株主総会の招集通知について。発送時期や記載すべき項目を紹介

株主総会 招集通知 配送時期 項目

今回の記事では、株主総会の招集通知についての基本事項および実地での開催とオンラインでの開催の違いなどについて解説します。

目次[ 非表示 ][ 表示 ]

株主総会の招集通知とは?

株主総会の招集通知とはどのようなものなのでしょうか。以下では、株主総会の招集通知の基本事項について説明します。

招集通知とは

株主総会の招集通知とは、株主総会の開催前に株主に対して送られる通知であり、株主総会の開催要項が記載された通知です。

招集通知の対象となる株主は、株主総会で議決権を行使することができる以下の株主となります。

  • 基準日に株主名簿に記載されている株主
  • (基準日を設定しない場合)株主総会の日に株主名簿に記載されている株主

招集通知の目的

招集通知の目的は、株主に対して株主総会開催の周知を図るとともに、株主総会に向けて準備や検討の機会を与えることにあります。

株式会社では、株主総会が会社の最高意思決定機関となりますので、その構成員である株主に議決権行使の機会を与えることは非常に重要な意義を有しています。万が一、招集手続きに不備があった場合には、株主総会決議が取り消されてしまうといったリスクが生じます。そのため、法定の手続きを遵守した上で、株主総会運営を進めていかなければなりません。

招集通知が不要な場合もある

上記のように株主総会の招集通知は、非常に重要な意義を有するものとなりますので、原則として招集通知を省略することはできません。

しかし、株主全員の同意がある場合には、招集通知を省略したとしても株主には不利益は生じませんので、例外的に招集通知の発送は不要となります(会社法300条)。招集通知の発送には、コストもかかることからりますので、規模の小さい会社では株主全員の同意を得て、招集通知を省略する方法がとられることもあります。

招集通知はいつまでに送れば良い?

株主総会の招集通知は、いつまでに株主に送ればよいのでしょうか。

招集通知の発送時期は会社法で決められている

招集通知の発送時期については、会社の種類によって異なっています(会社法299条1項)。

株主総会 招集通知 発送期限 スケジュール サンプル 例 一覧

①公開会社

公開会社とは、発行する株式の全部または一部について譲渡制限を定めていない会社のことをいいます。

公開会社では、株主総会の招集通知は、株主総会の日の2週間前までに発送しなければなりません。

②非公開会社

非公開会社とは、発行する株式の全部について譲渡制限を定めている会社のことをいいます。

非公開会社のうち取締役会設置会社では、株主総会の招集通知は、以下の期限までに発送しなければなりません。

  • 書面投票、電子投票を採用している会社:2週間前まで
  • 書面投票、電子投票を採用していない会社:1週間前まで

また、非公開会社のうち取締役会非設置会社では、株主総会の招集通知は、以下の期限までに発送しなければなりません。

  • 書面投票、電子投票を採用している会社:2週間前まで
  • 書面投票、電子投票を採用していない会社:1週間前まで

なお、非公開会社かつ取締役会非設置会社で書面投票、電子投票を採用していない会社においては、定款で定めることによって、招集通知の発送時期を1週間よりも短い期間にすることも可能です。

発送日から逆算してスケジュールを立てよう

株主総会の招集通知を発送する場合には、法定の発送期限を遵守するためにも、発送日から逆算してスケジュールを立てることが大切です。

招集通知を発送するには、招集通知を証券代行会社に納品しなければなりません。発送日直前に納品しても対応してくれませんので、通常は、1週間前までの納品が必要になります。また、招集通知の印刷を外部に委託する場合には、印刷完了まで1週間程度の余裕は欲しいところです。

なお、招集通知の発送期限には、以下のような基本的なルールがありますので、注意が必要です。

  • 期間の計算において「発信日」と「株主総会の日」はカウントしない。
  • 期間のカウントは招集通知が株主に届いた時点ではなく、招集通知を発送した日からカウントする。

すなわち、6月30日が株主総会の日であった場合には、遅くとも6月15日までに株主総会の招集通知を発送する必要があります。株主総会 招集通知 発送 スケジュール

【実地での開催】招集通知の書き方(雛形あり)

【実地での開催】招集通知の書き方(雛形あり)

株主総会をオンラインではなく実地で開催する場合の招集通知は、以下のような内容になります。

招集通知の宛名・表題・発信日付

【記載例】

令和○年○月○日

株主各位

東京都○○区○○町○丁目○番○号

○○株式会社

代表取締役社長○○

第○期定時株主総会招集ご通知

①宛名

招集通知は、基準日における株主名簿に記載されている株主に宛てて送付します。招集通知の宛名には、株主の名前を具体的に記載する必要はなく、「株主各位」、「株主のみなさまへ」という記載で足ります。

②表題

招集通知の表題は、「第○期定時株主総会招集ご通知」または、「臨時株主総会招集ご通知」と記載し、開催される株主総会が定時株主総会であるのか、臨時株主総会であるのかを明確にします。また、定時株主総会を開催する場合には、第何期の株主総会であるかがわかるように記載します。

③発信日付

招集通知の日付は、招集通知を作成した日付ではなく、発信した日付を記載します。

日時および場所に関する事項

【記載例】

1.日  時  令和○年○月○日(○曜日)午前○時

2.場  所  東京都○○区○○町○丁目○番○号 当社本店○○会議室

株主総会の日時および場所は、招集通知の法定記載事項ですので、必ず記載しなければなりません(会社法299条4項298条1項1号)。前事業年度の定時株主総会の日と著しく離れた日に開催する場合には、その日時を選択した理由を記載しなければなりません。また、過去に開催した株主総会の場所と著しく離れた場所を選択する場合にもその理由を記載しなければなりません。

議題、議案に関する事項

【記載例】

1.日  時  (略)

2.場  所  (略)

3.目的事項

  報告事項  第○期(令和○年○月〇日から令和○年○月○日まで)事業報告の             内容報告の件

  決議事項

        第1号議案  第○期(令和○年○月〇日から令和○年○月○日まで)計算書                類承認の件

        第2号議案  剰余金配当の件

        第3号議案  取締役○名選任の件

 

株主総会の議題(目的事項)は、招集通知の法定記載事項ですので、必ず記載しなければなりません(会社法299条4項298条1項2号)。目的事項を記載する場合には、「報告事項」と「決議事項」に分けて記載します。決議事項を記載する場合には、議案番号を付して列挙し、株主や会社にとって重要となる事項を先順位に設けるのが一般的です。

たとえば、YKK株式会社野村ホールディングス株式会社では、ホームページで株主総会招集通知の内容を公開していますので、その内容を参考にしているとよいでしょう。企業の株主総会招集通知は、株主と企業との重要なコミュニケーションの手段となっています。事業報告や議案などをわかりやすくまとめるなどして、株主に対して、必要な情報を適切に開示できるような工夫が必要です。

その他の事項

招集通知の法定記載事項以外に記載が必要な内容がある場合には、「その他の事項」に記載します。

【オンラインでの開催】招集通知の書き方(雛形あり)

株主総会を実地ではなくオンラインで開催する場合の招集通知は、以下のような内容になります。

オンラインで株主総会を開催する場合がある

インターネットの発展により特定の場所に集まることなく会議を開催することが容易になったこと、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する必要があることなどを理由として、令和3年6月に関連法の一部が改正され、物理的な場所を前提としないオンラインでの株主総会の開催が可能になりました。

これによって、以下のような類型の株主総会の開催が可能です。

①リアル株主総会(物理的な場所を前提とする従来型の株主総会)

②ハイブリッド参加型バーチャル株主総会(株主総会の様子をインターネットで同時配信する方法)

③ハイブリッド出席型バーチャル株主総会(株主総会の様子をインターネットで同時配信するだけでなく、議決権行使なども行う方法)

④バーチャルオンリー株主総会(物理的な場所を用意せず、インターネットの手段のみで株主総会に出席する方法)

注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説

バーチャル株主総会については「注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説」で詳しく解説しています。

招集通知の記載事項

バーチャルオンリー株主総会を開催する場合には、物理的な場所を必要としませんので、実地での株主総会の招集通知で必要となった「場所」の記載は不要となります。

ただし、それ以外の記載については、実地での株主総会の招集通知と同様に必要になり、それに加えて、以下の事項を記載する必要があります(会社法299条4項省令4条)。

  • 書面による事前の議決権行使を認めること
  • 通信の方法

・事前に議決権行使をした株主が通信方法を利用した場合における事前の議決権行使の効力の取り扱い内容

  • 株主総会の議事における情報の送受信に必要な事項(URL、ID、PWなど)
  • 通知障害に関する対策方針、インターネットを利用することに支障がある株主の利益保護に関する配慮方針

【記載例】

1.日  時  (略)

2.開催方法  場所の定めのない株主総会とします。ご出席いただくために必要となる環       境、お手続き方法などの詳細は、「バーチャルオンリー株主総会の開催方法       および議決権行使に関するご案内」をご確認ください。

3.目的事項

  報告事項  (略)

  決議事項  (略)

4.招集にあたっての決定事項

(1)本株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法は、インターネットによるものとします。

(2)郵送またはインターネットにより、事前に議決権を行使された株主様が本株主総会に出席し、重複して議決権行使された場合は、本株主総会で行使された内容を有効なものとして取り扱います。本株主総会で議決権を行使されなかった場合は、郵送またはインターネットにより、事前行使された内容を有効なものとして取り扱います。

(3)電子投票の採用について

バーチャルオンリー株主総会では、株主は、株主総会招集通知に記載されているURLやQRコードを利用して、株主総会のウェブサイトにアクセスをします。招集通知には、株主ごとに異なるログインIDとパスワードが記載されていますので、株主はそれを利用してウェブサイトにログインすることによって、電子投票の形式で議決権を行使することができます。

招集通知の添付書類

株主総会の招集に際して、招集通知に書類を添付して送付しなければならない場合があります。以下では、招集通知の添付書類について説明します。

添付書類とは

取締役会設置会社では、株主総会の招集通知に取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告書を添付しなければなりません(会社法437条)。連結計算書類を作成する会社の場合には、取締役会の承認を受けた連結計算書類の添付も必要です(会社法444条6項)。

また、書面投票を定めた場合には、株主総会参考書類および議決権行使書面を交付する必要もあります(会社法301条1項)。

これらの招集通知に必要な書類のことを「添付書類」といいます。

計算書類・事業報告・連結計算書類

取締役会設置会社では、招集通知に以下の書類を添付する必要があります。

①計算書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表
  • 会計監査報告
  • 監査報告

②事業報告

  • 事業報告
  • 監査報告

③連結計算書類

  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結注記表

株主総会参考書類・議決権行使書面

株主総会参考書類とは、株主の議決権行使について参考になるべき事項が記載された書類のことをいいます。たとえば、富士ソフト株式会社では、議案ごとに参考となる資料を付けており、取締役候補者となっている人物のプロフィールなどを記載しています。

また、議決権行使書面とは、株主が株主総会に出席することなく、議決権を行使することができる書面のことをいいます。たとえば、山崎製パン株式会社では、書面およびインターネットでの議決権行使を認めていますので、その案内をするために「議決権行使のご案内」という書面を株主に送っています。

株主総会で必要な資料と初心者が失敗しがちなポイントを解説

株主総会の資料については「株主総会で必要な資料と初心者が失敗しがちなポイントを解説」で詳しく解説しています。

まとめ

株主総会の招集通知には、発送時期や記載事項などが法律上細かく定められています。法定の要件を欠いてしまうと、株主総会決議が取り消されるなどして、企業の運営にあたって重大な支障が生じるおそれがありますので注意が必要です。また、株主総会開催にあたっては、招集通知以外にも準備すべき事項はたくさんありますので、それらもしっかり押さえた上で手続きを進めていきましょう。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

関連記事