なぜ今、社用携帯なのか?コロナ後のビジネスを加速させるヒント
ビジネス環境が多様化する現代、社用携帯の導入は企業にとって有力な選択肢となっています。
特に、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、在宅勤務やリモートワークを急速に普及させ、多くの企業が社員とのコミュニケーション手段を再考する必要に迫られました。
こうした中、社用携帯の支給率は大幅に増加し、さまざまな働き方を選択する社員を支援する役割を担っています。例えば、顧客とのスムーズな連絡や外出先からの情報アクセス、緊急時の迅速な対応など、ビジネス上の基本的なニーズに応える際、社用携帯は強力なツールです。
この記事では、社用携帯が必要とされる具体的な場面や、導入によって得られるメリットと注意点、クラウドPBXとの連携など、社用携帯を検討するのに必要となる重要なポイントを掘り下げて解説します。
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社用携帯の支給率
社員の柔軟な働き方の実現や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、ビジネスにおけるモバイルデバイスは、もはや欠かせない存在です。ここでは、社用携帯の支給率や導入が進む背景について解説します。
2020年のコロナを経て支給率が増加
総務省の「平成30年度デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究成果報告書」によると、コロナ前の2018年に社内で導入されているデバイスといえば、固定電話とパソコンでした。
全員が利用するデバイスの1位は固定電話(49.9%)、2位はデスクトップパソコン(32.0%)という時代です。当時、社用携帯を日常的に利用すると回答した層は少数派で、特定の職種・職位にある社員に限れられる傾向でした。
一方、MMD研究所がコロナ禍に実施した「2022年法人向け携帯電話の利用実態調査」では、社用携帯を利用する人は大企業で42.1%、中小企業で30.4%という結果が出ています。同調査では、導入意向を持つ人の割合も大企業で7.0%、中小企業で10.9%いることも判明しました。
これらのデータから、コロナを経て社用携帯の支給率が大幅に増加していることがわかります。
背景
社用携帯の支給率が増加する背景には、社員の働き方の多様化が密接に関係しています。
2020年から2021年にかけて、大都市圏を中心に出された新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言は、企業に出社制限を要請しました。これにより、在宅勤務やテレワーク、ハイブリッドワークを導入した企業も少なくないでしょう。
また、コロナを経て、社員が固定の席を持たないフリーアドレス制を採用する動きも活発化しました。コロナ禍で出社する社員が減った上、メンバーも流動的になったことで、オフィススペースを効率的に利用する意識が働いたからです。
こうした働き方の変化によって、従来の固定電話やデスクトップパソコンを社員の席ごとに設置する必然性が失われてきているといえます。社用携帯は、社員が場所を問わずに働くようになった時代背景とともに、普及しているのです。
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社用携帯が必要なケース
社用携帯は社員同士の連絡手段としてのみ、活用されるわけではありません。ここでは、社用携帯が必要とされるシーンを紹介します。
顧客や取引先との連絡
取引先からの緊急の用件に迅速に対応するには、固定電話よりも社用携帯の方が利便性が高いのは言うまでもありません。新規顧客へアプローチするインサイドセールス部門に、在宅勤務を可能とさせる際も、社用携帯の役割は小さくないでしょう。
また、顧客情報のセキュリティ面を考えた場合、私物携帯の利用には不安が残ります。社用携帯は社外とのコミュニケーションツールとして、スムーズな業務遂行とセキュリティ強化の実現を可能とします。
外出先、現場での情報確認
固定電話が主流だった時代、社用携帯を持たない営業職やフィールドワークが多い職種では、リアルタイムで必要な情報にアクセスするのは至難の業でした。
しかし、テクノロジーの進化が著しく、情報の更新頻度の高い現代では、外出先や現場等でも最新の情報が求められます。例えば、重要なプロジェクトの進捗状況や、顧客データへアクセスできる環境は、社外にいる社員が適切に業務を行うのに重要です。
クラウドベースのアプリに連携した社用携帯であれば、必要なドキュメントやマニュアルを随時閲覧できるため、適切な意思決定やトラブル回避に役立ちます。
スケジュール管理
ビジネスの基本とされる「タイムマネジメント」の効率化にも、社用携帯は使われます。中でもスケジュール管理は、タイムマネジメントに欠かせない存在といえるでしょう。
例えば、社用携帯で共有カレンダーに即時アクセスできれば、ミーティングやアポイントメントの調整がスムーズです。また、通知機能をうまく活用することで、重要なタスクや商談を見落とすのを防げます。
スケジュール管理の徹底は、個々の社員の業務効率をアップさせるだけでなく、プロジェクトの期限厳守や、社員同士の情報共有化なども促すのがポイントです。これにより、企業全体の信頼性や生産性の向上が期待できます。
テザリング
スマートフォンをルーターの代わりとすることで、パソコンやタブレット端末をインターネットに接続するテザリング機能。社用携帯は、このテザリングにも活用可能です。
公共のWi-Fiが信頼できない場合や、Wi-Fi自体が存在しない場合、社員が外でパソコンやタブレットをインターネットに接続するには、モバイルルーターを用意する必要があります。しかし、使用頻度が高くなければ、モバイルルーターは企業にとって不要なコストです。
社用携帯のテザリング機能は、通常のインターネット接続が不安定なときに役立ちます。ただし、テザリング機能はデータ使用量が多く、バッテリーの消耗も激しいため、利用時間は意識しておきましょう。
緊急時の連絡
社用携帯は日常の業務だけでなく、緊急時の連絡手段としても活躍します。ビジネス上の緊急事態や災害発生時など、迅速に連絡を取り合わなければならない場面が代表例です。
この場合、社用携帯にチャットツールをインストールしておけば、必要な情報共有や安否確認、避難指示といった情報をスムーズに伝達できるでしょう。
また、緊急時の適切な対応はトラブル回避や社員の安全につながるため、普段から連絡方法を社内で共有しておくことも重要です。
社用携帯を導入するメリット
ビジネスにおける、さまざまなシーンで活用できる社用携帯。ここでは、社用携帯を導入する3つのメリットを解説します。
セキュリティ
社用携帯はセキュリティ対策を企業主導でできるのが強みです。
社員の私物携帯を業務に使うBYOD(Bring Your Own Device)の場合、セキュリティ対策は社員に対応をお願いするしかなく、管理が甘くなる傾向があります。前述の「2022年法人向け携帯電話の利用実態調査」でも、BYODの問題点として「セキュリティ対策が弱い」を挙げる人が一定数いました。
一方、社用携帯の場合は自社のガイドラインに沿ったセキュリティ対策が可能です。例えば、パスワード設定やセキュリティソフトのインストール、使用できるアプリの制限が考えられるでしょう。こうした対策ができるのは、企業側に端末を管理する権限があるからこそです。
BYODとは?|導入に向いている企業とメリット・デメリットを解説
BYODについては「BYODとは?|導入に向いている企業とメリット・デメリットを解説」の記事で詳しく解説しています。
経費申請・管理の手間(BYODとの比較)
BYODの場合、通信料を誰が負担するのかが問題となりがちです。全額社員が支払うのであれば、企業が負担するコストはありませんが、社員の不満につながる恐れがあります。実際、先ほどの調査でも、BYODでは料金が個人負担となることが不満点として挙げられました。
対応策として考えられるのは、経費申請してもらう方法です。企業によっては、あらかじめ一定額の通信料を支給し、超過したら別途申請する方法を採用することもあるでしょう。
しかし、これらの方法は業務利用と私的利用を分けた上で、業務利用分のみを申請する煩雑さが難点です。また、端末管理の際も、BYODは社員のプライバシーを考慮しなければなりません。
例えば、私的利用も含まれるBYODの場合、利用状況を監視するソフトウェアなどのインストールを義務付けるのは難しいでしょう。離職時に端末を初期化することもできないため、リスク管理の面でも不安を抱えることになります。
社用携帯であれば、こうした費用負担や端末管理は企業側でできるので、よりシンプルな運用が可能です。
コスト削減
社用携帯は企業側のコストを増大させるイメージがありますが、一概にそうとも言えません。
これまで解説してきた通り、BYODでセキュリティ対策や経費申請、端末管理を徹底するには、個別対応に起因する人的コストが常にかかる上、情報漏えいなどのリスクも抱えることになるからです。
また、法人契約の社用携帯では、個人契約とは異なる料金プランやキャンペーンの適用が可能となる場合があります。企業側での一元管理の方が、コスト削減につながる可能性もあるため、総合的に考えて検討するのがおすすめです。
導入時の注意点
あらゆる点でメリットのある社用携帯ですが、導入の際は押さえるべきポイントもあります。ここでは、特に意識しておきたい注意点を解説します。
セキュリティ対策
社用携帯のセキュリティ対策には、「MDMの導入」「認証システムの強化」「ソフトウェアの定期的な見直し」「社員教育」などがあります。
MDM(モバイルデバイス管理)とは、社用携帯を一元管理するためのツールです。これにより、アプリのインストールやアップデート、ロック設定や暗号化、デバイス内のデータ消去などを、遠隔操作でできるようになります。
認証システムは、パスワード以外に指紋認証や顔認証などを用いた多要素認証(MFA)が理想的でしょう。また、ウイルス対策ソフトやセキュリティツールなどを有効に機能させるには、定期的な見直しと更新が大切です。
さらに、社員のセキュリティ意識を高めるための施策を実施することもおすすめします。例えば、最新のセキュリティ脅威や事例を学ぶ研修や、フィッシング詐欺などを見分けるセキュリティトレーニングなどは社員の理解と対応力を向上させる機会となるでしょう。
利用ルールの策定
社用携帯の導入時は、就業規則等に利用ルールを策定しておくことが大切です。代表的な策定ポイントには、以下のようなものがあります。
策定ポイント |
内容と目的 |
使用範囲の明確化 |
業務外の利用を禁止することで、私的利用によるセキュリティリスクや通信量の増大を防ぐ。 |
データ保護とプライバシーポリシー |
データ保護の方法や個人情報の取り扱い方、違反時の対応を定め、企業と社員の信頼を損なわないようにする。 |
アプリの管理 |
インストール可能なアプリをリスト化し、不正なアプリによるセキュリティ脅威を回避する。 |
通信内容の監視と記録 |
通話やメッセージの監視・記録の範囲を定め、業務の透明性を維持する。 |
パスワードと認証ポリシー |
強力なパスワードや認証システムと、定期的な変更を義務づけ、不正アクセスを防ぐ。 |
紛失や盗難時の対応 |
紛失・盗難時の報告手順や対応方法を定め、迅速な処理によるデータ漏えいのリスクを最小化する。 |
セキュリティ教育と監査 |
定期的な研修や利用状況の監査を行い、セキュリティ意識の向上とルール遵守状況の把握を徹底する。 |
端末管理
端末管理とは、社用携帯の配布から回収までに発生する業務のことです。端末管理に必要な項目には、以下のものが考えられます。
- 社用携帯の配布・登録:在庫管理と端末使用者の把握
- 定期的なメンテナンスとアップデート:最新のソフトウェアによる端末の保護
- 監視と記録:不正使用の回避や紛失・盗難時のリスク低減
- セキュリティ対策:データ漏えいの防止
- 端末のライフサイクル管理:性能低下やサポート切れ端末の交換
- 暗号化:データの気密性保護とセキュリティ脅威への防御
端末管理は、社用携帯の安全な運用を確保するとともに、企業の情報セキュリティを強化するのが主な目的です。さまざまな観点から対応が必要となるため、MDMソリューションを導入した上で、一元管理できる体制を整えておきましょう。
クラウドPBXの利用でさらに便利に
導入の進む社用携帯ですが、実際に検討する際はクラウドPBXも視野に入れることをおすすめします。クラウドPBXとは、インターネット経由で利用できる電話回線サービスです。ここでは、どのようなことができるのかを紹介します。
アプリをインストールするだけで利用可能
専用アプリを社用携帯にインストールするだけで利用できるクラウドPBXは、新規ユーザーの追加や変更が簡単に行えるため、IT部門の設定作業が大幅に削減されます。クラウドPBX最大のポイントは、社用携帯から発信しても、相手には会社の代表番号が表示されることでしょう。
外出先から社用携帯で顧客や取引先に電話する場合、見知らぬ携帯番号を不審がられる可能性もゼロではありません。クラウドPBXであれば、出先からの通話であっても「03」などで始まる番号を使用できるため、特に在宅勤務の社員にとって利便性が高いといえます。
内線化も可能なので取り次ぎも簡単に
クラウドPBXでは、固定電話と同じように社員ごとの内線番号を割り振ることも可能です。
インターネット回線の強みを生かして、社内・社外を問わず社員同士が内線で通話できるため、オフィス・外出先・テレワークなど、さまざまな場所にいる社員間のコミュニケーションを容易にします。
例えば、取引先からの電話をオフィスにいる社員が受け、テレワーク中の社員への取り次ぎを依頼された場合でも、内線機能ですぐにつなげられる仕組みです。また、内線は無料なので、通話料というコスト削減も期待できます。
BYODでも管理が簡単に
クラウドPBXの中には、通話だけでなくチャットやオンラインミーティングに対応できるものもあります。機能面で不足がなければ、BYODで導入するのも方法のひとつでしょう。
クラウドPBXでは、ライセンスの追加や削除は企業側でできるため、離職した社員が情報を保持し続けるリスクを防げます。また、アプリの使用量が業務利用分となるため、私的利用との分離も容易です。
社用携帯を大規模に導入するのが難しい場合は、クラウドPBXをBYODで導入する方法を検討してもよいでしょう。
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まとめ
社用携帯の導入は、現代の企業が直面するさまざまな課題をクリアする上で、効果的なソリューションとなり得ます。
顧客との円滑なコミュニケーションや、リアルタイムでの情報共有、効率的なスケジュール管理といったビジネスプロセスの強化は生産性の向上に寄与するでしょう。
また、セキュリティ対策や経費の透明性、コスト削減の実現は、企業の運営にも大きく貢献します。一方で、社用携帯の導入時は、規程整備や管理体制の構築も慎重に計画することが大切です。
クラウドPBXなど、よりシンプルに導入できる手段もあるので、自社に合った方法を多角的に検討し、ビジネスの拡大や持続的な成長につなげられるようにしましょう。
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