【担当者必見】株主総会で緊急動議が出されたら?動議の種類ごとの取り扱い方法やシナリオを紹介

株主総会では、株主に動議を出す権利が認められています。会社側としては、株主からの動議に臨機応変かつ適切に対応しなければなりません。

株主総会の運営において、動議への対応は会社としても非常に気をつかう事項です。

今回は、株主総会の担当者向けに、動議とは何か、動議が出された場合にどのように対応すればよいのか解説します。

目次[ 非表示 ][ 表示 ]

株主総会の(緊急)動議の基本おさらい

まずは、株主総会の緊急動議がどのようなものなのか、基本をご紹介します。

そもそも緊急動議とは

株主は、株主総会の目的となっている事項(議題)につき、その議題について議案を提案する権利があります(会社法第304条本文)。

この議案提案を、実務では動議と呼びます。

(※会社法上、「議題」と「議案」は別物です。両者は取扱い方法が異なるので、しっかり区別しておきましょう。

動議の例

  • 「剰余金の配当の件」が議題となっている株主総会において、会社側が1株50円の配当金を議案としてしている場合に株主が1株50円の配当金を議案として提案する
  • 「取締役選任の件」が議題となっている株主総会において、会社側の議案(取締役としてAを選任)と異なる議案(取締役としてBを選任)を提案する。

動議は、取締役会を設置しているか否かに関わらず、どの株主でも可能です。会社に対し事前に通知する必要もありませんので、株主総会本番でいきなり動議を出せます。

そのため、会社側は動議に対しその場で臨機応変に対応しなければなりません。

なお、株主には議案提案(動議)とは別に、議題提案権も認められています。

議題提案権は、一定の事項を株主総会の目的(議題)とすることを求める権利です(会社法第303条第1項)。

例えば、事業報告と決算書類承認のみが議題となっている定時株主総会において、「剰余金の配当の件」を新たに議題に加えるよう求めるのが議題提案権です。

会社法上、この議題提案権は「株主提案権」と名付けられています(会社法第303条)。

議題提案権は、議題そのものを新たに追加するよう求める権利ですので、取締役会設置会社においては株主に議決権要件が課され、さらに、株主総会の8週間前までに会社に請求しなければなりません(会社法第303条第2項

他方で、取締役会非設置会社ではこのような限定はありませんので、動議と同じく、株主総会の場でいきなり議題提案権が行使される可能性があります。

株主総会の動議は2種類に分けられる

株主総会 動議 種類 提案内容

動議は議案の修正動議と株主総会の議事運営に関する動議の2種類に分けられます。

議案の修正動議は、前述した動議の例のような、株主総会の目的事項(議題)について議案の提案をするものです。

議事運営に関する動議は、株主総会の進め方に関して異議を述べるものです。

会社法において明文で認められているものとして調査者の選任(会社法第316条)と延期・続行(会社法第317条)があります。

他にも、休憩、審議方法(一括審議、個別審議)、議長の不信任・交代なども手続的動議に含まれます。実務上、審議方法や議長の不信任・交代の動議はよく出されます。

株主総会の緊急動議が適法かどうかの見極めポイント

続いて、株主総会で出された動議が適法かどうか見極めるポイントをご紹介します。違法な動議であれば、議場に諮る必要はありません。

取締役会設置会社か取締役非設置会社か

動議(議案提案)は、取締役会設置会社か取締役非設置会社かに関わらず、どの株主でも事前通知なくいきなり株主総会の場で可能です(会社法第304条本文)

そのため、動議については、取締役設置会社か取締役会非設置会社かはポイントになりません。

他方で、株主提案は、議題そのものを新たに追加するよう求める権利です(会社法第303条第1項)。そのため、取締役会設置会社では、株主提案をできる株主は議決権の100分の1または300個以上の議決権を保有する株主に限られ、さらに、株主総会の8週間前までの通知が必要です(会社法第303条第2項)。

取締役会設置会社の株主総会で株主から「議題」そのものを追加するよう請求されたら、まずはこれら会社法の要件・手続を満たすかチェックしましょう。

招集通知に記載されている議題とあっているか

動議(議案提案)は、株主総会の目的である事項(議題)について議案を提案する権利です。そして、株主総会の目的である事項(議題)は、招集通知に記載されています(会社法第298条第1項2号第299条4項)。

動議が招集通知に記載されている議題と合っていない場合、それは「議題」そのものを追加するよう求める議題提案権ですので、前述の要件・手続(100分の1または300個以上、8週間前までの通知)を満たしていないならば違法な株主提案となりますので議場に諮る必要はありません。

なお、議事運営に関する動議は必然的に議題とあいませんので、こちらは適法な動議として議場に諮る必要があります。

例外事由に該当しないか

動議は、全ての株主が事前通知なく株主総会で行使できる権利です。手軽に行使できる権利であるため、乱発されては株主総会が適切に運営できなくなってしまいます。

そこで、会社法上、動議が法令または定款に違反する場合、同じ議案が過去3年以内の株主総会において議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった場合は、例外として株主の権利が否定されています(会社法第304条但書)。

法定の例外事由に該当する場合、その動議を議場に諮る必要はありません。

それぞれの緊急動議の取扱い方法とシナリオ例

最後に、実際に株主総会の場で動議が出された場合の会社の対応方法として、シナリオの例をご紹介します。

①議案の修正動議の場合

議案の修正動議の場合、当該議案の決議要件に合わせ、普通決議、特別決議、特殊決議を行います。

議案の修正動議でも、まずは株主に発言の趣旨を尋ねるとスムーズに対応できます。

以下は、ほとんどの会社が採用している一括上程・一括審議の方式による株主総会のシナリオ例です。

わざわざ修正動議について否決決議をすると時間がかかるので、原案(会社の議案)を可決することで自動的に株主からの修正動議は否決されたことになります。

ただいまのご発言は、ご意見でしょうか?それとも、動議としてご提出される趣旨でしょうか?

<株主「第〇号議案に対する動議である」>

ただ今、株主様から、第〇号議案についての修正動議が提出されました。これについては、株主の皆様に原案と合わせてご審議いただいた上、後ほど原案と一括して採決させていただき、その際は原案から先に採決をさせていただきたいと存じますが、異議ございませんでしょうか。異議のない株主様は拍手をお願いいたします。

(拍手している株主の議決権が議決要件を満たすか確認する)

ありがとうございます。では、そのように審議させて頂きます 

~~~~~~~~ 審議終了、採決へ ~~~~~~~~~

第〇号議案ついて採決を行います。

本議案については、先ほど、株主様から修正動議が提出されておりますが、先ほどご案内したとおり、原案から先に採決させて頂きます。

原案について、賛成の方は拍手をお願いいたします。

(拍手している株主の議決権が議決要件を満たすか確認する)

ありがとうございます。法定多数の賛成を得ましたので、本議案は原案どおり可決されました。

これにより、株主様から提案されました修正動議は否決されたものと扱われます。

②議事運営に関する動議の場合

議事運営に関する動議は普通決議で決議します。

なお、実際の株主総会では、株主の発言が動議なのか質問なのか、単なる意見なのか判然としないことが多いです。そこで、株主が発言したら、株主に対し発言の趣旨を尋ねるのがセオリーです。

株主の発言の趣旨を確認することで動議にどのように対応するか検討する時間も稼げます。

シナリオ例

ただいまのご発言は、ご意見でしょうか?それとも、動議としてご提出される趣旨でしょうか?

<株主「動議である」>

ただ今、株主様から、議長不信任動議が提出されました。この株主様の議長不信任動議に賛成の方は挙手をお願いします。

(挙手しない株主の議決権が出席株主の過半数であることを確認する)

賛成少数ですので、本動議は否決されました。

議事を進めさせて頂きます。

動議への対応は事前の準備が命

動議は、事前通知なくいきなり株主総会の場で株主から出されます。また、株主の発言が動議なのか、議題そのものを追加するよう求める議題提案なのか、動議だとして酒精動議なのか議事進行に関する動議なのか区別ができないと、適切な対応ができません。

株主総会をスムーズに行うためには、動議をはじめ株主の発言に対する対応を予め準備しておく必要があります。そのためには、会社法のきちんとした理解が必須です。

専門家にサポートを依頼すれば、株主からの動議にも適切に対応できるでしょう。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

関連記事