まずは1on1からはじめよう!テレワークでエンゲージメントを高める方法を紹介!

テレワークを導入する企業が急激に増える中で、導入以前と比べて「従業員のエンゲージメント」が低下することを危惧・実感する声が増えています。本記事では、経営陣も従業員も全員がオフィス以外で働くことがニューノーマルとして定着するなかで、どのようにすればエンゲージメントを維持、向上させられるのかを解説します。

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エンゲージメントとは

エンゲージメントが高い社員のイメージ画像

まずはじめに、エンゲージメントという言葉の意味や混同しやすい類義語との違いを解説します。

エンゲージメントの意味

「エンゲージメント」という言葉は、人事や組織開発の分野では、「企業のミッション達成に向けての自発的な貢献意欲」という意味合いで使われます。企業と従業員の目指す方向が一致しているほどエンゲージメントが高い状態であると言えます。

ここで大切なのは、従業員が「やらされている」「やらなければならないからやっている」のではなく、自分が心底やりたいと思って仕事をしていることです。

類義語との違い

従業員満足度との違い

従業員満足度とエンゲージメントの違いは、「企業に対する貢献の有無」です。従業員満足度とは、給与や賞与、福利厚生、休暇制度、職場環境など、会社から与えられるものに対する充足感の度合いを指します。

従業員の満足度が向上しても、企業への貢献度が向上するとは限りません。一方で、エンゲージメントが向上すると、高確率で企業への貢献度が向上します。企業が従業員に与えたことに見合うだけの「貢献」があるかという点が従業員満足度との大きな違いです。

モチベーションとの違い

モチベーションとエンゲージメントの違いは、モチベーションは「その人の中に生じるもの」であるのに対して、エンゲージメントは「関係性を表すもの」であることです。従業員に仕事を頑張る何かしらの理由があれば、たとえ企業に対してマイナスの気持ちを抱いてたとしてもモチベーションは上がります。一方で、企業と従業員が同じビジョンを描き、損得勘定無しにそのビジョン達成を目指せるような関係性が築けた場合には、エンゲージメントが高くなります。

エンゲージメントの評価を決めるポイント

人材管理クラウドサービス「wevox(ウィボックス)」を提供するの株式会社アトラエでは、従業員エンゲージメントを以下の5つの項目で数値化しています。

 
・仕事への熱中度
やりがいを感じ、日々前進しながら仕事に取り組めているか
・組織への共感
組織が掲げるビジョンや戦略に共感できるか、組織への誇りを感じているか
・チームワーク
チームのメンバーとして、仕事仲間や上司と良い関係性を築けているか
・健康的な職場
健康的に、また仕事だけでなく家庭やプライベートも大事にできている環境か
・待遇
評価や給与に対して納得できているか

エンゲージメントが高いと期待できるメリット

なぜ企業にとって従業員のエンゲージメントの向上が大切なのでしょうか。エンゲージメントについては、様々な調査と研究がされています。本章では、いくつかの先行調査結果をもとに、従業員のエンゲージメントが高いことで企業が得られるメリットについて紹介します。

企業の生産性の向上

株式会社リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学が共同で行った、「エンゲージメント(ES)と企業業績」に関する研究によると、調査対象の上場企業66社のデータにおいて、エンゲージメントと労働生産性には正の相関性があることがわかっています。このことから、「従業員のエンゲージメント向上が企業の生産性向上に繋がる」と言えます。

エンゲージメントと労働生産性の相関を表す図

出典:リンクアンドモチベーション『エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果』

従業員の退職率の低下

リンクアンドモチベーショングループが実施した、「エンゲージメントと退職率」の関係性についての研究結果を紹介します。リンクアンドモチベーショングループに所属する4つの法人(略称:LMI / LAI / LSI / LIT)の従業員を対象に実施した調査結果においても、エンゲージメントスコアと退職率に負の相関があることが分かっています。このことから、「従業員のエンゲージメント向上が従業員の退職率低下に繋がる」と言えます。

出典:「エンゲージメントと退職率の関係」に関する研究結果を公開 | 研究結果詳細ページ | Link and Motivation Inc. 株式会社リンクアンドモチベーション 

テレワーク導入企業のエンゲージメント動向の現状

その向上が企業に多くの利点をもたらすエンゲージメントですが、記事の最初にも述べた通り、長期的なテレワーク期間において、従業員のエンゲージメントの低下に悩む企業は少なくありません。

人材サービスグループ大手・パーソルグループのパーソルプロセス&テクノロジー株式会社と株式会社アトラエ(前述)が共同で実施した、「テレワークとエンゲージメントの関係性」についての調査によると、テレワークの継続により、エンゲージメントの5つの評価項目(前述)のうち4つの項目が長期的に低下し続けることが分かりました。

図:カテゴリ別のスコア推移(縦軸:スコア変化 横軸:調査の回答日)

テレワーク導入時のエンゲージメントスコアの変化

出典:テレワークとエンゲージメントの関係性についてのレポートを発表 | ニュースリリース | パーソルプロセス&テクノロジー株式会社

長期的な低下傾向を見せたのは以下の4つの項目です。

  • チームワーク
  • 健康的な職場
  • 待遇
  • 組織への共感

テレワーク長期化でエンゲージメントが下がる理由

エンゲージメントが下がっている社員のイメージ画像

前章では、テレワークの長期的な導入によって「チームワーク」「健康的な職場」「待遇」「組織への共感」の4つの項目のスコアが低下することが分かりました。

本章では、なぜこれらの項目のスコアが低下するのかを、項目ごとに解説します。

「チームワーク」が下がる理由

コミュニケーションの難しさ

テレワーク時の従業員同士のコミュニケーションは、オンライン上で実施することがほとんどです。オフィスへの出社時には常に近くの席にいた上司や同僚も、テレワーク時には姿がが全く見えません。些細な質問をぶつけたり、細かいニュアンスを身振り手振りで伝えることが難しい分、テレワーク時における従業員同士のコミュニケーションは難しいと言えます。

以下の図は、株式会社サイボウズが実施した、「テレワーク時の職場内のコミュニケーションについての意識と実態」について調査の結果です。

在宅勤務におけるコミュニケーションの感想

出典:サイボウズ

オフィス出社時と比較して、在宅勤務時に「ちょっとした会話が減る」と実感する人は75.8%、「場の雰囲気をつかみにくい」と実感する人は66.7%もいることが分かります。

コミュニケーションの絶対量が不足しやすい在宅勤務は、良好なチームワークを築くにあたって大きな障壁となっていると考えられます。

「健康的な職場」が下がる理由

テレワークは、従業員を通勤のストレスから解放し、家族や友人との交流、趣味への没頭などプライベートの時間を増加させることができます。本来なら、より「健康的な職場」に近づくと考えられるテレワーク時において、なぜ「健康的な職場」の項目が下がるのでしょうか。

理由1 身体的な負担の増加

長期的なテレワークにおいて、身体の健康を維持するためには、「どこで働くのか」が重要です。企業のオフィスほどには整ってない作業環境で働く従業員は、腰痛や眼精疲労を患う可能性が高まります。

理由2 精神的な負担の増加

オフィス出社からテレワークへの変化は、従業員にとって「生活の大きな変化」につながります。これまで人と積極的に接する機会が多かった職種の従業員はテレワークによる孤独感を感じやすくなります。また、テレワークではこれまでのオフィスでの勤務と比較して仕事をしている実感がわきにくいため、まじめな方ほど自身の仕事ぶりに不安を感じ、自身を精神的に追い詰めてしまう傾向があります。さらに、在宅での勤務を行う場合だと「家庭と仕事の切り分け」が出来ず、家族と一緒にいる時間が増えすぎることによるストレスやトラブルの増加を招く可能性もあります。

「待遇」が下がる理由

不公正な評価

もともと日本の企業の人事制度は、情緒や印象面での判断が評価に組み込まれやすいことから、従業員を公正に評価しているとは言い難く、長年に渡り疑問視されていました。その評価の曖昧さはデータとしても現れており、アデコ株式会社の2018年の調査によると、自社の人事評価制度に不満を持つ人は62.3%で、その理由の1位は「評価基準が不明確」となっています。

参照:アデコ株式会社『「人事評価制度」に関する意識調査』

テレワーク導入後においては、評価者が従業員を監視する機会が少なく、情緒や印象を人事評価に影響させにくくなります。評価担当者が、無理に今まで通り、従業員の情緒や印象を人事評価に組み込もうとすると、必然的に評価はさらに不公正になるでしょう。

「組織への共感」が下がる理由

方向性の共有の難しさ

テレワーク時は、一人で作業する時間が多い分、従業員がビジョンやミッションなど企業の方向性を共有し合うことが難しいです。従業員が持つ企業の方向性への認識が曖昧になると、従業員の企業に対する帰属意識の低下へと発展し、組織への共感の度合いも低下すると考えられます。

テレワークでもエンゲージメントを向上させる方法

テレワークでは、既存のエンゲージメント向上施策を実施しても、テレワーク導入前と同等の効果は望みにくいのが現実です。そこで、テレワーク導入後においても、エンゲージメントをテレワーク導入以前と同等以上の水準まで引き上げることに有効な以下の方法を紹介します。

  • 1on1の実施

  • 社内報の活用

  • 社内SNSの活用
  • エンゲージメントの可視化
  • 透明性の高い人事評価制度の運用
  • 働き方の多様性を認める
  • 作業環境の整備を補助する

1on1の実施

上司との1on1

孤独を感じる従業員に対しては、1on1の実施が有効です。テレワークにより1人でいる時間が増えると、ちょっとしたことでも不安を感じやすくなります。特に、新入社員や部署移動をしたばかりの社員にとっては、慣れない仕事を1人で進めると、知らず知らずのうちに不安を感じ、大きなストレスとなります。そのような状況を防ぐためにも、定期的に1on1の機会を設けることが大切です。

Web会議ツールで手軽に実施できるため、初歩的なエンゲージメント向上施策としておすすめです。

社内報の活用

社内広報イメージ画像

社内報を積極的に更新することは、読み手・書き手の双方に好影響を及ぼします。

まず、読み手にとっては自社の方向性をチェックする機会が増えることで、組織への共感の度合いが上がることが期待されます。一方で、書き手にとっては、社内報を頻繁に更新することで、自社の良い部分について考える機会が増え、必然的に自社のことをより好きになれると考えられます。

社内SNSの活用

SNSイメージ画像

一口に社内SNSといっても、企業によって用途は様々ではありますが「社員ブログ」「部署や支社ごとのブログ」など、カジュアルな内容の投稿を頻繁にすることがエンゲージメント向上に有効です。テレワーク中に接する機会がない社員、テレワークで関わりがなくなってしまった他部署や他支社の何気ない日常を頻繁に共有することで、社員同士の心理的な距離感が縮まり、組織への共感度やチームワークの向上につながると考えられます。

エンゲージメント可視化

エンゲージメントの向上を目指す際、エンゲージメントを定量的に評価する手段があると効果的な策を打ち出しやすいです。具体的な手段として、エンゲージメントスコアを可視化するサービスの活用をお勧めします。

エンゲージメント可視化のツール例

wevox

wevoxは株式会社アトラエが提供する人材管理クラウドサービスです。学術的根拠のあるサーベイを用いて、組織の状態を可視化し、エンゲージメントにおける改善点や影響のある因子を特定します。1,600以上の企業・チームで導入されており、導入後のフォローサービスも充実していることが特徴です。

TUNAG

TUNAGは株式会社スタメンが提供する社内制度プラットフォームサービスです。エンゲージメントをスコアリングするだけでなく、その後の社内制度(施策)の運用もアプリケーション内で行えることが大きな特徴です。

透明性の高い人事評価制度の運用

前述のとおり、テレワーク導入後においては、評価担当者が無理に今まで通り、従業員の情緒や印象を人事評価に組み込もうとすると、必然的に評価はさらに不公正になります。テレワーク時において、従業員にとって納得度の高い人事評価を実施するためには、定量的に観測できる項目を評価基準として多く設置することが大切です。

そこで重要なのが、「業務成果」「能力」などの目に見える部分の項目に評価の対象をシフトすることです。これらの項目を定量的に評価することが、人事評価制度の透明性を向上させ、従業員の待遇に対する納得度を向上させることに繋がります。

「業務成果」「能力」を評価するにあたっては、目標設定を行い、その達成度合いを評価基準とすることが大切です。適切な目標設定を行うための注意点と目標例を紹介します。

目標設定の注意点

業種に合わせた目標を設定する

目標は、職種の特性に合わせた内容を設定する必要があります。営業職のように目標を数値化しやすい職種と違い、総務などのバックオフィス部門は公平な評価を付けることが難しい側面があるからです。無理に定量的な目標や大がかりな改善案を求めるのではなく、あくまでも「設定することで従業員のモチベーションが上がり、達成したら成長と自信獲得に繋がる等身大の目標」を決めることが大切です。

ゴールのはっきりした目標を設定する

どんなテーマで(目標項目)、どのレベルまで(達成基準)、いつまでに(達成期限)を明示した目標を設定することで、評価者にとって達成度合いを適正に評価しやすい目標となります。

目標例

営業職:「来月末までに、既存顧客10社以上にアプローチして、成約3件以上獲得する」

研究職:「来月末までに新しい技術〇〇を身に付けて、実装を一から経験する」

事務職:「来月末までにエクセルの資格〇〇を取得するとともに、◇◇伝票の手入力を70%削減する」「平均待ち時間を〇分削減する」

総務:「経費を〇%削減する」

人事評価体系のサービス活用

ここまで、透明性の高い人事評価制度の作成方法について紹介してきましたが、実際に適正な人事評価の制度を策定することは容易ではありません。

そこで、人事評価を自動化するツールの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

人事評価の自動化ツール
HRBrain

HRBrain

出典:HRBrain公式ページ

人材の育成・評価、戦略・組織開発の課題に対応したクラウドサービスです。人事評価の集計作業を自動化し、進捗管理や共有がワンクリックで可能になります。従業員の目標達成へのプロセスの透明化と、コミュニケーションの質的改善で、評価への納得度の向上にも繋がります。

カオナビ

カオナビ

出典:カオナビ公式ページ

人事評価に特化したサービスです。目標設定や評価面談、評価結果のチェック、評価の甘辛調整などすべての進捗管理を可視化できます。カオナビで一括管理することで、記入漏れや提出遅延を防止し、管理作業を大幅に削減できます。過去の評価推移や面談結果の確認もスムーズになります。

働き方の多様性を認める

テレワークの普及こそ進んでいますが、まだまだ場所や時間の制限を受ける従業員が多いのが現実です。従業員に「健康的な職場」を提供するためにも、今後は、場所と時間を可能な範囲で自由に選択できる制度の導入が重要と言えます。特に在宅で勤務する従業員にとっては、一緒に住む家族等の都合を無視して仕事をすることは出来ません。そのため、それぞれのライフスタイルを尊重する姿勢を企業全体として取っていく必要があります。

作業環境の整備を補助する

テレワークで起こる身体への負荷を軽減させることは、従業員にとっての「健康的な職場」の提供につながります。作業環境の整備を企業が補助することで、従業員の身体的負担を取り除きましょう。

企業には、従業員が安全・健康に働けるオフィス環境にするために、事務所衛生基準規則・労働安全衛生規則に従う必要があります。オフィス環境のみならず、テレワークをする従業員の作業環境もオフィス同様に整える必要があります。

具体的なチェックポイントについては、以下「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」に記載された図が参考になります。

テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(厚生労働省)

出典:厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」

上図のチェックポイントについて、チェックリストを準備し、テレワーク導入以降に定期的に記録しておきます。チェックする頻度は、産業医による職場巡視の頻度と合わせて月1回が目安となります。

エンゲージメント向上のポイントを大いに秘めているテレワーク

ここまで、テレワークにおいてエンゲージメントが下がる理由と、それを防ぐための施策について紹介しました。前述のとおり、テレワーク中のエンゲージメントの維持は容易ではありません。一方でテレワークは、その効率性・機能性の高さによって、従来のオフィス出社を前提とする企業が抱える問題点を取り除くことが可能です。正しく施策を実行すれば、以下の理由により、テレワークのほうがエンゲージメントが上がりやすいと言えます。

理由1 従業員のライフイベントに支障をきたさない

オフィスだけだった働き場所が、テレワーク導入によって家、カフェ、サテライトなどから従業員が自由に選択出来るようになりました。介護や子育て、同居者の転勤などそれぞれの事情を抱えた従業員が同じ企業で働き続けることの障壁が低くなったことで、待遇への納得度や職場環境の健康さの向上が見込めます。

理由2 従業員のアイデンティティーの見直しのきっかけとなる

テレワークの長期化は、企業に対する従業員の過度な帰属意識を和らげ、自立的なキャリア形成を促します。従業員が自身の価値観や生き方に合った働き方を自らの意思で選択することにより、さらに仕事に熱中することが期待できます。

まとめ|テレワークをエンゲージメント向上のきっかけに

本記事では、テレワーク時における従業員のエンゲージメントを向上させるための施策について紹介しました。多くの企業がテレワークにおけるエンゲージメントの低下に悩む現状がある一方で、適切な施策を並行して実施すれば、実はテレワーク導入は企業にとって従業員のエンゲージメントを向上させる機会にもなり得ます。テレワーク導入を、従業員のエンゲージメントを向上させるためのポジティブな施策として実施することが、企業と従業員の関係性のさらなる向上に繋がるのです。

ブイキューブ
著者情報ブイキューブ

ブイキューブは映像コミュニケーションの総合ソリューションプロバイダとして、世界中どこにいても働ける働き方・環境の実現を目指しています。創業時よりテレワークを活用し、2016年には総務省「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」に選出されました。

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