【拝啓、総務の皆さまへ】リモートワークの普及のため、通勤ワークの方に手当をつけるという提案

はじめましてクラタイクツです。

私は現在、某商社に勤めて2年目のリモートワーカーです。「リモートワークをしている」と聞くと、エンジニアだったり、クリエイターだったり特別な職能をもった方が多そうというイメージがあるのではないかと思います。でも私は、一応制作寄りの仕事ではありますが、雑用からユーザー対応、広報までなんでもやるフツーの会社員です。出社は週2日ほどで、残りは自宅で作業をしています。

そして子どもが3人いるワーキングマザーでもあります。保育園児・小学生・中学生の3人の保護者として日々母親業に追われています。

目次[ 非表示 ][ 表示 ]

「契約結婚」から始まったリモートワーク

私がリモートワークで在宅勤務を始めたのは、現在の会社に勤めてからなのですが、はじめから正規雇用で在宅勤務をしていたのではなく、当初は制作業務だけを委託契約で行っていました。

現在勤めている会社には、もともと別の会社で派遣社員として働いていた頃に、単発で制作の仕事を委託されていました。派遣と制作のWワークをするうちに3人目を身ごもり、育休中に運良く派遣社員から正社員になる試験にお声かけいただいたのですが、なんと私は運悪く試験に落ちてしまったのです。

その時復帰のめどが立たずに路頭に迷っていた私を拾ってくれたのが今の会社です。

この会社に転職した頃の私は、夫が海外赴任中だったため、絶賛3人育児中でした。そしてたまたま会社側もまだ受け入れ体制が整っていなかったため、お互いの条件を付き合わせて考えた結果、最も合理的だったのが「いったん在宅で、業務委託」という選択肢でした。

なので契約開始時はまだ「在宅勤務のまま正社員に」という発想ではなく、「ゆくゆくは正規雇用するからその時は出勤してくださいね」という試用期間だったのです。

そして2年後、晴れてリモートワークのまま正規雇用してもらえたのだから、まったくもってただの幸運としか言いようがありません。

家政婦としての契約結婚からはじまった共同生活、でも気が気が付いたら本当の恋が芽生えていた……なんてドラマ化もされたマンガ『逃げるは恥だが役に立つ』のようなハッピーエンドと言っても過言ではないでしょう(過言ですし、家政婦ではない)。ハッピーエンドを迎えさせてくれた平匡さん、いや現職の会社さん、本当にありがとう。

 

地方の静かな住宅街での会社員生活を実現


実際、子どもが3人になり、夫が海外赴任に決まってからのワーママ生活は非常に難しいものがありました。当時、下2人の子どもが別々の保育園に入所しており、一番上の子の学童のお迎えと3箇所、日々通っていたこともあり毎日時間に追われておりました。在宅出勤でなければきっとすぐ根をあげていたことでしょう。

通勤時代の歯がゆい思い出

現在はリモートワークという働き方に救われている私ですが、そのありがたみが分かるのは、通勤社員だった時代があったからこそなのです。 

派遣社員と制作のWワークをする以前、私は4年間、通勤生活をしながら第一子を育てていました。通勤しながら初めての子育てをするというのは、本当に大変なことでした。

毎日毎日、満員電車での通勤・保育園・病院・病児保育の行き来で神経をすり減らし(子どもが0〜2歳の頃はとにかくよく熱を出していました)、なかなか自分が満足するように働けずにいました。残業はもちろん難しく、チームのプロジェクトに参加することも叶いませんでした。

「なんで自分はこんなに頑張ってまで通勤しているのだろうか?」 といよいよ分からなくなってきてしまい、「それなら家の近くでとにかくなんでも働ける職場に変えた方がましでは……!?」という禅問答が毎日のように頭を駆け巡りました。

 

地方の静かな住宅街での会社員生活を実現


当時の上司や同僚たちはとても理解のある方が多く、働きやすい(休みやすい)環境にありました。むしろ、「緊急時に現場にいられないかもしれないから責任のある管理業務やチームプロジェクトは任せられない」と親切心で言ってくれていたと思います。

その結果、チームでの仕事はなく、私の個人主体の業務が多くなっていったため、欠勤しながらも家に仕事を持ち帰ることさえありました。それならいっそのこと、在宅出勤を認められた方が融通がきいたし、より働きやすくなったかもしれないと今になって思います。

重ねてになりますが、現場の同僚たちは皆協力的で理解のある人たちでした。だからこそ、あの頃に在宅出勤が叶っていれば、もっとうまく仕事を回せたのになあという悔しさもあります。「なぜ、そこまで『出社』にこだわる必要が?」という疑問が日々募りました。

リモートワークをやってみたら、出勤時代と同じ業務でもやれることが増えた

その後、派遣と現職の会社のWワークに転職してからは、圧倒的に気持ちが楽になりました。派遣での仕事は、出勤しないとできない業務はルーティンワークとチームタスクだけで、しかも子どもの発熱などで急に私が抜けたとしても代わりとなる人がいました。

一方で、現職の会社から委託された仕事は全て在宅でできるので、なんとか時間をやりくりしてこなすことができました。

仕事というのは概ね、

① 環境に依拠した社内ルーティンワーク
② 他の社員との連携や環境に依存するチームタスク
③ 個人主体のタスク
④ 業務改善/推進

に分かれると思います。 

リモートワークを実際やってみないと分からなかった

 

通勤時代に任されていたのは主に①社内ルーティンワークと③個人主体のタスクの業務でしたが、③個人主体のタスクについては在宅勤務を認められなかったために、「会社にいないと何の役にも立てないかもしれない」という焦りに追われていたのだと思います。

それがWワークになってから、派遣先では①社内ルーティンワークと②チームタスクで代役が効き、委託されていた制作業務は③個人主体のタスクなので在宅で対応が可能に。自分でさばける仕事が増えたため、気持ちに余裕が生まれたのです。

さらに現職では、①社内ルーティンも在宅勤務でできるよう、環境を整えてもらえました。例えば、子どもの急病の時には①社内ルーティンワークの中で、緊急性の高いものを誰かにお願いして、②チームタスクはリスケし、③個人主体のタスクは子どもを看病しながら時間の合間を見てやる、ということができるようになり、職場や移動時間に拘束されることがほとんどなくなりました。

また余った時間を創出することができたため、④業務全体の現状を把握し、改善/推進することまでもができるようになりました。心と時間に余裕ができ、裁量を与えられたことによって、より仕事に対して前向きになり、タスク消化以外の業務改善にまで頭が働くようになったのです。

リモートワークは社内の環境から一歩引いて、俯瞰して見ることができるため、社内業務の合理化を考えるのに向いているようです。

もちろん私がこの働き方で仕事ができるのは、通勤して①社内ルーティンワークと②チームタスクの業務をこなす社員の方がいてくれるからこそです。とっても感謝しています。

子育て世代だけでなく、全社員に在勤制度を設ければ生産性は上がるのでは?

在宅勤務をしてみて通勤時間などに縛られずにスケジュールを組めることは、私の生活環境にとって本当に素晴らしいことだと感じました。

もちろん、生活と仕事が地続きになるため「気持ちの切り替えができない」「休んだ気になれない」などの向き不向きな面もあると思います。

しかし、少なくとも子育て世代にとっては通勤時間がなくなることで、仕事での稼働時間や生活の中での子どもに使う時間の増加につながることは間違いありません。

ことさらに私がそれを実感したのは、子どもが小学校に入学してからでした。子どもが乳幼児の頃は、家で子どもの看病をするとなるとずっと子どもに付きっきりになるため、並行して業務を行うことは困難でした。でも小・中学生にもなると、それが可能になります。

例えば子どもが通う小・中学校では平日に親が駆り出される用事もしばしばあります。授業参観に懇談会、PTAに見守り立ち……と、一つひとつは数時間で終わるものですが、それでも通勤して仕事をしている親たちにとっては移動時間や半休制度で半日が潰れてしまうのです。

現在働いている小・中学生のママ、パパたちが在宅出勤を認められることで有効に時間を活用し、業務に充てることができれば、仕事にかけられる時間はかなり増えるのではないでしょうか?

チャットで頻繁に話しかけてもらっていたのがかなりありがたかった

でも、これって実は子育てだけでなく、介護や自分自身の通院などの場合でも、同じことが言えますよね。もしも在宅出勤が認められて、週1日だけでもいいから母親や父親にも、いや、他の全社員にも在勤日を選択できる制度を設ければ、実は生産性がかなり上がるのではないかと思います。「働き方」そのものへの意識が変わってくることで、心の余裕ができ、いろいろな業務ができるようになることが会社の成長にとっても大事なことだと私は考えています。

特に子育て世代にとっては、両親で合わせて週2日が在宅勤務にできるだけでも、育児の分担や家事のやり方、働き方そのものへの意識が劇的に前向きに変わってくると思います。それほどに、現在の通勤を前提とするシステムにおける共働き家庭は皆疲弊しているように感じます。

リモートをしやすくするための提案! 通勤することの評価を上げる

既に在宅勤務が選択できる会社や職種の人は「いいよなあ」という意見を持たれた方がいるのではないかとお察しします。

私個人の考えですが、在宅出勤が制度として認められるために、最大のネックだと思っているのはシステムや社会の仕組みではなく、実は「社内倫理」や「職業観」の方であるかもしれないと日々感じております。

先に申し上げた通り、現職でリモートワークをさせてくれている今の勤め先でも、当初は「在宅勤務のまま正社員に」ではなく、「いったん在宅で、業務委託」という選択しかありませんでした。この先入観をひっくり返して「在宅でも正社員のように働ける」と認めてもらうまでには2年間の試用期間が必要だったのです。

なにより、通勤時代にあれほど在宅出勤を切望していた自分自身でさえ、実際にやってみるまでは、「ゆくゆくは会社に出勤して正社員として雇ってもらおう」という社会理念に縛られた考え方をしていました。

職業意識を根こそぎ変えるというのはなかなか難しいことだと思います。自分が当事者にでもならないかぎり、そもそも意識を変えようと思うきっかけすらないかもしれません。そこで、逆に通勤することそのものの評価を上げるのはどうでしょうか。

通勤手当について、交通費だけでなくホントの意味での「手当」として給与に反映し、出社する行為そのものを別に評価してあげるというものです。例えば、通勤が向いてる社員や在宅出勤が実質不可能な職務の人は出社する労力を正当に評価されるようになりますし、在宅勤務が選択できないことへの不公平感が薄れるかもしれません。在宅勤務制度を利用する社員にとっても、評価査定で在宅、通勤にかかわらず一定の評価基準が生まれる良いきっかけになると思います。

会社によっては在宅勤務の仕事では成果を上げても可視化しづらく、なかなか評価考査の対象にしてもらいにくい、という実情がありますが、通勤そのものの評価を別にすることで考査の対象が「業務の成果」そのものに向きやすくなる効果が期待できます。

そして「会社に来て働く人も在勤している人も、評価基準は『業務の成果』」という考え方が、新たにリモートワークにチャレンジしてみようという社員を創出し、働き方の多様化が進むかもしれません。

いきなり実現させるには難しいかもしれない提案ではありますが、通勤する人も在宅勤務する人も、お互いの価値を理解し合って生産性を高め合えるような働き方が、近い将来必要になってくると思います。

「できない現状にしがみつくのでなく、自分の得意なフィールドで戦う」ように働き方を選べる社会に少しでも近づけられる提案になったらうれしいです。あれ……確かそんな意味のハンガリーの古いことわざがありましたよね?

「逃げるが恥だが役に立つ」です!

リモートワークがそんな働き方のひとつになりますように!

編集:はてな編集部

クラタイクツ
著者情報クラタイクツ

在宅勤務で商社のサポート事務をしている副業ライター。満員電車での通勤会社員時代に2人の子どもを出産。その後、派遣・制作のWワーク生活の後に夫の海外赴任を機に現職の仕事に転向。2018年に趣味のブログで電子書籍を出版。
■blog 「 ママゼロできるかな
■Twitter  @taikutu262
■Instagram  @taikutu262

関連記事