取締役会とは?法務初心者が押さえるべき3つの運営ポイントを簡単に説明

株式会社の業務執行意思決定機関である取締役会。

取締役会の事務運営において、取締役会開催までの準備議事録作成などが必須となります。しかし、これらの具体的な進め方がわからず、不安に思われている方もいるのではないでしょうか。

取締役会の出席者や開催数、決議事項や議事録の内容などは、全て会社法で定められています。

本記事では、取締役会の基本事項や全体の流れ、議事録作成についてなど簡単にわかりやすく解説します。さらに取締役会運営において、押さえるべき3つのポイントをまとめ、それぞれご紹介します。

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取締役会の基本事項

本章では、取締役会の基本事項を簡単に説明します。

取締役会とは?

取締役会とは、前述の通り業務執行の意思決定機関です。取締役会を置く、または法令により取締役会を置かなければならない株式会社のことを、取締役会設置会社といいます。(会社法2条7項

取締役会は、すべての会社に設置義務があるわけではなく、任意で設置している会社と法律上設置義務がある会社があります。設置義務のある会社は以下の通りです。

取締役会設置義務会社(会社法327条

  • 公開会社
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

取締役は3カ月に1回以上、職務執行状況を取締役会において報告する義務があるため、取締役会は3カ月に1回以上、年に4回は必ず開催します。会社法363条2項)その際、出席者は必ず取締役のみで、3名以上が出席しなければ開催できません。会社法331条5項

取締役会開催の目的

取締役会開催の目的は、主に次の3つとなります。

取締役会の役割(会社法362条2項

 ▶取締役会設置会社の業務執行の決定

 ▶取締役の職務執行の監督

 ▶代表取締役の選定及び解職

会社運営方法の意思決定を行い、それに沿って会社が運営されているか確認するのが取締役会の責務です。

取締役会と株主総会の違いは?

取締役会と株主総会の違いを比較してみましょう。

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ー決議事項

取締役会は、業務執行に関する事項を決めるのに対し、株主総会では会社経営に関する重要事項を決めるなど、それぞれ役割が異なります。

ー開催数

取締役会は、年に4回以上の開催が必須とされていますが、4回開催すればいつでも良いわけではなく、法令上3カ月に1回以上と定められています。(会社法363条2項)それに対し、株主総会年1回以上の開催で良いとされています。(会社法296条

ー招集

取締役会の招集権者は各取締役ですが、定款で取締役を定めている会社が多いです。ただし、取締役全員の同意があれば、招集手続きを省いて取締役会を開催することができます。招集通知は取締役会1週間前と定めがありますが、定款で定めている期間があればそれに従います。(会社法368条)一方株主総会では、取締役会で決定した代表取締役が招集権者となり、開催の2週間前までに招集通知を発送しなければなりません。会社法299条

ー議事録

議事録に記載すべき事項も異なりますが、保管期間も若干変わります。取締役会が、本店に10年間の保管期間があるのに対し、株主総会議事録は本店に10年間会社法371条)、支店に5年間と定められています。(会社法318条2項3項

ー株主

取締役会の出席者は、全て取締役であるため株主は参加できません。(会社法362条)株主総会は、名前の通り株主で構成されているため、株主は参加・出席・発言などができます。

取締役会開催までの流れをイラストとともに解説

取締役会開催までの流れを、イラストに沿って簡単に解説します。取締役会開催 流れ

取締役会開催前までの準備

まずは、取締役会開催前の準備段階についてです。

取締役会開催 準備

ースケジュール調整

取締役全員のスケジュール調整を行います。取締役会は会社にとって重要な会議であるため、前年度中に次年度の年間計画に入れ、1年間全ての取締役会日程を決めている会社が多いです。

このとき、オンライン開催や書面決議などの開催方法も検討しましょう。

ー資料作成

取締役会のための資料を作成します。資料には当日の議題をまとめていきますが、議題内容としては決議事項や取締役会で報告すべき事項をまとめます。

招集通知

取締役全員の同意があれば招集通知を省くことができますが、記録を残しておくためにメールや文書での通知をします。通知内容としては次の通りです。

  • 開催日時
  • 開催場所
  • 目的事項

取締役が事前に内容を把握できるようにするため、この通知と一緒に作っておいた資料を連絡しましょう。

取締役会の開催内容

取締役会 開催内容

ー当日準備

会議当日は社内の会議室や、貸会議室などを使用します。

会場内のレイアウトやプロジェクターなど、取締役がすぐに会議を始められるよう準備しましょう。

取締役会開催後の準備

取締役会開催後 準備

ー議事録

取締役会終了後は、議事録の作成が法令で義務づけられています。会社法施行規則101条)議事録の作成についてはこちら

運営ポイント①取締役会3つの開催方法

1つ目の取締役会運営ポイントは、取締役会の開催方法についてです。取締役会の開催方法は大きく分けて3つ。会場、オンライン、書面決議があります。会社の規模や特性により開催方法を検討しましょう。それぞれメリットデメリットとともに、簡単に解説します。

会場開催

まずは、会場開催のメリットデメリットです。

メリット:対面で会話ができる・温度感がわかる

デメリット:会場設営や片付けが必要・現地までの移動時間

会場開催は、システム準備の必要がなく、社内の会議室を使用すればすぐに開催できます。そのため、中小企業や基本的に出社の必要がある企業になります。

書面決議

次に、書面決議についてです。書面決議は、みなし取締役会とも言われています。

メリット:時間短縮

デメリット:全員が同意する確実性が必要

書面決議をするには、定款の定めが必要になり、取締役全員が書面、または電磁的記録により同意の意思表示がある場合にのみ可能です。(会社法370条

そのため、議題数が少ない、急ぎの案件、取締役全員にすぐ意思確認ができる状態に書面決議を行うのが良いでしょう。

書面決議とは?実施可能な要件や開催の流れ、メリット・デメリットを解説

書面決議については、「株主総会の書面決議とは?実施可能な要件や開催の流れ、メリット・デメリットを解説」で詳しく解説しています。

オンライン開催

3つ目はオンライン開催です。

メリット:離れている場所からも会議に参加できる

デメリット:システム設備が必要

オンライン開催は、社内でオンライン開催できるようシステム設備がしっかりしている必要があり、即時性・双方向性が不可欠です。

オンライン開催がおすすめの企業は、大企業やオンラインでのやり取りに抵抗がない、普段からデータで扱うことの多い企業が適しているといえます。

2020年2月に経済産業省が「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定して以降、株主総会もオンライン開催する企業が増えてきました。取締役会以外の会議などもオンライン開催を視野に入れ、効率よく行いましょう。

注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説

バーチャル株主総会については、「注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説」で詳しく解説しています。

運営ポイント②決議事項が会社法の規定に従っているか

2つ目の運営ポイントは、取締役会決議の注意すべきポイントについて解説します。

取締役会決議事項とは?

取締役会では、業務執行に関する事項について決議します。決議事項は会社法362条4項により定められており、内容は次の通りです。

決議内容

  • 重要な財産の処分や譲受
  • 多額の借財
  • 支配人や重要な使用人の選任や解任
  • 支店などの重要な組織の設置や変更、廃止
  • 募集社債の金額、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項
  • 内部統制システムの構築に関する決定
  • 定款の定めに基づく役員などの会社に対する責任の一部免除

その他・譲渡制限株式の譲渡承認(会社法139条

取締役の過半数の出席が必須

取締役会は、取締役の過半数が出席し、更にその過半数が決議をする必要があります。(会社法369条)会社法では過半数と定められていますが、定款で過半数以上の割合と定めている場合はそれに従います。

仮に、賛成・反対が同数であった場合、その決議は可決されません。

代理人による決議は認められない

取締役会では代理人による決議は認められません。会社法362条4項)どうしても都合がつかない場合、その取締役は欠席扱いとなりますが、会場から離れたシステム設備が整っている場所にいれば、オンライン上で出席することも可能です。代理人による決議は認められない

運営ポイント③議事録の作成

最後に、取締役会議事録の作成ポイントについて解説します。

取締役会議事録とは?

取締役会議事録とは、取締役会の内容を記録したものです。会社法により作成が必須となっており、作成後は出席者全員が議事録に押印します。(会社法369条3項

取締役会議事録は作成後、本店に10年間の保管が義務づけられており、株主は会社に対し、議事録の閲覧や謄写の請求ができるようになっています。(会社法371条

取締役会議事録の記載事項

取締役会議事録の記載事項についても法令により定められています。(会社法施行規則101条

記載事項

  • 取締役会が開催された日時、場所
  • 特別取締役による取締役会である場合はその旨
  • 会社法の特別の規定により招集された場合はその旨
  • 取締役会議事の経過の要領及びその結果
  • 決議事項について特別の利害関係を有する取締役があるときはその氏名
  • 会社法の規定により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の概要
  • 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
  • 取締役会の議長が存するときは議長の氏名

取締役会議事録の作成方法と作成期限

取締役会議事録は、書面、または電磁的記録により作成します。(会社法施行規則101条2項

作成期限は定められていませんが、登記事項にかかる決議を行った場合は2週間以内に申請必須となります。余裕を持って、開催日から1週間以内に作成しておくと良いでしょう。

まとめ

今回は、取締役会とその運営ポイントについて解説しました。

取締役会の運営ポイントは3つ、「取締役会の開催方法」「決議事項の内容」「議事録の作成」です。中でも開催方法は、会社により向き不向きはあるものの、新型コロナウイルスの影響でオンライン開催への注目度は高まっています。

時代の流れとともに変化する価値観。取締役会だけでなく、株主総会や決算説明会などのオンライン開催も検討してみましょう。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

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