クラウドPBXとは
PBX(Private Branch Exchange)とは、企業で使用する電話システムのことです。簡単に言うと、内線・外線・転送といった通話網を管理するための機械を指します。従来のPBXはオフィスに物理的な設備として設置され、専用の配線を通じて各固定電話に接続していました。
クラウドPBXは、PBXの機能をインターネット回線で実現するサービスです。物理的な機械や有線での接続を必要とせず、インターネット上のサーバーで電話システムを運用できます。
クラウドPBXの主な強みは、コスト削減やリモートアクセスの実現、スケーラビリティです。インターネット回線があれば利用できるクラウドPBXは、導入や維持・管理にかかるコストの削減につながります。
また、どこからでもオフィスの電話機能を使えるため、リモートワークや外出先での業務もスムーズです。さらに、物理的な制約がない分、ユーザー数の追加が容易で、ビジネスの成長にも合わせやすいでしょう。
株式会社グローバルインフォメーションが実施した、クラウドPBXに関する市場調査では、米国における2020~2030年の年平均成長率は14%と予測されています。2030年末の市場規模は683億ドル(2024年現在の為替レートで約10兆6000億円)まで急成長するとの見方もあり、日本にも影響を与えそうです。
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クラウドPBXの導入の流れ
クラウドPBXを導入するまでには、いくつかのステップが必要です。ここからは、クラウドPBXの導入の流れについて解説します。
利用サービスの選定
クラウドPBXサービスは複数の事業者が提供しており、それぞれ異なる特徴や料金プランで展開しています。そのため、企業のニーズに最も合ったサービスを選ぶことが大切です。
クラウドPBXの利用サービス選定の際は、次のような点を意識するとよいでしょう。
1. サービスプロバイダーの信頼性
サービスを提供している企業の信頼性は、長期にわたる安定した通話網を確保する上で重要度が高いといえます。実績や評判などを基に、企業としての信頼性を調べることをおすすめします。
2. サポートの質
クラウドPBXを導入した後も、問題発生時やわからないことがあった際は、迅速かつ適切なサポートが必要です。どのようなサポート体制であれば安心して利用できるか検討しましょう。
3. 提供される機能
クラウドPBXのサービスプロバイダーが提供する機能には、それぞれ違いがあります。例えば、録音機能や通話分析、Web会議システムとの連携などさまざまです。選定の際は、自社の業務に必要な機能が含まれているかを確認しましょう。
4. 価格設定
クラウドPBXの導入には、「初期費用」「月額料金」「オプション料金」「通話料」などがかかります。ユーザー数の増減による価格変動も含めたトータルコストを見積り、予算に合ったサービスを選ぶことが大切です。
5.ユーザービリティ
クラウドPBXの導入がスムーズにいくかどうかは、システムの使いやすさも鍵となります。例えば、管理画面が直感的に使えるか、設定や運用が簡単にできるかなどを確認しておきましょう。
ライセンス・端末数の確定
クラウドPBXを導入する際は、どのくらいの数のライセンスと端末が必要かを決める必要があります。ライセンスとは、クラウドPBXを使う権利のことです。
クラウドPBXは「スマートフォン」「タブレット」「パソコン」「固定IP電話」で利用できます。それぞれ何台の端末でライセンスを取得すべきかを検討しましょう。
また、ライセンスの種類によって、利用できる電話番号が異なる場合もあるため、電話番号をどうするかも決めることが必要です。クラウドPBXの電話番号では、次の3つの選択肢があります。
1. 050番号を取得する
インターネット専用の番号で、コストを抑えやすいのが特徴です。
2. 0ABJ番号を取得する
「03」などで始まる従来の番号です。ビジネス上の信頼度が高いのがメリットです。
3. 既存番号を引き継ぐ
現在使用している0ABJ番号を、そのままクラウドPBXに移行する方法です。
既存の電話番号を引き継ぐ番号ポータビリティは、顧客や取引先に新しい番号を知らせる手間を省けるため、利便性が高いでしょう。
ただし、クラウドPBXサービスの提供事業者によっては対応していないところもあるので、番号ポータビリティを希望する場合は、事前に実現可能かを確認することが大切です。
端末の用意
クラウドPBXを導入する際は、実際の通話に使用する端末を用意する必要があります。例えば、外回りの多い社員はスマートフォン、テレワーク中の社員はパソコンやタブレット、内勤の社員はパソコンや固定電話といった具合に、必要な台数をそろえましょう。
パソコンでクラウドPBXを使用する場合は、ハンズフリーでの会話が可能となるヘッドセットもあると便利です。USB接続やBluetooth接続のものがあるので、用途に応じて検討してみてください。
なお、クラウドPBXに対応できる固定電話機はIP電話(インターネット回線で使う電話機)です。現在使用している固定電話が従来のアナログ電話回線によるものの場合、クラウドPBXを導入するには別途「VoIPアダプター」という機器が必要になります。
クラウドPBXの提供事業者によって推奨機器があるケースもあるので、事前に相談するのがおすすめです。既存のインターネット回線やWi-Fi環境がクラウドPBXに流用できるかどうかと併せて、確認しましょう。
サービス申し込み
クラウドPBXを利用するには、サービス提供事業者との契約が必要です。まずは、初期費用やユーザー数に応じた料金プランをよく検討し、見積りを取りましょう。
見積りの段階では、次のようなポイントも一緒に確認することが大切です。
- 契約期間や条件
- 無料トライアル期間の有無
- 番号ポータビリティの場合の手続き方法
- 導入までにかかる日数
- 初期設定時の準備事項
提供事業者によっては、契約更新費用や解約手数料、トレーニング費用などの隠れたコストが発生する可能性があるため、見積りの全体像はよく把握しましょう。無料トライアル期間がある場合は、実際の利用イメージを確かめるのに活用するのがおすすめです。
また、既存の番号をクラウドPBXに引き継ぐ場合、提供事業者に番号の使用可否の確認や申請書作成をしてもらいます。回線の切り替わるタイミングや切り替え作業については、事前に確認しておくと安心です。
電話システムは業務の遂行に重要な役割を果たすため、導入までにかかる日数や初期設定の準備事項もチェックし、スムーズな移行を実現しましょう。
端末のセットアップ
契約が完了し、クラウドPBXを利用できる環境が整ったら、まずは初期設定をします。
設定ガイドなどに沿って、提供事業者から共有されるアカウント情報やログイン情報の登録と、外線の受発信、内線、オプション機能の設定をしていきましょう。初期設定は担当者が来社してセットアップを行ってくれる場合もあるので、どのように進めるか事前に確認します。
初期設定ができたら、端末ごとのセットアップを行います。スマートフォン、タブレット、パソコンの場合は、クラウドPBXの専用アプリをインストールすれば使用可能です。固定電話の場合は、利用環境によってVoIPアダプターの設置と回線の接続が必要となります。
初期設定と端末のセットアップまで済んだら、最後に通話テストをしましょう。各端末で発着信を試し、問題がなく通話ができることが確認できたら完了です。
既存回線の解約・PBXの撤去
クラウドPBXの稼働後は従来の電話システムを使わなくなるため、不要な契約や機器を整理します。例えば、既存の電話回線は解約対象の代表例です。ただし、番号ポータビリティの場合はクラウドPBXへの移行時に解約手続きも並行して進めるので、提供事業者への確認が必要です。
また、クラウドPBXの導入に伴ってインターネット回線を新たなプロバイダー契約とした場合、旧プロバイダーの契約も解約しましょう。
撤去するものとしては既存のPBX、電話機器、ケーブルや配線があります。クラウドPBXはインターネット回線を活用するため、既存の物理的なPBXは不要です。また、クラウドPBXへの移行によって使わなくなる固定電話や配線類も片づけましょう。
なお、リース契約で使っていたものがある場合は、リース契約の解約と機器の返却が必要です。
まとめ
クラウドPBXの導入は企業の通信環境を大きく改善し、業務効率を高めるための有力な手段です。クラウドPBXの提供事業者は複数あるので、その信頼性や提供機能、料金プランなどを慎重に比較検討することをおすすめします。
システムの導入までには、いくつかの手続きや作業が必要となるため、サポートがしっかりしているところが安心です。今回解説した内容を参考に、クラウドPBXへスムーズに移行できるようにしておきましょう。
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