【初心者向け】取締役会の招集通知はいつまでに送ればよい?記載事項など基本を解説
取締役会の招集通知はいつまでにどのような方法で送ればよいか、何を記載したらよいのか、総務・法務担当になったばかりで分からない方も多いのではないでしょうか。取締役会の招集通知については、会社法で遵守すべきポイントは比較的少なく、初心者でも基本的な内容を押さえやすいです。
この記事では、取締役会の招集通知を送る3つの方法とメリット・デメリット、招集通知はいつまでに送ればよいか、1週間前・3日前の数え方、招集通知の記載事項、議題の記載は必要かを、雛形やメール例文も合わせて解説します。
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取締役会の基本をおさらい
まず、取締役会についての基本的な内容をおさらいしておきましょう。
取締役会とは
取締役会とは、会社の意思決定を行う機関のひとつであり、取締役全員で構成されます(会社法362条1項)。取締役会を開催する目的は主に次の3つです(会社法362条2項)。
- (取締役会設置会社において)業務執行の決定
- 取締役の職務執行の監督
- 代表取締役の選定・解職
取締役会の開催の流れ
代表取締役、または業務を執行する取締役として取締役で選定された者は、3か月に1回以上、自らの執行状況を取締役会で報告する義務があります(会社法363条)。つまり、最低でも3か月に1回は取締役会の開催が必要です。
取締役会は、次の流れを経て開催します。
(図は「04.取締役会とは?」の記事から流用しています)
この記事では、上の流れの中でも「招集案内」について詳しく解説していきます。
5分で分かる「取締役会」とは?取り組みの背景と目的を解説
もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、取締役会について更に知りたい方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「取締役会とは?法務初心者が押さえるべき3つの運営ポイントを簡単に説明」の記事をご覧ください。
取締役会の招集通知の送り方
では、実際に参加者へと取締役会の招集通知を送る方法について解説します。
招集通知の方法は自由
取締役会の招集通知を送る方法については、法律上の制限は特にありません。ここでは代表的な3つの方法を紹介しますが、それぞれのメリット・デメリットを理解して自社に合う通知方法を選びましょう。
口頭・電話で伝える場合
口頭・電話で取締役会の招集を通知するメリットは、メールや書面と比べて手間や費用がかからず、すぐ通知できる点です。緊急時に取締役会の開催が決まった時などには機動的に対応できます。
反面、デメリットとして大きいのは、履歴が残らないため後で招集した事実を立証するのが困難な点です。取締役会の招集は、基本的にはメールや書面など形に残る方法で通知した方がよいでしょう。
また、聞き間違いにより誤った情報が伝わるリスクや、参加者に非公式でくだけた印象を与えるデメリットもあります。そのため、口頭・電話でも誤解を与えないような、取締役と従業員間の距離が密接な、小規模の会社での利用が適しています。
口頭・電話で取締役会の招集を知らせる場合は、開催日時と開催場所は最低限伝える必要があります。議題を伝える場合は、聞きまちがいなどで誤解を与えないよう、手短に分かりやすく伝えるよう心がけましょう。
メールで招集通知を送る場合
メールで取締役会の招集を通知する大きなメリットは、履歴が形として残る点です。また、書面と比べて印刷・郵送費がかからず、書面ほど手間がかからない点が挙げられます。特に、取締役会のオンライン開催時には、書面に比べてURLやID・パスワードなどを送りやすく、参加者もURLをクリックすれば参加できる点はメールの大きなメリットです。
デメリットは、書面ほどではなくてもメール作成の手間がかかる点、印刷・郵送する書面に比べるとややくだけた印象を与える点です。そのため、総務担当者が日常的に取締役へとメールを送るような、取締役と従業員間の距離が比較的近い、小〜中規模の会社での利用が適しています。
取締役会の招集通知のメール例文
一般的に、ビジネスメールは用件を手短に伝えるものであるため、拝啓から始まる挨拶文は使用しません。総務・法務担当者が取締役にメールを送る場合も、「お疲れ様です。」の書き出しの後に名前を名乗れば失礼ではないとされています。
ただし、社風や会社の規模によっては、社内だけの特別ルールが存在することもあるため、取締役にメールを送る際にはどのような文例なら失礼でないか社内で確認した方がよいでしょう。
以下に、取締役会の招集通知をメールで送る際の文例を挙げておきます。
件名:取締役会のご案内 取締役 各位 監査役 各位 お疲れ様です。 総務部の田中です。 次回の取締役会についてご案内いたします。
ご欠席の場合のみ、3月3日(金)までに本社総務部の田中までご連絡いただければ幸いです。 ご多忙とは存じますが、ぜひともご出席いただけますようお願い申し上げます。 以上、よろしくお願いいたします。 ××株式会社 総務部 田中宏 内線:×××× |
書面で招集通知を送る場合
書面で取締役会の招集を通知する大きなメリットは、メールと同じく履歴が形として残る点です。また、メールと比べると印刷・郵送の手間をかける分、公式でフォーマルな印象を与えます。
デメリットは、3つの方法の中で最も手間とコストがかかり、参加者へと届くまでに時間がかかるため、どの方法よりも早い準備が必要な点です。手間をかけても形式を重んじたい、中〜大規模の会社で利用するのが適しています(書面の雛形は後述する「招集通知の雛形」で紹介)。
取締役会の招集通知の送付期限は?いつまでに送ればよいか紹介
取締役会の招集通知はいつまでに送ればよいのか、基本的な送付期限と例外について解説します。
基本は取締役会の日の1週間前まで
原則では、取締役会の招集通知は「取締役会の日の1週間前までに」発する必要があります(会社法368条1項)。
3日前までなどの例外もあり
ただし、この1週間という期間は、定款で定めれば短縮可能です。実務上は、定款で「会日の3日前までに」と定めている会社が多く、3日間の期間も短縮できるように「緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。」と但し書きを入れている例もあります。さらには、取締役全員が同意すれば、招集通知自体を省略することも可能です(会社法368条2項)。
日数の数え方に注意
取締役会の招集通知をいつまでに発すればよいのか、招集期間の数え方ですが、まず、初日不算入の原則(民法140条)から通知を発した日は数えません。初日不算入の原則とは、1日以上の単位による期間を数える場合、(1日が午前0時から始まる場合を除いて)初日は期間に参入しない数え方です。この場合、通知を発した日が初日になります。
次に、会社法368条に「取締役会の日の1週間前までに」とあるので、取締役会の当日は期間に含めません。通知を発した日と取締役会の日、どちらも期間に含めずに1週間、つまり中7日空けることが必要です。
たとえば、取締役会が3月14日(火)の場合、「1週間前まで」とはいつまでなのかを計算してみましょう。取締役会の当日から逆算して1週間前の3月7日(火)と考えるのではなく、中7日分を前に数えて3月6日(月)までに招集通知を発する必要があります。
同じく「3日前まで」の数え方ですが、取締役会が3月14日(火)なら、中3日分を前に数えて3月10日(金)までに招集通知を発することが必要です。
取締役会の招集通知に議題は必要?記載事項を紹介
取締役会の招集通知における記載事項について、議題の記載は必要かを含めて解説します。
招集通知の記載事項
取締役会の招集通知に必ず載せなければならない記載事項は、法律上は特に定められていません。法律とは別に、取締役会のスムーズな運営のために必要とされる記載事項について解説します。
- 開催日時
- 開催場所
- 目的事項(議題)
開催日時
取締役会の招集通知は会議の案内であるため、開催日時と開催場所の記載は最低限必要です。日時の書き方に特に決まりはありませんが、日付を間違えにくいよう曜日まで記載した方がよいでしょう。
開催場所
開催場所は、参加者が迷わないよう本社・支社名や会議室名まで詳しく記載しましょう。メールの場合は不要ですが、書面の場合はさらに住所を記載する例もあります。
目的事項(議題)
取締役会の招集通知に議題を記載すべきかですが、前述したように法律上の定めはなく記載するもしないも自由です。しかし、取締役会のスムーズな運営を考えると、事前に議題を通知した方が参加者は事前準備ができ当日の議論も深まります。できる範囲で議題を記載し、関連する資料があれば添付した方がよいでしょう。
なお、取締役会の招集通知に記載した議題以外の事項についても、当日に審議や決議は可能です。念のため、後述する雛形のように「その他適宜必要な事項」等と記載しておくとよいでしょう。
取締役会の招集通知の雛形
以下に、取締役会の招集通知を書面で送る際の雛形を挙げておきます。
令和5年2月15日 取締役 各位 監査役 各位 東京都品川区大崎×丁目×番×号 ××株式会社 代表取締役社長 ×××× 取締役会招集のご通知 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 さて、当社の取締役会を下記の通り開催いたしますので、ご出席いただけますようお願い申し上げます。 敬具 記
第1号議案 ××の件 第2号議案 ××の件 第3号議案 その他適宜必要な事項 |
以上
取締役会の招集通知の注意すべき点① オンラインで開催する場合
取締役会の招集通知について、オンライン開催時の注意点を解説します。
取締役会はオンラインでも開催できる
取締役会はオンラインでの開催も可能です。条件として、情報伝達の「即時性」と「双方向性」を満たせる方法で開催する必要があります。
5分で分かる「取締役会リモート開催」とは?取り組みの背景と目的を解説
もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、自社の福利厚生制度についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「取締役会をリモート開催するには?一般的な開催方法との違いやリモート開催のメリット、注意点を紹介」の記事をご覧ください。
注意点 参加に必要なURLなどの情報を通知
前述したように、取締役会の招集通知に記載する事項について法的な制約はありません。しかし実務上、オンライン開催時には参加者が参加しやすいよう、会議システムの名称、参加に必要なURL、ID・パスワードが必要ならそれらも知らせる必要があります。
この場合、書面で招集通知を送って参加者がURLを自ら入力するよりも、URLリンクをクリックすれば参加できるメール形式で送る方が効率的です。取締役会のオンライン開催時には、メールでの招集通知送信を検討した方がよいでしょう。
また、取締役会の開催場所は、オンライン開催の場合でも「本社会議室」など実在する場所の指定が必要なため(会社法施行規則101条3項)、招集通知にも指定した場所を記載します。
記載例:
開催場所 当社本店208会議室
会議システム「○○○○」にて参加される場合は、以下のURLにてご参加ください。
URL:××××
ID:××××
パスワード:×××
招集通知の注意すべき点② メールを使用していない取締役への対応
取締役の招集通知をメールで送る際には、普段メールを使用していない取締役にはどのように通知するかという点に注意が必要です。
注意点 日常的に使われていないメールアドレスに注意
特殊な事例ですが、メールで取締役に招集通知を送信したにもかかわらず、招集通知がなされなかったと判断された判例が存在します(東京地裁・平成29年4月13日判決)。
この事案では、会社が割り当てた取締役Aのメールアドレス宛に、取締役会の招集通知が送信されました。しかし、取締役Aは普段パソコンを操作しておらず(秘書室管理)、社内からAのメールアドレスにメールが送信されることは通常はありませんでした。さらには、招集通知の期間を会日の3日前までに発する、緊急時はこの期間を短縮可と定款を定めてはいましたが、メールが送信されたのは取締役会前日の23時23分、取締役会は次の日の9時30分開始と直前だったのです。
このような事実から、取締役Aに招集通知がなされたとは言えないと判断されています。
通常は、取締役が日常的に使用しているメールアドレスに招集通知のメールを送信すれば、招集通知がなされたものとみなして問題ないでしょう。例外として、普段メールを全く使っておらず、秘書も管理していない取締役に対しては、メール以外の方法を選択する必要があります。
まとめ
取締役会の招集通知について、基本的な内容や法的に遵守すべき点を解説してきました。ポイントは、招集通知の方法や記載事項については特に法的な制限はなく、送付期限は取締役会の日の1週間前までに発するのが原則ですが、定款によって短縮可能な点です。
日本経済新聞によれば、取締役会議事録をクラウド上の電子署名で承認できるようになるなど、取締役会の運営においてもオンライン化による業務効率化が進んでいます。取締役会をオンライン開催し、会議システムのURLを招集通知のメールで送信できれば、現地開催・招集通知書の郵送にかかっていた負担は大幅に削減が可能です。これを機に、取締役会のオンライン化をぜひご検討ください。