ビジネスにおけるエンゲージメントとは?エンゲージメント向上のポイントを解説

アイドルやお笑い芸人、キャラクターなどを商材とするエンターテイメント業界の企業においては、ファンとの繋がりをしっかりと意識しておくことが大切です。自社とファンとの繋がりや関係性を「エンゲージメント」といい、より深い関係性を築くことを「エンゲージメントを向上させる」と表現します。

ファンが自社の商材に対して愛着を持ってもらえるほど、「グッズを買いたい」「ライブに行きたい」などの感情が生まれやすくなるため、エンゲージメントの向上は企業の業績アップにつながります。そのため、エンターテイメント事業に携わる企業は、エンゲージメントを意識してビジネスに取り組むことが大切です。

本記事では、ビジネスにおけるエンゲージメントについて解説します。エンゲージメントの種類や注目されている理由、エンゲージメントを向上させるための施策を紹介しているので、エンゲージメントについて詳しく知りたい方や自社のエンゲージメント獲得に課題を感じている方は、ぜひチェックしてみてください。

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エンゲージメントとは

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)は、「婚約」「誓約」「言質」「契約」「約束」といった意味の英単語です。利用シーンに応じてさまざまな意味で使われる単語ですが、基本的に「深く関わりのある関係性」を示しています。

ビジネスの場におけるエンゲージメントは、企業と顧客、もしくは企業と従業員の関係性を表します。詳しくは次項で解説しますが、顧客と良好な関係を築くことができれば業績アップが見込め、従業員との間に信頼関係があれば離職率の低下や生産性の向上につながります。そのため、企業にとって顧客・従業員のどちらに関してもエンゲージメント向上を目指すことが重要です。

ビジネスにおけるエンゲージメントの種類

先ほど紹介したとおり、ビジネスの場では「企業と従業員」「企業と顧客」の大きく2種類のエンゲージメントが使われます。また、企業と顧客のエンゲージメントは、「ファンエンゲージメント」と「SNSエンゲージメント」に分けられます。

ここでは、従業員エンゲージメント・ファンエンゲージメント・SNSエンゲージメントの3種類について詳しくみていきましょう。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントは企業と従業員の間にある信頼関係のことで、多くの従業員が「会社に貢献したい」という気持ちを持っている状態を「従業員エンゲージメントが高い」と表現します。

愛着のある企業を積極的に離れたいと思う人は少ないでしょう。やむを得ない事情がない限り離職や転職を選ぶ可能性は低くなるため、従業員エンゲージメントを向上させると離職率を抑えられます。実際に、「エンゲージメントが高くなるほど離職率が低い傾向にある」という結果が出ている調査もあります。

また、従業員が会社に対して愛着を持っていると、「貢献したい」という気持ちからモチベーションが上がって仕事に対して積極的に取り組むようになります。仕事に消極的な人よりも、モチベーションが高く積極的な人のほうが高い成果を生みやすいのは自然なことでしょう。そのため、エンゲージメントの高い企業では、生産性の向上も期待できます。

厚生労働省の調査でも「働きがいのある企業ほど労働生産性が高い傾向にある」という結果が出ており、従業員エンゲージメントの高い人が多いほど生産性が高くなるといえます。このように、従業員エンゲージメントの向上は、離職者を減らし、企業が安定して成長していくうえで欠かせない要素です。

従業員エンゲージメントが高いとよりよい仕事をする社員が増え、エンターテイメント業界の企業では接客やサービスの質の向上も期待できます。例えば、イベント時のスタッフの対応が良かったり、魅力的な新しいサービスがリリースされたりすると、顧客にとって企業への印象が良くなります。このように、従業員エンゲージメントを高めると、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

ファンエンゲージメント

ファンエンゲージメントは、企業と顧客との間のつながりや深い関係性のことです。エンターテイメント業界では、スポーツ選手やアイドル、キャラクターといった商材に対して、ファンが抱く「応援したい」「グッズを買いたい」など、応援する対象への愛着の強さを表します。

近年では応援する対象を「推し」と呼び、イベントに行ったりグッズを購入したりする「推し活」が注目されています。中高生の4人に1人が「推し活に月1万円以上使う」と回答しているアンケート調査や「20〜50代女性の5人に1人が推し活をしている」とする調査結果も出ており、推し活の注目度の高さがうかがえます。

推しに対する愛着を強く持ってもらえるよう働きかければ、推し活に積極的になる人は増えるでしょう。そのため、ファンエンゲージメントの高さはイベントの動員やグッズの売上など、企業の業績に直結します。

このように推し活が活発化しているなかでビジネスの成果を出すためには、より多くの人に自社の商材を「推したい」と思ってもらうよう、ファンエンゲージメントを高めることが大切です。

SNSエンゲージメント

日本のSNS普及率は82%と、今やほとんどの人がSNSを活用している状況です(参考:ICT総研「2020年度SNS利用動向に関する調査」)。SNSでの発信を強化していけば、多くの顧客に情報を伝えられるようになり、顧客や潜在顧客とのエンゲージメント向上につながります。

約6割の女性が「SNSがきっかけで商品を購入したことがある」と回答しているアンケート調査もあり、SNSは顧客との重要な接点の1つとなっています。

SNSにおけるエンゲージメントの強さは、SNSの投稿に対する反応(いいね、クリック、シェアなど)で把握可能です。投稿を見た人の数に対して、どの程度の反応があったのかを示す数値を「エンゲージメント率」といい、SNSマーケティングを進めるうえで重要な指標となります。

基本的にエンゲージメント率の高い投稿ほどユーザーが興味関心を持っていると考えられ、ファンの獲得や商品の購入などに繋がりやすいでしょう。

もし、フォロワー数が増えたとしても、エンゲージメント率が低く反応がなければエンゲージメントが高まっているとは言えません。SNSを効果的に使えているのかどうか確認するときはエンゲージメント率までチェックしましょう。

ただし、批判などネガティブな理由で投稿が拡散される、いわゆる「炎上」の場合もエンゲージメント率は高くなります。そのため、「エンゲージメント率は高いほうが良い」というケースばかりではない点には注意してください。SNSのエンゲージメント率を測るときは、単純な数値だけでなくユーザーの感情にも注目することが大切です。

エンゲージメントが注目されている理由

エンゲージメントが注目されている理由

従業員や顧客とのエンゲージメントが注目されているのは、大きく以下の2つの要因があるためです。

  • 企業と従業員の関係性の変化
  • 推し活やSNSの流行

ここでは、各分野でエンゲージメントが注目されている理由について解説します。

企業と従業員の関係性の変化

職務内容に応じて必要な人材を採用する「ジョブ型雇用」を導入する企業が登場するなど、従来の終身雇用が当たり前ではなくなりつつあります。

転職サービスを運営するマイナビの調査では2021年の正社員の転職率が7.03%と過去6年間で最も高くなるなど、転職を考える人の数は増えています。36%の人が退職理由に「やりがい・達成感を感じない」と回答している調査結果もあり、給与面だけではなく働く意味や達成感に重きを置く人も多いことが分かります。

エンゲージメントが低く従業員とのつながりが弱い企業では、従業員はやりがいを感じにくくなるため、離職率が上がってしまうことが懸念されるでしょう。

先ほど紹介したとおり、従業員エンゲージメントが高いほど離職率は下がる傾向にあるため、優秀な人材の流出を防ぐための施策としてエンゲージメントの向上が注目されています。国内の従業員エンゲージメント診断の市場規模が、2021年に前年比123.6%になったと推計される調査結果もあり、自社の従業員エンゲージメントを把握したいと考える企業が増えていることがうかがえます。

推し活やSNSの流行

ファンエンゲージメントやSNSエンゲージメントが注目されているのは、推し活やSNSの流行が背景にあります。先ほど紹介したとおり、推し活の流行でファンとのつながりの深さが企業の業績に直結する時代になっていて、安定した経営のためにはファンエンゲージメントは無視できません。

日本ではインターネットユーザーの8割以上が何らかのSNSを利用しているという調査結果があり、その普及率の高さに応じてSNSエンゲージメントに対する注目度も高まっています。一般アカウントでも簡単にSNSエンゲージメントが確認できて、誰でもSNSで反応をもらうための工夫ができるため、企業・個人問わずエンゲージメント率を日々チェックしている人も多いでしょう。

SNS上で影響力のあるインフルエンサーが多く登場し、エンゲージメント率の高いインフルエンサーをマーケティングに起用する企業も少なくありません。インフルエンサーマーケティングの市場規模が年々拡大していくという予測もあり、今後もSNSエンゲージメントやインフルエンサーへの注目度が高まっていくと予想できます。

エンゲージメント獲得のための施策

ここからは、実際にエンゲージメントを獲得するための施策についてみていきましょう。

従業員エンゲージメント・ファンエンゲージメント・SNSエンゲージメントのそれぞれについて、エンゲージメントを向上させる方法を紹介します。

従業員エンゲージメントの場合

人材教育事業を展開するPHP研究所は、従業員エンゲージメントを高める方法として以下の6つの施策を挙げています。

  1. 企業理念やビジョンを従業員に示す
  2. 従業員の成長を支援する環境を整える
  3. 従業員が挑戦できる機会を与える
  4. 仕事に従事しやすい職場環境を整える
  5. 従業員に対する適切な人事評価を実施する
  6. 職場の人間関係を活性化させる

引用:従業員エンゲージメントの高め方 おすすめの方法6選

理念やビジョンに共感できない企業に愛着を持つ人は少ないため、従業員から共感される企業になる必要があります。そのためには、まず企業理念やビジョンを従業員に示し、自社がどのような考えを持っているのか従業員に理解してもらわなければなりません。

成長や挑戦できる機会を作ると、従業員が働きがいを感じられるようになり、「これからもこの会社で働きたい」という気持ちが芽生えるでしょう。また、仕事内容に不満がなかったとしても、職場環境や人間関係がストレスになると従業員の不満につながるため、仕事しやすい環境整備や人間関係の活性化も重要です。

人事評価についても同様で、「努力しても評価されない」「評価基準が不明確」と感じる職場はエンゲージメントが低下します。人事評価の基準を明確にし、従業員が納得できる評価制度を整えましょう。

ファンエンゲージメントの場合

ファンエンゲージメント獲得のための施策にはさまざまなものがありますが、今回はイベントに絞って解説します。対面イベントとオンラインイベントの特徴を紹介します。

対面イベント

対面イベントの大きなメリットは、実際にファンと会えることです。対面イベントに足を運んで、「実際に会うとファンになってしまった」「前よりも好きになった」といった経験がある人もいるのではないでしょうか。新しいファンの獲得やファンエンゲージメントの向上には、対面イベントは大きな効果が期待できます。

また、実際のパフォーマンスを見ることで画面越しよりリアルに存在を感じられ、さらに「推したい」という気持ちが生まれるケースもあります。

対面イベントのデメリットは、会場を用意するためのコストや安全性や感染症対策に関する懸念です。

オンラインイベントは自宅や会社の会議室などからも配信可能ですが、対面イベントはイベント会場を借りるための費用がかかります。ほかにもスタッフの人件費やイベントの広告宣伝費など、各種コストが必要です。

不特定多数の人が訪れるイベントでは、安全性への配慮も行わなければなりません。2014年には、アイドルの握手会でメンバーがイベント参加者に刃物で切りつけられる事件が発生しました。持ち物チェックや警備員の配置など、安全にイベントを開催するための対策が求められます。

対面イベントは人が集まるため、アルコール消毒の導入やマスク着用のお願いをするなど、感染症対策も必要です。感染症が流行するとイベント自体ができなくなる恐れもあります。

オンラインイベント

オンラインイベントのメリットは、世界中の人にイベントに参加してもらえることです。インターネットと端末があればどこからでもアクセスでき、居住地に関わらずイベントに参加できます。また、イベント終了後もイベントの様子を配信しておけば、当日は都合が悪く参加できなかった人や時差のある海外に住んでいる人も参加可能です。

対面イベントと比べて、会場にかかるコストを抑えられる点も大きなメリットでしょう。イベントの内容によっては自宅や会議室からでも配信可能です。

ただし、オンラインイベントは対面に比べどうしても臨場感は減少します。実際に交流できる対面イベントよりも、満足度や感動、実際に会えた衝撃は下がってしまうでしょう。

また、オンラインイベントは、通信環境の影響を大きく受けます。配信側の通信環境が整っていないと、映像や音声が途切れがちになったり、配信途中で通信が切れてイベントが中断されたりする恐れがあります。こういったことが起こると返金対応が必要になる可能性もあり、安定した通信環境は必須です。

通信環境に関しては、自社だけではなく視聴する側の人も関わってきます。自宅の通信環境が整っていない人などもいるため、「オンラインイベントなら誰でも見られる」というわけではありません。

SNSエンゲージメントの場合

SNSエンゲージメントを増やすためには、以下の5つを意識してみてください。

  • ペルソナを設定する
  • 積極的にコミュニケーションをとる
  • 投稿日時を意識する
  • ハッシュタグを活用する
  • 過去の投稿を分析する

それぞれ意識すべきポイントを、以下で解説します。

ペルソナを設定する

まずは、どのような人に投稿を見てもらいたいのかペルソナを設定しましょう。ペルソナとは、商品やサービスのターゲット像を具体的な一人の人物に落とし込んだものです。ペルソナに届けるつもりで投稿することで、ペルソナに近い属性のユーザーにより響く内容になります。

積極的にコミュニケーションをとる

SNSはユーザーと手軽にコミュニケーションが取れる点が特徴です。投稿に反応があったら、こちらからもいいねやコメントなど積極的にリアクションを返しましょう。推しから反応があると、ファンは嬉しいものです。距離が近く感じられるとより関係性が深まり、ファンエンゲージメントの向上につながります。

投稿日時を意識する

SNSの利用が多い時間帯に投稿することもポイントです。ターゲット層にもよりますが、通勤・通学やお昼休み、帰宅から就寝までの時間帯に投稿すると、多くの人に投稿を見てもらえます。複数の曜日や時間帯に投稿し、より多くのエンゲージメントを得られるタイミングを探ってみましょう。

ハッシュタグを活用する

SNSエンゲージメントの向上には、ハッシュタグの使い方も重要です。ただ投稿内容に関連した文言をハッシュタグとして付けるのではなく、ペルソナがどのようなハッシュタグで検索するのか意識して投稿してください。

ハッシュタグを付けても、そのハッシュタグで検索する人が少ないとエンゲージメント率は上がらないため、投稿前にどのようなハッシュタグがよく使われているのか調査しておきましょう。

過去の投稿を分析する

各投稿のエンゲージメントを確認し、過去の投稿を分析してみてください。例えば、エンゲージメント率が高かった投稿を洗い出し、投稿内容・投稿日時・ハッシュタグなどに共通点がないか探してみましょう。その共通点が見つかれば、次の投稿に活かせます。投稿と分析を繰り返し、エンゲージメント率が上がるポイントを見極めましょう。

まとめ

エンゲージメントには「誓約」「契約」といった意味があり、ビジネスの場では「企業と顧客」「企業と従業員」の関係性の深さを表す指標として使われます。エンゲージメントの高さは企業の業績に影響を与える要素のため、従業員エンゲージメントやファンエンゲージメント、SNSエンゲージメントを高めるための施策が求められます。

エンゲージメントを高めるには、従業員や顧客の視点を意識することが大切です。本記事で紹介した内容を参考に、エンゲージメントの向上を目指してください。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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