動画生成AIってどれくらい使えるの?ブイキューブがGen-3で試してみた

昨今、生成AIの活用が急速に広がり、さまざまな分野でその効果が注目されています。クリエイティブな分野からビジネス、エンターテイメントまで幅広く利用されており、特に企業においては、業務効率化や新しいプロモーション手法としても期待されています。

ブイキューブでも「生成AI室」が主導して、最新の技術やその応用可能性を探るための研究に力を入れています。この研究の一環として、2024年7月に発表されたRunway AIの最先端動画生成モデル「Gen-3」にも注目しました。

「Runway Gen-3」は従来のモデルを超える高度な動画生成機能を備えたAIであり、クリエイターや企業に大きな可能性をもたらすツールです。

この「Runway Gen-3」発表とほぼ同時期に、ブイキューブでは自社主催のイベントを企画しており、イベントでRunway Gen-3を使用して生成された動画を放映しました。

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実際にRunway Gen-3で生成した動画

 

実際の動画の生成フロー

上記の動画は、複数の生成AIツールを組み合わせて制作しました。以下はその具体的なフローです。

1. Midjourneyでの画像生成

まず、動画の基礎となるキーイメージを作成するために、画像生成AI「Midjourney」を使用しました。

今回のイベントでは「データ活用」というコンセプトのもと、サブタイトルとして「洋上の船」というテーマが設定されていました。これを視覚的に表現するため、プロンプトに「海に浮かぶデータの船」といったイメージを想起させるキーワードを組み込み、キーイメージとなる画像を生成しました。

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実際に生成したキーイメージ画像

2. Runway Gen-3での動画化

次にこの生成した画像をベースに、「Runway Gen-3」を使用して動画を生成しました。

Runway Gen-3は、静止画をもとに動画を生成できる「image to video」機能を持っています。プロンプトにはカメラの動きや背景の変化、視点の移動などを指定し、動画内でダイナミックな演出を加えました。

動画のラストカットでは、驚きを演出するために生成されたキャラクターに発話させる工夫を施しました。これには、AIによる音声生成機能を活用し、キャラクターがオーディオに合わせてリップシンクすることで、自然な発話シーンを表現しています。

3. Stable Diffusionでの高解像度化

動画が生成された後は、さらに画像生成AI「Stable Diffusion」を使用して映像のクオリティを向上させました。このツールは、生成された画像や動画を高解像度化し、細部までシャープな仕上がりにすることができるため、視覚的なインパクトを強化するのに役立ちました。

4. Canvaでの音楽生成

次に「Canva」を使用して動画に合わせた音楽を生成しました。Canvaはデザインツールとして知られていますが、音楽生成機能も備えており、コンセプトに合ったサウンドトラックを作成することができます。今回はジャンルを選定して、動画に合うBGMを生成しました

5. 音楽に合わせた動画の編集

最後に生成した音楽に合わせて、各シーンを編集・組み合わせ、動画の完成です。

AIでの動画生成による気付き

AIツールを活用して動画を生成するプロセスには、従来の制作手法とは異なる独特のメリットと課題がありました。

イメージ通りの素材が出るのは「ガチャ」

生成AIは、プロンプトに従って画像や動画を生成しますが、必ずしも思い通りの素材がすぐに得られるわけではありません。AIによって生成される結果は「ガチャ」のようなもので、何度もプロンプトを調整して望む結果を引き当てる必要があります。そのため、まだ制作にかかる時間が完全に短縮されているわけではなく、コンセプトにぴったり合った素材を得るには試行錯誤が続きます。

想定外の素材が生む創造性

一方で、AIツールが生成する素材により、制作の幅が広がることもあります。

AIにより生成されるコンテンツは必ずしも当初のイメージに忠実とは限りません。意外なビジュアルや動きが生まれることで、新たなインスピレーションを得ることができるのは、生成AIを使った制作フローが生む副産物であると言えます。

制作ワークフローの変化

AIツールの導入によって、従来の映像制作ワークフローも大きく変わりました。従来の制作では、まず企画が固まり、次にデザインや撮影が進行し、編集という流れが一般的でした。

しかし、AIを使った動画生成では、初期の段階から素材が生成され、その素材を見ながら企画や編集の方向性を柔軟に変更できるようになりました。これにより、企画段階と制作段階が並行して進むことが増え、よりダイナミックな制作プロセスが可能となっています。

長尺の映像は苦手

一方で、生成AIが苦手とするのは、ストーリー性が重視される長尺の映像制作です。映画やドキュメンタリー、感情の起伏や複雑なプロットが必要なプロジェクトにおいては、現段階の生成AIでは十分な結果を得るのが難しいことがあります。

企業でのユースケース

ここまでの気付きをもとに、企業でこうした動画生成AIを活用できるシーンを考えてみました。

完成イメージの事前共有

たとえ最終的に従来の撮影や編集を行う場合でも、生成AIを使うことで、企画段階での完成イメージを共有することが容易になります。これにより、プロジェクト開始前にクライアントや社内関係者とのイメージのズレを減らし、より効率的に制作プロセスを進められます。

先進的なイメージを訴求したい企業

AI技術を積極的に活用することで、先進的で革新的な企業イメージを訴求したい企業にとって、生成AIによる動画制作は有効です。AIを駆使して生成された動画は、その技術力と未来志向を視覚的に表現する手段としても適しています。たとえば、テクノロジー業界やスタートアップ企業が、最新技術を取り入れたコンテンツを発信することで、ターゲット層にインパクトを与えることができます。

今後の展望

ブイキューブではこうした生成AIを、各サービスや企業のガイドラインに準じながら社外に提供していきたいと考えています。

今後も新たな生成モデルの利用、チューニングを重ねて、お客様のニーズに合うシーンでのサービス提供を目指してまいります。

ブイキューブの生成AI室について

ブイキューブでは「生成AIを活用して社内外に新たな価値を創出する」をミッションにとした新たな商品研究・開発部門が設立されました。

具体的には、最先端の生成AI関連情報を社内外へ提供し、その知見を基にしたプロトタイプの開発と発信を行います。また、生成AIを活用した他社のプロダクトを弊社のサービスに統合することで、さらなる価値の提供を目指しています。

このブログを通じて、活動の進捗や成果を定期的にお伝えしていきますので、ぜひご期待ください。

【過去の記事はこちら】
原稿データだけで自分のアバターがプレゼン?ブイキューブが活用を進める「バーチャルヒューマン」とは

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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