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営業と聞くと、実際にお客さまと会って話す訪問営業が一般的かもしれません。しかし近年ではインターネット環境の発達や、人手不足などの働く環境の変化にともない、訪問しない営業が行われる機会も増えてきました。

 

昨年から東京で行われているインサイドセールスカンファレンスに関する情報を目にしたことのある方、オンライン営業という言葉を耳にしたことがある方も多いのではと思います。

 

そこで今回は、今まで訪問が当たり前だった営業スタイルに対して「訪問しない営業」チームの作り方から、実際に訪問しない営業を実施している企業事例までを紹介していきます。

そもそも訪問営業とは?

訪問しない営業について紹介する前に、まずは従来の訪問営業について改めてその役割をおさらいしておきましょう。

訪問営業の役割とは?

訪問営業は、顧客先に直接訪問することで実施されます。いわゆるアポイントなしで顧客先に訪問する「飛び込み営業」から、すでにアポイントを取っている顧客先へと訪問して商談を実施するなどが、実際のケースとして思い浮かびます。

 

前者の役割は、半ば強制的に対面する機会を作れるため、相手も断りにくいといった状況を生み出すことができます。後者の役割としては、顧客側での決断が重くなる高額商品を扱う場合や、対面での営業が浸透している商品などを購入してもらう際に、わざわざ対面で対峙することによって誠実さや親切さを表現できるなどが挙げられるでしょう。

訪問営業独特のきつさ

前述した役割がある訪問営業ですが、顧客先から顧客先へと移動する手間がかかったり、初対面の相手といきなり会話する必要があったりなど、いたずらに体力や心を消耗するのも確か。

 

とくに飛び込み営業は移動にともなう体力の消耗以上に、訪問先にまったく相手にされなかったり冷たい態度を取られたりなど、日常生活では起こりえないような態度を間近に接する機会も多く、精神的なきつさがともないます。

「訪問営業」と「訪問しない営業」の違いとは?

訪問営業は「外勤営業」や「フィールドセールス」と呼ばれる一方で、訪問しない営業は「内勤営業」や「インサイドセールス」と呼ばれています。

 

訪問営業については前述した通り一般的にもなじみのあるものですが、ここでは訪問しない営業についても簡単に説明していきます。

 

ご自身が外資系企業でインサイドセールスの立ち上げ・運営に関わってきたという水嶋 玲以仁氏(以下、水嶋氏)の著書「インサイドセールス 究極の営業術」によると、訪問しない営業(インサイドセールス)の定義を”主にBtoB営業のシーンにおいて、メールや電話を用いて顧客とコミュニケーションを図る手法。顧客の元へ訪問しないのが特徴”としています。

 

実際の受注までを行う訪問営業に対して、広告やセミナーなどで商材を認知したばかりの見込み客に対してメールや電話、Web会議システムなどで働きかけて、より受注確度の高い顧客へと育てていくなどの役割があります。

 

そもそも訪問しない営業手法自体は、取り立てて新しい手法というわけではありません。日本と比べて国土が広く、移動コストが多分にかかるアメリカでは、1900年代からすでにスタートしていたと言われています。

 

また訪問しない営業は従来の訪問営業とは異なり、時間や場所に制約がないため、テレワークや郊外のサテライトオフィスでの仕事も可能となります。

 

従来の訪問営業では体力面や、場所・時間などの制約から育児との両立などが難しいといった課題もありましたが、訪問しない営業であれば育児との両立なども可能となるでしょう。

訪問しない営業部隊の組織内での立ち位置・役割はどうする?

では次に、訪問しない営業部隊の組織内での立ち位置をどうするか、考えていきます。

そもそも訪問しない営業部隊を持つ組織って?

先ほど紹介した「インサイドセールス 究極の営業術」のなかでインサイドセールスに取り組む企業として紹介されている「株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)」では、「インサイドセールス本部」として訪問しない営業部隊が独立で存在。

マーケティングとフィールドセールス(訪問営業)の仲立ち役として機能しているといいます。

 

例えば広告やセミナーなどのマーケティング施策により獲得した見込み客リストは、通常マーケティング部門から、訪問営業部隊に直接渡されることが多いのではないでしょうか。しかし訪問営業部隊は担当顧客のフォローで手いっぱいといった状態も多く、どうしても現状の顧客が優先で、せっかく受け取ったリストの活用が後回しになる場合もあります。

 

そこで同社ではまず、マーケティング部門が集めてきた見込み客リストは、インサイドセールス本部(訪問しない営業部隊)に渡されます。そしてインサイドセールス本部にて電話やメールを通じて見込み客の現状をヒアリングし、その後、実際の商談に必要な情報が獲得できると、フィールドセールス(訪問営業部隊)に共有します。

 

するとフィールドセールスは、初回訪問の段階で、顧客の要望に沿った具体的な提案が可能になるといいます。

 

このように訪問しない営業部隊は、どの組織でも当てはまるわけではないものの、基本的にはマーケティング部門と訪問営業部隊の仲立ち役といった立ち位置にあります。

既存営業部門との役割分担を明確にしておく

訪問しない営業部隊を作るにあたっては、営業部門を「訪問営業」と「訪問しない営業」に区分けするのも1つの方法です。

 

その際、見込み客へのアプローチから成約までの流れのなかで、どの部分を訪問しない営業が担い、どの部分を訪問営業が担うのかを事前に決めておきましょう。

 

先ほど紹介したセールスフォースでも、テレアポまでを訪問しない営業が担うのか、また見込み客の関心度合いがどのような状態になったら訪問営業に渡すのかなど、役割を明確化しているといいます。

 

役割分担のために営業プロセスを見える化しておく

訪問営業との役割を明確化するためには、現在の営業プロセスを見える化しておくことも必要です。初回のテレアポ→商談→成約→アフターフォローなどのプロセスを見える化しておくことで、訪問営業と訪問しない営業との役割分担を、明確化させることができるでしょう。

訪問しない営業部隊を取り入れるときの注意点とは?

訪問しない営業部隊を取り入れる際には、以下の点に注意しましょう。

マーケティング部門の拡充により見込み客自体を増やす

訪問しない営業部隊は、マーケティング施策などによって獲得できた見込み客に対して電話やメールなどでアプローチを行います。そしてより受注確度の高い見込み客へと選別した上で、訪問営業部隊に渡すといった役割があります。

 

一方でそもそも獲得している見込み客自体が少ないのであれば、訪問しない営業部隊が電話やメールでアプローチできる人数も必然的に少なくなります。そこで見込み客自体を増やすために、マーケティング部門の拡充を行い、広告やPRにも力を入れる必要があるでしょう。

 

またマーケティングを実施する際には、顧客の声が反映された施策かどうかも重要です。そこで実際に顧客の声を聴く機会の多い訪問しない営業部隊と、マーケティング部門の連携も図りたいところ。両者が協力し合うことで、自社商品のターゲットにフィットした施策の実現にもつながります。

訪問しない営業を導入するための手順とは?

次に、訪問しない営業を導入するための具体的な手順について以下で紹介していきます。

まずは訪問しない営業の役割を明確化

訪問しない営業については、先で紹介した水嶋氏によると、その組織内での役割は以下の4パターンに分かれるといいます。

 

パターン名

役割

リード発掘型

電話などを通じてさらなる見込み顧客の発掘に注力する

リード育成型

すでにある程度商材が関心のある人に向けて、より受注確度を高めるためのフォローを行っていくことに注力

営業クローズ特化型

すでに商材の導入を検討している顧客に向けて、具体的な提案から成約までをインサイドセールスで行ってしまう

フィールドセールス協業型

フィールドセールスと連携を取りながら、見込み顧客の創出や育成などを役割分担しながら行っていく

(参照元:インサイドセールス 究極の営業術

 

そのため自社の課題や、商品の特徴などに合わせて、訪問しない営業にどういった役割を担ってもらうのか事前に明確化しておきたいところ。

 

例えば、現在よりもとにかく見込み客の数を増やしたいという課題があれば、前述した4パターンのなかで「リード発掘型」の役割を担ってもらう必要があります。この場合、電話やメールなどを通じてより多くの見込み客を獲得していくことに注力する必要があるでしょう。

 

また自社で扱う商品が定額課金型のクラウドサービスの場合、ほとんどが初期費用は低額となるため、顧客にとっても導入のハードルは低くなるはずです。なおかつある程度の契約数を獲得しないことには、ビジネスとしても成立しないことでしょう。

 

こういったサービスを提供している場合、業務の効率化を図るという意味でも、提案から成約までを訪問せずに行う「営業クローズ特化型」を取り入れることもできます。

他部門への影響も考慮した目標を設定

訪問しない営業部隊を組織のなかで取り入れる際は、他部門との連携を前提とすることでより効果が高まります。そのため、訪問しない営業部隊単体で通用する目標を設定するというよりも、訪問営業部隊やマーケティング部門を考慮した目標を設定したいところ。

 

例えば「1日○○件のアポイントを獲得する」など量を最優先にした目標を設定してしまうと、聞き込みが不十分なままで訪問営業部隊にパスしてしまうといった課題が出てきます。その結果、訪問営業部隊にとってはただ訪問数が増えるばかりで、いたずらに体力を消耗してしまうといった事態につながりかねません。

 

そこでアポイント獲得数のみならず、獲得したアポイントのうち何割が成約につながったのかといった部分を目標とするなど、訪問営業部隊を配慮した目標設定を行いたいところ。アポイント獲得数という量に囚われずに、質に目を向けるきっかけにもなります。

他部門への情報管理・共有や、オンライン商談を支えるICTツールの導入・活用

訪問しない営業部隊を有効活用するとなると、マーケティング部門から訪問しない営業部隊、そして訪問営業部隊へと、顧客情報をスムーズに共有するための仕組みも必要となります。

 

そこで顧客情報を管理・共有できるツールの導入も検討したいところ。具体的には、「HubSpot」などのMAツール(見込み客を管理し、興味関心度合いに応じて適切なマーケティング施策をサポートするためのツール)や、「Sales Cloud」などのSFAツール(顧客に対して行った営業活動の履歴などを集計・管理する営業支援システム)などがあります。

 

1_HubSpot

 

(画像引用元:HubSpot

 

1_SalesCloud

 

(画像引用元:Sales Cloud

 

あわせてMAツールやSFAツールなどは顧客情報の入力などが必須となるため、毎回の情報の入力を営業担当者に浸透させることも必要。MAツールとSFAツールを連動させることで、成約に至った顧客情報をマーケティング施策に活かすなどの取り組みも実施していきましょう。

 

また商談そのものも訪問せずに実施する(オンライン商談)場合、例えば弊社製品の「V-CUBE セールスプラス」など、Web会議システムを導入することでより対面に近いかたちで顧客と会話することが可能です。

 

訪問しない営業を導入している企業3選

では実際に訪問しない営業を導入している企業について、先で紹介した「インサイドセールス 究極の営業術」でも取り上げられている企業事例を3つ紹介していきます。

株式会社HENNGE:訪問営業部隊との連携で見込み客を育てる

クラウド型のセキュリティサービス「HENNGE One」を提供する「株式会社HENNGE」では、訪問営業部隊がなおざりにしがちだった見込み客を温める(自社サービスに関心を持ってもらうために継続的にコミュニケーションを取る行為)ことや、顧客の情報を社内に蓄積させるといった目的で訪問しない営業部隊を立ち上げました。

 

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(画像引用元:HENNGE One

 

同社には訪問しない営業部隊は4人、訪問営業部隊は20人在籍(2018年12月5日時点)。訪問営業部隊のうち4人が、訪問しない営業部隊とペアを組んで、営業活動を行っているといいます。

 

訪問しない営業部隊の最初のステップは、ターゲットとなる企業の代表番号へ電話をかけること。そこでアポイントを取れた場合は、すべての企業に訪問営業部隊が出向くといいます。

 

実際に商談を行ったなかで、サービスに対する関心度合いなどを、ペアを組んでいる訪問しない営業部隊に共有。その後、訪問しない営業部隊は電話やメールなどを使って再度見込み客とのやり取りを実施します。

 

そして関心度合いが高まったタイミングで再度アポイントを取り、そこで訪問営業部隊に引き継ぐそうです。

株式会社ユーザベース:量の追求から質の追求へ転換

企業・業界情報のプラットフォーム「SPEEDA」や経済情報メディア「NewsPicks」などを展開する「株式会社ユーザベース」では、リスティング広告や自社サービスを通じた広告などにより、問い合わせ件数を大きく増やすことに成功していました。

 

1_Speeda

 

(画像引用元:SPEEDA

 

一方で、過剰供給により営業担当者のフォローが手薄となったため、せっかく集めた見込み客の半数近くにはアプローチできないといった現状があったそうです。

 

そこで見込み客を漏れ無くフォローし、新規顧客へとつなげるために、インサイドセールスを立ち上げるに至ったといいます。まずはWebからの問い合わせなど、すでに自社サービスに何かしらの関心がある見込み客のすべてにアプローチするために、インターン生などを活用し、アプローチ量を増やすことに注力。

 

その結果、Webで問い合わせを受けてから15分以内に電話でアプローチする仕組みを確立し、アポイント件数も立ち上げ当初の月30件から月200件へと増やすことに成功しました。

 

次にアポイント件数を目標としていた状態から、今度は質を追求するために、成約率の目標を20%から30%に引き上げ。結果として、既存の営業部隊と訪問しない営業部隊が対等にコミュニケーションを取りながら、営業戦略を練る雰囲気の醸成に至ったといいます。

株式会社マルケト:マーケティング部門との連携でイベント企画やWeb戦略を一緒に考案

MAツール「マルケト」を提供する「株式会社マルケト」では、実際の顧客の声をもとに業種や課題などタイプ別にイベント企画やWeb広告などを実施することが重要との理由から、訪問しない営業部隊をマーケティング部門に設置。

 

イベントの企画やWeb戦略などについてどうするかを、マーケティング部門と訪問しない営業部隊が話し合いながら進めているといいます。

 

また既存の営業部隊に置くと、アポイント件数を追うなど、行動目標が短期的になるなども理由の1つ。営業の数値目標を達成することが目的なのではなく、見込み客との長期的な関係構築を大切にしているそうです。

 

訪問しない営業部隊については、目的に応じて2つのチームに分けている同社。サービスと相性の良い業種に代表電話や手紙などを通じてアプローチする部隊と、Webやセミナーを経由して入ってきた、すでにサービスに何かしらの関心を持っている企業へアプローチする部隊とに分かれます。

 

目的に応じて訪問しない営業部隊をさらに分けることで、すでに関心のある層やこれから関心を持ってくれそうな層にまんべんなく対応できるようです。

他部門との連携を図りながら取り入れる

訪問しない営業部隊を取り入れる際は、単体での機能ではなく、他部門との連携によってどう機能させるかを考えることが大切です。

 

例えば訪問しない営業部隊によるヒアリングによって、とくに関心度合いが高い見込み客の傾向などがわかれば、その情報をマーケティング部門と共有することで、広告やPRに活かすこともできるでしょう。

 

このように他部門との連携を図りながら、訪問しない営業部隊を取り入れていきましょう。

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