株主総会の会場・開催場所はどこでもいい?会社法における要件や、チェック項目を紹介

近年、会場開催やオンライン開催など、開催方法が多様化している株主総会。開催場所について定めがないことから、株主総会はどこで開催しても良いとされています。
2020年2月に経済産業省が「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド」を策定し、オンライン開催する企業が増えてはいるものの、実際はまだ会場開催が多くあります。

そこで今回は、株主総会の開催場所について会社法における要件や、各会場のメリットデメリット、会場選定のポイントについて解説します。また、併せてバーチャル株主総会を開催する企業が増加している理由についてもご紹介します。

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会社法で決められている株主総会開催場所の要件

株主総会の開催場所について、会社法とともに解説します。

基本的にどこでも開催できる

株主総会の開催場所について、会社法による定めは特にありません。
旧商法の時代、開催場所は本店所在地と同一またはその隣接地での開催と定められていましたが、会社法では株主総会招集地の制限についての記載はされていません。(旧商法233条)
基本的に開催場所はどこでも良いとされていますが、次の場合のような例外があります。

例外①  定款で定められている場合

法令上、どこでも開催が可能とはいえ、会社の定款で開催場所を定めている場合には、定款の通りに開催します。(会社法施行規則63条2項)現時点で、定款で開催場所を定めているが、株主総会の運営がしづらいなどがある場合は、定款の変更も検討しましょう。

例外② 株主の参加が難しい場所の場合

過去に開催した場所と著しく離れた場所、または株主の参加が難しい場所で開催する場合は、株主に対してその場所で開催する理由の説明義務があります。
また、会社法831条では、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき、株主は訴えをもって当該決議の取消しを請求することができます。意図的に株主の参加を難しくしている場合は、条文内の「著しく不公正なとき」に該当します。

いつまでに会場を予約しておけばいい?

株主総会のオンライン開催が増えてきたとはいえ、会場開催が多いのも事実です。
株主総会の開催のピークは、日本企業であれば5〜6月、外資は2〜3月開催が多くなるため、希望日程は早めに埋まってしまいます。株主総会開催日の確定前から会場のリサーチをして、確定次第すぐに予約ができるように準備しておきます。仮予約ができるなら、押さえておいた方が良いでしょう。

株主総会会場の種類とそれぞれのメリットデメリット

現在、約50%の企業が、自社の本店または自社施設以外で株主総会を開催しています。

株主総会 会場 推移

出典:東京株式懇話会「2022年度全株懇調査報告書」

株主総会会場の種類や、それぞれのメリットデメリットを併せて見ていきましょう。

株主総会 会場 種類 比較

ホテル

ホテルで開催する場合のメリットデメリットです。ホテルの場合、アクセスが良い、地方株主が宿泊できる、そして株主総会の設営も任せられる場合があるなど、株主企業にとってメリットが多数です。
しかし、ホテル開催は人気なため、開催時期が被りやすく予約が取りづらい場合があります。

ーメリット(株主)
・アクセスが便利
・ホールや貸会議室が選べる
・地方株主が宿泊できる

ーメリット(企業)
・企業側も準備のための前泊ができる
・設備、機材が充実
・設営まで任せられる(専属担当者がつく)
・高級感がある

ーデメリット(株主)
株主としてのデメリットは特にありません。

ーデメリット(企業)
・開催時期が被りやすく、予約が取りづらい
・時期により価格が変動する可能性がある

イベントホール

イベントホールで開催する場合のメリットとデメリットです。イベントホールは照明や音響などが揃っていることから、エイベックス株式会社のように、株主限定ライブなどを開催する場合には最適な開催場所です。

ーメリット(株主)
・株主総会以外のイベントがあれば雰囲気まで楽しめる

ーメリット(企業)
・株主総会以外のイベントを開催しやすい
・照明や音響などの機材が揃っている

ーデメリット(株主)
・イベントホールによっては立地が良くない(有名な場所はわかりやすい場所にある)

ーデメリット(企業)
・料金が高い
・多ジャンルのイベントを行う場所のため、日程調整が難しい
・設営は自分たちで行う必要がある

貸会議室

貸会議室は基本的にアクセスが良い場所にあります。会議に関する備品など一式全て揃っているため、自社で準備する手間が省けます。しかし、控室など複数の会議室を借りる必要があることから、費用がかさむデメリットがあります。

ーメリット(株主)
・アクセスがいい

ーメリット(企業)
・レイアウトが自由自在
・企業向けのイベントに関するオフィス設備が全て揃っている
・スタッフをアウトソーシングできる

ーデメリット(株主)
・華やかさに欠ける

ーデメリット(企業)
・設営準備をするスタッフがいないため従業員か自社で手配する必要がある
・会場費やスタッフアウトソーシングなどで費用がかさむ場合がある
・会議室(控室)ごとによって費用がかかる

オンライン

オンラインは、会場を手配する必要がないことからその分の費用が浮き、株主も自宅から参加できるなど、交通費がかからないなどのメリットがあります。しかし、ネット環境が揃っていないと不便を感じる株主がいたり、企業としては通信環境が悪くなった場合の対策を考えておく必要があります。

ーメリット(株主)
・遠方の株主が参加、出席できる
・感染対策ができる

ーメリット(企業)
・会場費用がかからない
・会場探しや当日準備などの作業工数削減
・株主総会透明性の向上

ーデメリット(株主)
・ネット環境が整っていないと参加できない
・通信機器の操作の慣れがない株主にとっては不便を感じることがある

ーデメリット(企業)
・オンラインに慣れていないと作業に時間がかかる場合がある
・通信環境などが悪くなった場合などの対策を考えておく必要がある

株主総会の会場選定5つのチェックポイント

株主総会の会場は、次の5つのチェックポイントをもとに選定します。

1 リハーサル・開催当日に空いている

株主総会当日や、リハーサル日などの希望日が空いているかを確認します。リハーサルも本番通りに行いたい場合は、リハーサルの日程も確認しましょう。リハーサル時には、備品の不備や、音響チェックなど欠かさずに行います。

2 来場人数に対応できる大きさ

会場は、来場予定人数に対し、少し余裕を持った大きさを選びます。過去数年の株主総会来場人数を事前に確認しておきましょう。当日の会場レイアウトについても、確認しておくとなお良いです。

3 機材設備が揃っている

会場は、機材設備が揃っていると好ましいです。演台、スクリーン、音響セット、机や椅子など、必要備品があると別で手配する手間が省けます。会場によっては、こちらが指定した内容の通りに準備や配置をしてくれる場所もあるため、見積もり段階で必ず確認しましょう。

4 アクセスがしやすい

会場の立地が良いと、出席する株主は迷うことなく会場に行けます。駅から近い、または駅から雨に濡れずに行ける場所を選びましょう。
ホテルが併設されていれば、遠方の株主は宿泊ができるので、安心して株主総会に出席できます。

5 控室がある

株主総会を開催する会場以外にも、控室があるとなお良いです。
開場前に来た株主が入れる控室、警察の控室、役員やスタッフの控室など、必要に応じて準備すると良いでしょう。

会場選定の基準となる選定ポイントを5つ挙げました。この他にも、受付のためのクローク準備など必要な場合がありますが、自社に合った選定ポイントをまとめたチェックシートを作成しておくと良いでしょう。

株主総会 会場 選定 チェックシート 

オンラインで株主総会を開催する企業が増えている

株主総会を会場で開催する企業はまだ多いですが、実際にオンライン開催する企業も増えています。

バーチャル株主総会とは?

株主総会をオンラインで開催する方法です。ハイブリッド参加型、ハイブリッド出席型、バーチャルオンリー型と開催方法が分かれています。
ハイブリッド参加型、出席型はオンラインに加えて会場でも開催する方法ですが、バーチャルオンリーは「場所の定めのない株主総会」とも言われており、完全にオンラインのみでの開催となります。

バーチャル株主総会が増えている理由

新型コロナウイルスによる感染の懸念と、経済産業省から法改正の発表が重なり、バーチャルで開催する企業が増えてきました。
株主としては、人との接触がないことから感染対策ができ、更には遠方に住んでいても参加できる、企業としても、株主総会の透明性向上や参加方法多様化による株主重視をアピールできるため、バーチャル株主総会は双方にとってプラスとなります。

まずはハイブリット開催を検討しよう

バーチャルオンリー開催は、事前に定款変更が必要なため、定款変更のための株主総会を開催しなくてはいけません。しかし、ハイブリッド開催であれば、環境だけ整っていればすぐにでも開催できます。
会場開催に慣れている、またはオンライン操作が苦手な株主がいる場合、ハイブリッド開催だと困難なく参加できます。企業としても、オンライン開催の要領を把握した上で、バーチャルオンリーに切り替える方がスムーズに進められますね。
また、2022年度時点では、約25%の企業がハイブリッド型の開催方法を導入済または検討中としています。

株主総会 バーチャル株主総会 傾向

出典:東京株式懇話会「2022年度全株懇調査報告書」

まずは、ハイブリッド開催から試し、どの開催方法が自社や自社の株主と合うか検討していきましょう。

注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説

バーチャル株主総会については「注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説」で詳しく解説しています。

まとめ

今回は、株主総会の会場や会場選びのポイント、バーチャル株主総会の概要について解説しました。
ホテルや貸会議室などは、それぞれメリットデメリットがあるため、株主と企業双方にとって良い場所で開催できるようにしましょう。
オンライン開催には、バーチャルオンリー型とハイブリッド参加型、出席型の3つの開催方法がありますが、ハイブリッド型には特に要件はなく、インターネット環境が整っていればすぐに開催が可能です。
しかし、ハイブリッド型は、オンラインと会場のどちらも準備が必要なことから、全てを自社で行うにはかなりの時間と工数がかかります。それでも株主ファーストで考え、株主の手間を取らせないためにも、オンライン開催は必要不可欠です。
自社での準備が難しい場合は、専門サポートやコンサルタントに相談してみましょう。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

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