IT戦略とは?よくある失敗点と戦略を失敗させない3つのポイント
企業経営で頻繁に登場する「戦略」という言葉。多くの企業は戦略を立案し、その実現に向けて業務を推進していることでしょう。さらに、近年はIT化の流れもあり、ITの導入や活用を進める「IT戦略」という考え方も登場しています。
今回は戦略の基本的な考えやIT戦略立案のポイントについてお伝えしましょう。
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IT戦略とは
IT戦略とは、「ITツールを経営戦略の一部としていかに活用するかという視点から経営を考える、企業の中長期的かつ具体的な方針・戦略」のことです。
IT戦略の重要性は、一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の調査から知ることができます。2018年の調査では売上高1兆円を超える企業はほぼ全ての企業がIT戦略を重要視していました。企業の売上高が大きくなるにつれて「経営戦略を実現するためにIT戦略はなくてはならない」と考える傾向にあることが分かります。
(画像引用元:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)
では、そもそもなぜITに戦略が必要なのでしょうか。それは現代の企業経営におけるITの位置付けが影響しています。
例えば、製造業であればITを使って部品の仕入れから販売までの全体最適、サプライチェーンマネジメントが可能になります。また、企業内のあらゆる部門の人・モノ・お金を管理して最適なリソース配分を可能にするERP(統合基幹業務システム)も登場しました。
サプライチェーンマネジメントとは……「供給連鎖管理」とも呼ばれるもので、物流システムを1つの企業内部だけで限定するのではなく、複数の企業と共同して統合的な物流システムを構築し管理することで、企業成長を高める経営管理手法のこと。
人の手だけでは困難なことをITで実現して無駄を省き、よりリソースを効率的に配置できるようになったのです。
企業活動はITの力によって成り立っていると言っても過言ではないでしょう。しかし、だからと言って何も考えずにシステムやアプリケーションソフトを購入し、クラウドサービスと契約すれば良いわけではありません。企業にはITに投資できる予算があるはずです。当然ではありますが、予算を大きく超えた投資はできません。
それでは、実際にどれだけITに投資すればいいのしょうか。そこで求められるのが本章のテーマでもある「IT戦略」です。企業経営においてどのような戦略を立てているかでITにどれくらい投資が必要か変わってきます。
例えば、自社の販売力強化が戦略実現の上で欠かせないのであればSFA(営業支援ツール)やCRM(顧客管理システム)へ積極的に投資するというIT戦略が描けます。このようにITへの投資は会社の戦略がそもそもの根幹にあります。これをベースにITへの投資優先順位を考え、必要なソリューションを順次導入するのが大きな流れになるでしょう。
SFA(営業支援ツール)とCRM(顧客管理システム)とは?
ここで、前段落で登場したSFA(営業支援ツール)とCRM(顧客管理システム)という2つの言葉について説明します。
まずSFA(営業支援ツール)は英語の「Sales Force Automation」の頭文字を取った略語で、企業の営業活動におけるあらゆる顧客の個人情報や過去にどんな商材・サービスを購入したか、また営業部門の案件進捗率などの情報を一括で管理するツールです。
顧客の情報や案件の進捗率と予算を基にしながら、「この顧客に対してどのようなアプローチをしたら購入にまで辿り着いてもらえるか」という営業の核となる戦略を導き出すことを可能にする機能があります。
組織内でそれぞれのメンバーが現在どのくらい案件に対して動けているか、また目標を達成するためにはどうしたらいいのかを全員で共有することができるため、業務の効率化の一環として注目されています。
また、CRM(顧客管理システム)は「Customer Relationship Management」の略語。その名の通り、過去の顧客の個人情報や購買情報を管理し、それを基に効果的な営業活動を考えることを可能にするツールです。これにより、顧客一人ひとりに最適な購買の提案ができるようになります。
SFAが営業活動の管理という面が強いのに対し、CRMは顧客情報の管理という面がメインだといえます。両方とも営業を含めたマーケティングの場面で重宝されるものなので、どちらの方が良いのかという点については一概には言えません。
そのため、自社の課題に合わせながらどちらのツールを活用すべきか検討するのがいいでしょう。別記事「IT経営で解決できる経営課題と成功した3つの事例」も合わせてご覧ください。
企業が陥りがちな失敗とは
「IT投資を考える上で企業の戦略が重要であり、それを踏まえて優先順位をつけてソリューションを導入する」。言葉だけ聞くととても単純なように思えます。
しかしいざ実行に移すとそこには様々な「失敗」があります。一体どんな失敗があるのか、ここでは主に4つの例をご紹介しましょう。
手段と目的の相違
ITは戦略を実現する手段であるとお伝えしましたが、気づいたらITソリューションを導入することが目的になってしまうケースも見られます。ITソリューションを比較検討していると、つい個別の機能や価格に目が行きがちです。当然これらの要素も重要ですが、もっとも重要なのはソリューションを導入して実現したい目的を達成することです。
手段と目的を間違えない。ITソリューションの導入を成功に導く上で常に意識しておきたいところです。
個別最適
ITソリューションの導入でありがちなもう一つの失敗は「個別最適」です。一見すると良さそうに見えますが、ITソリューションの導入は会社全体にベネフィットをもたらす「全体最適」が理想です。
例えば、財務・経理部門が会計システムを導入するとします。会計システムであれば売り上げの計算もできるのが理想ですが、そうすると営業部門が使用している売り上げ管理のシステムと連携できるようにしたいものです。データの受け渡しがスムーズになるメリットが期待できます。
しかし、もし各々の部門で最適なソリューションを選んでしまうと、システム間の連携が取れず、システムが当初想定していたより機能しないリスクがあります。データの取り込みに時間がかかってしまうなど、無駄な作業が発生してしまう可能性もあるのです。
ITソリューションを導入する際は、全社のITを管理するチームや担当者の存在が欠かせません。社内にITのプロフェッショナルがいることで、個別最適ではなく全体最適を実現できる可能性が高まります。
オーバースペックなソリューションの導入
ITソリューションの導入を検討していると、当初想定していた以上に話が大きくなりがちです。導入に関わる担当者が増えれば増えるほど、各々の思惑が絡み、必要以上のスペックのITソリューションを導入するリスクが高まります。
オーバースペックなソリューションを導入すると、コストをかけたにも関わらず使わないという事態に陥ります。結果として、費用対効果が良くない投資をして失敗に終わってしまうのです。
こうならないためにどうすべきでしょうか。その一つの手段としてスモールスタートでITソリューションを導入することが挙げられます。戦略を実現する上で必要最低限の機能を洗い出して、最低限の投資でスタートする。そして必要に応じて追加機能を導入して少しずつ投資を進める。これにより投資のロスを抑えることができるかもしれません。
近年はクラウドサービスの登場でこのような投資がやりやすくなっています。「IT投資はスモールスタート」を意識してみてはいかがでしょうか。
失敗による予算の縮小
人間にも失敗があるように企業の投資にも失敗はつきものです。それはITソリューションへの投資も例外ではありません。
だからこそ失敗から学び、より良いITソリューションへの投資につなげるという発想を持ちたいものです。ここまで挙げてきた例に該当する企業も、それを次に活かすことはできます。ITソリューションはテクノロジーの進化に応じて形を変えて提供されています。失敗を活かせばより良い投資ができるはずです。
ITは企業の戦略を実現する強力なツールです。失敗したからITには投資しないという発想では、今後ITに積極投資する競合他社に負ける可能性もあります。それだけに失敗には蓋をしないことをおすすめします。
IT戦略を成功させるには
IT戦略の失敗を踏まえて、どうすれば企業を成長に導くIT戦略が描けるのでしょうか。この章ではそのポイントを3つご紹介します。
フレームワークを活用する
先ほどもお伝えしたとおり、ITは目的を実現する手段です。ITを導入して、どのようなステップを踏んで目的を達成するか考える必要があります。
とはいえ、真っ白な紙にいきなりこのステップを描くのは困難です。そこでおすすめしたいのが「フレームワーク」の活用です。フレームワークはITを導入するにあたり考えておくべき項目やステップが示されており、必要事項を書き込めばITを導入して成功するまでの流れができます。これからIT戦略を立案する企業は、このようなフレームワークを用いて戦略を考えることをおすすめします。
またフレームワークはインターネットで検索すると複数出てきます。例えばクラウドサービス最大手・アマゾンウェブサービス (AWS) のフレームワークは有名ですが、自社にとって使いやすいフレームワークをインターネットで探すことをおすすめします。
(画像引用元:アマゾンウェブサービス)
クラウドサービスを活用する
かつてITソリューションを導入する際は、自社内にサーバーを立ててシステム構築を行うオンプレミス型やパソコンにインストールして使用するソフトウェアが主流でした。しかし、近年はその流れが変化しつつあります。なぜなら、クラウドという新たなサービス形態が登場したからです。
株式会社MM総研がおこなった国内クラウドサービスの実績と予測に関する調査では、2018年度の国内クラウドサービス市場は前年度比18%増の1兆9,422億円という結果が出ました。
(画像参照元:MM総研)
クラウドサービスの特徴は月額課金型で、導入の初期コストを押さえ、短期間で使用できることにあります。これが多額のコストと構築に長期間かかるオンプレミス型との違いです。オンプレミスのようにオーダーメイドでシステムを構築することは難しいですが、先ほどお伝えしたスモールスタートを実現するには適しています。
特に大規模なIT投資が困難な中小企業はクラウド・サービスの導入から検討するようにしましょう。
成功事例を参考にする
世の中にはIT投資で成功している企業も数多く存在しています。そして、その成功例は事例集にまとめられていることもあります。
IT戦略を立案する上で、これらの成功事例を調査することでより精緻なIT戦略を描けるでしょう。ここでは、IT投資の成功例がまとめられているサイトを2つご紹介します。
攻めのIT銘柄
(画像引用元:経済産業省)
経済産業省は東京証券取引所に上場している企業の中から優れた取り組みをしている企業を毎年「攻めのIT銘柄」として選定しています。選定企業一覧だけでなく、サイトの下部には「選定企業レポート」がアップロードされており、企業が参考にできるよう整えています。
IT導入補助金の活用事例
(画像引用元:経済産業省 近畿経済産業局)
攻めのIT銘柄が大企業向けの事例なら、IT導入補助金の活用事例は中小事業者向けになります。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が自社の課題を解決するITソリューションの導入費用を一部補助するという制度です。補助額の大きいB類型は最大450万円の補助が受けられます(補助率1/2以下の制限あり)。条件に合う企業は申請を検討する価値は大いにあるでしょう。このような補助金を活用しながらITソリューションを円滑に導入したいところです。
ITツールを積極的に導入する
働き方改革が推進される一方、慢性的な人手不足に陥っている企業も少なくありません。そのような状況の中で働き方改革を成功に導いて生産性を向上させようと思った時、ITツールの運用は非常に重要となってきます。ITツールを使って、人が介在しなくても仕事が回る状況にすることが必要不可欠だからです。
そのため先ほど紹介したクラウド・サービス以外にも、業務を効率化することを重視してその他のITツールも積極的に導入していくことが必要であるといえます。しかし、ひとくちにITツールといっても企業によって課題や導入目的は異なります。なので、よく考え抜いた上で適切なツールを選択すれば、さらなるIT戦略の充実化が望めるでしょう。
一般的には、ITツールの活用は社内のコミュニケーション課題を改善し労働生産性を高めることを可能にします。そのようなITツールの種類は一体何があるのでしょうか。
①Web会議システム
パソコンやタブレット、スマートフォンを利用して「いつでも・どこでも」会議にオンラインで手軽に参加できるというものです。
②ビジネスチャット
メールよりも気軽にコミュニケーションが図れるため、コミュニケーションの速度アップが見込めます。また、コミカルなスタンプ機能が付いているものも多いので、上司や部下といった間柄を問わず親しみを持って連絡をとることができるでしょう。
完璧なビデオ、クリアな音声。インスタント共有「Zoomミーティング」
出典:Zoom公式ページ
Zoom ミーティングは、世界各国75万以上の企業や組織で利用されているWeb会議サービスです。
通信速度が比較的低速なネットワーク回線でも途切れにくく、音声の途切れがほとんどありません。
Web会議の開催にライセンスを取得する必要があるのは主催者のみで、参加者は会議アドレスへ招待されることで、ブラウザから誰でもWeb会議へ参加できます。
13年連続Web会議の国内シェアNo.1(※)を獲得しているブイキューブが提供するZoom ミーティングの有料版では、ミーティングの映像や音声を録画・録音してクラウド保存しておくことが可能です。
投票機能やユーザー管理機能もついており、ビジネスシーンでも快適に利用することができるでしょう。
また、プランに問わずメールでのサポート体制を提供しています。エンタープライズプランでは企業に合わせて導入・運用を支援してくれるなど、利用者に最適なサポートが充実しています。
※「2020 ビデオ会議/Web会議の最新市場とビデオコミュニケーション機器・サービス動向」調べ
Zoomの有料版を使うべきメリットとは?
Web会議ツールZoomの有料版を使うべきメリットについては、「Zoomの有料版を使うべきメリットとは?無料プランとの違いや決済方法を解説」のページでも詳しく紹介しています。ぜひあわせてお読みください。
③オンラインストレージ
データをクラウド上に保管することで、どこからでも・誰でもデータを利用できるようにするというものです。
さらに詳しくITツールの活用方法について知りたい方は、「働き方改革を実現するために有用なITツールの種類と活用事例」をあわせてお読みください。
まとめ
今回はIT戦略の基本的な考え方や、導入でつまづきやすいポイントをお伝えしました。ITの力は企業経営に不可欠なものになりつつあります。
お伝えした通り、ITで効率化を図るツールや手法は多岐にわたります。しっかりと目的に沿ったIT戦略を描いて、さらなる成長を実現しましょう。