パーソナルスペースが近い職場だとどうなる?オフィスにおけるパーソナルスペースの重要性について

新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業は出社する人数を制限せざるを得なくなり、自宅やカフェなどオフィス以外で働くテレワークが急速に普及しました。オフィスに出社する人の人数が減った結果、座席の数を減らしていこうと考える企業も多いのではないでしょうか。

座席数やデスクの配置を見直す際に考慮したいのが「パーソナルスペース」です。パーソナルスペースとは、他者に侵入されると不快に感じる空間のことをいいます。従業員同士の距離が近いと、感染症対策として不適切であるだけでなく、社員は周囲が気になってしまい、仕事に集中できなくなるおそれがあります。

そのため、オフィスにおける机や椅子の配置を見直す際には、パーソナルスペースを意識した配置を行うようにしましょう。そうすることで社員が集中して業務にのぞめるようになり、社内の生産性向上につながります。この記事では、オフィスにおけるパーソナルスペースについて解説します。

 

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パーソナルスペースとは

パーソナルスペースとは

満員電車やお店の行列など、人と人がちかい場所では不快に感じ、ストレスになることはないでしょうか。これは個人のパーソナルスペースの中に他者が侵入していることが原因です。

パーソナルスペースとは他者が侵入すると不快で嫌な気持ちがする空間のことで、個人によってその広さは異なります。他者がそばにいても気にならない人もいますが、誰かが隣に立つだけで不快に感じてその場を離れたくなる人もいるでしょう。人それぞれパーソナルスペースは異なりますが、一般的に男性のほうがパーソナルスペースは広い傾向にあるそうです(※)。

また、パーソナルスペースは侵入する相手によっても変化します。見ず知らずの人には警戒心を持つため、その人に対するパーソナルスペースは広くなりがちです。逆に、家族や恋人など、そばにいると安心できるような人に対しては、パーソナルスペースはかなり狭くなります。

パーソナルスペースに侵入されると人は不快に感じるため、その場を離れようとしたくなります。そのため、対象の人に対して意識を払い、背を向ける、なるべく体を遠ざけるといった反応を行いがちです。

もしオフィスで座席と座席の間がちかくパーソナルスペースに常に人がいる状態であれば、社員は集中して業務に取り組むことができません。社員の業務効率を向上させるためには、パーソナルスペースを保った座席間隔にすることが重要です。

(※)山梨医大紀要第2巻、41-49(1985)渋谷昌三「パーソナル・スペースの形態に関する一考察」

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パーソナルスペースの4つの区分

パーソナルスペースは、その人自身、対象の相手によって広さが変わることを説明しましたが、一般的なパーソナルスペースを規定した4つの区分があります。

これは、1966年にアメリカの文化人類学者であるエドワード・T・ホールによって提唱された区分です。エドワード・T・ホールは、コミュニケーションに関する大家であり、パーソナルスペースだけではなく、社会学、言語学、動物行動学といった見地から、さまざまな論文や著書を発表しました。

パーソナルスペースの4つの区分とは以下のとおりです。

・公衆距離:3.5m以上
この距離は二者間での会話ではなく、セミナーや講演会などにおける話者と聴者の距離感です。対象となる相手とは私的で個人的な関係ではなく、公的な関係となります。公衆距離のなかでも7m以上は、相手は自分よりも社会的地位が高く、敬うような存在に対しての距離です。

・社会距離:1.2m〜3.5m
社会距離は親しい関係性ではないけれど、会話ができる距離です。机を挟んで会話ができるくらいの間隔で、商談や面接のときに採用すべき距離でしょう。なかでも、職場の同僚や同じチームの人間との距離は1.2m〜2m、初対面の人や他社の取引先と会話するときは2m〜3.5mはあると適切です。

・個体距離:45cm〜1.2m
個体距離は友人や同僚など、私的な関係にあるけれど頻繁に触れ合うことはしない人に対するパーソナルスペースです。この距離は、一緒に会話する、隣に並んで座る、といったことができる距離でしょう。ただ、同じ友人であっても異性に対してはパーソナルスペースが広くなる傾向にあります。

・密接距離:0cm〜45cm
密接距離や恋人や家族など、触れ合うことが日常となっている人とのパーソナルスペースです。すぐに触れることができる距離感となるため、信頼でき親密な関係である相手でないと不快に感じます。会話をしなくても焦りを感じないほどの関係性でなければ、この距離に他者が入ると大きなストレスになるでしょう。

オフィスにおけるパーソナルスペースの考え方

パーソナルスペースの中に他者が侵入すると、ストレスを感じるため業務の生産性が落ちる可能性があります。社員がストレスを感じずに過ごすようにするためには、パーソナルスペースを意識したオフィス作りが必要です。ここでは、執務室、会議室におけるパーソナルスペースの考え方について解説します。

執務室のケース

執務室のケース

執務室の座席配置をする際は、座席と座席の間をパーソナルスペースの社会距離の下限である1.2m以上あるとよいでしょう。隣や前に座る人の位置が近すぎると、ストレスや落ち着きのなさを感じることになるため、社員が仕事に集中できなくなる可能性があります。

コクヨの調査によると、6割近くの企業がメインデスクを幅1.2mのものを使用しているという結果が出ています。社員1人につき1.2mとれれば、パーソナルスペースを確保した執務室として理想的です。

ただ、オフィスの面積や収容人数を考慮すると、こういった対処が難しい企業もあるでしょう。その場合は、パーティションなどの仕切りの採用がおすすめです。同じ距離感であっても、互いの視線を感じないようにすると、パーソナルスペースは狭く感じられるという実験結果が出ています。距離がどうしても近くなる場合は、パーティションなどで互いの視線が感じられないような工夫をしましょう。

パーティションだけではなく、机の種類や向きを変更することでも、視線を感じないようにすることは可能です。

例えば、三角の机を採用しそれぞれ辺の部分に座るようにすれば、距離が近く対話がしやすいにも関わらず、目線がずれるような配置にでき、比較的相手を気にせずに作業可能です。そのほか、背中合わせにする、スクール形式で全員が同じ方向を向くといった配置でも、目線が合わないためお互いの距離が気になりにくくなります。

会議室のケース 

会議室のケース 

会議室では会話をするための場所であり、あまりに人と人の距離が離れているようなレイアウトは適切ではありません。しかし、密接距離のような距離感ではパーソナルスペース内に人が入ってしまいます。

密接距離は「会話をしなくても問題がない」くらい親しい人との距離であるため、会社の同僚や上司が相手では不適切でしょう。話し合いを行う会議の場であっても、個体距離以上は話したほうがストレスなく会議が行なえます。

それだけではなく、会議においてはある程度距離があったほうが会話が活発になると予測されています。家族や恋人ほどの親しい関係性でない人が、パーソナルスペース内に入ったとき、人はあえてその人に関心がないことを示す「儀礼的無関心」というものをしてしまうそうです。会議室での距離が近すぎると、会議中も儀礼的無関心をしてしまい、発話しなくなる可能性があります。

そのため、会議室でも座席の間は1.2m以上の距離があったほうが、活発な議論ができるようになるでしょう。効果がある会議を行うためには、面積の大きな机を採用し、座席との間がとれるようにレイアウトしてみてください。

ただ、会議室でもスペースは限られているため、パーソナルスペースを保った配置は難しいかもしれません。その際は、表情が見える透明のアクリル板のパーティションを設置するなど、お互いの距離を感じられるような工夫をしてみましょう。

まとめ

パーソナルスペースとは相手に侵入されると不快に感じる空間のことで、人によって大きさは異なります。ただ、一般的に保ったほうがよいとされるパーソナルスペースはあり、オフィスの執務室や会議室では1.2m以上離れて座れるようなレイアウトにするとよいでしょう。

パーソナルスペースに他者が侵入すると、人は不快に感じ落ち着きがなくなります。パーソナルスペースを無視したオフィスにしてしまうと、社員が業務に集中できなくなり生産性が落ちる可能性があるため、オフィスのレイアウトを変更する際にはパーソナルスペースを考慮したものにするとよいでしょう。

距離を確保できないときは、パーティションや座席の配置で目線が遮られるようなレイアウトにすると、距離が近くても気になりにくくなります。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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