リージョンとは?基本知識とWeb会議システムにおける考え方を解説

「リージョン」とはクラウドサービスにおける接続先のエリアのことです。リージョンを考慮してWeb会議システムを選ぶことは、安全性を高めるうえで重要なため、Web会議システムを使用する企業においては、リージョンに関する知識は必須です。

この記事では、リージョンの基本知識や、Web会議システムにおけるリージョンの事例や選び方を解説します。

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リージョンとは

「リージョン」とは、クラウドサービスのデータセンターが置いてあるエリアのことです。

データセンターとは、クラウドサービスのサーバーや通信機器などの、サービスの運用に必要な設備が設置されている施設のことです。

ユーザーはインターネットに接続さえしていれば、場所に関係なくどこから接続しても同じクラウドサービスを利用することができます。しかし、利用している際に意識することはほとんどありませんが、実際には物理的にデータセンターにデータが保存されています。

それぞれのリージョンは独立して運用されているため、あるリージョンで障害が発生しても他のリージョンには影響がありません。そのため、自然災害などが発生して一部のリージョンが利用できなくなった場合でも、稼働している別のリージョンによりサービスそのものを継続運用できます。

Web会議システムを導入するときに、リージョンを要件として指示されることもあるでしょう。これはWeb会議のような機密性が高い情報を扱うシステムの場合、セキュリティ対策が非常に重要になるためです。

もし接続される地域が海外のリージョンの場合、安全性の低い現地のデータセンターからWeb会議システムでやり取りした情報が漏洩するリスクはゼロではありません。そのため、接続先のリージョンがどこなのか把握することは、Web会議システム選定において重要なことだといえます。

接続されるリージョンの決まり方

リージョンは、基本的に自分が接続している場所から距離が近いリージョンに接続されます。これは物理的な距離が離れてしまうと、接続速度に遅延が発生することが多いためです。

たとえば、東日本と西日本でリージョンが分かれている場合、東京から接続すれば東日本リージョンに、大阪からは西日本リージョンにそれぞれ接続されます。

リージョンとゾーンの違い

リージョンとゾーンは独立運用されている点などが似ているため混同しやすい言葉ですが、リージョンはデータセンターが設置されているエリアであり、リージョンの中に存在しているのがゾーンになります。

ゾーンは一つのリージョンの中に複数運用され、冗長構成が取られていることが一般的です。冗長構成とは、システムの障害に備えて同じ構成を複数運用し、障害が発生しても常にバックアップに切り替えられるように用意をしておく構成のことをいいます。

リージョンと同様、冗長構成が取られた独立した複数のゾーンを運用することで、万が一障害が発生してもバックアップのほうを使用できます。そのため、不具合に影響されずにシステムを運用可能です。

Web会議システムでのリージョンの考え方

Web会議システムの多くは、クラウドサービスとして提供されています。そのため、利用を考えているWeb会議システムが接続にどこのリージョンを利用するのか、リージョンのある国や地域において情報漏洩のリスクは無いのか、などシステムの安全性に不安を感じる企業もいることでしょう。

Web会議システムとしてよく利用されている「Zoom」とその他のサービスのリージョンについて、事例を交えて解説します。

Zoomのリージョンの事例

Zoomは、米国のZoom Video Communicationsが提供しているWeb会議システムです。

2020年から始まった新型コロナウイルス感染症拡大の影響でテレワーク需要が拡大した際、Zoomは世界中で多くのユーザーを獲得しました。2021年3月に行われた調査によると、毎日世界中で3億人以上のユーザーがZoomを利用しており、米国や英国を含む44カ国でトップのシェアを獲得しています。

Zoomは日本国内でも圧倒的なシェアを誇り、Web会議システムを利用する8割近い人がZoomを利用しているという調査結果もあるほどです。

このように多くのユーザーが利用するなかで問題になったのが、Zoomを利用する際に接続されるリージョンでした。

通常日本国内からZoomを利用する場合、国内のリージョンに接続されます。しかしユーザー数の増加にともなってサーバーの増強を行った際、接続先が中国のリージョンに設定されてしまう事態が発生しました。これによりZoomを利用した通信は、本来接続されるはずがない中国を経由してしまっていたのです。

Zoomは米国だけではなく中国にも拠点を置いています。そのため、もし中国当局にデータの提出を求められた企業は、要請を拒むことができません。そのため、中国リージョンを経由することで情報漏洩のおそれがあると指摘されていました。

指摘を受け、Zoomは2021年4月の更新において、有料プランを利用することで接続するリージョンを指定できるようになりました。無料プランにおいても一番近いリージョンに接続されるように設定が修正されており、事前に設定をしない限り中国リージョンに接続されないようになっています。

その他のWeb会議システムの事例

Zoom以外には、海外製国内製問わず、利用するリージョンを公開しているWeb会議システムはほとんどありません。

しかし、例外的に米Microsoft社の「Microsoft Teams」がリージョンのある国を、米Amazon社の「Amazon Chime」がリージョンのある都市を公開しています。どちらも日本からの接続には日本のリージョンが利用されることも、あわせて公開されています。

Web会議システムのセキュリティ上のリスクから、接続されるリージョンの国や地域を意識する企業も多いため、情報漏洩リスクの低い日本国内のリージョンのみ利用するWeb会議システムも増えています。

リージョンの考え方

一般的に、Web会議システムは接続する端末と物理的に距離が近いリージョンに接続されます。これは先述の通り接続する端末とリージョンの距離が物理的に離れるほど、通信の遅延につながるためです。そのため、国内にリージョンを持つWeb会議システムに国内から接続する場合、基本的に国内のリージョンに接続されています。

海外にリージョンを持つシステムの場合、国内のリージョンが混雑をしてつながらないときは、海外のリージョンに接続されることがあります。そのため、もし国内のリージョンしか利用できないような規定がある企業は、海外にリージョンを持たないWeb会議システムを選択するようにしましょう。

利用者の多いWeb会議システムでは、一番近いリージョンが混雑することで通信に遅延が発生する恐れがあります。利用できるリージョンが少なければ回避先として選べるリージョンも限られてしまうため、Zoomでリージョンを選択する場合、できる限り多くのリージョンを選択しておくとよいでしょう。

ただし、セキュリティリスクを感じるリージョンは接続先から除外しておいた方が安心です。リージョンの要件定義がされている場合は、要件に合わせて慎重に選択する必要があります。

また、一般的なWeb会議システムの場合、接続先のリージョンは自動的に選択されます。そのため、海外の支社やクライアントとWeb会議を行う企業は、現地にリージョンを持つグローバル規模のWeb会議システムを利用するとスムーズな通信が期待できます。

まとめ

Web会議システムなどのクラウドサービスにおいて、端末が接続されるエリアである「リージョン」。エリアごとに独立したリージョンを設定することで、災害などの障害発生時でも安定的なシステムの運用が可能です。

近年海外リージョンの利用による情報漏洩リスクを懸念する企業が増えたことから、Web会議システムのリプレイスや新規導入の際の要件としてリージョンの定義が行われることも多くなっています。Web会議システムの利用の仕方に合わせて、最適なリージョンを使えるシステムを選ぶようにしましょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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