少子化が進み、生産年齢人口(15~64歳)が減少している日本では、今や国と企業が総出で働き方改革を推進しています。そして、その中での大きな軸の一つが女性の活躍推進です。

 

現状では、女性が結婚や出産をした後も無理なく仕事を続けていくことができる職場はまだ少ないと言えます。それでも、いわば人手不足という外圧が一つのきっかけとなり、企業がスタンスを柔軟にしつつあることは、仕事に意欲を持つ女性にとって期待できる動きだと言えるでしょう。

 

女性が企業で安心して働いていくためには、給与だけでなく、働きやすさや福利厚生が大切です。本記事では、女性が活躍できる職場づくりに必要な福利厚生の在り方について解説していきます。

女性の活躍は「企業業績に影響がある」

まず、近年はなぜこんなにも女性活躍推進が叫ばれているのでしょうか? 意外に少子化の影響だけとも言えないデータがあります。

 

転職サイトを運営するエン・ジャパン株式会社が人事担当者向けに行った「企業の女性活躍推進実態調査2016」によると半数以上の企業が「女性の活躍・定着への取り組みは企業業績に好影響」と回答しています(図4)。

 

【図4】女性社員の活躍・定着への取り組みは、企業業績を高めることに影響があると思いますか?

 

女性の活躍と企業業績の関係出典:企業の女性活躍推進実態調査2016 - エン・ジャパン株式会社

 

その理由として、『女性ならではの正確性や責任感』『柔らかさ、きめ細やかさ』『後輩女性社員への影響』『女性ならではの発想』『女性のほうが能動的』などがあげられています。

 

いろいろな個性の女性が企業で活躍しており、その理由も多様であることがリアルにうかがえます。今や企業において女性は貴重な戦力であり、生産性も高いと認められており、後輩にも良い影響を与えるロールモデルになることを期待されています。

 

企業業績を左右する優秀な人材の離職がもたらす影響

しかし、そのような優秀な女性が結婚や出産、介護などを機に離職するケースは少なくありません。特に、出産を機に離職する人は多数を占めます。内閣府の調査によると、女性が正社員として働く率は、結婚前が64.2%、結婚後は43.6%、第1子出産後は19.8%にまで低下します。

 

優秀な女性であっても長期で勤めているとはいいがたく、同調査によると10年前に採用された総合職の離職率は、女性は男性の2倍以上の65.1%にも上り、10年前に採用された女性総合職が全員離職している企業が48.9%に上ります(ライフイベントによる女性の就業形態の変化(平成23年)- 内閣府)

 

企業においては人材と仕事とのミスマッチはある程度の確率で起きるので、退職者が出ることは致し方ありません。しかし、優秀な人材が退職すると、やはり周りへの影響力は大きいと言えます。

 

離職の理由がより優良な企業への転職であれば、追随する社員が出てくる可能性がありますし、ロールモデルとしていた女性がいなくなることで後輩の女性が手探りで社内のキャリアを構築しなければならなくなることもありえます。

 

女性に安心して働いてもらうには?

優秀な女性に安心して働いてもらうには、女性のライフイベントの影響によっておこる働き方の変化に合わせたシフトを企業側がとっていく必要があると言えるでしょう。

 

女性が、出産や介護を機に退職するのは、仕事とプライベートの両立が肉体的にハードだという理由もありますが、自分のことで同僚に迷惑をかけたくないという意識が働くケースも少なくありません。

 

子供の急な病気による早退や欠勤、周りより一足早く帰るときの気まずさなど、周囲の理解がないとやはり気を遣うものです。それゆえに女性は仕事選びに際し「働きやすさ」を真剣にチェックするのです。

 

女性が安心して働けるようになるには、育児休暇、介護による休暇、在宅ワーク、時短勤務などが気兼ねなくできるような制度や職場風土を創り上げることが必要です。そのためには、ハード面、ソフト面の環境整備が大切なのです。

 

幸いなことに、今の時代は通信インフラネットワークが整備され、多くの仕事が時間や場所を選ばずにできるようになりました。IoT、RPA、AIなども登場しており、ハード面の環境設備がしやすい時代なため、真剣に取り組めば、女性だけでなく全従業員にとって働きやすい環境が提供できる時代だと言えるでしょう。

これまで多くの女性が求めてきた福利厚生

エン・ジャパン株式会社が、正社員で働くことを希望する女性向け求人情報サイト「[en]ウィメンズワーク」上で、サイト利用者女性819名を対象に「福利厚生」についてアンケートを行った結果では、女性が「あるといい福利厚生」と思っている福利厚生の1位が「健康診断・人間ドック補助です。

 

2位が「寮・社宅/住宅手当・家賃補助」、3位が「育児休暇・短時間勤務制度」という結果が出ています。ちなみに、なくてもいい福利厚生の第1位は「社員旅行」です。

 

そして、正社員への転職を希望する女性の28%が仕事探しに際し、福利厚生を「非常に重視する」、55%が「まあまあ重視する」と回答しています。理由には「働きやすさの目安になる」という回答もあり、女性にとって福利厚生が、企業の姿勢や企業体力を表す一つの指標であることをうかがわせます。

 

人気の福利厚生1:健康診断・人間ドック補助

第1位の回答は「健康診断・人間ドック補助」であり、64%の女性が支持しています。若い20代の世代でも53%、30代は65%、40代は79%が必要な福利厚生と認識していることから、女性の健康についての意識の高さがうかがえます。

 

人気の福利厚生2:寮・社宅/住宅手当・家賃補助

第2位が「寮・社宅/住宅手当・家賃補助」であり、20代が54%、30代、40代がそれぞれ44%の女性から支持されています。住居費用が高い日本において、家賃補助や寮の完備は可処分所得の増加を意味しますので当然と言えば当然です。

 

人気の福利厚生3:育児休暇・短時間勤務制度

第3位が「育児休暇・短時間勤務制度」。これは、対象の年齢が限定されることもあってかトップにはきていませんが、20代の女性の50%が求めています。見方を変えれば、出産後も継続して働きたい女性の意欲の表れだと言えます。

女性活躍に取り組む企業が今後考えるべきこと

近年はまさしく、「働き方」の過渡期にあると言えるでしょう。テクノロジーの発展により、インターネット環境さえあれば、地球上どこでも仕事ができる時代です。この新しい時代には、女性が望む福利厚生もまた変化していくことが考えられます。

 

なぜなら、時間・場所にしばられずに働くことができる環境は、働く女性のこれまでの悩みをかなり解決できるからです。多くの女性が出産後、退職したり仕事をセーブしたりするのは、もちろん子供にプライオリティを置いているからです。とはいえ、決して多くの女性が仕事を手放したかったわけではありません。

 

厚生労働省のデータを見ると、近年は出産後も働いている女性はなんと7割を超えています。

 

年齢別階級に見た母の仕事出典:平成29年「国民生活基礎調査の概況4 児童のいる世帯の状況 図7」

 

何らかのかたちで仕事を続けたい女性がむしろ多数派なのです。「もし育児休暇がとれたら…」「時短勤務ができたら…」、「在宅ワークが可能なら…」、子供にも寂しい思いをさせず、より自分の能力も発揮し、肉体的に過度な負担をしなくても働けるのにと考えている女性は、決して少なくないでしょう。

 

時短勤務・テレワークなどの勤務形態の多様化

女性の活躍に前向きな企業は、すでに女性が望むことをよく理解していることがうかがえます。前述のエン・ジャパン株式会社が企業の人事担当者に対して行った「女性活躍推進実態調査2016」において、「女性活躍に取り組んでいる」と回答した企業は従業員301名以上の企業の83%、300名以下の企業で45%に上ります。

 

そして、積極的に女性活躍推進に取り組んでいる企業が具体的に取り組んでいる内容については上位に「出産・育児をサポートする福利厚生の充実」、「時短勤務・テレワークなどの勤務形態の多様化」が上がっています。

 

しかし、これはあくまで動きの速い企業の例です。実際のテレワーク導入率については、IDC Japanが行った調査によると、2017年時点では、中堅中小企業4.7%、大企業23.6%、全体で4.7%です。

 

東京都が都の調査でも、テレワークを導入済と回答した企業は6.8%に過ぎません。

 

時代の変化に対応し、女性が望む福利厚生を提供しようとしている意の企業は増えつつあるものの、多くの企業は、実行はこれからという段階のようです。

 

テレワーク、在宅ワーク導入時の注意点

実際、言葉で言うのは簡単ですが「いつでもどこでも働ける」というようなフレキシブルな勤務形態を導入するには、社内の制度を変更する必要があり時間がかかります。当面はトライアンドエラーを繰り返しながら進んでいくことになるでしょう。

 

留意しなくてはならないのは、一般の住宅とは、そもそも働く場を想定して設計されていないという点です。むしろくつろげることを目的として壁紙の色や間取りその他を建築のプロが設計しています。

 

色彩心理学の分野で研究結果が出ていますが、人間は環境の色によって筋肉の弛緩率が変わります。日本人が和室に入るとほっとするのは肌の色と同系統の色合いの空間にいるため筋肉がゆるむからだと言われます。自宅で仕事をする場合、デスク周りだけでも仕事に適した環境に整える必要があるでしょう。

 

また、意外に社員の側も想定していない点が在宅ワーク時の光熱費です。8時間、自宅で仕事をすると当然、冷暖房費は高騰します。細かいことですが、実際に働いてみないとわからないことがいろいろ出てくるはずですので、当面は従業員のフィードバックをもらいながら、自社に適した在宅ワークのスタイルを模索していくことになるでしょう。

 

近年は、全国にサテライトオフィス用のシェアオフィスが増えつつありますので、有効活用することも検討すると効率的かもしれません。働き方改革の先を行くフランスでは、2018年1月以降、法律で「テレワークで働く」ことを従業員の「権利」としています。また、各地にコワーキングスペースが増えるなど働きやすい環境が整っているため、先行事例として参考になります。

 

テレワークにはある程度の投資は必要ですが、安価なクラウドシステムなどを有効活用することで、移動コストや時間コストを考慮すると長期的にはコストが削減し、生産性が向上することが期待できます。

時代にあった女性のニーズを支援する多様な働き方の実現

女性活躍に取り組む企業が検討しており、女性が求める福利厚生の双方に当てはまるのが、育児サポート、時短勤務だと言えます。幸い、時間や場所にとらわれないで仕事ができる時代になった今、企業は積極的に子育てしやすい環境の整備をすることが大切です。女性の活躍推進をはじめ働き方改革を推進していくには、インフラ設備や人事制度などのハード面と、従業員の意識などのソフト面の、両方を変えていく必要があります。