リモートワークで生じるマネジメント課題と解決策。マネージャーに必要なスキルとは?

感染症対策をはじめ、さまざまな要因からリモートワークを導入する企業が急速に増えています。これによって、これまでスタンダードとされてきた仕事のあり方も大きく変化しました。

特に業務を管理・マネジメントする側の視点から考えると、リモートワークは対面でのコミュニケーションが難しくなり、業務プロセスが見えにくくなるという一面もあります。そのため、旧来のマネジメントスキルでは対応できない場面も増えているでしょう。

ここでは、リモートワークを前提とした働き方において、どのようなマネジメント方法が求められるのか、課題と解決策とともに解説します。

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リモートワークへの移行による業務の変化

コミュニケーションの減少

リモートワークによってコミュニケーション量に変化が生じました。遠隔での業務が一般的になったことで、同じ社内で顔を合わせたり、何気なく雑談したりする機会が減少しました。

仕事過程が見えない

業務のプロセスが見えづらくなりました。出社していればマネジメントする立場にある上司は、部下の様子を逐次確認することができましたが、リモート下では今現在どのような進捗状況にあるのか、プロセスの確認がしにくくなりました。

仕事のスタンダードの変化

業務のオンライン化は業種・業態を問わず広く進展しています。つまりあらゆる仕事でこれまで「スタンダード」が変化しているといえます。従来のノウハウでは十分に対応できないケースが増えているでしょう。

リモートワークにより生じた課題

リモートワーク

リモートワークの進展は業務のあり方を変え、リモートワークの導入以前から会社や組織が潜在的に抱えていた問題や課題を浮き彫りにすることもあります。

特に以下のような事柄を挙げられます。

  • コミュニケーション不足
  • 会社やチームごとのビジョンの共有不足
  • 指示出し・進捗確認不足
  • 評価制度の不備

コミュニケーション不足

先述のように、社員がそれぞれ遠隔で業務を行うことで、どうしてもコミュニケーションの機会が減少します。従来であれば、オフィスやロビー、業務の前後や休憩時間などで交わしていた何気ないやりとりや雑談を、Web会議ツールなどを利用してリモートで再現することはなかなか難しいと言えるでしょう。

人間関係の基本はコミュニケーションです。コミュニケーションの不足はさびしさや疎外感につながります。また、人間はコミュニケーションの中で、相手の表情の微妙な変化や仕草などからも多くの情報を得ています。

対面だからこそ感じ取れる「空気」のようなものが読み取りにくくなることで、同僚や上司が何を考えているのか、どのようなことを感じているのかが分からず、「心理的な距離」を感じたり、そこからコミュニケーションに齟齬(そご)が生まれてしまうということもあるでしょう。

以前から職場でのコミュニケーションが不足していたとすれば、こうした問題はリモートワークによって、より大きく顕在化することになります。マネジメントする側は、組織の中で心理的な距離が生じがちになることを前提ととして捉え、コミュニケーションの方法を模索することが課題になるでしょう。

会社やチームごとのビジョンの共有不足

組織や会社が事業を進めていくうえで、「ビジョン」を共有することは円滑な業務に必要不可欠です。ビジョンとは「その事業を通して何を実現したいか」「将来の理想の姿・状態」といった共通の目的・目標です。

こうしたビジョンの共有は上司から部下へ、あるいは同僚から同僚へと、コミュニケーションの中で共有されることがほとんどです。リモートワークによってコミュニケーションの機会が減少し、ビジョンが共有されにくくなることもあるでしょう。

一方で、リモートワークの有無に関わらず、ビジョンそのものがそもそも抽象的だったり、不明瞭だったりすることもあります。旧来であればそれでも職場の「空気」のようにして伝わっていた会社やチームのビジョンが、リモートワークではうまく伝わらなくなった、というケースもあり得ます。

もし、これまで会社やチームのビジョンを「なんとなく」しか共有できていなかったのだとすれば、「ビジョンの共有不足」という課題は、コミュニケーションの方法がWeb会議やビジネスチャットツール中心になったことで、より明確に顕在化します。

コミュニケーション不足の課題同様、マネジメント側はこうしたことを踏まえた上で以前よりも積極的にビジョンを共有することが課題になります。

指示出し・進捗確認不足

会社やチームのメンバーが同じ空間で作業していれば、業務に関する指示や進捗の確認に手間取るということは起きづらく、マネジメントにそれほど大きな障害はありません。

しかし作業者がそれぞれ遠隔地におり、各自のタイミングで休憩をとったり独自のスケジュールで動くようになたりすれば、マネジメントの難易度は大きく上がります。ある業務が現状でどこまで進んでいるのか、という点も各自が頻繁に報告し、それらを視認できるような体制やシステムを整える必要があるでしょう。

こうした仕組みがないと、一部の人に業務が集中したり、手持ちぶたさな人が生まれてしまいます。

従来であれば、仕事の様子を見て確認できていたことをリモートワークでは文字情報や数字で明確に把握する必要が生じます。こうした体制をしっかり築くことはリモートワークにおけるマネジメントの大きな課題です。

評価制度の不備

働く様子が直接見えなくなることで、勤務態度や達成度などについての評価が与えづらくなります。リモートワーク中心の会社やチームにおいて、旧来の評価制度では正確な人事評価が行えないでしょう。

そのため、マネジメント側の課題として、仕事の成果以外の貢献度や達成度などを適切に測れる新たな評価制度を設ける、あるいは評価制度を見直すことが挙げられます。

それぞれの課題に対する解決策

コミュニケーションはこまめに

データや情報のやり取りだけでなく、報告・連絡・相談・確認などを日頃からこまめに行い、コミュニケーションの質と量を高めましょう。

これはマネジメント側が意識的に行う必要があります。その際、Web会議の場であれば雑談の時間を設けたり、ビジネスチャットツールであれば業務連絡以外のトークルームを設けるといったことが有効です。

リモートワークでは、業務を進めるチームの中に対面していない人がいるケースも珍しくありません。業務以外の話題についても気軽に話ができる場を設けることで、業務に必要な情報の共有も円滑化されやすくなります。絵文字やスタンプでのやり取りもある程度は許容してみましょう。

こうした改善はボトムアップでは行いにくいものです。マネジメント側が積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が重要になります。さまざまなオンラインツールを業務管理の道具としてだけでなく、感謝を伝える場、気軽なコミュニケーションの場としても捉えることが大切です。

また、Web会議の場におけるファシリテーションスキルも高めましょう。たとえば、資料や議題は事前に共有しておくことで会議中は皆が対話に集中できます。

Web会議はリアルな会議よりも「発言しにくい」と感じる人が少なくありません。「〇〇さんはどう思いますか?」などと、会議の場をうまく回し、誰もが話しやすい雰囲気をつくることでよりコミュニケーションの質を高めることができます。

さらに、雑談の場として「朝会」や「夕会」を設けることも有効な手立ての一つです。

ビジョンを積極的に共有する

会社の経営方針が現在の業務にどう関係しているのか、あるいはチームにとって会社のビジョンがどんな意味を持つのかといったことについて、明確に言語化して伝えましょう。

「その事業を通して何を実現したいのか」をぼんやりとではなく、例を挙げたり経験談を交えながら、はっきりと伝えます。ビジョンが適切に共有できれば、リモートワークであっても事業の方向性をずらすことなく、全員が同じ方向に向かって仕事をすることができます。

そのことが、ひいては組織の一体感の形成にもつながるでしょう。

スケジュールやタスクは「見える化」する

業務それぞれのスケジュール、タスク、目標は「見える化」しましょう。

各自が各自のペースで仕事をすすめるのではなく、全体のスケジュールを可視化して共有し、誰もがアクセスできるように整えます。

それぞれが抱えているタスクについても全体で共有しましょう。優先度を明確化し、誰にどれくらいの業務が割り振られているのか、その割合だけでなく達成度も可能な限り「見える化」してリアルタイムに把握します。「見える化」はこまめにコミュニケーションを取ることと同様に、マネジメント側が意識的に行う必要があります。

このようにして可視化された情報をもとに、進捗確認をしたうえで、指示を出すようにします。メンバー個別の進捗具合と、プロジェクトや業務全体の進捗を常に明確に把握しておくことが重要であり、それによってマネージャーはリモートワークにおいても部下の「仕事の質」「スピード」「能力」「状態」を適切に見極めることができます。

指示だけでなく、進捗に対する評価も行いましょう。タスク完了ごとではなく、予定されたタスクの2~3割が完了したらフィードバックするくらいのペースがリモートワークでは最適です。早めに進捗状況を確認し、積極的にフィードバックを行うことをおすすめします。

成果主義の評価制度と目標管理制度に

人事評価や考課査定といった評価制度は、リモートワークを前提とした評価制度・評価基準を取り入れる必要があるでしょう。

勤務態度などの評価が難しい分、成果主義に徹する必要があります。進捗管理や業務負担、達成度などを明確にし、プロセスではなく結果や成果によって評価される仕組みを導入すべきです。シンプルで公正な評価基準を設けることで、自律型社員が育成されることも期待できます。

その一方で、マネージャーは部下との1on1の機会を増やし、評価への基準や目指すところについて認識のズレがないかをチェックします。メンタル面でのケアも忘れずにしたいところです。

まとめ | リモート環境でのマネジメントにはポイントがある

従来進みつつあったリモートワークは、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて急速に広がりました。

それだけに、リモートワーク環境でのマネジメントスキルについては、十分に浸透していないといえます。多くの場合、リアル環境であることを前提にしたマネジメントスキルや仕組みを活用しているケースがほとんどです。

ここまで見てきたように、遠隔で業務を行う場合にはこれまでとは違う、リモート環境に適したマネジメントスキルや仕組みが必要になります。特にコミュニケーションの質や量を高めることは必須であり、それは上司と部下の関係だけではなく、横との交流も例外ではありません。

リモートワーク環境に適切なマネジメントスキルを学び、実践することが、よりよい職場づくりには必須だと言えるでしょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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