バックオフィス業務でよくある課題
バックオフィス業務は、企業が効率的かつ円滑に運営されるための基盤的役割を果たしますが、課題を抱える企業が少なくありません。ここでは、バックオフィス業務に関連する問題点について紹介します。
アナログ業務が多い
バックオフィス業務では、手作業によるデータ入力や紙ベースの書類管理から抜け出せないという課題が見られます。例えば、取引先からの請求書や領収書を自社の会計システムに手入力している、各種取引や契約書類を紙で整理・保管しているといった状況です。
こうしたアナログ業務の文化は、職場におけるデジタル化が進まないことが原因で刷新が難しくなっています。
事実、株式会社オロがバックオフィス担当社員を対象に実施した調査では、バックオフィスのDX(デジタルトランスフォーメーション)がとても進んでいると回答したのは、全体のわずか7.3%でした。
人手不足・業務負担が大きい
バックオフィス業務は総務・経理・法務などに大別されますが、それぞれの担当業務は多岐にわたる上、専門知識も必要です。適切な人材の確保が難航すると、少人数で幅広い仕事に対応することとなり、その業務負担も大きくなるでしょう。
また、株式会社エイトレッドが行った業務実態調査によると、人手不足に悩むバックオフィス担当者からデジタル化に関する興味深い意見も出ています。同調査では、デジタル化が業務負担への軽減につながっていないと回答した人が、82.2%となっています。すなわち、業務負担を減らす目的で導入された複数のシステムが連携できない結果、二重入力などの新たな業務が発生している実態を表しています。
業務が属人化しやすい
特定の業務が、特定の社員の知識や経験に依存する属人化。バックオフィス業務では、人手不足やノウハウの未共有によって属人化が起こりやすいという課題もあります。
例えば、1人の経理担当者しか税務申告の手順やシステムの操作方法を把握しておらず、その社員が不在になると税務手続きができなくなるといった状況です。
属人化はバックオフィス業務を非効率なものとするだけでなく、企業としてのリスクも高めます。ミスや情報漏洩、不正などが起きていたとしても、周りの社員が気づけない可能性が高いからです。
仮に、企業として認識できないまま大きなトラブルへと発展した場合、その管理責任を問われることになります。
テレワークを導入できない
2020年から猛威を振るったコロナの影響で、テレワークという働き方が急速に拡大しました。しかし、バックオフィス業務では、いまだにテレワークを導入できていない状況が目立ちます。
Bizer株式会社のバックオフィスに関する調査によると、テレワークはできないと回答したバックオフィス担当者は全体の46.1%と、半数に迫る勢いでした。同調査では、特に労務、経理、総務部門での導入の遅れが顕著です。
この課題は、バックオフィスで紙文化が根付いていることが影響しています。テレワークを実現するには、社内システムやインフラを確立させなければなりません。しかし、アナログ業務や部分的なシステム化という要素が弊害となり、導入が困難となっています。
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問い合わせ対応に時間が割かれてしまう
バックオフィスのアナログ業務の多さや属人化といった課題は、社内の問い合わせ対応という新たな課題も生みます。オンラインで確認できるマニュアルが未整備なため、各部署からバックオフィスへ直接問い合わせが集中する状況が代表例です。
また、問い合わせ内容が複雑である場合、担当者は紙で保管された資料を探して確認を余儀なくされるケースもあるでしょう。こうした対応はバックオフィス業務の効率を低下させ、他の重要タスクにミスが出たり、時間外労働が増えたりすることにつながります。
バックオフィス業務を効率化する方法
さまざまな課題があるとはいえ、取り扱う情報量が増え続ける現代において業務の効率化は不可欠です。続いては、バックオフィス業務のよくある課題を踏まえた上で、その改善案について解説します。
クラウドPBXの導入
社内システムの確立によって電子化が進めば、バックオフィス担当者にもテレワークという働き方を提案できるようになります。その際は、クラウドPBXの導入が効果的でしょう。
クラウドPBXは、インターネットを介して社用電話の管理・運用ができるサービスです。テレワーク中の社員でも、自宅から会社の番号を使って発信ができたり、出社している社員と内線で通話ができたりします。
クラウドPBXを導入すれば、テレワークでの業務遂行が可能となるため、育児や介護といった事情を抱えた社員の離職防止にも寄与します。
また、クラウドPBXは物理的な設備が不要なため、初期費用やメンテナンスコストを抑えた導入が可能です。チャットやWeb会議システムとの統合も可能なので、離れた場所で働く社員のコミュニケーションツールとして検討をおすすめします。
例えばZoomの提供するクラウドPBX「Zoom Phone」は、スマートフォンやPC、タブレットでも利用が可能なため、在宅勤務であっても代表番号の受電や発信、内線の取次が可能です。
業務プロセスの可視化と改善
バックオフィス業務の効率化には、業務プロセスの可視化が重要となります。可視化によってボトルネックを特定できるため、何を改善すべきかがわかるからです。
まずは、フローチャートの作成やプロセスマッピングを用いて業務を視覚的に捉え、ボトルネック(業務を滞らせるポイント)を特定します。ボトルネックを特定する際は、業務プロセスの各ステップにかかる時間を計測したり、社員にヒアリングしたりするとよいでしょう。
想定以上に時間のかかっている業務や、複数の社員が非効率を感じている業務は、具体的な改善策が必要です。例えば、経理業務の承認作業がボトルネックの場合、承認フローの簡略化や承認者の追加を検討します。
ERPの導入
ERP(Enterprise Resource Plannning)とは、日本語で企業資源管理と訳される基幹システムの一種です。財務・人事・在庫・販売・生産など、企業全体の経営資源データと業務プロセスを一元管理でき、各部門の業務効率化を実現します。
例えば、人事管理システムを労務管理や給与計算データと連携できるため、社員の勤怠データを自動的に給与計算に反映することが可能です。
また、財務管理と経理業務のデータを統合すれば、リアルタイムで反映される財務部門の売上データから、経理部門が月次決算を迅速に行えます。
ERPを導入する際は適切なベンダーを選定し、自社の運用に沿ったカスタマイズをすることが重要です。既存の業務プロセスを再設計しながらカスタマイズできれば、より高い効率化が期待できるでしょう。
ワークフローシステムの導入
ワークフローシステムは業務プロセスをデジタル化し、進捗状況の可視化や担当者間の情報共有の円滑化を実現するシステムです。進捗管理やタスク管理だけでなく、電子承認や通知機能も備えているため、定型業務のミスを減少させたり、業務スピードをアップさせたりできます。
例えば、経費精算の申請がシステム上で承認フローに乗り、各段階の担当者に承認依頼の通知が届くといった具合です。契約書の作成と承認、休暇申請と承認など、流れが決まっていて繰り返しの多い業務を自動化できるので、ルーティン作業を効率化するのに役立ちます。
これにより、バックオフィス担当者はより重要な業務や複雑な業務に必要な時間を割けるようになるでしょう。
社内マニュアル・FAQの導入
社内マニュアルやFAQの導入は、社内問い合わせの削減が主な目的です。そのためには、各部署の社員が自力で問題を解決するのに役立つマニュアル・FAQを作成しなければなりません。
社内マニュアルやFAQに重要なポイントには「社員ニーズ」「見やすさ」「検索性」などがあります。まずは、アンケートやヒアリング調査によって、社員が必要としている情報を把握しましょう。
その上で、図や表を用いたシンプルな回答を用意すれば、よくある質問への対応業務を削減できる可能性が高まります。また、マニュアル類を積極的に利用してもらうためには、オンラインで簡単に検索できる仕組みを整えることも重要です。
業務フローやシステム変更があった際は、マニュアルの情報更新も忘れないようにしましょう。
自動化ツールの導入
RPA(Robotic Process Automation)のような自動化ツールの導入も、バックオフィス業務の効率化に役立ちます。
RPAとは、ソフトウェアロボットを使って定型的かつ反復的な業務を自動化する技術です。人間がパソコンで行う業務を記録し、自動的に実行するよう設計します。
例えば、人事部門で給与計算のデータ入力をRPAに任せるといった方法があるでしょう。給与データは使用項目と入力場所が固定されており、作業時に個別の判断がほとんど必要ありません。このような、機械的に繰り返す業務を自動化できるのがRPAの強みです。
その他、社員の入退社手続きや請求書作成、定型メールの送信などに利用されるケースもあります。
まとめ
バックオフィスの多岐にわたる業務は、効率化によって企業の生産性を大きく向上させる可能性があります。まずは、紙ベースで行われている手作業や属人化した業務からの脱却を目指し、各プロセスの可視化と改善を進めていきましょう。
最新のツールやシステムには、さまざまな種類があるため、社員からのヒアリングも行った上で、最適なサービスを選ぶことが大切です。正しい手順で効率化を推進することで、企業全体のパフォーマンス向上やコスト削減だけでなく、社員の満足度や業務クオリティの向上にもつながるでしょう。
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