DX時代の今求められるリスキリングとは?取り組むべき理由や始め方を紹介
リスキリングとは、変化する時代に対応するために業務に必要な新たなスキルを習得すること、もしくは企業が従業員のスキル習得を支援することをいいます。政府もリスキリングを推奨していて、2022年には岸田文雄首相が「リスキリング支援に5年で1兆円を投じる」と所信表明しました。
このように注目を集めるリスキリングですが、「概要や重要性をいまいち理解できていない」「具体的な進め方がわからない」とお悩みの方もいるでしょう。本記事では、リスキリングが注目されている理由や取り組むメリット、取り組む際のステップを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
※参考:日本経済新聞「リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明」
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リスキリングとは
リスキリングとは、業務上必要となる新たなスキルを習得することです。また、企業が主体となって従業員のスキル習得を支援することも、リスキリングに含まれます。
経済産業省が公開している「デジタル時代の人材政策に関する検討会」の資料では、リスキリングを以下のとおり定義しています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
※引用:リスキリングとは
リスキリングは単にさまざまなスキル習得を目指すものではなく、「業務で価値を生み出すために必要なスキル」を対象にしているのが特徴です。
リスキリングに注目が集まる理由
リスキリングが注目されている理由として、DXの推進が挙げられます。DXとは、デジタル技術を用いて業務の改善や新規ビジネスの創出などを進める取り組みのことです。2022年のPwCコンサルティングの調査では59%が全社的にDXに取り組んでいると回答していて、日本企業でもデジタル技術の積極的な活用が進められていることがわかります。
しかし、従業員がデジタル関連の知識やスキルを持っていなければ、デジタルツールを導入しても使いこなせなかったり、デジタル化に抵抗感を覚えて社内にITツール活用が浸透しなかったり、DX推進の障壁となります。そこで、従業員にデジタル関連の知識・スキルを習得させるためのリスキリングが注目されるようになりました。
リスキリングは政府も推進していて、リスキリングを進める企業への助成率引き上げなど、リスキリングへの支援を強化する姿勢が見られます。
リスキリングに取り組むメリット
従業員のスキル習得は各自に任せている企業も多いかもしれませんが、リスキリングに力を入れることは企業側にも多くのメリットがあります。ここでは、企業がリスキリングに取り組むメリットについて詳しく見ていきましょう。
イノベーションの創出
新たなスキルの習得によって従業員の視野が広がると、革新的なアイデアが生まれる可能性を高められます。
例えば、経理や営業などに精通している人がデジタル関連の知識やスキルを習得すれば、業務を効率化させる画期的な方法や、これまでなかったような新しい商品・サービスを思いつくかもしれません。
このように、従業員が新たな知識やスキルを得ることで、企業の発展につながるアイデアが出やすくなります。リスキリングは従業員本人の成長だけでなく、イノベーションの創出が期待できるのが企業にとって大きなメリットです。
業務効率化・生産性向上
リスキリングはDX推進を背景に注目を集めている取り組みのため、従業員にデジタルスキルを習得させることを目標とするケースも少なくありません。リスキリングによって従業員がITツールを使いこなせるようになれば、これまで手作業で行っていた業務を自動化するなど業務効率化が可能です。
作業の自動化によって空いた時間を別の業務に充てられるため、生産性の向上も期待できます。また、作業量が減って残業や休日出勤が減れば、人件費の削減も見込めます。
人手不足の解消
「社内にIT人材が不足している」という悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。経済産業省の試算では、少子高齢化に伴って2019年をピークにIT人材は減少するという見込みです。この試算によると、2030年には最大で約79万人のIT人材の需給ギャップが生まれるとも考えられています。
このような状態で、新たにIT人材を採用するのは容易ではないでしょう。そこで、リスキリングによって今いる従業員をIT人材へ育成できれば、人材不足の解消につながるのもメリットです。社内で必要な人材を用意できるため、採用にかかるコストも削減も期待できます。
DXの実現
DXはデジタルツールやデータを活用して、業務の改革を進めることです。そのため、DXを実現するには、部署や業務内容を問わず従業員全員がデジタルツールを使いこなせるようになる必要があります。DXのために新しいツールやシステムを導入しても、実際に使用する従業員の知識や技能がおいつかなければ意味がありません。
従業員がデジタルスキルを習得できるようリスキリングに取り組み、DX実現を目指しましょう。
リスキリングへ取り組むステップ
リスキリングを従業員任せにすると人によって学習成果にバラつきが出て、従業員全体のスキル向上は見込めません。そのため、効果的なリスキリングを行うには、企業側がしっかりと計画を立てて制度として取り組むことが大切です。ここでは、リスキリングへ取り組む際の4つのステップを紹介します。
事業や経営計画に沿って習得するスキルを決める
マーケティング・デジタル・マネジメント・データ分析など、ビジネスに役立てられるスキルは多岐にわたり、従業員にどのようなスキルの習得を求めるのかは企業によって異なります。事業や経営計画に沿って、習得を目指すスキルを決めましょう。
従業員に習得してほしいスキルが複数ある場合は、優先順位もつけておきましょう。また、全従業員に同じスキルの習得を求めるのか、部署や業務内容、役職などで対象とするスキルを分けるのかなども検討が必要です。
教育プログラムを決める
習得を目指すスキルを決めたら、対象者・期間・教育内容など、具体的な教育プログラムを作成しましょう。複数のスキル習得を目指す場合は、難易度や緊急度に応じて学習の順番も決めておく必要があります。また、実施期間については業務の繁閑期を考慮することも大切です。繁忙期にリスキリングを始めても、従業員が時間を取れず効果を得られない可能性があります。
教育コンテンツ等の手段を決める
続いて、教育コンテンツ等の手段を決めます。教育の手段としては、以下のようなものが候補になるでしょう。
- 外部講師による研修
- 従業員主体の勉強会
- 通信講座
- eラーニング
- 自社制作の教材配布 など
社内に講師となれる人材がいるかどうかや、リスキリングのためにどのくらいの費用をかけられるのかによって、選択肢が変わってきます。また、教育コンテンツはひとつに絞るのではなく複数用意しておくと、業務の状況や現在のスキル・知識に応じて教材を柔軟に選べるため、効率的な学習が可能です。
実践と振り返り
教育コンテンツを用意したら、実際に従業員に利用してもらいましょう。リスキリングの実践で注意したいのが、研修や自己学習の時間を就業時間内に設定することです。
学習時間を就業時間外としてしまうと、従業員のモチベーションが低下してしまうおそれがあります。業務に役立てることを前提にスキルを習得させるため、リスキリングは就業時間内に組み込むほうが従業員からの不満が生じにくいでしょう。
従業員が主体的に学習に取り組めるように、リスキリングを実践する前に目的や重要性を従業員に共有しておくことも大切です。「会社にやらされている」という意識では、モチベーションが上がらず学習効率が下がってしまう可能性があります。
計画した教育プログラムが終了したら、振り返りを行います。スキルを習得して業務に役立てられなければリスキリングの成果が出たとはいえないため、「教育コンテンツによって目的のスキルが習得できたか」「スキル習得によって生産性や業務効率が向上したか」などを確認してください。
従業員のスキルを継続的に高めていくために、効果検証と改善のPDCAサイクルを回すことを意識しましょう。効果検証や改善策を検討する際には、実際に教育を受けた従業員からの声も参考にするのがおすすめです。
まとめ
DXの推進などを背景にリスキリングが注目されていて、日本政府も取り組みを推奨しています。リスキリングによって従業員のスキルを底上げできれば、イノベーションの創出や業務効率化、人手不足の解消など、企業にとって多くのメリットがあります。
リスキリングを実施するうえで大切なのは、事業計画に沿ったスキル習得を目指すことと、従業員が主体的に取り組める環境を整えることです。本記事で紹介したリスキリングへ取り組むステップを参考に、ぜひ実践してみてください。