業務マニュアルの作成手順・運用ポイントを解説!ツール活用で業務効率化へ
テレワーク環境下では、気軽に隣の人に声をかけて質問することが難しくなり、他部署への問い合わせや社員間で同じような質問が飛び交うことが絶えません。こうした問い合わせ対応をしていると、本来集中して取り組むべき業務が後回しになり、仕事が非効率になってしまいます。
そのため、業務マニュアルの重要性が増しています。業務に関する情報は、社内でマニュアル化することで、より効率的かつ効果的に共有できるようになるのです。
本記事では、業務マニュアルの役割やタイプ、作成のポイントや実際の作成手順などを詳しく解説します。動画マニュアルとドキュメントマニュアルの作成におすすめのツールも紹介しているため、ぜひチェックしてみてください。
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マニュアルの役割
業務マニュアルには、以下のような役割があります。
- 業務効率化
- 育成コスト削減
- 属人化を防ぐ
- 業務全体の把握
それぞれの役割について、以下で詳しくみていきましょう。
業務効率化
業務マニュアルは「書かれた手順に従えば同じような結果を出せる資料」のことです。
業務マニュアルとして効率的に工程を進める手順を記載しておくことで、誰もが無駄な業務をしなくて済むようになります。また、よくある失敗例や、成功させるコツなどの情報も蓄積しておくと、マニュアルにそれぞれの経験が積まれていくことになります。そのため、一人ひとりが試行錯誤せずに業務を遂行可能です。
初めてその業務に就く人でも効率良く作業ができるようになることから、業務マニュアルは業務効率化のために役立つでしょう。
育成コスト削減
業務マニュアルは、育成コストの削減にも利用できます。マニュアルがあれば上司や先輩が細かく手順を説明する必要がなく、教わる側も自分でメモを取る必要がありません。作業中にわからないところが出てきても、トラブルやイレギュラー対応以外はマニュアルを確認すれば解決できるケースも多くなるでしょう。
その結果、部下や後輩の指導にかける時間が減り、本来の業務に多くの時間を割けるようになります。
属人化を防ぐ
中小企業の25%が業務の属人化を課題として挙げているアンケート調査もあり、「担当者が休むと業務が滞る」という企業も多いのではないでしょうか。業務マニュアルが整備されていれば担当者が不在のときでも業務を進められるようになり、業務の属人化を防げます。
業務全体の把握
業務マニュアルを作成する行為そのものにより、業務全体の把握ができるようになります。マニュアル作成のためには、まず業務の工程を洗い出します。その後業務の進め方を文章や映像でまとめることから、無駄が多いポイントやミスしやすい部分が何かが確認できるようになります。結果として業務全体の流れや課題などを把握できるようになり、より効率よく作業するように改善しやすくなるでしょう。
参考:「Teach me Biz マニュアル作成の目的と必要性とは?上手に活用するためのポイント 」
増加するマニュアルの重要性
テレワークを導入した企業では、従来のように対面で業務の手順を教える機会が減っているでしょう。そのため、分からないことがあってもすぐに上司や先輩に確認できず、そのまま放置してしまったり、間違った手順で進めたりしてしまうリスクがあります。
このような状況であるため、オンライン上でどこからでもアクセスできるマニュアルの重要性が増しています。
テレワークだけではなく、フレックスタイム制など働く時間も多様化していて、「いつでも業務の手順を担当者に教えてもらえる」という職場ばかりではありません。担当者が不在でも、「いつでも誰でも同じ業務ができる」状況を作っておくために、業務マニュアルが必要とされています。
政府は働き方改革で、「生産性を向上させながら長時間労働をなくす」ことを推進しています。また「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」などを課題として挙げており、生産性の向上は日本企業全体が取り組むべきミッションです。
業務マニュアルの整備も、生産性向上のための施策のひとつです。業務をマニュアル化して担当者以外でも同一の業務ができる環境を整えることで、より重要な業務に時間を割けるようになります。例えば、マニュアル化できる業務が手を離れたことで確保できた時間を、業務全体の見直しや最適な人員配置の検討などに充てられれば、部署やチーム単位の生産性向上を目指せます。
マニュアルのタイプ
業務マニュアルは、動画マニュアルとドキュメントマニュアルの大きく2種類に分類できます。ここでは、これら2つのマニュアルの特徴を解説します。
動画マニュアル
動画マニュアルは、業務の手順を映像でダイレクトに伝えられる点が大きなメリットです。画像や文章だけではわかりにくい複雑な内容でも、動画マニュアルなら視覚的に理解しやすくなります。パソコンを使った業務のマニュアルを作成する場合、画面録画機能を活用すれば簡単に作成可能です。
しかし、動画マニュアルでは、動画は最初から順を追って見ていく必要があるため、全体でいくつのステップがあるのかわかりづらく、途中の手順だけを確認しにくくなります。細かくチャプターに分け、目次を作成するなどの工夫が必要です。
ドキュメントマニュアル
ドキュメントマニュアルは文章と画像で構成します。そのため、各工程をステップとして整理すると全体の流れを把握しやすくなります。確認したい項目に対してアクセスできるようになるので、必要なところだけを確認可能です。
ドキュメントマニュアルのデメリットは、作成に手間がかかることです。手順を文章で説明し、必要に応じて写真やスクリーンショットを撮影して差し込まなければなりません。マニュアル化したい内容によっては文章での表現が難しく、細かい内容を伝えづらくなる恐れもあります。
マニュアルの作成ポイント
業務マニュアルを作成する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- どこに何が書かれているか検索しやすくする
- 読み手のレベルに合った内容にする
- 視覚的に理解できるようにする
それぞれの作成ポイントについて、以下で詳しく解説します。
ポイント1.どこに何が書かれているか検索しやすくする
マニュアルを作成しても活用されなければ意味がありません。そのため、どこに何が書かれているか検索しやすくし、必要なときに必要なマニュアルにすぐアクセスできる環境を整えておきましょう。
マニュアルをただ大量に作成しても、「マニュアルの数が多すぎて、どんなときにどのマニュアルを見たらいいのか分からない」といった悩みが発生します。「マニュアルのファイル名に検索されそうなキーワードを含める」「マニュアルの保存場所のフォルダ階層をわかりやすく整理する」など、必要としている人が迷わずマニュアルにたどり着けるように工夫が必要です。
ポイント2.読み手のレベルに合った内容にする
マニュアルは読み手のレベルに合った内容にしましょう。読み手にとって難しすぎる内容では理解してもらえませんが、必要以上に丁寧に解説しすぎても内容が増えてしまい読み手の負担になります。
例えば、経費精算や休暇申請のように部署や役職を問わず多くの人が利用するマニュアルは、読み手によって知識レベルはさまざまです。そのため、誰でも理解できるように手順を丁寧に解説しなければなりません。
一方、一定の役職以上の人しか担当しない業務や、特定の業務に関わる人しか使わないシステムについてのマニュアルは、ある程度の業務知識がある前提で用語の解説や細かいステップを省いても問題ないでしょう。
「誰に向けたマニュアルなのか」を意識して、マニュアルの記載レベルを決める必要があります。
ポイント3.視覚的に理解できるようにする
ドキュメントマニュアルの作成時は、視覚的に理解できるよう工夫が必要です。文章だけで説明されても手順をイメージしづらく、一度「わかりにくいマニュアルだ」という印象を与えてしまうと次回から参照してもらえません。「マニュアルを用意したのに、担当者に質問に来る人が後を絶たない」という事態を引き起こし、担当者が対応に追われてほかの業務が滞ってしまう可能性もあります。
必要に応じて写真やスクリーンショットを取り入れ、視覚的に理解しやすいマニュアルを作成しましょう。
業務マニュアルの作成手順
業務マニュアル作成の目的は、いつでも誰でも仕事の全体像を掴めて、業務内容の詳細までを理解できるようにすることです。マニュアルがあれば、新入社員への指導や後任への引き継ぎにおいても正しく業務内容を伝えることができ、業務の属人化を防止できます。
では具体的に業務マニュアルの作成手順を見ていきましょう。作成の流れを把握してから取りかかるとスムーズに作成できます。
ステップ1.マニュアルの範囲・想定読者を決める
まずはどんな内容をどこまでマニュアルに盛り組むのか、大きなカテゴリごとに分類して決めましょう。カテゴリごとにマニュアル化する内容・範囲を選定していきます。
また、どこまでマニュアル化する必要があるのかを考えておくことも大切です。「誰が読むものか?」「どのタイミングの業務で必要か?」「どの業務に関する内容か?」を決めておくことで、どんな業務マニュアルを作成すればよいかの基準を作ることができます。
ここでのポイントは、対象範囲を広げすぎないことです。マニュアルを作成する量が膨大になってしまうと、途中でマニュアル作成が止まってしまい、中途半端なマニュアルしか完成しない可能性があるからです。
まずは狭い業務範囲についてのマニュアルを作成し、作成し終えたら次のマニュアル作成に着手する、というような具合で進められるよう、細かく範囲を区切っておきましょう。
さらに、マニュアルが必要になるターゲットが明確になると同時に、マニュアルが必要になる時期も明らかになります。マニュアル作成に取りかかる前に、スケジュールを決めて、重要な範囲からマニュアル作成に取りかかることも大切です。
ステップ2.マニュアルを作成する
次にマニュアルの作成に着手します。作成中も「誰が」「いつ」「どんな目的で」「どの業務に関わる内容を」「どこで」「どのようにして活用するのか」という「5W1H」を意識して作成していきます。想定読者が読みやすいものを作成しなければマニュアルの意味がありません。
作成するマニュアルは、可能であればフォーマットを決めておくとよいでしょう。フォーマットが統一してあると、マニュアルのクオリティが安定し、読みやすさも向上します。それだけでなく、必要に応じて画像や表を挿入し、誰が見ても理解しやすい内容にしていきましょう。最近は動画を利用して、より作業手順を目で見て理解できるようにするケースも多いです。
マニュアルをまとめる際は、以下のようなポイントを意識してみましょう。
【業務マニュアルをまとめる際のポイント】
- 全体像を俯瞰できること
- 要点がひと目で分かること
- 考え方の軸が示されていること
- 作業手順の目的や理由が記載されていること
- 事例やイレギュラー時の対応を記載されていること
- 仕事の判断基準が示されていること
これらの情報が含まれている業務マニュアルは、誰が見ても同じように再現性高く仕事を行いやすくなります。作業手順だけが書かれたマニュアルがよくありますが、実はこれでは「なぜその手順で実施しなければいけないのか」「例外が発生したときはどう対応すればよいのか」が分かりません。行動の真意が分からなければ人は応用して判断できないので、細かく記載しておくことが大切です。
ステップ3.マニュアルを共有し、更新する
完成したマニュアルは共有しましょう。マニュアルの共有方法には、紙・データ資料・オンライン閲覧などがありますが、セキュリティの観点や更新のしやすさで、自社にあった共有方法を決めておきます。
また、マニュアルを活用している社員から、使い勝手や改善点などのフィードバックをもらいましょう。想定読者はもちろん、マニュアルを必要としていない人にも見てもらうことで、加えておくべき情報など改善のヒントが見つかる可能性があります。
改善点が見つかれば、随時マニュアルの内容を最新情報へと更新していきます。いきなり完璧なマニュアルを作成することは難しいので、マニュアルを活用していく中で気付いた点を追記していき、万全なものに仕上げていきましょう。
業務マニュアルの運用ポイント
業務マニュアルは作成後に共有すれば完成、というわけではありません。作成後のマニュアルを上手く管理し、しっかりと運用に乗せるためには3つのポイントがあります。
ポイント1.マニュアルの保存場所を明確にする
業務マニュアルはいつでもアクセスしやすい場所に保管しておくことが大切です。特にオンライン上にあるマニュアルは、どこに何のマニュアルがあるのかが分からなくなると、社員は一気に活用しなくなります。活用しなくなれば、担当部署への問い合わせが増えてしまい、マニュアルを作成した効果が得られません。社員が迷わずたどり着くことができるような場所にマニュアルを展開し、いつでも閲覧・検索・活用できるようにしておきましょう。
社員全員がアクセスする「社内ポータル」を既に構築・運用している企業であれば、社内ポータルの適切な箇所にマニュアルを配置しておくことが必要です。また、社内ポータルを未構築の企業であれば、そもそもマニュアルを展開する場所が必要になります。メールやチャットツールで共有したあとは、決められたファイルに保管して誰もが閲覧できる状態になっているか確認してみてください。
ポイント2.業務マニュアルの運用担当者を決める
業務マニュアルをうまく活用するには、管理者や運用担当者の存在が大切です。マニュアルには最新情報が記載されていることが重要ですが、運用担当者が不在の場合「誰かが更新してくれるだろう」という考えを社員全員が持ってしまい、なかなかアップデートできません。
責任を持って担当範囲の業務マニュアルを整理したり更新したりする運用担当者を決めておくことで、マニュアルがどこかに紛失してしまったり、古い情報のまま活用され続けてしまったりすることを避けられるようになります。
ポイント3.マニュアルを定期的にメンテナンス(更新)する
最も重要だと言われているのが、コンテンツのこまめな更新です。業務マニュアルを作成する目的は、いつでも誰でも仕事の全体像を掴めて、業務内容の詳細までを理解できるようにすることにあります。それにも関わらず、参照するマニュアルが更新されておらず古い内容のままであれば、結局業務が進まず非効率になったり、担当部署への問い合わせが増えてしまったりします。
メンテナンス・更新のタイミングは、マニュアルごとに決めておくか、運用担当者ごとにルールを設けておきましょう。たとえば、誰もが更新できるようにしてもよいマニュアルと、代表である運用担当者が更新しなければならないマニュアルがあると思います。それぞれ業務マニュアルの内容にあわせて更新ルールを決めることをおすすめします。
動画マニュアルの作成ツール
業務マニュアルを作成するには、専用のツールを用います。動画マニュアル作成ツールを活用すると、マニュアルの作成だけでなく共有もできます。ここでは、動画マニュアルの作成・共有におすすめのツールを紹介します。
Qumu
Qumuは、企業内で使用する動画を簡単に作成・配信できるサービスです。グループ単位での視聴・作成権限などセキュリティ設定ができます。すでに社内ポータルを持っている場合は、動画プレイヤー/プレイリストの埋め込み機能を活用すれば、簡単に掲載可能です。社内ポータルがない場合は、視聴者ポータル機能を活用し簡単に閲覧できる状態を作ることができます。
■Qumuの特徴
- 簡単に効率よくビデオを探し視聴できる
- 直感的な動画作成、最適な動画配信が可能
- 視聴解析やレポーティング、音声検索もできる
- ネットワークの負荷を抑え、大規模な動画配信が可能
- 画面のキャプチャを編集してマニュアル化できる
ドキュメントマニュアルの作成ツール
ドキュメントマニュアルの作成には、WordやPowerPointを活用している企業が多いでしょう。これらをすでに使用している企業では、新たにツールを導入しなくてもすぐにマニュアル作成を始められます。作成したマニュアルは、社内ポータルやファイルサーバーなど、オンラインでいつでも参照できる場所に保存しておきましょう。
Googleドキュメントも、文章形式のマニュアルの作成に活用できます。オンラインで複数ユーザーでの同時編集ができるため、複数人で業務マニュアルを作り上げるときに便利です。インターネットでアクセスするものですが、許可された人以外は編集できない設定ができるため、セキュリティ性も高いでしょう。
そのほか、テンプレートに沿って簡単にマニュアルを作成できるなど、マニュアル作成に特化した専用ツールも提供されているので、必要に応じて活用を検討してみてください。
参考:「Learning box 【マニュアルの作り方】手順・ポイント・必須ツールを徹底解説」
まとめ|必要な範囲をマニュアル化して業務効率化へ
業務マニュアルの作成は、時間も手間もかかり面倒に感じてしまうこともあるかもしれませんが、完成してアップデートしていけば、問い合わせ対応や研修の工数を減らすことに繋がります。
一度にすべての業務をマニュアル化しようとせず、必要とされる重要な範囲から少しずつ着手していきましょう。
また最近は動画で作業手順を共有するマニュアルも増えています。簡単に動画を作成できるツールもあるので検討してみてください。