パートナーの海外赴任をきっかけにイタリアでリモートワークに挑戦した話

パートナーの海外赴任をきっかけにイタリアでリモートワークに挑戦した話

はじめまして、やまもとゆうこです。

私は2018年の3カ月間、イタリアでリモートワークをしていました。仕事は会社員で、サイボウズというIT企業に勤めています。普段はマーケティングチームで、広告の企画やwebサイトの運営などを行っています。

もともとリモートワークが浸透している会社なので、会社の外で働くこと自体は珍しいことではありません。とはいえ、時差のある海外で長期間となると前例も少なく「本当にできるかな?」という不安もありました。\

実際にやってみたら意外とすんなり仕事ができた一方で、行ってみて分かった意外なつまずきなどもありました。私の体験を通して海外リモートワークに備えるべきポイントを紹介できたらと思います。

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夫が海外駐在。妻はどうする?

ある日の夕飯どきに、夫にこう切り出されました。

「仕事でイタリアに行かないかって言われてる」

期間は2年。夫のキャリア的には良い話なので「行きたいなら行ってみれば」と答えました。

一般的に夫が海外赴任をする場合、妻の選択肢は2つです。仕事を辞めてついていくか、仕事を続けるために夫に単身赴任をしてもらうか。しかし私はそのどちらも選べませんでした。今の仕事好きだから退職はしたくないし、離れて住むのも寂しいから。

冒頭に書いたとおり、サイボウズという会社は在宅勤務の活用をはじめ、働き方を社員が自由に選択できる文化があります。それなら会社辞めずにイタリアでリモートワークすることもできるんじゃないか? と思い立ち上司に相談してみました。

「ダンナが海外赴任になりまして、ちょっとついていきたいんですけど」

とおそるおそる上司に相談してみると、返ってきた、第一声は

「面白そうですね!」

一瞬でも怪訝な顔をされるかなと思ってたのですが、上司は全く動じることはなく

「仕事は問題ないと思うんで、ぜひリモートワークの知見をためてもらえれば」

と予想の斜め上をいく反応。手続きも働き方を変える申請を1つ出すだけであっさり承認。ビザの関係上3カ月という期限付きですが、イタリアでリモートワークをさせてもらうことになりました。

東京で事前においていった仕事とイタリアに持っていった仕事

東京にいた時は9時〜18時を定時として働いていましたが、イタリアではなるべく日本と重なる時間が長くなるように、8時〜17時を業務時間にさせてもらいました。また、お給料は上司と相談し、海外リモート中だけ時給制に変更しました。渡航前はどれくらい働けるかが未知数だったので、1日8時間働けなかった時にも柔軟に調整できるようしたかったためです。

実際にやってみたら1日フルタイムで働ける日の方が多かったですが、生活に慣れるまでの間、勤務時間を柔軟に調整できたのはありがたかったです。

仕事内容は、一部を除いて変わらずに継続しました。普段担当している製品プロモーションには、広告の企画、セミナーやイベント、webサイトの運営……などの業務があります。セミナーやイベントは当日現場にいないと成り立たないので他の方に代わっていただきましたが、その他の業務は全てイタリアに持っていきました。

制作物に関わる仕事に関して、細かいものを無視して、大きな仕事のフローだけをざっくり書きだすと

  • コンセプトを決める
  • 協力者の調整をする
  • 原稿を作る
  • 仕上げる

という流れで進むと思います。このうち「コンセプトを決める」は東京にいるうちに終わらせました。というのも、コンセプト決めはチームメンバーとブレストをしたり、他部署の意見を聞いたりと、会話をしながら進める作業が多いからです。テレビ会議でもできなくないけど、やはり会議室でホワイトボードを囲みながら話した方がやりやすいことが多いです。

コンセプトが決まり制作物の方向性が定まりさえすれば、あとの行程はオンラインのやりとりでもなんとかなると考えたので、渡航日までに「コンセプトを決める」を終わらせるように調整しました。

多くの業務には、顔を合わせて話をした方が良いフェーズと、リモートでもできるフェーズがあると思います。一見リモートは難しいかな? と思う業務でも、フェーズごとに、リモートに向いていることと向いてないことを上手に整理すれば、リモートワークが可能となる部署も増えるかもしれません。

イタリアでの仕事のやり方。グループウェアとテレビ会議が生命線

私のリモートワークを支えてくれたツールはグループウェアとテレビ会議。この2つがなければリモートワークは絶対に成り立たなかったと思います。

業務の連絡は全てグループウェアで行っていました。使っていたのは自社製品のGaroon(ガルーン)とkintone(キントーン)。どちらも「スペース」という機能があり、トピックごとにスレッドを分けてやりとりができます。

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Garoonの「スペース」。トピックごとにスレッドを分けてやりとりできる

リモートワーク中の業務は資料や記事の制作が多かったのですが、内容の相談、取材の調整、原稿のレビューなど全て「スペース」上でやりとりをしていました。メールに比べてより気軽に、スピーディにやりとりできるのでオンラインでも仕事が進めやすいです。

また、サイボウズのグループウェアの良いところは、情報がトピックごとに自然と整理されていくところ。イタリアと日本には-7時間の時差があるので、私が朝パソコンを開くと、東京側ではすでに7時間分の仕事が終わった状態です。毎日「東京側では今日どんなやりとりがあったのか」を把握するところから1日がスタートするのですが、グループウェアで情報が整理されていることでその作業が圧倒的に楽になります。

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もしこれがメールだったら、全ての情報が受信ボックスに一緒くたに入ってくるので、それらを分類して時系列で理解する作業だけで大変だったと思います。

また、基本的には全員オープンな場所でやりとりをしているので、他の人が今どんな仕事をしているのか、どんなことを考えているのかが離れていても伝わってきました。場所が違っても一体感を感じながら仕事ができたのは、このような情報共有があったからだと思います。

とはいえ、コミュニケーションがオンライン中心になるので、気をつけていたこともありました。読みやすい文章を心がけたり、やりとりの回数が少なく済むように、相手が気になりそうなことを先回りして書いておいたりしましたし、文章だけで伝わりづらいときは、パワーポイントで簡単に図を作って添付することもありました。テキストコミュニケーションのスキルはある程度必要かなと思います。

業務のやりとりはテキストが中心でしたが、直接話す必要がある場合はテレビ会議を使いました。定例会議はもちろん、「ちょっとこのあと話せますか」というような急な打ち合わせもありましたし、記事制作のための取材にテレビ会議で参加することもありました。

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サイボウズ社内のテレビ会議の様子

オフィスで隣の席の人に「ちょっと打ち合わせしない?」と声を掛けるのと同じくらいの気軽さでテレビ会議が使えたからこそ、離れていてもスムーズなコミュニケーションができました。

テレビ会議の際、ありがたかったのは、打ち合わせ中に東京のメンバーが定期的に「何か意見ありますか?」と話を振ってくれたことです。画面越しだとどうしても発言のハードルが上がってしまいますが、東京側がリモート側を気遣ってくれたことで、遠慮せずに発言できるようになりました。また、タイムラグがあっても議論しやすいように、なるべく短い文章に区切って話すように心がけていました。

これからテレビ会議の導入を検討される企業の方も多いと思いますが、高度な機能を比べる前にまず「誰でも簡単に使えること」「気軽にどこでも使えること」が必須要件だと私は思います。

完璧なビデオ、クリアな音声。インスタント共有「Zoomミーティング」

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出典:Zoom公式ページ

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Zoomの有料版を使うべきメリットとは?

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海外リモートで困ったこと

イタリアでのリモートワーク、全てが順調だったかというとそうではなく、当然困ったこともありました。

一番つらかったのは時差の問題です。イタリアで業務を始めるのは午前8時で、東京はすでに午後3時になっています。東京側の定時が午後6時なので重なる時間は3時間しかありません。チームメンバーのほとんどは残業せず帰宅するので、午後6時以降は連絡がとれなくなってしまいます。正味3時間で必要な打ち合わせを済ませ、東京のメンバーに確認すべきことを全てクリアにする必要があります。なので毎日午前中は慌ただしく過ごしていました。

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特につらかったのが「当日中」で依頼される確認やレビューでした。日本にいるメンバーは朝依頼したつもりでも、イタリアにいる私にとっては3時間しか猶予がありません。打ち合わせが多い場合は日本の定時までに返事を返すことが難しく、期限を調整してもらうこともありました。

幾日かたち、何度かやりとりが繰り返していくと、東京のメンバーが時差を考慮してくれるようにもなったので、このあたりは慣れの問題だと思います。「海外勤務のメンバーに何かを依頼するときには時差を考慮すべき」という学びが得られたのは自分にとってもチームにとっても良かったと思います。

またもう1つ、つらかったというか残念だったのは、イタリアでコミュニティを作る時間がなかったこと。行ってみて初めて実感したことですが、平日8時間在宅で日本の仕事をしていると、現地の方々と関わる時間がほとんど作れません。生活するのに支障はないけれど、せっかく長期滞在しているのだからイタリアの人ともっと関わりを持てた方が良かったなあと、後になって思いました。もし次の機会があったら、日本の仕事は週3〜4日にして※、学校に行ったり習い事をしたりする時間を持っても良いかなと思います(サイボウズは正社員でも働く日数を自分で選択できます)。

「夫or妻が海外赴任になりまして」に備えるために

現代は夫婦共働きの時代です。そして「さみしいけれど我慢して単身赴任してもらおう」「この仕事を続けたいけどしょうがないか……」などと諦めてしまう時代でもないと思います。

私の場合は「夫が海外赴任」でしたが、逆のケースも十分あるでしょう。会社側からすれば将来を有望視していた社員に、突然「妻が海外赴任になりまして……」と退職の相談を受けるというケースも出てくると思います。

そういう事態に備えて「リモートワークに適した仕事のやり方」に徐々にシフトする必要があるのではと思います。

私の場合、ほとんどの社員が在宅勤務制度を使っているので、リモートワークに適した仕事のやり方が自然に行われていました。情報をグループウェアに集約したり、テレビ会議の時にリモート側が参加しやすいよう配慮したり、というノウハウや下地があったからこそ、いざ海外リモートワークになった時もスムーズに仕事ができたのではないかと思います。

同様に、リモート制度がある会社であれば、事前に上記のような基礎を共有しておくことで海外リモートワークは案外できてしまうのではないかとも思います。

「そういう事態になったら考えよう」ではなく徐々にリモートワークに適したツールや風土を整えていくことが、いざという時のために必要なのではないかなと、現場のいち社員は思うのでした。

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やまもとゆうこ
著者情報やまもとゆうこ

サイボウズ ビジネスマーケティング本部所属。中堅大規模向けグループウェア Garoon のプロモーションを担当。

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