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今や、働き方改革は多くの企業の関心事。その一環として、「テレワーク」を導入する企業も増えています。しかし一方で、制度がうまく機能せず、いつしか形骸化、フェードアウトしてしまうケースも珍しくありません。テレワークを職場の文化として根付かせるには、社員が利用しやすい仕組みづくりや雰囲気を醸成させていくこと、さらには経営者サイドの強い意思が欠かせません。

 

2008年にテレワークを導入した佐賀県庁も、当初はなかなか利用が伸びず、制度開始から3年間で希望者は40名。3300名(当時)の職員に対し、わずか1.2%という割合でした。

 

しかし、導入から11年。今では全職員にその対象が広がり、年間の利用者は延べ17万人を超えるといいます。さまざまなトライ&エラーを繰り返しながら長きにわたりテレワークを継続してきた佐賀県庁の事例は、多くの民間企業にとっても参考になるはずです。

 

今回はテレワークをはじめ、ICTを活用した県庁内の業務改革を推進する、佐賀県総務部情報化推進室の中原昭仁氏、筒井拓也氏、副島誠氏にお話を伺いました。

左から中原昭仁氏、筒井拓也氏、副島誠氏
左から中原昭仁氏、筒井拓也氏、副島誠氏

在宅勤務の利用者は、年間延べ3000人以上

―― 佐賀県庁のテレワークは2019年2月で12年目。まずは現在の制度の概要と、利用状況を教えていただけますか?

 

中原氏現在、佐賀県庁で実施しているテレワークは3種類あります。在宅勤務とサテライトオフィスでの勤務、それからiPadを使ってどこでも仕事ができるモバイルワークです。年間の利用状況については在宅勤務が延べ3182人、サテライトが延べ705人、モバイルが延べ16万6625人。延べ人数ですので全職員が利用しているわけではありませんが、立ち上げ当初の目標値はクリアしています。

(編注:上記の人数は全て2019年2月現在のものになります)

 

―― 在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイルワークの3つで、それぞれ利用者の属性や目的は異なるのでしょうか?

 

中原氏アンケートで利用者の実態を調査したところ、在宅勤務はやはり小さいお子さんを持つ職員の利用が多いようです。子供が急に熱を出したときなどに、急きょ在宅勤務に切り替えるといったケースですね。

 

サテライトオフィスは、出張や現場仕事が多い職員がよく利用しています。県内に13カ所、県外に2カ所あり、地域もばらけているので、出張が終わったあと県庁にわざわざ戻るより、近くのサテライトオフィスで仕事をする方が時間を有効に使えます。

 

モバイルワークも、出張先で手が空いた時や移動中などのスキマ時間に利用されるケースが多いですね。

 

在宅勤務の利用者は、年間延べ3000人以上

実証実験でメリットを啓発し、所属長の意識改革で利用しやすい雰囲気を醸成

―― 佐賀県庁がテレワークを導入した2008年の段階では、他県で同様の事例はなく、民間企業にもあまり浸透していませんでした。そんななか、いち早く実施に踏み切った背景には、どんな狙いがあったのでしょうか?

 

中原氏もともとは子育てや介護をしている職員が仕事と家庭を両立できるよう、在宅勤務を導入したのが始まりです。育児や介護による離職を食い止め、ゆくゆくは多様な人材確保につなげたいという狙いもありました。

 

―― 当初は育児もしくは介護をしている方に対象者を限定していたんですね。該当する職員からは歓迎されたのでは?

 

中原氏それが思ったように利用者が伸びず、1年目は10名、3年間で40名に留まりました。理由はさまざまですが、当時はまだテレワークを利用する雰囲気が醸成されていなかったことが大きかったと思います。やはり特殊な働き方というか、周りがやっていないのに自分だけ在宅というのは、なかなか手を挙げづらいところがあったのではないでしょうか。

 

―― 制度が根付かないと、そのままフェードアウトしていくケースも多いと思いますが、佐賀県庁ではその後も諦めずに継続しています。2011年には元マイクロソフトの森本登志男さんをCIOに迎え、テレワークの普及促進を図る施策も実施されたそうですが、どんな取り組みだったのでしょうか?

 

中原氏当時はテレワークの有用性が、職員にあまり理解されていませんでした。ですから、何はともあれ、まずはみんなに体験してもらう必要があった。そこで、iPadを活用し、どこでも仕事ができるようにしようと働きかけました。100台のiPadを職員に配布し、モバイルワークの実証実験を行ったんです。 

 

副島氏ただ端末を配るだけではなく、それを活用するアイデアも募集したところ、35の所属から42のアイデアが集まりました。各々がiPadを使ったモバイルワークのアイデアを考え、実際に使いながら活用事例を蓄積していく。それを横展開していくうちに少しずつテレワークの有用性が認知され、職員が主体的に取り組むようになったんです。

 

―― 在宅勤務を希望しづらい雰囲気を変えるために、何か取り組んだことはありますか?

 

中原氏いくら私たちが推奨しても、結局は現場を預かる所属長の理解がないと手を挙げづらいわけです。ですから、まずは所属長が積極的に取り組んでテレワークを理解すること、さらには自ら部下に見本を示すことでチーム内に「在宅勤務、やっていいんだ」という空気を作ることが大事だと考えました。そこで、当初は週2回、所属長に在宅勤務をしてもらうよう、“強めに”呼び掛けていったんです。

 

―― 半ば強引にでも、まずはやってもらおうと。反発の声は挙がりませんでしたか?

 

中原氏部署によっては、やはり難しいという声はあったようです。それでも、管理職向けの研修で森本さんにお話いただくなどして、テレワークのメリットを少しずつ植え付けていきました。働き方改革の一環としてテレワークが有効であること、今はやりづらいが、これからはスタンダードな働き方になっていくことなどを啓発しつつ、1年くらいかけて根付かせていった感じですね。

 

実証実験でメリットを啓発し、所属長の意識改革で利用しやすい雰囲気を醸成

大雪や大地震で登庁が困難でも、テレワークなら行政機能を維持できる

―― そうした地道な啓蒙活動を行いつつ、2014年には在宅勤務の対象者を全職員に拡大しています。「育児・介護」の縛りを外した理由を教えてください。

 

中原氏ひとつは在宅勤務の敷居を下げるためです。在宅勤務は特別なことではなく、普通の働き方なんだと職員に認識してもらうため、誰でも利用できるようにしました。在宅勤務を希望する際は所属長への申請が必要ですが、理由は問いません。

 

―― 極端に言えば、その日の気分次第でテレワークに切り替えることも可能だと。

 

筒井氏そうですね。ちなみに利用者へのアンケートでは「通勤負担の軽減」を在宅勤務の動機として挙げている人もいました。他には、一人で集中して資料を作りたいときや、管理職が部下の評価を書く際、部下がいるところではやりづらいからと在宅やサテライトオフィスを活用するケースもあるようです。育児や介護に限らず、想定外の意外なニーズがあるんだなと感じましたね。

 

中原氏また、災害時の危機管理という点でも、テレワークが役立っています。それが顕著に表れたのは、2016年の熊本地震の時ですね。大きな地震の際は自動的に災害対策本部が立ちますので、県の職員は自主登庁をしなければならないんです。多くの職員が車で登庁しているのですが、地震発生が深夜の1時、しかも金曜から土曜にかけてのタイミングだったため、お酒が入っている職員もいました。当然、車は運転できません。

 

―― 深夜1時で、なおかつ車も運転できないとなると、登庁は困難ですね。

 

中原氏その通りです。しかし、そんな時でもまずは在宅からリモートでつないで、システムの稼働状況をチェックすることができました。メールで各所との連携もスムーズにとれますし、iPadを使ってその場で情報発信もできる。災害時の初動は、かなり早くなったと思います。それに、テレワークを普段から実施し、やりなれていれば緊急時に行政機能がストップすることもありません。

 

筒井氏同じく2016年の寒波の際も、交通機関がマヒし登庁できない400名の職員がテレワークを活用しました。中にはお子さんの学校が臨時休校になり、面倒を見るために在宅勤務に切り替えた人もいます。大雪に限らず、台風や大雨の時でも子どもをひとり残して出勤するのは不安ですよね。そういう意味でも、テレワークが役立っているのではないかと思います。

 

大雪や大地震で登庁が困難でも、テレワークなら行政機能を維持できる

業務効率は? ワークライフバランスは? テレワーク導入の効果

―― テレワーク導入の効果について、もう少し教えてください。例えば、導入前に比べ離職率が低下した、業務効率が上がったなど、具体的なメリットはありましたか?

 

中原氏そこは課題でもあるのですが、テレワークとの直接的な因果関係を調べることは難しく、具体的な数字で評価することはできていません。

 

―― では、どのような指標で効果を測っているのでしょうか?

 

筒井氏現状は各所属へアンケートをとり、業務改善につながったか、メリットがあったかどうかを聞いています。その件数や改善の事例が、ひとつの評価基準になりますね。

 

例えば、農業系の部署などは本庁で仕事をするよりも現場に出ることの方が多いわけですが、以前は報告書を書くためだけに帰庁しなければならないこともありました。それが遠隔でできるようになったことで時間に余裕ができ、より多くの現場を回れるようになったと聞いています。

 

業務効率は? ワークライフバランスは? テレワーク導入の効果

 

副島氏また、大雨で河川が氾濫した時なども、これまでは2~3名で現場へ行き調査していました。しかし、iPadがあれば1人が現場に行って被害状況をリアルタイムで伝え、残りの人間は県庁で業務にあたりながら現場の様子を確認することができます。こうした事例からも、業務効率化や時間の有効活用には十分役立っているものと考えられます。

 

このように業務や時間が効率化されることによって、最終的には県民の皆さんへより良いサービスの提供につながっていくと思います。

 

―― 時間が有効に使えるようになったことで、職員のワークライフバランスにも良い影響があったのではないですか?

 

中原氏そうですね。テレワークは1日単位ではなく、短い時間だけ部分的に利用することもできます。県庁での勤務と在宅勤務をフレキシブルに組み合わせることで、子どもの学校の行事に参加しやすくなったという声も聞かれます。また、先ほど筒井が言ったように報告書を書くために帰庁するといった無駄がなくなったため現場からの直帰率が上がり、家事や育児がしやすくなったり、趣味の時間を作りやすくなったという回答も得られています。

 

―― 職員の方の満足度は高そうですね。

 

中原氏そう思います。実際、アンケートで「佐賀県庁にテレワークは必要ですか?」と聞いたところ、95%の職員が「必要」と回答しています。必要ないという人も、あくまで自分にとっては必要ないということで、決してテレワーク自体をネガティブにとらえているわけではありません。少なくとも、職員たちには概ね歓迎されているのかなと思いますね。

 

―― 導入から10年以上がたちましたが、今後この取り組みをどのように継続・発展させていきたいとお考えですか?

 

中原氏まずは、先ほども言いましたがテレワークに対する評価指標を精査していくのがひとつ。それから、せっかくここまで根付いた文化ですので、しっかりと継続していくことですね。推進する立場の我々が何もせず現状のまま放置していると、そのうち取り組み自体がしぼんでいってしまうでしょう。やればやるほど効果が見込める働き方だと思いますし、より有効に活用してもらえるようなアイデアを今後も考えていきたいですね。

 

また佐賀県庁を一つの成功事例として、地方自治体から視察いただき、説明する機会も増えています。多くの自治体でもこうした働き方が活用されていけばうれしいですね。

 

伊万里焼き

 

※掲載内容は2019年2月現在のものです。

■取材協力 佐賀県庁

取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ)

写真:南方 篤

企画・編集:はてな編集部


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