オリンパスから独立したOMデジタルソリューションズが挑んだゼロからのオフィスづくり

2021年、オリンパスの映像事業部門が分社化し、新たに誕生したOMデジタルソリューションズ。カメラやICレコーダーなどの映像製品ブランド「OM SYSTEM に加え、その技術資産を応用したソリューションビジネスや製造受託事業を展開するなど成長に向けて着実に歩みを進めている。その裏側には、独立に向けた限られた時間の中で「社員が働ける場所」を確保し、新たな企業文化を醸成しようと奮闘する総務部門の姿がありました。

「何もない状態から、とにかく社員が働ける環境を整える。それが最初のミッションでした」

そう語るのは、同社の総務・法務等を統括する担当者です。

怒涛の移転プロジェクトから、出社回帰に伴う「会議室不足」という新たな課題、そしてアウトドア向けカメラブランドとしてのアイデンティティをオフィスにどう組み込んでいくか。その挑戦の軌跡を伺いました。

独立へのカウントダウンと「人海戦術」の移転劇

blog_om-digitalsolutions_03

<オープンにコミュニケーションを取れる「ファミレス席」>

オリンパスからのカーブアウト(事業切り出し)にあたり、最も重要だったのは「開発・製造拠点のネットワークを維持すること」でした。開発メンバーや実験設備、試作を行う工場との物理的な距離を離すわけにはいきません。その制約の中で見つけたのが、現在の高倉事業所(東京都八王子市)となる物件でした。

しかし、オフィスとして機能をさせるためには、インフラ面を含めた大規模な整備が必要でした。

「通常なら半年以上かかる準備期間を、わずか数ヶ月で完遂しなければなりません。レイアウトの検討からインフラ工事まで、息つく暇もないスケジュールでした」

3月にはオリンパス側の旧オフィスからの引っ越し作業を、トラック輸送と社員による「人海戦術」で1週間以上かけて強行し、なんとか4月1日の稼働に間に合わせました。

「おしゃれなスタートアップ企業のように、コンセプトを練り上げて…という余裕はありませんでした。『とにかく4月1日に、社員が席について仕事ができる状態にする』。最初はそれが全てだったのです」

出社回帰で「安心して話せる場所」がない

嵐のような移転から1年。オフィスには新たな課題が浮上していました。コロナ禍が落ち着き、社員の出社率が回復するにつれ発生した「会議室不足」と「音の問題」です。

「元々、限られたスペースを最大限活用するレイアウトにしていたため、ゆとりがあるわけではありませんでした。そこへ出社人数が増えたことで、執務エリアのあちこちで会議の声が飛び交う状況になりました。特に深刻だったのが、機密性の高い打ち合わせや、人事評価に関わる1on1ミーティングです

同社では上司と部下の1on1を推奨していますが、オープンスペースでは本音の話ができません。かといって、在宅勤務同士でなければ対面で話す場所がない。「会社に来ても話す場所がないから、家でWeb会議をする」という本末転倒な状況さえ生まれつつありました。さらに、ODM(設計製造委託)事業の拡大により機密性の確保も大きな課題となりました。

ここで総務部門が直面したのは、コストと柔軟性のジレンマです。

「新たに壁を作って会議室を増設するには、消防法の対応や空調・電気工事など多額の費用と時間がかかります。また、将来的なレイアウト変更の柔軟性を考えても、固定的な設備投資は慎重にならざるを得ませんでした」

そこで選択したのが、可動式のワークブース(テレキューブ)の導入でした。

「最初は1人用も検討しましたが、あえて4人用の大型ブースを中心に導入しました。1人で集中したい時も使えるし、何より『リアルな対話』の場を確保したかったのです。完全に閉ざされた個室を作るよりも、ガラス張りで中の様子が見えるブースの方が、開放的でオフィスの雰囲気にも馴染みますし、社員の心理的な満足度も高いと判断しました」

結果、ブースは予約が取れないほどの人気設備となりました。「場所がない」というストレスを減らすことは、単なるファシリティ管理ではなく、社員のエンゲージメント向上に直結する施策でした。

blog_om-digitalsolutions_02

<デッドスペースとなっていたエレベーターホールにテレキューブを設置>

>>OMデジタルソリューションズのテレキューブの活用法について詳しくはこちら

「カメラ好き」が集まる会社へ。オフィスに宿るアウトドア精神

OMデジタルソリューションズのオフィスには、一般的なメーカーとは少し違う空気が流れています。それは「アウトドア・ライフスタイル」を掲げる同社ならではの仕掛けです。

一時期、オフィスの一角には人気アウトドアブランドのキャンピングオフィス什器が並ぶエリアが存在しました(現在は執務スペース確保のため縮小)。

「我々はアウトドア向けカメラのブランドへ変わっていくんだ、というメッセージを視覚的に伝えたかったんです。経営層が言葉で言うよりも、テントや焚き火台のようなテーブルがオフィスにあるだけで、ブランドの方向性が直感的に伝わりますから」

さらに同社が力を入れているのが、社内サークル「OMマリンクラブ」の活動です。ダイビングのライセンスを持つ総務メンバーが中心となり、社員のライセンス取得費用を補助し、自社の防水カメラ『Toughシリーズ』を持って海へ行く活動を推奨しています。

「コーポレート部門の人間であっても、自社の製品を好きにならなければ仕事は面白くないと思うんです。長く働いてくれる人は、やっぱりカメラが好きになっていく。だから、総務としても『製品に触れる機会』『アウトドアを楽しむ機会』を全力でサポートします」

廊下の壁には、社員やプロ写真家が撮影した美しい写真が飾られ、社長室には社長自身が選んだ「眼光鋭いユキヒョウの写真」が掲げられているそうです。無機質な執務空間になりがちなオフィスに、自社のアイデンティティをどう埋め込むか。これも総務の重要なミッションといえます。

総務の枠を超え、組織の「接着剤」になる

現在、同社は本社(高倉)、日野、そして各開発拠点と、物理的に拠点が分散している課題も抱えています。

「将来的には、これらの拠点をどう統合し、よりコミュニケーションが生まれる新社屋を作るか、という構想もあります。今はそのための準備期間。限られたリソースの中で、いかに快適な環境を提供できるか試行錯誤を続けています」

同社では、総務の役割を「単なる施設管理」とは捉えていません。

「エンゲージメントサーベイの結果を見て会議室不足に気づいたり、現場の声を聞いて運用ルールを変えたり。総務が一方的に押し付けるのではなく、毎月開催する『オフィス運営検討会』で各部署の代表と対話しながら進めています」

急ピッチでオフィス環境を整備し、Web会議時代に対応したブースを導入し、ダイビングで社員を海へ連れ出す。 その泥臭くも人間味あふれる取り組みの根底にあるのは、「社員がワクワクできる会社にしたい」というシンプルな想いです。

「カメラやアウトドアが好きな社員たちが、生き生きと働ける場所を作る。それが結果として、OMデジタルソリューションズというブランドを強くしていくと信じています」

【取材協力】 OMデジタルソリューションズ株式会社
https://www.om-digitalsolutions.com/ja/

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

関連記事