新人営業が配属2カ月で急成長 その秘密は「動画活用」にあった

多くの企業にとって、営業力の強化は自社の売り上げに直結する喫緊の課題だ。しかし、その負担は営業担当者それぞれにしわ寄せされることも多い。見込み客の発掘から、電話やメールでのアプローチ、訪問営業など、営業の方法は多岐にわたり、受注や契約を取り付けるまでの道のりは長い。

特に、新人として営業に配属されたような人は、「1件でもいいから受注したい」「もっと早く仕事ができるようになりたい」と悩むことも多いのではないだろうか。

そんな中、Web会議システムなどを手掛けるブイキューブでは、入社1年目の新卒営業がめざましい活躍を見せている。ある社員は、見込み客にアプローチし商談のきっかけ(案件)を作る「インサイドセールス」(内勤営業)に配属され、2カ月で目標の3倍以上の案件を創出するという結果を残した。一体どのようにして短期間に営業のノウハウを身につけたのか。本人にその秘密を聞いてみた

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配属当初は「つまずくことばかり」

話をしてくれたのは、2018年4月入社の荒木経義さん。インサイドセールスとして5月にマーケティング本部に配属された。主な仕事は、マーケティング活動で得た見込み客に対して、電話やメール、Web会議などでアプローチし、フィールドセールス(外勤営業)に案件を渡すことだ。

 

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photoブイキューブの荒木経義さん(マーケティング本部 インサイドセールスグループ)

配属当初の目標は、2カ月で10件の案件を作ることだったが、わずか1カ月で目標を達成。2カ月で31件の案件を創出した。さらにその半年後には商談や訪問営業を担当するフィールドセールスの業務にも挑戦。5件の案件のうち3件の受注に成功し、さらに受注した企業の別部署から追加発注を受けるなど、顧客満足度も高かった。

新人営業として順風満帆に見える荒木さんだが、配属当初は「つまずくことばかりだった」と話す。

インサイドセールスの仕事は、訪問営業や商談を担当するフィールドセールスが効率良く受注や契約を取り付けられるよう、あらかじめ顧客のニーズや課題を把握し、それに合った製品やサービスを提案すること。自社の商品知識はもちろん、あらゆる業界の知識や、フィールドセールスが普段どんな商談を行っているかなど、学ぶことは山のようにあった。

「録音データを使って先輩社員の電話営業をまねたり、訪問営業に同行したりしましたが、どんな提案をすればいいか、その場で学ぶのは難しかったです」(荒木さん)

どうすれば教わった内容をしっかりと復習し、定着できるのか。悩む荒木さんを助けたのが、インサイドセールスグループが取り組んでいる、社内のさまざまなノウハウを蓄積した「動画」の活用だった。

社内のノウハウを動画で共有

ブイキューブでは、法人向けに販売している動画の社内共有サービス「Qumu」(クム)を自社でも活用している。シンプルなインタフェースで動画の作成と配信を短時間で行えるのが特徴で、社員研修の模様や社内で使っているツールの操作方法など、社内に動画で共有したいことを気軽に撮影・投稿して、1つのプラットフォームに蓄積できる。

 

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動画共有サービス「Qumu」

 

蓄積されていた動画の中には、先輩社員が顧客に向けて提案を行っているロールプレイング動画もあった。「先輩社員に教えてもらえる機会は限られていますが、動画なら繰り返し見て学べる上、細かな説明や話している時のニュアンスも確認できます」(荒木さん)

さらに、同期入社した2人の社員と協力し、それぞれのロールプレイング動画を定期的に撮影・投稿するようにした。お互いの動画を確認することで「こんな提案の仕方もあるのか」と気付いたり、新しい知識やツールの使い方を身につけたりできた。荒木さんは「1人でやるより3人で協力した方が知識の吸収も早い。一緒に頑張れる仲間がいるのは心強かった」と当時を振り返る。

 

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ブイキューブではQumuを使った動画ポータル「V-Tube」を活用している

荒木さんだけでなく、同期の社員2人も動画を活用して効率的に営業のノウハウを吸収。3人合わせて2カ月間に30件の案件を創出する目標を、計105件と大幅に上回って達成した。現在、ブイキューブで積極的に動画を人材育成に使っているのはマーケティング本部だけだが、今後は全社的な活用を検討している。

今度は「教える側」として動画を活用

荒木さんは現在、インサイドセールスの先輩としてインターン生の指導を行っている。荒木さんのロールプレイング動画などで、まずは仕事の“予習”をしてもらい、インターン生のアウトプットも撮影。動画を確認しながら、どこをどう直すといいか指導している。「自分が学んでいる時はがむしゃらにやっていて気付きませんでしたが、指導する側になると成長していくのがよく分かります」(荒木さん)

 

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社内では荒木さんをはじめ、多くの社員が営業活動や人材育成以外にもQumuへの動画投稿を積極的に行っている。ミーティングやWeb会議の様子を撮影した動画は、当日参加できなかった人や、後から部署に配属された人から好評だ。

最近では「Salesforce.comの入力ルールを動画マニュアル化する」「管理本部がビルの施錠方法をスマートフォンで撮影して投稿する」「社員一人ひとりが自己紹介動画を作成して交流する」など、ちょっとした情報をQumuに動画で投稿し、共有する動きもでてきた。

「初めて動画を作る人でも、Qumuなら数分で作れます。誰かに撮影してもらうのではなく、自分で撮ることが大事。動画投稿を自分ゴト化することで、『動画で共有する』文化を作っていきたいです」(荒木さん)

転載元:ITmedia NEWS

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