ハイブリッドワークの成功は情報共有にあり?特有のデメリットと具体的な解決方法とは

従業員が出社しつつも、週に何度かのテレワークを認めるハイブリッドワーク。オフィスワークとテレワークの良いところを併せ持ったハイブリッドワークですが、出社とテレワークが混在することによるデメリットは生じます。

HubSpotの調査によると、ハイブリッドワーカーの31%が「ハイブリッドワークでは人間関係構築が難しい」と回答しています。こうした回答をする人は男性よりも女性のほうが多いそうです。コミュニケーション関連のほか、勤怠管理やオフィスの設備、コミュニケーション関係など、ハイブリッドワークにはさまざまな問題が生じます。

ハイブリッドワークを導入するときには、こうしたデメリットや課題などをしっかりと把握し、自社にとって最適なかたちとは何か模索することが必要です。そこで今回は、ハイブリッドワークのデメリットを中心に解説します。

デメリットはあるものの、ハイブリッドワークは従業員にとって働きやすくもなる労働形態ではあります。デメリットを解消するための方法も解説するので、そちらも参考にしてみてください。

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ハイブリッドワークの現状

テレワークやハイブリッドワークは、新型コロナウイルス感染症対策として一気に広がりました。しかし、2023年5月には新型コロナウイルス感染症は5類相当に引き下げられ、感染者や濃厚接触者の待機要請に関する規制が緩められています。

企業でも人と人の接触機会を減らすためのテレワークをしなくても済むようになり、コロナ禍前の働き方に戻りつつあります。しかし、テレワークやハイブリッドワークには、感染症対策以外に通勤手当の削減、柔軟性が高い働き方の実現といったメリットがあることも事実です。そのため、引き続きテレワークを認める企業は少なくありません。

公益財団法人日本生産性本部による「第7回 働く人の意識調査」によるとテレワーク実施率は以下のグラフの通りで、実施率は下がりつつも2割弱は導入を続けています。

テレワークの実施率

※引用:公益財団法人日本生産性本部

また、同調査によると週当たりの出勤日数は以下の通りです。

直近1週間の出勤日数

※引用:公益財団法人日本生産性本部

緊急事態宣言が出た2020年5月に比べると出社する日数は減ってはいるものの、依然として半数近くの人が週に3日以上テレワークを行なっています。

このように、新型コロナウイルス感染症対策の必要性に関わらず、テレワークやハイブリッドワークを導入する企業は数多くあることが現状です。

ハイブリッドワークのデメリット

メリットがたくさんあり、導入企業が多いハイブリッドワークにもデメリットはあります。テレワークと出社が混在するハイブリッドワークだからこそ起こるデメリットについて紹介します。

出社頻度による情報格差が生まれやすい

ハイブリッドワークでは出社している従業員とテレワークの従業員間で、把握している情報に差が生まれやすい環境となります。出社していれば、オフィスにある掲示板の閲覧、対面でできる気軽な会話などができるため、どうしてもテレワークの従業員よりも得られる情報量は多くなるからです。

そういったところに差が出ると、テレワーク中の従業員だけがスムーズに業務を遂行できなくなるかもしれません。逆に、把握している情報量が多い出社勤務の従業員にばかり仕事が増えてしまうリスクも考えられます。そのため、テレワークの従業員に対しても細やかな情報提供が必要です。

予定外の業務への対応が難しくなる

突然発生した業務や、予定外のトラブルなどが起きたとき、緊急のミーティングが必要になることもあるでしょう。その際に、テレワーク中の従業員は参加しにくい環境にあります。おのずと出社している従業員が対応することになれば、従業員間の負担や評価に差が出ることもあるでしょう。ハイブリッドワークを導入中でも、公平に予定外の業務ができるようになるよう対処が必要です。

オンラインコミュニケーションの体制を整備する必要がある

ハイブリッドワークでは従業員同士のコミュニケーションとしてWeb会議を多用するようになります。オフィスからWeb会議をつなげる頻度も上がるため、Web会議ツールを使用しやすいオフィス作りが必要になるでしょう。

Web会議ツールはそれぞれの自席で行うことも可能ではあります。しかし、ブイキューブの調査によると、自席でWeb会議をしている人がいると「うるさい」と感じたことがある人の割合は、半数近くにのぼりました。それぞれが自席でWeb会議をすると、全体的な集中力低下につながる恐れがあります。

また、オフィスではたくさんの人が出入りし会話をしている状況であるため、自席でWeb会議を行うと雑音が入りやすいという問題も発生します。Web会議の相手に情報がスムーズに伝わらず、効率が低下するほか、お互いストレスが溜まりやすくなるでしょう。

Web会議のときに会議室を使用できればよいのですが、ブイキューブの同調査によると、「会議室が足りないから」、「会議室を一人で専有するのは気が引けるから」という理由で自席でのWeb会議を余儀なくされた人も多いようです。オフィスでWeb会議をするのであれば、省スペースで周囲の音を遮断するような個室ブースが必要となるでしょう。

また、オフィスで複数人がWeb会議に参加するときにも問題が発生しがちです。ハイブリッドワークでは、オフィスに出社している人たちとテレワークの人たちが複数人でWeb会議しなければならない場面も出てくるでしょう。そのときに、1台のPCで複数人を映し出すようにするのか、それぞれ1台ずつPCを用意して参加するのか問題となります。

1台のPCでは映し出せる範囲に限界があるため、複数人を映すためのカメラやマイクの用意が必要です。それぞれ1台ずつPCを用意して複数台のパソコンで同じ会議に参加するのであれば、ハウリングなどの音の問題が起こりやすくなるでしょう。

チームメンバーがどこにいるか分からない

ハイブリッドワークでは、従業員が出社なのかテレワークなのか分からなくなることもあります。

完全出社であれば社内用の携帯電話を活用する、完全テレワークであれば最初からWeb会議を設定する、といった方法が可能です。しかし、ハイブリッドワークだと、まず相手が今出社中なのかテレワーク中なのか確認し、出社中ならオフィスのどこにいるのか、テレワークであればどこに連絡するのか、確認する手順が多く煩雑になりがちです。

現在メンバーがどこにいるのか一目でわかるような仕組み作りが必要になるでしょう。

セキュリティの懸念

主にテレワーク中の従業員に対してですが、自宅のPCから会社のサーバーにつないで仕事をすることにより、セキュリティに関する問題が起こる可能性が高まります。使用するネットワークに攻撃を受ける可能性がありますし、PCの紛失などで物理的に情報が外に漏れるかもしれません。

セキュリティインシデントが発生すると、顧客や取引先の情報、経営上の企業秘密、従業員の個人情報など重大な情報が他者に渡ってしまう恐れがあります。テレワークを行なっていても情報漏えいが起きないよう、ネットワーク環境の整備や従業員への教育が必要です。

勤怠管理が煩雑になる

ハイブリッドワークでは日によって出社とテレワークが異なるため、それぞれの方法に合った勤怠管理が必要です。

出社のときはそのまま勤怠管理をすればよいのですが、問題はテレワークのときです。働いている様子を目で見ることはできないため従業員の自己申告になるのですが、本当にその時間働いているのか、逆に退勤したあと長時間働いていないか、労務管理上、確認が必要なポイントです。

ハイブリッドワークのデメリットを解決するためのポイント

ハイブリッドワークにもさまざまなデメリットがありますが、これらは解決できないわけではありません。ハイブリッドワークで起きがちなデメリットを解決するための方法について解説します。

オフィス設備を整える

オフィスでもWeb会議をしやすいよう、設備を整えましょう。Web会議での音の問題(周囲に音が漏れる、雑音が入る)を解決するためには、テレキューブといった個室ブースの導入がおすすめです。

テレキューブなどの個室ブースは基本的に防音となっていて、そこに入れば雑音や周囲を気にせずにWeb会議ができます。基本的に1人入れるほどの小ささであるため省スペースであることも魅力的です。会議室を新たに作るほどの場所はなくても、個室ブースは設置できるという企業も多いのではないでしょうか。

個室ブースはWeb会議だけではなく、1人業務を集中して行いたいときにも有効です。周囲の音に邪魔されず自分だけの空間で仕事ができるため、オフィスにいながら自室にいるような集中力を保てます。

個室ブースの種類によっては2~4人が入れるほどのものもあります。このような広めの個室ブースは、少人数のミーティング、周囲に聞こえてはならないプライベートな内容の面談のときに便利でしょう。

ハイブリッドワークでは、テレワークのときに起きた問題の聴取や、コミュニケーション不足解消のための面談などが必要になります。こういったときに、複数人向けの個室ブースで密な対話をしてみてもよいでしょう。

オフィス用の個室ブースはどう選ぶ?タイプ別の特徴や抑えておきたい消防法への対応などのポイントを紹介

オフィスでの個室ブース活用については「オフィス用の個室ブースはどう選ぶ?タイプ別の特徴や抑えておきたい消防法への対応などのポイントを紹介」の記事で詳しく解説しています。

コミュニケーションルールの整備

また、オフィスで複数人によるWeb会議を行うときは、Zoom Roomsなどのテレビ会議システムの導入が便利です。テレビ会議システムとは、会議室にカメラやマイクを常設し、会議室まるごとWeb会議のための空間にするものです。

会議室全体を録画できるカメラ、複数人で見ても問題ない大きなスクリーン、広い空間の音を拾うマイクがあるため、大人数でも画角やハウリングを気にせずWeb会議に参加可能です。Web会議に必要な設備がすべてそろっているため、それぞれPCを用意する必要もありません。オフィスで複数人がWeb会議に参加するとき、別拠点同士がWeb会議を行うときに便利な設備です。

コミュニケーションツールを整備

テレワークとオフィスワークの従業員同士の情報格差を解消するため、Web会議やチャットツールなどのオンラインツールの導入は不可欠です。緊急時にはまずオンラインツールで情報共有するなど決めておくと、テレワークの従業員でも情報を把握しやすくなります。

また、ハイブリッドワークの環境でもより密に情報や経験を共有するためには、ナレッジマネジメントツールの導入がおすすめです。ナレッジマネジメントツールとは、それぞれが経験した業務上の経験やトラブル対処方法をマニュアルとして残し、情報共有するためのツールです。

マニュアルはテキストで残してもよいのですが、動画を媒体とすると、話し手の表情やジェスチャーも含まれることから情報量が多くなり、記録に残りやすいものとなります。

動画によるナレッジマネジメントツールの一つがQumuです。Qumuは、特別な知識がなくても動画制作や編集ができるツールであり、パスワード設定、限定公開などのセキュリティ設定も充実しています。専用のポータルサイトでの配信も可能で、テレワーク中の従業員も気軽に視聴可能です。

勤怠管理システムの導入

ハイブリッドワーク中で働く場所が変わっても、いつどのくらい働いているのか把握しやすい勤怠管理ツールを導入しましょう。テレワーク中のPC操作(ソフトウェアの立ち上げ時間、操作時間、マウスやキーボードの操作状況)などを確認できるものであれば、テレワークでも客観的に勤怠状況を把握できます。

セキュリティ

ハイブリッドワークをするのであれば、オフィスの外からサーバーに接続しても問題ないようなネットワークの構築は必須です。VPN接続などを活用し、外部からの攻撃に備えましょう。

セキュリティ問題を解決するためには、従業員一人ひとりがセキュリティに関する正しい知識を身につけることも必要です。PCを操作するとき、Web会議に参加するときに相応しい場所はどこか、PCの正しい取り扱い方はどうするのか、といった基礎的な教育からしっかりと行うようにしましょう。

テレワークにはセキュリティ対策が必須!とるべき7つの施策とツールを解説

テレワークでのセキュリティ対策については「テレワークにはセキュリティ対策が必須!とるべき7つの施策とツールを解説」の記事で詳しく解説しています。

コミュニケーションルールの整備

テレワークとオフィスワークの従業員同士でもスムーズにコミュニケーションをとれるよう、ルールの整備も行いましょう。

ハイブリッドワークにおける、「メンバーがどこにいるのか分かりにくい」という問題を解決するためには、一目で居場所を把握できるよう可視化できるカレンダーツールなどを使います。それぞれカレンダーツールにどこで勤務しているのか登録することにより、ツールにアクセスするだけで場所を把握できるようにしなります。

また、コミュニケーションの内容に応じてチャットツールやWeb会議を使い分けることも効果的です。緊急性があるときにはすぐにWeb会議を開けるようにしておけば、テレワーク中の従業員もリアルタイムで状況把握できます。定期的な進捗報告や緊急性が低いものであれば、チャットツールを活用しましょう。

出社中の従業員だけでミーティングを行なったときは、のちほど動画や議事録を共有します。そうしておけば、テレワーク中や休暇中の従業員にも情報共有可能です。その際、Qumuなどのツールを使用すると、専門知識がなくても動画作成や共有をできるようになります。

まとめ

ハイブリッドワークでは、オフィスワークとテレワークが混在するため、どうしてもコミュニケーションやオフィス、勤怠管理などにデメリットは生じます。しかし、どれも新しいシステムやツールの導入、ルールの徹底により解決できるものばかりです。

ハイブリッドワークは働きやすいと考える人も多く、導入の意義がある働き方といえます。自社にとって最適な解決方法を模索し、ハイブリッドワークの導入が成功するようにしてみてください。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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