5分で理解できる!IT重説の5つのやり方をわかりやすく解説
2017年10月よりIT重説の運用が始まりましたが、「難しそう」「手間がかりそう」というイメージをもつ人もいるのではないでしょうか。しかし実際のところ、IT重説の導入は難しくありません。
この記事ではIT重説のやり方や必要な用意を、そのメリット・デメリットとあわせて解説します。
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そもそも「重説」とは何なのか
「IT重説を解説」とはいっても、そもそも「重説の意味すらもよく分からない…」という方も少なくないでしょう。以下では「重説」の概要を簡単に説明します。
「重説」とは、「重要事項説明」の省略形です。そしてここでいう重要事項説明とは、「その物件の品質や機能、また賃貸契約に対する重要なポイントの説明を受けること」と言い換えることができます。入居審査の際には、入居希望者側はこの重要事項説明を必ず受けなければなりません。
今まで物件の重説は、入居希望者が物件とは遠く離れた場所に住んでいる場合でも対面式で行われることが必須でした。例えば東京の物件を借りたければ、大阪に住んでいても交通費を支出して向かわなければなりません。
わざわざ重説のためだけに高いお金を出して長い距離を移動する、というのは誰にとっても面倒なもの。そのために、IT重説が導入されたともいえます。以下の段落でより詳しく見ていきましょう。
IT重説とは
それでは、IT重説とは何なのでしょうか。はじめに、その背景とともに簡単に解説します。
IT重説とは、ITを用いた賃貸借契約における重要事項説明のことです。前述した通り、つい最近までは賃貸借契約の重要事項説明は対面で行わなければならないと定められていましたが、IT化の流れを受け、非対面での重説も認められるようになったのです。以下にその経緯を解説します。
まず2013年6月に政府がIT化を推進すべく、対面・書面交付が前提とされているサービスや手続きのIT化に取り組むため「世界最先端IT国家創造宣言」を出しました。
これを受け同年10月「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」が策定され、ITを活用した非対面による重要事項説明について、具体的な対応策の検討を開始。
その後、2015年8月から2017年1月の約2年にわたり国土交通省で社会実験が1071件実施され、2017年10月からIT重説が本格的に開始されました。
IT重説では、対面での重要事項説明と同様に質疑応答がおこなえる環境が整っている場合、テレビやパソコンなどの端末を利用して、直接顔を合わせることなく重要事項説明ができます。
ただし、2019年10月現在、IT重説の対象は賃貸借契約に関する取引だけです。くわえて対面の重説と同様に、宅地建物取引士が賃借人に対し重要事項説明書を事前に交付することが必要となります。
IT重説のメリット・デメリット
そんなIT重説ですが、導入によって具体的には何がどのように変わるのでしょうか。気になる方も多いと思いますので、ここからはIT重説のメリットとデメリットを紹介していきます。
IT重説のメリット
まずはメリットとしては、業務効率化や利便性の向上などネットを用いた方式ならではの利点が挙げられます。
メリット1:移動時間が不要
一番のメリットは、最初の章で挙げた例のように、長距離を移動する必要がなくなることです。従来は対面での説明が義務付けられていたので、どんなに遠くても、宅建士や顧客が現地まで赴く必要がありました。それゆえ時間がかかってしまい、効率が悪かったのです。
一方でIT重説はネット環境さえあれば、お互いどこにいてもおこなうことができます。移動にかかる時間や手間が省け、効率的に業務を進めることが可能になったわけです。
そしてこれは契約者にとってもメリットです。たとえば高齢者や体が不自由な方の場合、来店が難しいことがあります。対面の重説では、事情にかかわらず店舗まで実際に足を運ばなければならないため、契約者にとって負担になります。
国土交通省が実施した調査でも、IT重説が便利であると感じた点について「店舗を訪問する必要がない点」が84.9%という結果が出ました。
(画像引用元:国土交通省「IT重説実施直後のアンケート結果」)
時間はもちろん、遠隔地の場合交通費だって馬鹿になりません。たとえば大阪から東京へ新幹線で移動する場合、指定席だと往復で30,000円弱の支出です。その負担が無くなるのは顧客にとって大きなメリットと言えるでしょう。
IT重説なら移動が不要なので、スムーズに契約を進められるのです。
メリット2:重説で契約者に伝えた情報を正確に残せる
また「重説で契約者に伝えた情報を正確に残せる」点も大きなメリットです。通常の重説では、説明の内容は記録されません。
そのため例えば入居者が契約違反を犯した場合に、「契約説明の際そんな話は聞かされていない、知らされていない」と主張してきても、説明した証拠がないので、どうしても言った言わないの水掛け論になってしまいます。
その点、すべてのやりとりをデータとして保存できるIT重説ならば、いつ、誰が、どのような内容を説明したのかを履歴から証明することが可能です。
メリット3:利便性の向上による集客効果
加えて「利便性の向上による集客効果」も見込めます。これまで賃貸契約において大きな障壁となっていたのが、面談の日程調整です。店舗に赴かなければならないとなれば、忙しい勤め人は仕事の都合がつかず、時間が取れないことも考えられます。
すると、日程調整がスムーズにいかず取引に時間がかかってしまいます。従来の重説では、顧客としてもこうした煩わしさがあったわけです。それがIT重説は、インターネット環境があれば時間・場所問わずおこなえます。顧客の利便性を高めることに繋がり、結果として集客効果も期待できるのです。
実際にIT重説の今後の利用意向についてのアンケートによると、「利用したい」と答えた人が53.1%、「どちらでもない」と答えた人が40.9%という結果が出ました。つまり、IT重説を導入している方が集客効果が表れる可能性が高いということになります。
(画像引用元:国土交通省)
また、「利用したい」と答えた理由についてのアンケート(複数回答)では、「店舗に出向く負担がなくなるから」と感じた人は94.2%と一番多く、移動削減のメリットが顧客にとって大きいことがわかりました。
次いで、先ほどメリット2で紹介した録画に関しても「やりとりが録音・録画されるから」と回答している人が15.0%存在するため、安心・安全の面でも顧客にメリットがあることがわかります。
(画像引用元:国土交通省)
IT重説のデメリット
もちろんIT重説はメリットばかりではありません。手間や通信障害リスクといったデメリットも存在します。ここからはIT重説にどのようなデメリットがあるのかを見ていきましょう。
デメリット1:ITツール導入の手間
まずは、ITツール導入の手間がかること。IT重説にはテレビ電話やパソコン、タブレット端末といったIT通信機器を用います。対面しながら会話できるアプリケーションも必要です。仮にこのようなITツールを所持していない場合、導入の手間はデメリットといえるかもしれません。
また、ITツールが必要なのはIT重説を受ける顧客も同様です。顧客がITツールに使い慣れていない場合は、デメリットに転じてしまう可能性もあります。
(画像引用元:国土交通省)
ただ2019年現在では、こうしたIT通信機器は導入済みの企業がほとんどでしょうし、アプリケーションのインストールも簡単です。そして、スマートフォンの普及も一般化していますので、導入については大きなデメリットではないでしょう。
デメリット2:通信環境の影響を受ける
その他のデメリットとしては、通信環境が悪い時のコミュニケーション障害のリスクが挙げられます。というのもIT重説はインターネットに依存する方式なので、環境によっては通信が不安定になってしまう危険があるわけです。
日本ではおおむね全国各地に電波が通っているものの、山間部など一部地域にはいまだに電波が悪い場所もあります。もし会話が途切れ途切れになってしまうと、IT重説は円滑に進みません。しかし、最初に説明した社会実験でも大きな問題は起きていないので、過度に心配する必要はないでしょう。
IT重説のやり方
「そうはいっても、IT重説ってなんだか複雑でややこしそう…。」そんな風に感じ、なかなか導入に踏み出せない企業もあるかもしれません。
けれども実際にはIT重説はややこしいものではなく、対面での重説と違うのは会議システムやそれに伴う準備が必要な点だけです。以下ではIT重説のやり方について解説します。
1、接続テスト
まずは、接続テストです。音声が切れることはないか、画面は固まらないかといった通信状態を確認します。事前にIT重説に必要な(後述)が整っているかも確認しておくことも必要です。
2、書類一式を契約者に送付
契約者へ書類一式(重要事項説明書・賃貸借契約書・進行表など)を郵送またはEメールで送付します。契約者の方に事前確認をして頂くためにIT重説実施日の前日までに届くように送りましょう。
3、IT重説を行う
書類を送付したら、次はIT重説の実施です。宅建士の取引者証を画面越しに提示し、登録番号を確認してもらい、重説に入ります。
4、契約者が書類を返送
IT重説終了後契約者が、不動産会社へ契約書類一式および必要書類を返送します。
5、鍵の引き渡し
契約開始日もしくはその前日までに鍵を渡します。
以上、5ステップでIT重説は完了です。
IT重説に必要な環境準備
ここまでの解説で、IT重説のメリットやデメリット、IT重説の実施日までの流れをお分かりいただけたかと思います。IT重説を実施するためには、準備しなければならないものがいくつかあります。本項ではIT重説に必要な環境準備について見ていきましょう。
ネットワーク環境
いわずもがなIT重説には、ネットワーク環境が必要です。ここで注意したいのは、有線回線など十分な速度の回線のネット環境で利用すること。通信速度が遅いと、重説の際コミュニケーションに支障が出る恐れがあるからです。
またIT重説ではWeb会議やビデオ通話をすることになるため、通信量がかかります。特に携帯電話回線を利用するケースなどは通信料金がかさむ可能性が高いので、注意が必要です。どうしても携帯電話回線を使わなければならない場合は、Wi-Fi環境でおこなうとよいでしょう。
Web会議システム
IT重説をするためのWeb会議システムの用意も必要です。Web会議システムには無料ものから有料のものまでいろいろあります。以下に、代表的なWeb会議システムを紹介します。
完璧なビデオ、クリアな音声。インスタント共有「Zoomミーティング」
製品名:Zoom ミーティング
対象企業:個人〜大企業まで幅広く利用可能
価格:4タイプで異なる。
・パーソナルミーティング:無料
・プロ(小規模チームに最適):2,200 円/月(年契約:26,400円)
・ビジネス(中小企業向け):要問い合わせ
・企業(大企業向け):要問い合わせ
自社の規模に合わせてプランを選択できるのが、「Zoom ミーティング」の特徴です。
プランによっては最大1000人まで1つのWeb会議に参加することが可能な上に、最大49人分の映像を同時に画面に表示できるという、大規模な会議にも向く仕様。社内外で大規模な会議を行うことがあるという企業におすすめです。
音質や画質の高さはもちろんですが、「Gmail」や「Googleカレンダー」といった外部のツールとも連携して活用することで、会議参加者のスケジュール日程の調整もスムーズに行えるようになっています。
また、全ての会議が暗号化される仕組みになっているため、セキュリティ面も安心。会議の際には、オプションであるアンケート機能や質疑応答機能といった便利な機能も活用することで、臨場感のある会議を実現できることでしょう。
Zoomの有料版を使うべきメリットとは?
Web会議ツールZoomの有料版を使うべきメリットについては、「Zoomの有料版を使うべきメリットとは?無料プランとの違いや決済方法を解説」のページでも詳しく紹介しています。ぜひあわせてお読みください。
無料で使えるSkype
(画像引用元:Skype)
「Skype」はMicrosoft社が提供する、いわずと知れたインターネット電話サービスです。基本的には無料で利用できます。けれども莫大なユーザー数を有するSkypeはその分、ハッキングやクラッキングの対象となるリスクも。
また一対一でのやりとりでは比較的安定した通信が可能ですが、複数ユーザーが参加すると画質・音質ともに低下することがあります。
なおSkypeには法人向けサービス「Skype for Business」があります。Skype for Businessなら、内容の暗号化など複数の要素で情報を保護してくれるので、セキュリティ面も安心です。月額2$(ユーザー1人あたり)から利用できます。
簡単操作で使う人を選ばないconnect live
(画像引用元:楽天コミュニケーションズ株式会社)
「connect live」は楽天コミュニケーションズが展開するWeb会議サービスです。Internet ExplorerやChrome、FirefoxなどのブラウザからURLをクリックするだけでWebサイトを閲覧するように会議ができます。ソフトウェアのインストールや複雑な事前設定も不要なので、ITスキルが低い人でも簡単に使うことが可能です。料金は月額1,950円~(主催者1ユーザーあたり)となっています。
テレビ会議システム
Web会議システムと並んで、テレビ会議システムもまたIT重説に大いに役立てられるツールです。
Web会議システムとの共通点は多いのですが、テレビ会議システムはカメラ・マイク・スピーカーといった専用機材の購入や、会議室でテレビを使えるようにする工事の実施など高いコストが見込まれます。そのため、Web会議システムよりも確かに導入するのに手間や時間がかかってしまうのは事実ですが、その分通信環境が安定しており音声や映像が国内外であっても途切れることが少ない、という大きなメリットがあります。
また、使用するデバイスがテレビというだけあって、会社内における全拠点で同時に接続することは可能か・出張や移動中にはスマートフォンやタブレットなどで接続することは可能か、など、導入の際には慎重に検討すべき課題も存在します。
Web会議システムと比較すると導入難易度の高いものですが、実際に導入してみて成功した事例も。以下でそれについて詳しく解説していきます。
1.ニシム電子工業株式会社ー遠隔地でもリモコン1つで参加できるテレビ会議で、コミュニケーションが活性化
九州電力向け、及び一般企業向けに電力サポート事業を展開するニシム電子工業株式会社には、本社や工場のほかに地方各地に17の拠点を置いており、テレビ会議システムを導入していました。
しかし、仮説拠点からでは会議に参加できない・操作が難しいといった問題点があり、そこで新たにWeb会議システムと新しいテレビ会議システムを導入することに決めたのです。
そうすると、普段使用している媒体からもリモコン1つの簡単操作でテレビ会議に参加できるようになり、遠隔会議が成功したことによりその回数も増え、社員同士でのコミュニケーションの活性化に成功したそうです。
2.株式会社朝日新聞ー既存のテレビを活用し、低コストで遠隔会議を行えるように
東京をはじめ、国内外問わず多くの総局・支局を有する株式会社朝日新聞。同社では、社内コミュニケーションの強化に向けてテレビ会議の充実を検討していました。しかし、既に導入しているテレビ会議の台数を増やすのはコスト面から考えて効率的とは言えません。さらに、専用機の場合にはそれが設置された一つの会議室でしか利用できないという制約もありました。
そこで、より低コストで行えるテレビ会議の導入を目指し、キャスターつきのラックにテレビ会議本体とモニタ・カメラといった周辺機器をまとめて設置。その結果、社内であれば好きな場所に移動させてどこでもテレビ会議が行えるようになりました。
5つの本支社部に共用端末と部門専用端末の計13台を設置したことによって、遠隔会議の回数も大幅に増え、「出張経費の削減」という全体的なコスト低下にも繋げることができました。
さらに詳しくテレビ会議システムの導入を成功させた企業事例を知りたい方は、別記事「導入企業から学ぶテレビ会議システムの選び方」もあわせてお読みください。
まとめ
IT重説と聞くと非常に難しく手間がかかるように思えるかもしれません。しかし実際には5ステップで実施可能で、決して難しいものではありません。これからの時代、移動の手間が省けるIT重説が主流になる可能性が高いので、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。