メタバースを用いたバーチャルオフィスのサービス例と利用状況を徹底解説
5G等の通信技術の発達に後押しされるかたちで、メタバースがこれまで以上に注目されています。
感染症対策の一環としてテレワークが広く普及したことにより、コミュニケーションのあり方はオフラインからオンラインへと移行していきました。とくに、スタートアップ企業を中心にメタバース空間を仮想オフィスとして利用する試みも増えてきています。
メタバースへの関心の高まりと共に、職場コミュニケーションを活性化させるための新しいサービスの導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。本記事では、メタバースを活用したオフィスのサービス例や実際の利用状況について紹介します。
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メタバースを活用した仮想オフィスのサービス例
急速なテレワークの拡大に伴って、オンラインでのコミュニケーションを円滑化したいというニーズも高まっています。
これまで、テレワーク下の主なコミュニケーション手段はチャットツールやWeb会議システムでした。こうしたツールは業務の進捗の共有、相談では利用する上で困ることはないものの、従来のオフィスのように隣の席の人に話しかけることが難しく、オフラインと比較するとコミュニケーションの機会が減ってしまうという懸念がありました。
こうしたテレワークでのコミュニケーションの課題を解決する1つが、メタバースを活用した仮想オフィスです。メタバースでは、チャットツールやWeb会議システムと異なり「場」の概念が存在します。メタバースの空間内でアバターとなって移動したり着席したりできるため、より気軽なコミュニケーションが取りやすくなります。
メタバースというと、専用のゴーグルなどを用いたVR(仮想現実)をイメージする人もいるかもしれません。しかし、ビジネスの場ではそれだけではなく、より広義のバーチャル空間を意味します。
現在提供されている仮想オフィスサービスの多くが、VRゴーグルなど専用の機器がなくても気軽に利用可能です。
ここでは、メタバースを活用した仮想オフィスサービスとして、「RISA」「Virbela」「Mesh for Teams」「Horizon Workrooms」の4つを紹介します。それぞれの特徴・機能・コストを比較しながら、最適なサービスを導入していきましょう。
RISA
【出典:RISA】
RISAは株式会社MS-Japanが運営しているクラウド型のオフィスです。アバターを活用したメタバースオフィスのサービスであり、VR機器は必要ありません。
RISAは直感性と視覚性に優れており、幅広い世代で使いやすいデザインとなっています。仮想空間上で、人型のアバターとしてオフィスに参加できるため、実際に交流しているような感覚になれます。
一目見ただけで、「オープン」「電話中」「取り込み中」「離席中」いずれかのステータスであるか確認できるため、状況に応じてメールやWeb会議をもちかけられます。まるで出社しているような感覚で、オフィス全体の状況を把握できるでしょう。
また、RISAは常時接続型のオフィスを想定したメタバースなので、会議のために都度URLを発行する必要はありません。「従業員同士の交流を活性化させたい」「テキストでのやり取りの手間を軽減したい」というニーズにマッチした仮想オフィスサービスとなっています。
料金は同時接続人数・フロア数・セキュリティチェックなどに応じて、以下のような4種類のプランが設けられています。
プラン名 |
スモールプラン |
ベーシックプラン |
フロア追加 |
マネジープラン |
月額料金 |
3,000円 |
5,000円 |
20人フロア:月/3,000円 |
無料 |
同時接続数 |
5人 |
50人 |
フロア数に応じて変動 |
制限なし |
その他 |
追加ユーザー / DM / テキストチャット / ゲストユーザー:無制限 |
※引用:RISA「料金テーブル」
同時接続人数5人のスモールプランは月額3,000円、50人のベーシックプランは月額5,000円となっており、ほかの仮想オフィスと比べて低めの価格設定といえるでしょう。創業したばかりの企業や少人数で業務を行っている企業に、とくにおすすめのサービスです。
Virbela
【出典:Virbela】
Virbelaはアメリカ発のバーチャル空間サービスで、日本では公式販売店である株式会社ガイアリンクによってリリースされました。アメリカでの実績をベースに、日本市場向けにカスタマイズされているため、翻訳できる人材がいなくても安心して使えます。
Virbelaは、VR機器は不要で、自分に似せたアバターを設定してメタバース上のオフィス内で活動する仕組みです。セキュリティ面も徹底されており、アバター同士の会話は一切保存されません。そのため、機密性の高い情報を取り扱う企業にもおすすめできます。
一般的なオンライン会議システムでは、複数の声が重なると聞こえづらくなるという課題がありました。しかし、Virbelaでは話しかけられた方向と距離を疑似的に再現しています。マイク付きのヘッドホンを利用しなければなりませんが、右から話しかけられたときは右耳に声が届き、遠くにいるアバターの声は小さく聞こえます
誰がどこから話しているのか分かるため、まるで本当のオフィスにいるような感覚を味わうことができるでしょう。
参考:DX最先端"メタバース"で現実化するバーチャル職場~ガイアリンク 千野将氏インタビュー|専門家に聞く! アスクル みんなの仕事場
Mesh for Microsoft Teams
Mesh for Microsoft Teamsはマイクロソフト社が発表したサービスで、2022年前半のリリースを予定しています。企業での導入実績も多いMicrosoft Teamsで3Dアバターが利用できるようになることで、さらなるコミュニケーションの活性化が期待されています。
Microsoft Teamsでは会議参加者はカメラの「オン」「オフ」しか選べませんでした。
カメラをオンにしたほうが活発なコミュニケーションができるのですが、諸事情でオンにできないこともあるでしょう。
Mesh for Microsoft Teamsでは、オンとオフの中間ともいえる「アバター」という選択肢が加わります。アバターを利用すれば、自分の姿を映し出さなくても自分の状態を伝達可能です。結果として、相手の反応が分かりやすくなるため、双方向的なコミュニケーションが可能です。
マイクロソフトではMesh for Microsoft Teamsをビデオ会議システムとして活用するのではなく、さまざまなサービスとのコラボレーションや仮想空間の拡張も計画しています。
Mesh for Microsoft Teamsは「メタバースへのゲートウェイ」として位置づけられており、まずはTeams内にメタバース空間を構築するところからスタートします。実際の人物とアバターが混在するミーティング、メタバース空間でのプレゼンテーションなど、今後の発展が楽しみなサービスといえるでしょう。
Horizon Workrooms
【出典:Horizon Workrooms】
Horizon WorkroomsはアメリカのMeta社(旧:Facebook社)が提供している、メタバースを活用した仮想オフィス空間です。SNSで世界的なシェアを持つFacebook社は2021年10月28日、社名を「Meta」に変更しています。社名変更から、今後の事業展開において「メタバース」を強化していくという方針がうかがえるでしょう。
Horizon Workroomsでは専用のVR機器である「Oculus Quest 2」を使ってアクセスしますが、ゴーグルを開発したアメリカのOculus VR社は2018年9月にFacebookに買収され、現在は「Meta Quest」というブランド名のもと開発が続けられています。
Horizon Workroomsは、実世界で使用しているパソコンのキーボードやデスクをスキャンして、仮想オフィス内に反映させることが可能です。今回紹介する仮想オフィスのなかでは、もっとも近未来的なシステムといえるでしょう。
特徴的な点は、巨大な仮想ホワイトボードです。コントローラーをペンに見立てて書き込めるため、ディスカッションを通してアイデアを生み出す仕事にぴったりの仮想オフィスです。
また、OutlookやGoogleのカレンダー同期機能を使って、ミーティングを設定できます。Horizon Workroomsの機能を最大限に活用するためには、専用のVRゴーグルが必要ですが、機器がない人もブラウザ版のビデオ会議であれば参加できます。本格的なバーチャル空間を再現したい企業におすすめのサービスとなっています。
メタバースでのオフィスの利用状況
今回紹介した「RISA」「Virbela」のようなVRゴーグルを必要としないメタバースオフィスは、新しいシステムの導入に積極的な企業を中心に、多くの業種で利用されています。
世界的なシェアを持つマイクロソフト社も「Mesh for Microsoft Teams」という新サービスでメタバース市場に参入を予定していて、今後もメタバースを活用した仮想オフィスは増加していく傾向にあるでしょう。
一方、VR機器を用いた「Horizon Workrooms」のようなメタバースオフィスを導入している会社は少なく、いまだ導入へのハードルが高い状況です。東京都のWeb制作会社である株式会社ベイジの検証によると、VRミーティングでは以下の課題があるようです。
- 従業員全員のVR機器を購入するのに費用がかかる
- 長時間使用することで身体に負荷がかかる
- 可動域の設定が面倒
- 初期設定のステップが多い
- キーボードの投影、会議参加者の人数が限定的
この検証で利用されたVRヘッドセット「Oculus Quest 2」はストレージ容量やアクセサリーなどにより、1人当たり3万〜6万円かかるため、初期費用は高額となります。ただし、仮想オフィスである「Horizon Workrooms」自体は現在無料で利用可能です。
長時間使用することで、目が疲れる、ヘッドセットの重さが気になる、といった身体的な問題を起こしてしまう人もいるようです。また、VR全体の課題でもありますが、画面に酔ってしまうことも珍しくありません。
「Horizon Workrooms」では可動域が限られており、基本的には椅子に座って操作をすることになります。現実世界での作業スペースを変更するためには、設定変更が求められるため、手間に感じることもあるでしょう。
ほかにも、初期設定に1時間ほど時間がかかる、会議参加者が最大16名に限定されている、など課題はいくつもあります。ただし、まだリリースされたばかりのサービスでもあるので、今後の改善が期待されています。
これから課題が少しずつ解消していくことで、VR機器を用いたメタバースオフィスも徐々に拡大していく可能性もあるでしょう。
メタバースによる社会的影響とは?注目されている理由と共に紹介
メタバースが注目されている理由や社会にもたらす効果を詳しく知りたい方は「メタバースとは何か?注目の理由や社会にもたらす効果を解説」をご覧下さい。
まとめ|メタバースのオフィスの今後
「Mesh for Microsoft Teams」のリリースが2022年前半に予定されているなど、大手企業が相次いでメタバースを活用した仮想オフィス市場に参入しています。今後もVRゴーグルを必要としないメタバースオフィスを中心に、導入する企業は増えていくと予想されています。
一方で、VRゴーグルを必要とするメタバースオフィスは、まだまだ発展途上です。VR機器の普及、身体への負荷軽減、現実世界とのナチュラルなリンクなど、多くの課題を抱えています。
提供する企業も導入する企業も手探り状態となるため、使いづらさを感じるところもあるでしょう。まずは、それぞれの課題に対してひとつずつ解決策を見つけていくことになります。改良を重ねていくことで、コミュニケーションを活性化する近未来的な働き方が実現できるかもしれません。
メタバースは、いま急速に発展している市場でもあります。新しいオフィスのあり方に興味がある人は、ぜひメタバースを活用した働き方に注目してみてください。