オフィスの「音」が生産性を左右する?雑音問題&情報漏えいリスクを回避する3つの方法

現在のオフィス環境を、テレワークやハイブリッドワークなどの働き方に合わせ改善する必要性が出てきた企業もあるのではないでしょうか。従業員が働きやすいオフィス環境は従業員の集中力はもちろん、満足度も高めます。

従業員満足度を顧客満足度と同等に重視する企業は、顧客満足度だけを重視する企業よりも業績が高い傾向にあります。従業員の満足度が上がれば生産性の向上にも期待できるでしょう。

これからのオフィスの在り方を考えるときに忘れてはならないのが「音」の問題です。例えばオープンオフィスを採用している企業からは、周囲の会話が耳に入りやすくなって集中力が削がれがちです。

また、自席でWeb会議をする際の話し声がうるさいという状態に悩むこともあるでしょう。Web会議においては音漏れによる情報漏えいのリスクや、音声の聞き取りづらさといった課題もあります。

そこでこの記事では、オフィスの音問題がもたらす課題とその対策をまとめました。オフィス環境の見直しを検討している担当者はぜひ参考にしてください。

※参考:厚生労働省「取り組みませんか? 「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保」

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オフィスにおける音の課題

オフィスにおける音の課題

空間の圧迫感やネットワークの安定性などと異なり、音は目には見えません。しかし話し声や電話の音、キーボードのタイプ音、コピー機などの作動音など、オフィスにはさまざまな音が存在し、ときに人の集中力を削いでしまいます。

オフィス環境における音の課題は、「気に障る音を排除したい」「必要な情報を聞き漏らしたくない」という社員の要望にくわえ、「情報漏えいリスク」の3点に集約されます。

雑音で集中が妨げられる

音のせいでうるさいと感じられて集中できない経験は、実際に体験したことのある人も多いのではないでしょうか。

論文「無意味雑音存在下での単純計算作業時におけるうるささ・疲労感および作業成績」では、雑音が存在するときに静穏時と比べて作業量が減少するという実験結果が掲載されています。

同論文では雑音が与える心理面への影響にも触れられています。雑音が存在するときは「気が散る」「物事に熱心になれない」といった集中力の減少に関する項目を訴える割合がアップしたそうです。

従業員同士の会話やコピー機の音などは、仕事上、必要不可欠でしょう。しかしどうしても音が発生し、仕事に集中したい人にとっては雑音と認識される可能性があります。

情報漏えいのリスク

会社の機密情報の漏えいは社会的・金銭的に大きな損失につながり、一度このような事態に陥ると企業の生産性は大きく下がるでしょう。この情報漏えいリスクはテキストなどのデータだけではなく、会議のときの音漏れにもあります。

例えばクライアントの個別の課題を取り扱うコンサルティング会社では、応接室で秘匿性の高い会話をするケースも少なくありません。応接室から会話が聞こえてしまう状態だと、それが原因で顧客の大切な情報が漏えいしてしまうかもしれません。

コクヨエンジニアリング&テクノロジー株式会社が2015年に実施したアンケート調査では、役員・部長クラスのおよそ8割が、応接や商談時に会話漏れを気にしているという結果が公表されました。同調査では、社内会議中の音漏れがもっとも気になるタイミングは機密事項や個人情報を話すときである、という結果も出ています。

応接時や会議時の音漏れがもたらす問題は、他の従業員の集中を妨げることだけではありません。財務情報や人事情報、個人情報などの機密情報が外部に漏えいしてしまうリスクがあります。オフィスの音環境を考える際は、情報漏えいのリスク対策も視野に入れましょう。

話し声が聞き取りづらい

オフィスの音が気になる環境下では、相手の話し声が聞き取れず、会議や会話の効率が下がります。大切な会議で情報を聞き逃して、あとから問題になる可能性もゼロではありません。

Web会議も、そのまま自席で行うと騒音の原因になるほか、相手に自分の声が届きにくくなります。株式会社ブイキューブが実施したアンケートによると、オフィスで周囲の人がWeb会議しているのを「うるさい」と感じた経験がある人は、第2回の緊急事態宣言期間で46.5%にのぼりました。

自席でWeb会議をしなければならないとき、従業員同士の会話や機械音などの雑音は、Web会議で相手の声が聞き取りづらくなってしまう原因の一つです。またマイクがオフィスの雑音を拾ってしまうと、相手に聞こえてしまい、話をしにくいだけでなく相手に失礼になります。

従業員の生産性を高めるには、気兼ねなく話せて会話が聞き取りやすい環境を備えることも大切です。

オフィスの音の問題の解消方法

オフィスの音問題を改善すれば、従業員のモチベーションや生産性のアップにつながる可能性があります。話し声や機械音などの雑音を上手に抑制できれば、集中して作業している従業員の邪魔をしません。背後の雑音が少ないと、互いの会話やWeb会議、電話などの会話も聞き取りやすくなるでしょう。

また、防音対策を講じれば情報漏えいリスクの減少にもつながります。会議で音漏れを心配する必要がなくなれば、声をひそめて話す気遣いが不要なため、対話が活性化するかもしれません。

このように音環境を改善すれば、オフィス全体の生産性アップが見込めます。ここで、先に前述した音の課題を解決する方法を紹介します。

ワークブースの導入

オフィスの音問題を解決する考え方の一つが「ブロック」です。壁や間仕切りを設ければ、物理的に音を遮断(ブロック)できます。

ワークブースにはさまざまな形状がありますが、特に防音性が高いものは電話ボックスのような形状となっている「個室型」です。個室型ワークブースは、1人用だけでなく2〜3人用の少人数用もあります。

完全に床、壁、天井が全て囲われているため、オフィスの音で集中力が途切れる心配がなく、静かな集中ブースとして活用可能です。音漏れの心配も軽減できるため、Web会議ブースとしての活用もおすすめです。少人数用のワークブースであれば、会議室としても使えます。

株式会社ブイキューブの「テレキューブ」も個室型で音をブロックできるワークブースです。オフィス家具メーカーの「オカムラ」と共同開発し、長時間作業しても疲れにくい設計を実現しました。高い防音性も備えていて、Web会議や電話、少人数の会議のプライバシーを守れます。

吸音・防音パネルの設置

オフィスの音問題を改善するもう一つの考え方が「吸音」です。音を吸収する素材をオフィスに設置することで、防音性を高めたり、反響音を減らしたりすることができます。オフィスの壁を工事して防音壁にする方法もありますが、工事が困難な場合は吸音・防音シートを貼る、吸音できるパーテーションを置くといった施策が有効です。

先に述べたワークブースの中には、吸音・防音素材を使ったオープン型のものもあります。防音しつつ、空間を区切ってプライベートな空間を確保したいときに活用できます。

ただし補助的に使う吸音・防音パネルは、これだけで100%遮音するのは困難です。オープン型のワークスブースも壁の一部や天井がない形状のため、完璧に遮音できる訳ではありません。

そこで会議室に合わせて、吸音・防音パネルと別の施策を組み合わせるのも有効です。例えば壁面には吸音・防音パネルを設置し、天井には次に紹介するサウンドマスキングシステムを設置するというやり方もあります。

サウンドマスキングの導入

オフィスの音対策で考慮したい最後の考え方が「カバー」です。別の音を発生させることで雑音や騒音をかき消す方法で、「マスキング」とも呼ばれます。

そもそもマスキングとは、周囲の音によって別の音が聞こえなくなってしまうという人間の聴覚特性によって起こります。例えばテレビの音量を上げているのに、掃除機を使うと番組の音声が聞こえなくなるような現象がマスキングです。

この特性を利用し、オフィス内に特殊な音を流して会話などの雑音をカバーするという手法が取り入れられています。これが「サウンドマスキング」です。特殊音をあえて流すことで、隣席のタイプ音や話し声、近くの機械音が気にならず、集中力を削がれません。音漏れも軽減できるため、情報漏えい対策にもなります。

まとめ

オフィスの音環境は従業員の生産性を左右します。従業員同士の会話や電話の音、付近の機械音といったさまざまな音は、従業員の集中力を邪魔したり、会話を阻害したりしてしまいます。会議の会話漏れは情報漏えいリスクにつながりかねません。

これらのオフィスの音問題は「ブロック」「吸音」「カバー」の3つの考え方で対処できます。視覚的にも個別のスペースを確保しつつ、しっかりと防音対策を行いたい場合は、個室型のワークブースを設置するとよいでしょう。

「嫌な音は耳に入れたくないけれど、重要な情報は聞き漏らしたくない」オフィスの音環境に対する意見は、一見、相反する要望に見えます。しかし同時に叶えることは可能です。従業員の生産性向上を考慮しつつ、オフィスの音対策を見直していきましょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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