営業活動をより生産性高く効率化するために、営業プロセスを「インサイドセールス」と「フィールドセールス」に分業する手法が注目されています。
営業の分業を考えるならば、まずはインサイドセールスとフィールドセールスの役割の違いを明確に理解した上で、組織体制のイメージを思い描き、マッチする人材の確保などを進めて行きます。
本記事では、インサイドセールスとフィールドセールスとの違い、また人材マッチングを図るためにも各職のやりがいやキャリアパスなどについてもご紹介していきます。
インサイドセールスとフィールドセールスの
分業を成功させるには?
リモートワーク・テレワークの導入に伴い、これまでのような訪問営業が効果を発揮しづらくなってきています。そこで注目を集めているのがインサイドセールスです。
本資料ではオンラインでの営業活動「インサイドセールス」の導入・実践にあたって理解しておきたい、オンライン商談のメリットや導入ポイントをご紹介しています。
営業の生産性向上や、インサイドセールスの導入を検討されている方はぜひお役立てください。


インサイドセールスとは何か
インサイドセールスとはアメリカで誕生した営業手法であり、内勤で外出せずに営業活動を行う手法のことを指します。従来の営業方法は、一人の担当者が見込み顧客の発掘から提案や商談の実施、契約後のサポートまで一気通貫型で業務を担っていましたが、それを役割で分業化することで、営業効率や売り上げの向上を図ります。
インサイドセールスの役割やキャリア
内勤営業とも言われる「インサイドセールス」。その業務内容や分業化組織内での役割や位置付け、また必要とされるスキルやキャリアパスについて説明していきます。
仕事内容・役割
インサイドセールスは「内勤営業」とも言われ、外出や訪問しない営業手法のことを指します。主業務は電話やメール、Web会議ツールなどのITツールを活用し、顧客と適切なタイミングでコミュニケーションを取ります。
インサイドセールスの役割は、見込み顧客の状態に合わせたアプローチで育成し、成約確度の高くなったタイミングでリードをフィールドセールスへ受け渡すことです。具体的には、マーケティング部門で集約した見込み顧客リードに対し、見込み顧客の状態(成約確度が高いか、低いか)を判定し、その状態に見合ったアプローチを顧客に対し行います。
見込み顧客へのアプローチは話す、よりは傾聴する「ヒヤリング」がキーとなり、潜在課題を引き出し必要となる情報収集を行います。また、見込み顧客リードの成約確度が高まったタイミングで、引き出した情報と共にフィールドセールスへ情報を共有し、受け渡します。
働き方
インサイドセールスの働き方は、社外に出ることが少ないため、リモートワークでの稼働が可能です。社外での勤務が許容されている企業の場合には、在宅勤務など場所に囚われない働き方ができます。移動時間が取られないため、仕事終わりにすぐにプライベートの趣味の時間や、子供との家族の時間を過ごすなど自由自在です。時間も場所も自由な働き方が可能です。
必要とされるスキル
インサイドセールス職を担うのに必要とされるスキルは大きく分けて3つです。
・マルチタスクスキル
インサイドセールスが保有するリードは見込み顧客リードのため、商品やサービスの検討段階の顧客が多いです。そのため、一人が担当する案件数は多いのです。様々な案件を同時並行で進めるため、計画的に進めるスキルが重要です。また単に同じ施策でリードにアプローチするのではなく、PDCAを細かく回し、試行錯誤しながら業務を進めるスキルも求められます。
・ITスキル
インサイドセールスではMAやCRMといったITツールを活用し、マーケティングやフィールドセールスなどの他部門と情報共有を行います。複数のツールを利用し、スムーズな情報連携を行うためにも、ITリテラシーの高さが求められます。
・コミュニケーションスキル
非対面で顧客や他の部門担当者とコミュニケーションを行うため、対面での会話よりも高度なコミュニケーションスキルが必要になります。電話やメール、Web会議ツールなどを利用し、相手が直接見えない中でも、伝えたいことをストレートに伝える力、また聞き取る能力が問われます。
やりがい
インサイドセールスを行うことでのやりがいや、楽しいと思える瞬間はどのような時なのでしょうか。実際に、インサイドセールスを経験している人が感じるやりがいポイントを挙げてみました。
- 顧客が気づいていない課題を見つけて、本来の顧客の課題を自分が解決できた瞬間
- 顧客の潜在ニーズを顕在化させ引き出せた瞬間
- 見込客とのヒアリングによるコミュニケーションで顧客が気づいていない必要な商品・サービスを顕在化させ、役立てた瞬間
- 商談化させ受注できた瞬間
- 顧客から感謝された瞬間
キャリアパス
インサイドセールスの経験を蓄積したのち、どのようなキャリアパスが広がっているのでしょうか。キャリアパス例を以下に挙げてみました。
1.インサイドセールスのチームマネージャーになる
インサイドセールスのメンバーとしての経験を積み重ね、成果としての実績を得た後、マネージャーとしてチームメンバーのマネジメントや育成、施策の立案、数値管理などを行う立場に昇格することも可能です。
2.フィールドセールスになる
インサイドセールスは営業経験未経験でも可能な場合もあるため、セールススキルの基礎をインサイドセールス実務で身につけた後に、フィールドセールスに転身することも可能です。フィールドセールスでにヒヤリングスキルやコミュニケーションスキルは必須スキルのため、インサイドセールスで身につけたスキルを十分に発揮することができます。
3.マーケティングやカスタマーサクセス
マーケティングやカスタマーサクセスなど他の営業に関わる部門へ異動することもできます。インサイドセールスでのスキルを高めた後に、より顧客に近い形で顧客の成功に携わりたいと考え、カスタマーサクセスなどにキャリアチェンジする人もいます。
4.他社のインサイドセールスへの転職
インサイドセールスから他社のインサイドセールスへと転職するケースもあるでしょう。業界も異なればインサイドセールスの業務内容も大きく変わるため、様々な業種でのインサイドセールス経験を積み上げるステップを踏む人もいます。
フィールドセールスの役割やキャリア
フィールドセールスは内勤型のインサイドセールスとは反対に、「外勤型営業」と言われ、時に「アウトサイドセールス」とも称される場合もあります。ここでは、フィールドセールスの仕事内容や役割、必要なスキルについて説明していきます。
仕事内容・役割
フィールドセールスは訪問する営業で、「外勤型営業」です。従来型の企業へ訪問する営業スタイルとやり方に違いはありませんが、厳密には業務範囲が異なってきます。
これまで、新規案件の獲得からクロージングまでを一人の営業担当が行うのが主流でしたが、営業プロセスを分業する組織では、フィールドセールスの主業務は「商談の実施」です。役割は、インサイドセールスから成約確度の高い見込客を受け取った後に、その顧客との商談を行い、成約へと繋ぐことです。インサイドセールスから受け渡される見込み顧客との商談機会を、失うことなく成約へ繋ぐこと、がフィールドセールスのミッションになります。
働き方
フィールドセールスの働き方は、お客様先に訪問することが多いですが、企業によっては訪問せずにWeb会議システムを利用し、遠隔地にいながらも商談を行うスタイルを取ることもあります。
見込み顧客への商談以外は、チームとの打ち合わせや提案書作成、インサイドセールスチームとの情報連携などを行います。
必要とされるスキル
フィールドセールス職を担うのに必要とされるスキルは大きく分けて2つです。
・対人スキル
顧客と直接対面し、コミュニケーションや提案などを行うため、聞く力である「聴力」、話す力、提案する力、など全て網羅した対人スキルが必要になります。顧客に対してだけでなく、社内でのインサイドセールスやカスタマーサクセス部門との調整も必要となるため、社内外両方への対人スキルの備えが大事です。
・商談時の交渉力
フィールドセールスのメインミッションとなる「商談」の鍵となるのが交渉力です。顧客の注文を引き受け、言いなりになって契約を締結しても、後工程が大変になりますので、調整し交渉しながら商談を進める必要があります。交渉力と伏せて、顧客の課題を明確に汲み取り、構造化した戦略をプランするロジカルシンキング力も大事になります。
やりがい
フィールドセールスを行うことでのやりがいや、楽しいと思える瞬間について、実際の経験でのやりがいポイントを挙げてみました。
- 自身の経験が価値になった瞬間・顧客と心が近づいた瞬間
- 自分が提案した広告がユーザーを動かし、クライアントに貢献できた時
- クライアントや社会に価値提供できた瞬間
- 「ありがとう」と言われ感謝された瞬間
- 提案したことがクライアントの事業の成長に繋がったと感じた瞬間
キャリアパス
フィールドセールスでの経験を得たのちには、どのようなキャリアパスが広がっているのでしょうか。フィールドセールスでのキャリアパス例を以下に挙げてみました。
1.フィールドセールス・営業部マネージャー
フィールドセールスで個人で成果を出すことに注力し、結果を出し続ければ、営業部マネージャーなどへ昇進することも可能かもしれません。マネージャーになると、よりチームでの成果にコミットし、組織全体を管理する立場になります。
2.フリーランス・他社のフィールドセールス
営業のプロとして組織から外れ、独立するという方法もあります。様々な業界での営業経験と実績を得て、有形・無形商材関係なく何でも売れる営業としてフリーランスとして活動しキャリアを広げる方法もあります。
3.営業コンサルタント
フィールドセールスとしての実績を重ねれば、企業の上層部とのコネクションが必然とできてきます。それらのコネクションを活用し、営業コンサルタントとして自身の営業スキルを他社に注入するという方法もあります。コンサルティングとなると営業単体ではなく、経営をも視野に入れることになるため、広い視野で挑戦することが可能になります。
カスタマーサクセスの役割やキャリア
カスタマーサクセスとは直訳の通り「顧客の成功」へと導くことを役割とした仕事です。SaaS企業やスタートアップ系の企業では、組織の重要部門として取り入れられつつあります。ここでは、カスタマーサクセスの仕事内容や役割、必要なスキルについて説明していきます。
仕事内容・役割
カスタマーサクセスという部門は主に、一定期間使えるビジネルモデルである「サブスクリプション型」のサービスを取り扱う企業での成長や成功をサポートすることを役割としています。長期的な顧客との良好な関係性を保持しながら既存顧客を維持することがミッションとなることから、スピーディーに顧客の要望や問題をキャッチし、問題解決が大事です。
カスタマーサポートと比較されることがありますが、厳密には業務のスタンスが異なります。カスタマーサクセスは顧客からの要望や問題を受け取った後に解決を行う受動型のアクションですが、それに対しカスタマーサクセスは、顧客の成長を導くため、潜在的な課題を即座にキャッチし積極的に行動をしていく能動型のアクションを行います。
働き方
従来型の営業は、顧客へ売って終わりの売り切り型のスタイルが主でしたので、どのように販売するか「売る」に着目した視点が重視されました。一方で、サブスクリプション型では、継続利用が売り上げ拡大のキーとなるため、「売る」視点にプラスし、継続的に利用し続けてもらうにはどうするか、解約されるのをどのように防ぐか、という視点が大事になります。
そのためにカスタマーサクセスとして働く上で、顧客と長期的に密な関係を築き、自社製品やサービスの活用促進を行いつつ、顧客が抱える課題を解決し、顧客成功に導く姿勢が重要です。
必要とされるスキル
カスタマーサクセス職を担うのに必要とされるスキルは大きく分けて2つです。
・顧客課題を即座に見つけ、解決するスキル
顧客の課題を解決するスキルと、そもそも課題を引き出す力の両方のスキルが必要です。顧客が持つ課題をストレートに共有してくれることは稀であり、課題が明るみに出たときには事態が悪化している状態の場合もあります。顧客との会話の中で潜在的な課題を引き出す能力とそれを即座に解決する能力はカスタマーサクセスにとって重要なスキルです。
・顧客の商品やサービスの知識/環境を知る能力
顧客のサービスやプロダクトなどの商品知識はもちろん、顧客の組織構成などを含めた環境を理解するスキルも重要です。顧客の立場に立ち、顧客の目線で会話ができるからこそ、顧客との信頼関係が成り立ちます。相手の環境を明確に聞き、立場を理解する能力はカスタマーサクセスにとって大事な能力と言えます。
やりがい
カスタマーサクセスを行うことでのやりがいや、楽しいと思える瞬間について、実際の経験でのやりがいポイントを挙げてみました。
- プロダクトを変え、価値を高めて顧客に届けられる瞬間
- 多くのステークホルダーと関わりながら、お客様の成功のために伴走できること
- 顧客から「組織が変わりつつあります!」という報告を聞けた瞬間
- カスタマー自身も気付いていない課題を特定した上で、それをプロダクトで解消した瞬間
- 自分が聞き取ったお客様の声が、プロダクトにそのまま反映される瞬間
- 顧客の成果が数値に現れた時
キャリアパス
カスタマーサクセスでの経験を得たのちには、どのようなキャリアパスが広がっているのでしょうか。カスタマーサクセスでのキャリアパス例を以下に挙げてみました。
1.カスタマーサクセスチームマネージャーになる
カスタマーサクセスのメンバーとして、チームの指標である顧客の契約更新等の成果を積み重ねた結果、チームのマネージャーに昇格することも可能です。カスタマーサクセスチームのメンバーの管理や育成、顧客の契約状況管理など、組織全体を包括的に見る立場になります。
2.他の企業でフィールドセールスやマーケター、インサイドセールスになる
カスタマーサクセスとして経験を身につけ、他の業界のフィールドセールスとして転身することも可能です。カスタマーサクセスの業務では、セールスやインサイドセールス、マーケティング領域の仕事も含まれますので、それらの経験を活かして、フィールドセールスだけでなくインサイドセールスやマーケティング部門など、他の企業で異なる職種を跨いで経験することも可能です。
3.コンサルタントになる
カスタマーサクセスのプロとして独立し、コンサルタントでの活動を行うことも可能です。様々な業界の顧客のカスタマーサクセス業務を経験し、顧客を成功へと導けば、その経験を経て独立することも可能でしょう。組織としての枠組みを出ることにより、さらなるキャリアアップにつながります。
営業全体の流れ
分業型での営業プロセスは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、その後SaaS系プロダクトを扱う企業の場合はカスタマーサクセス、と大きく4部門で構成されます。
その中で、インサイドセールスの位置付けは以下の図のように、マーケティングとフィールドセールスの間になります。インサイドセールスは、各部門の「橋渡し役」として、リードの受け渡しを行っていきます。
役割は各部門で異なります。マーケティング部門は集客を行いリード獲得「リードジェネレーション」を役割とし、集客したリードをインサイドセールスへ受け渡します。インサイドセールスはそのリードを育成「リードナーチャリング」し、見込み確度の高いリードをフィールドセールスへ受け渡します。そのリードを受け取ったフィールドセールス は、質の高い提案や商談を行い、受注へと繋げます。その後のサポートや顧客フォローは後工程にいるカスタマーサクセスが担います。

インサイドセールスとフィールドセールス導入のメリット
インサイドセールスとフィールドセールスをそれぞれ分けて組織構成することのメリットは以下の4つと考えられます。
- 営業効率の向上につながる
- インサイドセールス導入により見込み顧客へのアプローチが可能
- リードの取りこぼしを防げる
- フィールドセールスが商談に集中できる環境を整えられる
一番の導入メリットは、営業全体の効率を上げられる点です。インサイドセールスやフィールドセールス、またその他の部門が連携し合いながら各役割を担うことで、業務を専門的に行うことができます。例えば、インサイドセールスであれば見込み顧客へのアプローチと育成に集中することでリードの取りこぼしを防ぐことができます。フィールドセールス は、本来の目的である商談や提案への準備に集中でき、その分提案の質が向上し、成約数が上がるかもしれません。
各部門が連携し、短い時間で効率的に見込み顧客を育て、受注へとつなぐプロセスを組織全体で行うことで、総合的に営業効率の向上を期待することができます。
インサイド・フィールドセールス連携のポイント
インサイドセールスとフィールドセールスが連携する際に注意したいポイントとはどのような点でしょうか。具体的な連携ポイントは2つあります。
1.顧客情報の共有
インサイドセールスで育成したリードをフィールドセールスへ受け渡す際に、顧客の情報共有をITツールを利用し引き継ぐ対応が発生します。
引き継ぎの際に注意したいポイントが、情報の詳細まで共有するという点です。インサイドセールスがこれまでヒヤリングした内容やナーチャリングの過程も含め、細かくフィールドセールスへ情報共有することが大事です。細かな情報により質の高い資料作成ができ、契約成功率の向上が可能となるからです。
2.顧客の引き渡し(パス)のタイミングを的確にする
通常、成約確度が高まったタイミングでインサイドセールスからフィールドセールスへ顧客情報の引き継ぎを行いますが、「確度が高まったタイミング」の定義を明確にしなければ、各担当により受け渡すタイミングの差が出てきてしまいます。
高まっていない早いタイミングで引き継ぎが起きるとフィールドセールスの時間に無駄が発生しますし、逆に遅ければタイミングを逃してしまいます。適切なタイミングで効率よく受け渡しができるように明確な定義をインサイドセールスとフィールドセールスの両方で話し合いの上、確定しましょう。
まとめ
本記事では、「インサイドセールス」と「フィールドセールス」の業務の違いや役割、また各役割を担う人材に必要なスキルやキャリアパスについてご紹介しました。
分業型の組織を取り入れ、「インサイドセールス」と「フィールドセールス」を分けて営業活動を行うことで、営業効率の最大化が可能になります。ぜひ、インサイドセールス単体やフィールドセールス 単体として個別で考えるのではなく、連携することを前提に導入することを検討してみてください。