株主総会議事録の記載事項や注意点について。議事録の特殊ケースやひな形を紹介

株主総会 議事録 記載事項 注意点 雛形

株式会社における最高意思決定機関である株主総会。株主総会終了後には議事録の作成が必須となります。株主総会議事録と言っても、何から手をつけて良いのかわからず不安に思われる方もいるのではないでしょうか。

株主総会議事録は、法令に基づき作成する必要があり、さらに株主や債権者も閲覧可能な文書であるため、抜け漏れなく正確に作成したいところです。

本記事では、株主総会議事録の記載事項や注意点について、会社法に基づき解説していきます。書面決議やバーチャル株主総会の場合などの特殊ケースもあるため、通常の議事録とどのように違うのか、記載イメージなどあわせてご紹介します。

目次[ 非表示 ][ 表示 ]

株主総会議事録の基本をおさらい

まずは、株主総会の議事録について、基本をおさらいしておきましょう。

株主総会の議事録とは

株主総会を開催したら、内容を記録に残すため、書面または電磁的記録として議事録を作成します。株式会社の意思決定機関の行ったことを後日確認できるよう、また、株主総会終了後に「言った」「言わない」のトラブルが発生しないようにするため、誰がどのような意思決定をしたのか明らかにする必要があります。

株主総会議事録の記載内容としては、法務省令に定めるところに従って作成していきます。

議事録の作成は必須?

株主総会の議事録は、会社法の定めにより必ず作成しなければいけません。作成した議事録は、株主や債権者が会社に対して閲覧または謄写の請求ができることから、本店に10年間保管しておく必要があります。(会社法318条)議事録の作成を怠った場合、100万円以下の過料に処せられる可能性があります。(会社法976条8項

また、株主総会の決議に基づき登記申請が必要になった場合は、登記の添付資料として議事録が必須となるため、抜け漏れなく必ず作成しましょう。

株主総会議事録はいつまでに作成すればいい?

株主総会の議事録の作成期限について、法律では定められていません。しかし、登記事項に変更がある場合は、株主総会終了後から2週間以内に登記申請する必要があります。登記申請には、株主総会の議事録の添付が必須となるため、申請に間に合うよう議事録を作成する企業がほとんどです。(商業登記法46条2項・4項期間に余裕を持って、株主総会終了後から1週間以内には作成しておくようにしましょう。

株主総会議事録の基本的な記載事項と注意点

ここでは、議事録の基本的な記載事項とその注意点について解説します。

株主総会議事録の書式は、法令での定めはありません。

記載事項については定めがあるため、以下の項目を必ず記載して作成しましょう。会社法施行規則72条3項

記載事項

  • 株主総会が開催された日時及び場所
  • 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
  • 株主総会において述べられた意見または発言の内容
  • 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
  • 議長の氏名
  • 議事録作成者の取締役氏名

次に、記載するときの注意点です。

出席者

株主総会議事録に記載する出席役員とは、株主総会開催時に役員としての権限がある人に限ります。

ただし、次の場合は注意が必要です。

ー任期満了の場合

出席した役員として、「前任者」を記載し、後任者は記載しない。

―辞任の場合(総会前に辞任、総会時に就任)

出席した役員として、前任者は記載せず、「後任者」を記載する。

―辞任の場合(総会時に辞任及び就任)

出席した役員として、「前任者」「後任者」ともに記載する。

ー解任の場合

出席した役員として、「前任者」「後任者」ともに記載する。

開催場所

開催場所の記載方法として、その場所の住所や建物のどこで開催されたのかを正確に記載します。

株主総会 議事録 開催場所

出典:契約書の書き方

過去に開催した場所から著しく離れた場所で株主総会を開催する場合は、その場所に決定した理由もあわせて議事録に記載します。(会社法施行規則63条2項

基本的な株主総会議事録のひな形

上記を踏まえ、基本的な株主総会議事録のひな形をご紹介します。

株主総会 議事録 ひな形

出典:契約書の書き方

特殊なケース ①書面決議の場合

株主総会の議事録には、特殊なケースもあります。いろんな特殊ケースがある中で、まずは書面決議について解説していきます。

書面決議とは

書面決議とは、株主総会の目的である決議事項について、書面または電磁的記録により株主全員が同意することで、株主総会決議があったとみなされます。会社法319条

「取締役又は株主が提案した内容について株主全員の同意」が要件となるため、上場企業や株主が多い企業は不向きな制度です。株主が少数で、比較的簡単に株主全員の同意を得ることができる中小企業や子会社などが対象とされています。

これは、書面決議だけでなく書面報告も同様です。(会社法320条

株主総会の書面決議とは?実施可能な要件や開催の流れ、メリット・デメリットを解説

バーチャル株主総会については、「株主総会の書面決議とは?実施可能な要件や開催の流れ、メリット・デメリットを解説」で詳しく解説しています。

書面決議の議事録の記載事項

書面決議された株主総会の議事録は、株主総会を実施していないため通常開催のテンプレートを使用し作成してはいけません。書面決議の議事録の記載事項は、次のとおりです。(会社法施行規則72条4項1号

  • 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
  • 上記を提案した者の氏名または名称
  • 株主総会の決議があったものとみなされた日
  • 議事録作成者である取締役氏名

記載イメージ

書面決議の場合の議事録記載イメージはこのようになります。

株主総会 書面決議 議事録

出典:関司法書士事務所「株主総会の書面決議・書面報告」

特殊なケース②押印が必要な場合

次は、押印が必要なケースについて解説します。

基本的に押印は不要

株主総会議事録は、会社法上の定めがないため、基本的に押印は不要です。しかし、押印不要ではあるものの、議事録作成者の押印がされているケースも多く見られます。

その理由として、株主総会で議論された内容や決定事項は非常に重要であるため、議事録内容は正確である必要があります。文書に押印がされている場合、作成者の意思に基づいて作成されたものとみなされるため、作成者のみの押印や出席役員の押印をしている企業が多数あります。(民事訴訟法第228条4項

押印が必要な場面

基本的には押印不要の株主総会議事録ですが、必ず押印しなければいけないケースもあります。

それは次の2点です。

定款で定めている場合

定款は、会社の組織と運営の規則を定めたものです。

法令に違反しないよう各企業が自由に定めており、議事録の押印について定款で取り決めている場合は必ず従う必要があります。

取締役会非設置会社の代表取締役選定の場合

取締役会のない株式会社は、取締役全員に代表権があるため、通常は代表者を選定する必要はありません。

しかし、代表取締役選定の決議をした場合は、議長及び出席取締役全員の実印が必須となります。

イメージ

出席取締役全員の押印イメージは、次のとおりです。

株主総会 議事録 押印

出典:会社登記相談プラザ

特殊なケース③バーチャル株主総会の場合

最後の特殊ケースは、バーチャル株主総会の議事録について解説します。

バーチャル株主総会とは

経済産業省の「ハイブリット型バーチャル株主総会の実施ガイド」策定や、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、開催する企業が増えているバーチャル株主総会。

バーチャル株主総会とは、「ハイブリッド参加型」「ハイブリッド出席型」「バーチャルオンリー」の3種類があり、オンラインで株主総会を開催できます。ハイブリッド型は会場とオンラインで開催しますが、バーチャルオンリーは会場は準備せずに、全てオンライン上で行います。

注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説

バーチャル株主総会については、「注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説」で詳しく解説しています。

記載を変更する必要があるのは「出席型」のみ

バーチャル株主総会を開催した際の議事録には、会場にはいなくても出席している株主や役員の出席方法を記載する必要があります。会社法施行規則第72条3項1号

株主が「出席」扱いとならない「参加型」の場合は、議事録への出席方法の記載は必要がなく「出席型」のみ記載が必要となります。

バーチャル株主総会 議事録

出典:BUSINESS LAWYERS「コロナ禍の株主総会 議事録作成のポイント

バーチャル株主総会出席型の記載事項

バーチャル株主総会出席型の議事録記載事項は、次の通りです。

記載事項

  • 株主総会が開催された日時及び場所
  • 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
  • 株主総会において述べられた意見または発言の内容
  • 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役または会計監査人の氏名または名称
  • 議長の氏名
  • 議事録作成者の取締役氏名
  • 開催場所以外から出席した役員、株主の出席方法
  • 通信の方法(Web会議など)
  • リアル会場とそれ以外との場所で「情報伝達の双方向性」と「即時性」が確保されている文言

開催場所以外から出席した役員・株主の出席方法は記載が必要ですが、所在まで記載する必要はありません。

バーチャル株主総会出席型 記載事項

記載イメージ

上記を踏まえた議事録の記載イメージです。

記載イメージ

出典:あなたのまちの司法書士事務所グループ「株主総会のバーチャル開催、ハイブリッド開催」

まとめ

今回は、株主総会議事録の一般的な記載事項や注意点、また特殊ケースをご紹介しました。議事録は、法令により取り決めされている事項が多いため、ミスや抜け漏れは防ぎたいところです。作成する前に必ず議事録の記載事項など確認しておきましょう

また、株主総会には議事録以外にも事前のスケジュール調整や当日の設営準備、バーチャルで開催する場合はシステムの準備など、やるべき事項がたくさんあります。業務に慣れないうちはスムーズに行うのが難しいため、時間に余裕を持って進めていくよう心掛けましょう。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

関連記事