウドPBXとは、従来オフィスに設置していた電話交換機(PBX:Private Branch Exchange)をクラウド上に移行し、インターネット回線(IP網)を通じて内線・外線の通話を制御する仕組みです。
オンプレ型PBXでは、自社内に専用機器を設置し、その保守や運用も社内で担う必要がありました。これに対し、クラウドPBXでは以下のような違いがあります。
クラウドPBXとオンプレミスPBXの違いについては、別記事「クラウドPBXに変えるべき?オンプレミスとの7つの違いと診断付き解説【情シス・総務向け】」にて解説していますので、合わせてお読みください。
クラウドPBXは、次のような構成で成り立っています。
[電話回線] ⇄ [クラウドPBX] ⇄ [ユーザー端末(PC/スマホ/IP電話機)]
各拠点や在宅勤務のスタッフは、インターネットに接続されていれば、どこからでも内線・外線の発着信が可能になります。さらに、スマートフォンやPCからも通話できるため、BYOD(私物端末の業務利用)との親和性も高いのが特長です。
クラウドPBXについては、別記事「【総務・情シス必見】クラウドPBXの選び方と成功のカギとは?サービス比較付きで解説」にて解説していますので、合わせてお読みください。
クラウドPBXは、単なる電話機能のクラウド化にとどまらず、業務プロセス全体の効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しするプラットフォームでもあります。ここでは、特に導入効果の大きい7つの機能と、それぞれの活用シーンを詳しく紹介します。
どこにいても短縮ダイヤルでつながる社内ネットワーク
従来、拠点ごとにPBXを設置していた企業では、拠点間通話に通常の市外通話料金がかかっていました。クラウドPBXでは、本社・支社・在宅勤務者を含め、すべての利用者が一元管理され、内線番号でつながるようになります。
たとえば、東京本社から福岡支社への連絡も3桁や4桁の番号で即時発信でき、通話料は不要または非常に安価です。社員同士の連絡スピードが上がるだけでなく、通話コスト削減にも直結します。
モバイルワークでも「会社番号」で発着信を一元化
専用アプリをスマートフォンにインストールすることで、外出先や在宅でも社内番号での発着信が可能に。BYOD(私物端末活用)でも、業務用番号を使って顧客とやりとりできるため、プライバシーと業務の分離が図れます。
また、通話履歴や録音が一元管理されるため、営業活動の見える化や、トラブル時の証跡確認にも有効です。
情シスが“即時対応”できる管理画面で柔軟な運用を実現
ユーザーの追加・削除、内線番号の変更、転送ルールの設定などをすべてブラウザ上で変更可能。従来のようにベンダーに都度依頼して設定反映を待つ必要がなく、人事異動や組織変更に即応できます。
また、ユーザー別・拠点別の通話ログや利用状況も確認でき、コスト分析や業務改善の指標としても活用可能です。
働く場所に応じて“つながり方”を自動で最適化
出社・在宅・外出といった勤務状況に応じて、着信ルールや転送先を自動で切り替えられる機能です。例えば「出社時はデスクの固定電話に着信」「在宅時はスマホアプリへ自動転送」といった設定が可能です。
これにより、情シスや利用者が都度転送設定を変更する必要がなくなり、運用ミスの防止や業務の途切れ防止に寄与します。
通話内容を「見える化」し、教育・管理・分析に活用
すべての通話を自動で録音し、AIで文字起こしまで可能な機能は、コンプライアンス対策や品質管理に不可欠です。
コールセンターでは、応対内容のチェックやトークスクリプトの改善に活用されるほか、営業部門では、トップ営業の会話を教材化するなど、育成・改善の素材としても機能します。
電話窓口の“自動仕分け”で、顧客満足と業務効率を両立
音声ガイダンス(IVR)により、問い合わせ内容に応じた担当部署へ自動振り分けが可能。混雑時には着信順で待機させるキューイング機能も併用でき、「たらい回し」や「つながらない」不満を軽減します。
受付人数が限られる小規模な部署でも、業務時間中の対応効率を最大化できます。
情報が“点”から“線”へ。業務の全体最適を加速
クラウドPBXは、多くの外部サービスと連携可能です。例えば、CRMとの連携により、着信時に顧客情報を自動でポップアップ表示。あるいは、通話通知をSlackに自動投稿し、社内チームと即時共有するといった使い方も可能です。
こうした連携により、電話応対と業務システムの間にある“断絶”を解消し、情報の一元管理と業務プロセスの効率化が図れます。
クラウドPBXの導入は、情シス(情報システム部門)にとって運用効率の向上だけでなく、セキュリティ強化や事業継続性(BCP)の観点でも多くのメリットがあります。ここでは、インフラ管理の視点から注目すべきポイントを整理します。
クラウドPBXは、データセンターのマルチリージョン構成により、高い可用性(99.99%以上)を誇ります。万が一、特定のリージョンで障害が発生しても、自動的に別拠点へフェイルオーバーされ、通話断を最小限に抑えます。
BCP対策として、災害時でもつながる電話環境を求める企業には、オンプレPBXでは実現が難しい強固な冗長性を提供します。
24時間365日でのシステム監視とインシデント対応は、クラウドPBXのサービス提供側(ベンダー)が担います。障害発生時には自動で通知が入り、必要に応じて即時の対応が可能。
情シス側は詳細なログを確認したり、運用レポートを受け取るだけで済み、自社での障害切り分けや一次対応の負担を大幅に軽減できます。
クラウドPBXは、インターネット経由で運用されるため、アクセス制御の厳格さが重要です。代表的な対策としては以下が挙げられます:
また、導入時にはベンダーの情報セキュリティ認証(ISO 27001、SOC2など)の取得状況や、データの保管場所・暗号化方式について必ず確認しましょう。日本国内データセンター利用か、国外移転があるかも重要な判断材料です。
クラウドPBXの導入は、設備投資の削減だけでなく、柔軟な運用や使いやすさの面でも総務部門にとって多くのメリットがあります。ここでは、費用対効果・運用負荷・利便性の観点から、特に注目すべきポイントを解説します。
クラウドPBXでは、オンプレPBXのような高額なPBX機器や配線工事が不要です。多くのサービスが月額のサブスクリプション型料金で運用が可能です。
これにより、年度予算に応じて柔軟に拡張・縮小でき、資産計上ではなく経費処理できる点も経理・総務にとって魅力です。
利用端末は、PC用のソフトフォンや、スマートフォン用のアプリ、さらには既存のIP電話機の流用まで選択肢が豊富。すでに導入済みの資産を活用できるため、リプレースコストを最小化できます。
また、電話機の位置に縛られない運用が可能になることで、フリーアドレスやレイアウト変更にも柔軟に対応。オフィス改装や移転時にも物理的な制約を受けず、業務停止時間を抑えられます。
電話番号は、クラウドPBXに移行しても、現在使っている固定電話番号をそのまま継続利用(番号ポータビリティ)できます。番号変更による顧客への周知コストや、営業機会損失を避けられるため、移行ハードルが大きく下がります。
また、増設番号の取得や発番も、オンライン上で即日対応が可能なため、新規拠点の立ち上げや組織再編にもスピーディに対応できます。
UI(ユーザーインターフェース)が直感的でわかりやすく設計されているサービスが多く、マニュアルなしでも操作できるほどのシンプルさが特長です。
特に、在宅勤務者や非IT系の職種が多い企業では、教育コストの低減や、社内ヘルプデスクの問い合わせ削減といった副次的効果も期待できます。
クラウドPBXの導入を成功させるには、事前準備と比較検討のプロセスが極めて重要です。本章では、導入検討時に押さえておきたい6つのステップをチェックリスト形式で整理します。情報システム部門・総務部門が協力し、現状把握から社内稟議までをスムーズに進めましょう。
導入効果を測るには、まず現状の利用実態を把握することが前提です。以下の項目を洗い出しておきましょう。
これにより、クラウドPBX移行の“投資対効果”を定量的に説明しやすくなります。
以下の観点から、自社に必要な機能を事前に洗い出しておくことが重要です。
“できること”ではなく、“必要なこと”を明確にすることが、ベンダー選定の軸になります。
クラウドPBXサービスは多種多様です。以下の項目で横並びに比較しましょう。
表形式で整理することで、社内プレゼン・稟議も通しやすくなります。
本格導入前に、一部部門や小規模拠点でのPoC(概念実証)やトライアル運用を実施することで、以下の点を評価できます。
カタログスペックだけでなく、現場のリアルな使用感に基づいた判断が重要です。
稟議には、以下の要素を明確に含めておくとスムーズです。
情シス・総務・経営層の合意形成を事前に進めておくことで、本番移行時の混乱を防げます。
クラウドPBXの導入では、表面的な機能や価格だけで判断すると、導入後に「想定と違った」「運用に支障が出た」といったトラブルが発生しがちです。この章では、導入失敗を防ぐために確認すべき“評価軸”を、4つの観点から整理します。
止まらないシステムかどうかを数値と設計図で確認
パンフレットの記載だけでなく、具体的な構成図の提示を求めることが大切です。
「もしも」のときに頼れる体制かを見極める
クラウドPBXは“止まると業務が止まる”インフラです。障害時にすぐつながる窓口があるかは最重要ポイントです。
情シスの“日々の運用負荷”に直結するポイント
導入後に「設定変更がしにくい」「ログが不十分で調査できない」とならないよう、実際の管理画面を操作して評価することが重要です。
“インターネット越しの電話”だからこそ堅牢な設計を確認
特に業種規制の厳しい業界(医療・金融・自治体など)では、セキュリティ要件を満たすかが導入可否に直結します。
クラウドPBXは、柔軟な働き方やBCP対応、運用負荷の軽減といった課題を解決できる、現代の電話インフラです。導入の成功には「できること」ではなく、「自社に必要なこと」から考える視点が欠かせません。
まずは、現状の課題を明確にし、それに対応する機能をマッピングして優先順位をつけましょう。たとえば「在宅勤務で電話対応が困難」ならスマホ内線化、「設定変更が遅い」ならWeb管理コンソール、といった具合です。
また、将来の拡張も見据え、API連携やサポート体制も含めてベンダーを比較することが大切です。
クラウドPBXは、小規模に始めて段階的に拡大できる仕組みです。自社に最適な形で導入し、業務の進化につなげましょう。
クラウドPBX導入の具体的な検討を進めるには、実際の機能や導入タイプ、料金体系を把握しておくことが不可欠です。
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