情シスの業務効率化はどう進める?よくある課題3選とその解決方法を解説

情報システム部門(情シス)は企業のIT戦略やDX推進など重要な分野を担う部署です。IT活用を進めるために情シス部門を設置したものの、「問い合わせ対応や保守運用で手一杯」「常に人手が足りていない」といった悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。

経済産業省の試算では「2030年にIT人材が約79万人不足する」と言われており、限られた人員で情シスの仕事をこなすには業務の効率化が欠かせません。

本記事では、情シスが抱える代表的な課題と情シスを取り巻く環境の変化、業務を効率化する方法を紹介します。現在情シスで働いている方や、情シスの業務改善に取り組みたいと考えている管理者の方は、ぜひ参考にしてください。

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情シスによくある課題

情シスが抱える主な課題として、以下が挙げられます。

  • IT人材の不足
  • 業務過多・ノンコア業務が多い
  • 業務の属人化

上記3つの課題について以下で解説するので、自社に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

IT人材の不足

少子高齢化が進む日本では人材不足に悩む企業が多く、特にIT人材は将来的に大幅な人材不足が予想されています。2023年のOrangeOne株式会社の調査では、約7割の情シス担当者が人手不足を感じているという結果が出ていて、IT人材の確保が急務であると考えられます。

また、情シスは専門的な知識やスキルが求められる業務も多く、IT人材の「質」が不足しているという現状もあります。事実として、IPAが公開した「DX白書2023」では、DXを推進する人材の質の確保について日本企業の51.7%が「大幅に不足している」と回答しています。

業務過多・ノンコア業務が多い

ITツールを使って仕事をするのが当たり前の時代になり、情シスが対応すべき業務は多岐にわたります。

IT戦略の検討やDXの推進、業務システムの運用や従業員に支給するパソコンの手配、社内からの問い合わせ対応など大小さまざまな業務があり、既存の人材だけでは対応しきれない量の業務に、頭を抱えている人も多いでしょう。なかにはコピー機のメンテナンスなど、総務的な役割を担っている情シスもあります。

本来は、DX推進など重要性の高い業務を情シスに任せたいものの、問い合わせ対応のようなノンコア業務で手一杯になってしまうケースが多いようです。

業務の属人化

情シスは人材不足や専門知識が求められることから、業務が属人化しやすいのも課題のひとつです。

規模の小さい企業では、数人で情シス業務を担ういわゆる「ひとり情シス」になっているケースも珍しくありません。

「このシステムのことは情シスの〇〇さん以外はわからない」といった状態では、担当者が休んだり退職したりすると情シスの業務に支障をきたしてしまいます。

万が一、基幹システムなど業務上重要なシステムに障害が起きたとき、担当者が不在でほかに対応できる人がいなければ、企業にとって大きな損失を招くおそれがあります。

近年の情シスを取り巻く環境

情シスが抱える課題を考えるうえで、情シスを取り巻く環境の変化についても理解しておく必要があります。

ここでは、情シスの業務に影響を与える2つの背景について見ていきましょう。

働き方の変化

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、多くの企業がテレワークやハイブリッドワークを導入しました。流行が落ち着いて5類感染症に分類されてからも、テレワークやハイブリッドワークを継続している企業も多くあります。

株式会社ネクストレベルが2023年に実施した調査では、感染症の流行前後で働き方が以下のように変化しているという結果が出ました。

 

フル出社

テレワーク・ハイブリッドワーク

コロナ前(2020年4月以前)

77.5%

22.5%

コロナ禍(2020年4月〜2023年4月)

9.5%

90.5%

コロナ後(2023年5月以降)

38.5%

61.5%

テレワークやハイブリッドワークを行うには、Web会議ツールの導入や1人1台のパソコンの支給、VPN環境の整備など、情シスが対応すべきものが多くあります。このように感染症の流行で働き方が変化したことで、情シスの業務がさらに増えたと考えられます。

2025年の崖

2025年の崖とは、2018年に経済産業省が公開した「DXレポート」のなかで言及されている問題です。

日本企業のシステムは、部門ごとに業務システムを構築しているケースや過剰にカスタマイズを重ねているケースが多く見られ、複雑化・ブラックボックス化しています。これがDX推進の妨げやシステムの維持管理費の高額化につながり、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるとするのが、2025年の崖問題です。

この問題を回避するために、経済産業省は企業に対して既存システムの刷新とDXの実現を推奨しています。システムの維持費が増大するのは企業としても避けるべき事態で、情シスは日常業務に加えて2025年の崖問題にも取り組まなければなりません。

情シスの業務を効率化するには

情シスが、DX推進などの重要な業務に集中できる環境をつくるためには、業務の効率化が必要です。

情シスの業務を効率化する方法を5つ紹介するので、業務の見直しに役立ててください。

FAQやマニュアルの整備

情シスのノンコア業務のひとつが、社内からの問い合わせ対応です。問い合わせはいつ発生するか予測しづらく、ほかに対応中の業務があっても問い合わせ対応を優先しなければならないケースもあるでしょう。

FAQやマニュアルを整備して社内に周知しておけば、簡単な内容なら社員が自分で解決できるようになり、情シスへの問い合わせを減らせます。また、社員に自己解決を促すことで社内全体のITリテラシーの底上げにもつながります。

業務の標準化

業務の属人化を防ぐために、複雑な業務を標準化してマニュアルにまとめ、担当者以外でも対応できるようにしておきましょう。担当者が不在のときでも業務が滞ることがなく、新しい人材を採用したときの教育も楽になります。

また、業務が標準化されれば、担当者が変わっても業務の品質を一定にたもつことができるのもメリットです。

チャットボットやRPAの活用

業務によっては、チャットボットやRPAの活用で自動化が可能です。チャットボットは問い合わせに自動で回答するシステムで、質問の多い内容と回答を登録しておけば、問い合わせ対応の手間を大幅に軽減できます。

RPAは、定型業務を自動化できるロボットです。定型文のメール発信やデータの集計など、これまで手作業で行っていた業務をRPAで自動化すれば、その分の時間をより重要な業務に充てられます。RPAによる自動化はヒューマンエラーの防止にもなるので、業務品質の向上が期待できるのもメリットです。

クラウドサービスの導入

業務で使うシステムの運用・保守は情シスの代表的な業務ですが、クラウドサービスを導入すればサーバーの維持やメンテナンス、障害復旧やセキュリティ対策などを社内で対応する必要がなくなります。

また、クラウドサービスが提供する標準的なシステムに業務フローを合わせることで、2025年の崖で指摘されているシステムの複雑化やブラックボックス化の解消にもつながります。

一部業務のアウトソーシング

情シスが抱える業務の一部は、アウトソーシングが可能です。例えば、ヘルプデスク業務を請け負うサービスは多く登場していて、問い合わせ対応をアウトソーシングすれば情シスの業務負荷を大きく軽減させられるでしょう。ほかにも、社員に支給するパソコンの設定やネットワーク構築など、さまざまな業務のアウトソーシングが可能です。

情シスの人手が足りないと感じている場合は、外部に委託できるノンコア業務がないか検討してみてください。

まとめ

IT人材の不足やノンコア業務の多さから、情シスの人手不足に陥っている企業も多いでしょう。リソースが限られるなかでDX推進などを進めるには、日常的な業務の効率化が必須です。RPAによる自動化やクラウドサービスの導入、業務のアウトソーシングなど、業務効率化を実現する方法は多くあるため、ぜひ実践してみてください。





山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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