採用強化につなげるオフィスづくり【実践編】働く環境で導く人的資本経営

昨今、オフィスの役割と採用戦略の結びつきが急速に強まっています。本セミナーの冒頭、ファシリテーターを務めるブイキューブの古関は、ザイマックス総研の「大都市圏オフィス需要調査2025春」を引用し、現在のビジネス環境について言及しました。同調査によれば、企業の出社率は増加傾向にあり、オフィス施策において「採用の強化」や「離職率の低下」が重要視されているといいます。
出典:大都市圏オフィス需要調査2025春 | ザイマックス総研
古関は「働きやすい会社というイメージを求職者に持っていただくためには、制度作りももちろん大事です。プラス場作りが必要です」と述べ、本セミナーの趣旨が、制度と空間の両面から採用難の時代を乗り越える実践知の共有にあることを示しました。
本レポートでは、株式会社ブイキューブが実際に取り組んできた「ストーリーのある採用戦略」と「対話を生むオフィスづくり」の具体的事例を詳報します。
セミナー本編は下記よりご視聴いただけます。
登壇者
- 奈良 志穂 株式会社ブイキューブ ピープル・サクセス室 室長
- 前野 菜摘 株式会社ブイキューブ ビジネスサポート本部 総務グループ サブグループマネージャー
- ファシリテーター:古関 謙(株式会社ブイキューブ 事業企画室)
急速な事業拡大と変革を乗り越えた採用戦略
セミナー前半では、ピープル・サクセス室長の奈良が、同社の採用戦略の変遷と、その根底にある「ストーリー作り」について講演しました。
「対話」を軸としたストーリーの構築

ブイキューブは、Web会議システムや専用ブース「テレキューブ」などを通じ、ビジネスコミュニケーションのDXを推進する企業です。しかし、事業ごとの競合は多く、単なる事業説明だけでは採用市場での差別化が困難でした。そこで奈良たちが注力したのが、企業の価値観を一貫したストーリーとして語ることでした。
その中心に据えられたキーワードが「対話」です。
2018年のミッション・バリュー刷新、2020年の「ピープル・サクセス・ポリシー」策定を経て、同社は一貫して「対話」を重視する姿勢を打ち出してきました。奈良は、同社独自の育成サイクル「The GOLD」においても、挑戦と経験の後に「対話」を組み込み、相互理解と成長を促す仕組みを構築していると説明します。
「私達の会社が何を大事にしているのか、何に投資をしていくのかを明確にし、そこに一本軸を持たせること。それが候補者の皆さんにも、社員にも選ばれ続ける理由を作り続けることだと感じています」と奈良は語ります。
選考プロセスへの落とし込み
この「対話」重視のストーリーは、実際の選考フローにも反映されています。
- 一次面接前:「ピープル・サクセス・ポリシー」を候補者に送付し、会社の価値観を事前に共有する。
- 面接中:ポリシーに関する質疑応答を通じ、理解を深める。
- 最終面接:唯一の対面実施とし、オフィスに招く。
最終面接をあえてオフィスで行う理由について、「やっぱりこう、じゃあ対話を大事にしている会社なんだなというのを最後に実感していただくべく、オフィスのご紹介ですとか、実際に社員に会ってもらうことで、今まで聞いてきた話、本当にそうだったなと感じていただく」と奈良は述べ、ストーリーを体感させる場としてのオフィスの重要性を強調しました。
オフィスの変遷と採用への影響

奈良は過去のオフィス環境と採用の関係についても振り返りました。
- 2019年以前(中目黒):ランチや居住環境が充実しており、立地が採用の強みとなっていた。
- 2019年〜(白金高輪):高級感はあるが、周辺のランチ事情や居住のしにくさから満足度が低下。
- コロナ禍:全面テレワークへ移行。「オレンジワークスタイル(独自の柔軟な働き方制度)」が評価され、オフィス環境よりも制度面が採用を牽引した。
そして現在、出社回帰が進む中で、再びオフィスの持つ力が問われています。奈良は、総務部門による改革により、「今はストーリーがきちんとオフィスで話せるようになった」と語ります。
セミナー本編は下記よりご視聴いただけます。
採用に効果のあるオフィスづくり
続いて、総務グループの前野が登壇し、コロナ禍で活気を失っていたオフィスをどのように再生させ、採用にも寄与する空間へと変貌させたのか、その具体的なアクションを紹介しました。
改革のきっかけと目的
コロナ明け当初、オフィスは活気を失っていました。改革の転機となったのは、人事主導によるワークスタイルのアップデート(週1日以上の出社ルール化)でした。前野はこれに呼応し、「ポリシーに合わせたチームが繋がる場所」を作るべく、プロジェクトを始動させました。
「やっぱりこう出社をして、周りのメンバーと話しながら、部署の垣根を越えて色々なメンバーと話しながら業務を進めた方がすごく円滑だなというところを感じていたり、何よりやっぱり楽しいなと」と前野は述べ、自身の実感に基づいたオフィス改革への意欲を語りました。
具体的な6つのアクション
前野は、「見せるオフィス」と「対話の場の創出」をテーマに、以下の施策を実行しました。
- テレキューブの増設と戦略的配置: 多様な働き方に対応するため、Web会議ブース「テレキューブ」を増設し、サイズ順に見やすく再配置しました。これにより、整理整頓された気持ちの良いオフィスを実現しました。
- 社員参加型のネーミング: テレキューブの愛称を社内公募・投票で決定。「アンサンブル」など、オーケストラを想起させる名前を採用し、社員に当事者意識を持たせました。
- コミュニケーションのきっかけ作り: コーヒー飲み比べやお菓子パーティーなどのプチイベント、拠点ごとのオフィス交流会を定期開催し、出社する理由を作りました。
- ハイブリッドスタジオの開設: オンライン配信だけでなく、リアルな参加も可能な没入感のあるスタジオを構築。キックオフや懇親会、外部へのイベントプロデュース事例としても活用しています。
- 用途に合わせたエリア変更: 1人用だけでなく多人数用テレキューブを増設。また、部署単位で予約可能な「チームワーキング専用エリア」を新設し、グループでの協働を促進しました。
- マグネットスペースの設置: 自然と人が集まる装飾的なスペースを設置し、そこでのイベントを通じて部署を超えた偶発的な会話を生み出しました。
成果:出社率と満足度の向上

これらの施策の結果、平均出社回数はプラス32%となり、週1日以上の出社が定着しました。社員からは「景観が綺麗になって気持ちいい」「イベントに参加したいから出社する」「テレキューブが使いやすい」といった声が寄せられ、前野は「結果的にはオフィスが社員に選ばれる場所へと変わったのかな」と手応えを語りました。
セミナー本編は下記よりご視聴いただけます。
パネルディスカッション:採用における実際のオフィス活用例
セミナー後半では、実際のオフィス見学ルートに沿って、奈良と前野が具体的な活用方法を解説しました。
会議室エリア(16階):会社の歴史を語る
来客や最終面接で使用される会議室は、東京タワーやスカイツリーを望む眺望が特徴です。部屋名には「中目黒」「ジャカルタ」など、かつての拠点名が付けられています。 これについて奈良は、「これって何ですか?と必ず聞かれます。過去からの経緯を話すきっかけにもなります」と述べ、オフィスの名称自体が会社の歴史やグローバル展開を伝えるツールになっていることを明かしました。
ハイブリッドスタジオ(16階):事業へのこだわりを可視化
巨大なLEDパネルを備えたスタジオは、求職者に対し、同社が映像やイベント体験にいかにこだわっているかを直感的に伝える場所として機能しています。
テレキューブエリア(17階):働き方の多様性を象徴
ショールームを兼ねたこのエリアでは、社員が日常的にWeb会議ブースを利用しています。奈良は求職者に対し、この光景を「オンラインのコミュニケーションをすぐに取れる場所がたくさんあることで、私達の(柔軟な)働き方が成立してるよ」という文脈で説明しています。 また、前野は「熱中症対策のクールダウン」や「花粉症の遠隔診療(テレキューブクリニック)」など、福利厚生的な活用事例も紹介しました。人事の奈良自身も、周囲に聞かれたくない相談業務などで1人用ブースを重宝しているといいます。
マグネットスペース・執務エリア(17階):リアルな交流と安心感
カフェテリア周辺のマグネットスペースは、面接時のオフィスツアーでも目を引く場所です。奈良はここで、「部署の方となかなか話すきっかけがない時に、そういう交流の場があってちょっと顔見知りになれた」という新入社員の声を紹介し、出会いを生む場としての重要性を語りました。 また、固定席やチームエリアを見せることで、バックオフィス職や若手社員に対し「安心して仕事ができる環境」「先輩に質問しやすい環境」であることを伝え、安心感醸成に繋げています。
質疑応答
セミナー終盤には、視聴者からの質問に登壇者が回答しました。
質問1:オフィスづくり以外に、採用で伝えているポイントはありますか?
奈良:「1つは働き方です。フレックスタイム制を導入している企業は多いですが、コアタイムなしという点は珍しがっていただけますので、私達が自律性と選択性を大事にしていることをお伝えしています。また、最近はAIについても、どの職種、どの年代の方でも触れる環境がある点は、今後のキャリアを考える上でも一つメリットとして感じていただいています」
質問2:開発職やデザイナー職には、それに合った備品を用意していますか?
前野:「用意をします。基本の対応備品はありますが、職種によって業務内容が異なるため、ご相談をいただきながらそれに合ったスペックのパソコンを支給しています。また、ヘッドセットやWebカメラなど、Web会議に利用するツールは支給しています」
まとめ
本セミナーでは、採用難易度が高まる中、制度だけでなく「場」としてのオフィスがいかに企業のメッセージを伝え、エンゲージメントを高めるかが示されました。
最後に古関は、オフィス内に工事不要で設置できる「テレキューブ」が、消防法上のメリットやコスト削減(従来工事の約半分)、工期短縮、現状回復リスクの低減といった実利的な利点を持つことを紹介しました。
「採用強化」と「離職率低下」。この二つの課題に対し、ブイキューブは「対話」という明確なコンセプトを掲げ、それを制度とオフィスの両輪で体現することで、求職者と社員に選ばれる環境を構築しています。明日からのオフィスづくりにおける重要な指針となる実践的なセッションでした。
セミナー本編は下記よりご視聴いただけます。




