電話営業の重要性
スマートフォンの普及やコロナの影響により、人々のコミュニケーションスタイルも多様化が進んでいます。対面での会話や電話、Eメールが主流だった時代から、公式ホームページやスマートフォンのアプリ、チャットといったチャネルが存在感を持つ時代となったことは周知の通りです。
株式会社ソフツーの「電話業務に関する実態調査」でも、特に20~30代の若者世代で電話への苦手意識が顕著であることがわかりました。
一方で、ビジョナル・インキュベーション株式会社が実施した営業電話についての調査では、興味深い結果が出ています。
同調査では、決済者の50.9%が「営業電話をきっかけに商談を受けたことがある」と回答しました。また、「今後も営業電話をきっかけに商談を受ける可能性がある」と回答した人は58.8%と、半数以上が前向きな姿勢となっています。これらのことから、時代遅れとされがちな電話営業は、企業のセールス担当者にとって決して無視できない手段といえるでしょう。
現代においても電話営業が重視される理由には、次の3点が挙げられます。
1. 個別対応と関係性の構築
電話営業は、顧客や見込み顧客一人ひとりに対して個別の対応ができるため、相手との関係性を築きやすいのが特徴です。直接のコミュニケーションだからこそ個々の課題や要望を正確に把握でき、適切な提案につながります。
2. 即座に顧客の反応やニーズを把握
電話を通じて直接会話することは、顧客の反応をリアルタイムで確認するのにも有効です。相手の声のトーンや質問内容を基に、関心の度合いやニーズがつかめるため、顧客へのアプローチを柔軟に調整できます。
3. BtoB分野で有効性を発揮
BtoB(企業間取引)分野においては、相手への信頼感とともに、対応の迅速さや情報の正確さが欠かせません。電話という手段であれば、取引相手がどんな人かが伝わりやすく、疑問点などもその場で解消しやすいため、より人間味のあるコミュニケーションが商談につながる可能性があります。
電話営業で成果を出すためのポイント
現代においても強みを発揮できる電話営業ですが、やみくもに電話をかけるのは禁物です。ここでは、電話営業で成果を出すために押さえておきたいポイントを解説します。
質の高いリストを用意する
質の高いリストとは、自社の製品やサービスに対する関心やニーズを持つ可能性の高い企業で構成されたリストです。
リスト内には、ターゲット顧客のプロファイルが正確に盛り込まれる必要があります。例えば、業種や企業規模、所在地、担当者の役職など、細かなセグメントで分類されているのが理想的です。
質の高いリストは無駄な電話営業を減らし、見込み顧客に対する効率的なアプローチを可能とするため、営業活動の生産性がアップします。さらに、リストによって商談に発展する可能性を高めておけば、営業担当のモチベーション向上にもつながるでしょう。
電話営業に役立つ質の高いリストを作成するには、まずは既存の顧客データの分析が役立ちます。共通する特性やパターンがわかれば、ターゲットとすべき顧客のプロファイルが明確になるからです。
データ分析ができたら、次のような手段を用いてリストを作成します。
業界紙 |
『会社四季報』などの業界紙を活用し、ターゲットとする業界や企業の情報を収集していく方法です。 |
名刺 |
セミナーや展示会などで交換した名刺を見直し、適宜リストに追加する方法です。相手の情報がダイレクトに入手できるのがメリットです。 |
アクセス履歴 |
自社サイトに頻繁にアクセスしている企業や、特定のページを閲覧している企業を特定し、関心度の高そうなターゲットを抽出する方法です。 |
販売会社 |
帝国データバンクなどからリストを購入する方法です。自社のターゲットに合わせてカスタマイズできるため、手間を省けるのが強みです。 |
インターネット検索 |
企業のプレスリリースやニュース記事、SNSを中心に地道に情報を集める方法です。ビジネス系SNSから担当者につながる場合もあります。 |
ツール |
ターゲット顧客のプロファイル情報を基に、ツールで企業リストを自動生成する方法です。ツールの厳選と費用の検討が必要です。 |
リスト内での優先度を設ける
作成したリストは、リードスコアリングなどの手法を用い、優先度を設けることが重要です。
リードスコアリングとは、見込み顧客の関心度合いや購買意欲を数値化し、スコアとして評価する方法を指します。リードスコアが高いほど高見込みとなるため、電話営業の優先度も高くなる仕組みです。
優先度を決める要素には、次のようなものがあります。
企業規模と売上高 |
企業規模や売上高は、大きくなるほど取引も大規模となります。より高い収益を狙う場合は、この要素が重要です。 |
業界の重要度 |
自社の製品やサービスが特定の業界に適する場合、その業界を優先します。特に、成長著しい企業の優先度は高いです。 |
意思決定者との接触可能性 |
名刺やSNSなどで確認した役職が意思決定者である場合や、重要な担当者である場合、直接連絡できる機会を有効活用します。 |
過去の接触履歴 |
自社サイトに頻繁に訪れている企業や、過去に成約に至らなかった企業は、フォローアップ対象として優先します。 |
地理的な要因 |
ローカルビジネスや地域特有の市場動向が影響する製品やサービスの場合は、地理的な要因が電話営業の優先度に影響します。 |
リードスコアリングはポイントが高いほど優先度も高くなりますが、条件によっては優先順位が変わる可能性も考慮しておくとよいでしょう。
例えば、リードスコアがそれほど高くなくても、意思決定者と直接連絡が取れたり、過去の接触履歴が多かったりする企業は優先的に電話営業する価値があります。
適切なタイミングで架電する
電話営業の適切なタイミングは業種や職種によって異なるため、相手の状況を見極めて架電しましょう。
例えば、BtoBで営業時間が9時から18時までの場合、午前中は10時~お昼前まで、午後は14~16時頃が適しているといわれます。朝礼や朝のメールチェックが落ち着いたタイミングや、午後のミーティングや商談などが終わり始めるタイミングがつながりやすいケースが多いためです。反対に、電話営業では「始業前後」「休憩時間」「終業前後」「繁忙期」は避け、相手の都合を考慮しなければトラブルに発展する場合もあります。
なお、特定商取引に関する法律施行規則において「迷惑を覚えさせるような仕方」による電話勧誘販売は禁止されています。迷惑を覚えさせるような仕方には、不適当な時間帯の勧誘(21時から8時まで等)も含まれるため、こうした法令遵守の意識も大切です。
※参考:令和4年6月22日「特定商取引に関する法律等の施行について」
顧客の抱える課題をヒアリングする
電話営業では自社の製品やサービスを説明するよりも、相手の課題をヒアリングする方が重要です。電話でのセールスに不信感や警戒心を持つ人もいるため、まずは信頼関係の構築を優先する必要があるからです。ヒアリングによってターゲット顧客のニーズを正確に把握できれば、最適なソリューションを提案できるようにもなります。
ヒアリングの際は、次のようなポイントを意識するとよいでしょう。
1. 課題の背景を深掘りする
ターゲット顧客から得た表面的な問題点にすぐに納得するのではなく、より詳しい状況を聞きます。
例えば、「その課題が原因で、具体的にどのような不都合が生じていますか?」といった質問を投げかけてみましょう。こうしたヒアリングは、問題の詳細を把握できるだけでなく、相手に話しやすい雰囲気を感じてもらえるのがポイントです。
2. 期待値やゴールを把握する
課題が深掘りできたら、ターゲット顧客の期待値やゴールを確認します。「現状の課題に対して、どのような改善が見られたら満足できそうですか?」など、改善後の期待値を聞き出すことが大切です。
課題とゴールが見えることで、自社の製品やサービスが貢献できるポイントを探ったり、具体的な提案を組み立てることが可能となります。
3. 解決策への意見を求める
しっかりしたヒアリングができたら、自社の提供する解決策への意見を尋ねます。「○○のような方法について、どう思われますか?」といった具合に、解決方法があることを提示しましょう。
相手の意見やフィードバックを聞くことで、アポイントの可能性を探ったり、商談をうまく進めるヒントを得たりできます。
トークスクリプトを改善する
トークスクリプトとは、電話営業の際にターゲット顧客と会話を進めるための台本のことです。挨拶や質問、提案内容やクロージング方法などが含まれ、電話営業をガイドする役割があります。
トークスクリプトは営業の一貫性の確保や、経験の浅い社員の支援を可能とするのがメリットです。効果的な電話営業を目指すなら、このトークスクリプトを定期的に改善するようにしましょう。
市場動向や顧客ニーズ、法規制などの変化に対応したり、顧客からのフィードバックを活用したりすることで、より高い営業成果を得られる可能性があるからです。
例えば、先ほど解説したヒアリング内容を踏まえてトークスクリプトを改善すれば、ターゲット顧客に「○○のような課題はありませんか?」など、具体的な話がしやすくなります。
また、トークスクリプトの質が高まることにより、担当者にかかわらず商談のアポイントを獲得できるようになれば、企業全体の生産性もアップするでしょう。
データの活用で電話営業をさらに効率化
電話営業はリスト作成や優先度の設定、トークスクリプトの作成・改善など、手間のかかる作業が少なくありません。しかし、電話営業を効率化できるツールを使えば、データに基づいた架電が可能となるだけでなく、生産性の向上も期待できます。
電話営業に活用できるツールには、次のようなものを検討するとよいでしょう。
クラウドPBX |
クラウドPBX(Private Branch Exchange)はクラウド上で運用する電話システムです。通話録音機能を活用すれば、生成AIとの連携によって通話内容の要約・分析が可能となります。CRMと連携した場合は、着信時に顧客情報をポップアップで知らせてくれる機能などが利用でき、スムーズな対応ができるのが強みです。 |
CRM |
CRM(Customer Relationship Management)は顧客情報を一元管理するツールです。基本情報だけでなく、接触履歴や商談履歴も管理でき、顧客の傾向や課題分析も可能なので、顧客との関係強化や質の高い電話営業を実現します。 |
SFA |
SFA(Sales Force Automation)は営業プロセスを自動化するツールです。架電リストの管理やフォローアップ計画を自動化できるため、営業担当者の負担を軽減し、より多くの顧客へのアプローチを可能とします。 |
MA |
MA(Marketing Automation)はマーケティング活動を自動化するツールです。リード獲得から成約までのプロセスが管理でき、データ分析によって架電の優先度を決めたり、顧客のニーズ・課題に応じた提案を可能としたりします。 |
まとめ
電話以外のコミュニケーション手段が発達したことで、電話営業と距離を置いた企業もあるかもしれません。しかし、電話で担当者と直接話をするからこそ、相手や提案内容を信頼できると感じる人がいることも確かです。
今回紹介したようなポイントを押さえた上で、改めて電話営業に取り組んでみると、その力を再発見できるでしょう。また、近年は電話営業をサポートしてくれるツールも多数開発されています。
特に、クラウドPBXは他のツールとの連携によって、営業効率を飛躍的に向上させることが可能です。電話営業のプロセスを見直す過程で、ツールの導入も検討すれば、営業力をより強化できるでしょう。
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