メタバースとは何か?注目される背景やビジネスにもたらす効果を解説
新型コロナウィルスの感染拡大により外出自粛が促され、企業はテレワークを導入せざるを得なくなりました。オンラインコミュニケーションのサービスも増え、自宅にいながらもオンラインコミュニケーションを行う人も増えています。
そのような状況のなか注目度が高まっているものが、仮想空間でアバターによる活動を行う「メタバース」です。メタバースは5G等の技術の発達・普及を後押しに、今後の成長が見込まれています。
メタバースはこれまではゲームを中心に利用されてきましたが、徐々にビジネスシーンでの活用事例も増えてきています。この記事では、メタバースとはどのようなものか、具体的な活用例などについて解説します。
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メタバースとは
メタバースとは、一言でいうと「仮想空間」です。インターネット上に構成される3次元の世界で、私たちはアバターと呼ばれる自分の分身を介し世界に入ります。
メタバースのポイントは現実世界に限りなく近い状態で活動できることです。現実世界と同じく常に時間が流れ続けている世界で、私たちはアバターを動かして遊んだり集まってミーティングをしたりできます。Web上の空間で社会生活を送れるのです。
メタバースの語源は「超越」を意味する「Meta」と「世界」を意味する「Universe」です。1992年に発表されたニール・スティーブンソンのSF小説「スノウ・クラッシュ」の世界から名づけられました。
メタバースは新しい概念とされがちですが、その先がけともいわれる3次元仮想空間「Second Life」は2003年にリリースされ、日本でも2006年ごろにブームとなりました。仮想空間におけるユーザー同士のコミュニケーションや売買取引は、すでに2000年代でもみられています。
メタバースとVRの違い
メタバースは、専用ゴーグルをかけて仮想世界に没入するVR(Virtual Reality:仮想現実)とも異なります。メタバースはインターネット上に存在する仮想の「空間」で、VR機器の有無に関係なく利用できます。VRは、仮想空間を現実のように感じ取れる「デバイス」や「技術」で、VR機器が必要です。
メタバースとVRの違いとは?VR必要の有無を用いて紹介。
メタバースとVRの違いや、VRを使用の有無について知りたい方は「メタバースとVRの違いは?VRゴーグル必要の有無やビジネス向けメタバースも解説!」をご覧下さい。
メタバースが活用される分野
現在、メタバースはゲームとビジネスの2分野で活かされつつあります。
ゲーム分野の事例
アメリカのゲーム会社Epic Gamesが提供する「フォートナイト」では、すでにメタバースの一部が構築されています。それがゲーム内の「パーティーロイヤル」と呼ばれるモードです。ここではバトル要素が排除され、ユーザーはミニゲームで遊んだりフレンドとの交流を楽しんだりできます。ミュージシャンの米津玄師さんや星野源さんがここでバーチャルライブをおこないました。
出典:米津玄師、『フォートナイト』パーティーロイヤルで“新しく美しい一瞬”を世界中のファンと共有! | Qetic
任天堂の人気ゲーム「あつまれどうぶつの森」も広義ではメタバースといえるでしょう。この作品は、ゲームの中の世界に多人数で集まり、自由に遊ぶことができる点が特徴的です。キャラクター(アバター)の着せ替えを楽しむこともでき、世界的ファッションブランドAnna Sui(アナスイ)がアバター用の服を提供したことも話題となりました。
こうしたゲーム作品を通し、現実世界と仮想世界が近づいた感覚をリアルに体験している人も増えているようです。
出典:あつまれどうぶつの森コレクション – アナ スイ ジャパン 公式ウェブストア
ビジネス分野の事例
ここからはビジネス分野におけるメタバースの事例を紹介します。
バーチャルオフィス
メタバースのビジネスにおける利用で注目されているものが、仮想空間のオフィスにアバターで出社し、同僚とコミュニケーションや業務を行えるバーチャルオフィスです。
2021年にFacebook(現・Meta)が公開した「Horizon Workrooms」は、現実世界と仮想世界をよりシームレスに繋ぐことを意識したバーチャルオフィスです。「Horizon Workrooms(ベータ版)」では、独自の空間オーディオテクノロジーにより、話しかけられている方向や距離が分かるようになっています。
バーチャルでありながら自然な会話を実現しているため、実際に同じ空間にいるかのように感じられるでしょう。
同じく2021年に、Microsoftも独自のメタバース「Mesh for Microsoft Teams」のリリースについて発表しました。会議や交流会、プレゼンなどが可能なこちらのサービスを、Microsoftは「メタバースの入口」と位置づけ、2022年の公開を予定しています。オンラインでのコミュニケーションに関するストレスの緩和などが目的とされています。
国内でも、株式会社OPSIONが「RISA」というメタバースによるバーチャルオフィスサービスの提供を始めています。
アバターに「取り込み中」や「会議中」「商談中」などのステータスを表示させることで、互いの状態を一目で分かるようにしているため、対面と同じように相手の状況を把握可能です。また、ワンクリックでアバターが移動してきて音声通話が始まる仕組みで、チャットよりもスムーズに会話を開始できます。
株式会社ガイアリンクが日本での代理店となっている「Virbera(バーベラ)」は、メタバースによるバーチャルワールドの世界的プラットフォームです。オフィスやイベント会場、教育施設などを自由に構築して利用できます。バーチャル空間内のモニターやスクリーンに画像や動画、PDFなどを表示できるため、上映会や研修、会議における臨場感も高まるでしょう。
メタバースを用いたサービス例とは?利用状況と共に紹介。
メタバースを用いたバーチャルオフィスのサービス例やその利用状況について詳しく知りたい方は「メタバースを用いたバーチャルオフィスのサービス例と利用状況を徹底解説」をご覧下さい。
バーチャルイベント
バーチャルイベントとは、オンラインの仮想空間内で行うイベントです。
メタバースにおけるバーチャルイベントは、従来のオンラインイベントよりも圧倒的な臨場感でイベントを実施できます。
アバターで仮想空間内のイベント会場に入場し、椅子に座って登壇者の話を聞いたり、右を向いてその方向にある物や人を確認したりすることも可能です。オンライン上でまるでその場にいるかのような体験ができるため、対面イベントとオンラインイベントのメリットを併せ持ったイベントを提供できるでしょう。
ブイキューブでも、メタバースイベントの提供サービスを行っています。メタバースを提供するためのソフトウェアだけではなく、配信専用スタジオや専門スタッフを用意し、全面的にメタバースイベントをサポートしています。
メタバースを使用したイベントを実現!関連サービスについても紹介。
メタバースを使用したイベントを実現するために、事例やサービスについて詳しく知りたい方は「メタバースで社内外のイベントを実現!活用事例や関連サービスを解説」をご覧下さい。
バーチャルショップ
バーチャルショップとは、オンラインの仮想空間内に作られた店舗です。リアルの店舗と同様に、物品やサービスの購入ができます。BurberryやBeams Japanなどのバーチャルショップは話題となりました。
バーチャルショップをメタバース空間内に構築すると、アバターで自由に店舗を動き回ることはもちろん、アバターの店舗スタッフの接客を受けたり商品や商品情報を調べたりすることも可能です。
従来のバーチャルショップよりも、一層リアルに近いバーチャルショップなら、ユーザーに対して家にいながら実店舗で買い物をしているような体験を提供できるでしょう。
メタバースはビジネスを変える?メタバース活用例6選とメタバースの今後について解説
メタバースのビジネス分野での活用事例について知りたい方は「メタバースはビジネスを変える?メタバース活用例6選とメタバースの今後について解説」をご覧下さい。
メタバースが注目される背景
2021年後半からニュースを賑わせてきたメタバース。なぜここまで注目されるようになったのでしょうか。この背景には複数の要素が関連しています。
- VR機器の普及
- オンラインコミュニケーションの進化
- NFTのような関連技術の実用化
- 新型コロナウイルスの感染防止対策
- Facebookの社名変更と本格参入
VR機器の普及
総務省「平成30年版 情報通信白書」によるとVR市場は、エンターテイメント分野と教育・訓練分野でそれぞれ拡大しています。それに伴いVR機器も広く普及するようになってきました。2019年は4863万台だったVR機器の出荷台数は、2020年に6200万台以上まで増加しています。
オンラインコミュニケーションの進化
情報通信技術の発展によるオンラインコミュニケーションの進化もメタバースを後押ししています。ネット通信の音質や画質は昔よりも格段に向上し遅延は低減しています。テキストのやり取りはもちろん、ネットを介したボイスチャットやビデオコミュニケーションがスムーズになり、広く普及するようになりました。より快適なオンラインコミュニケーションツールとしてメタバースが注目されています。
NFTのような関連技術の実用化
NFTや仮想通貨などの技術の実用化も、人々の注目をメタバースに向けさせる要因となっています。NFTとは簡単に言うと、デジタル上のデータに本物である証明書を付けて売買できるようにする技術のこと。従来は簡単に複製できたデジタルデータへ価値を与えられるようになりました。メタバース内でも価値のあるデジタルデータを作成したり、仮想通貨で売買したりできるようになっています。
新型コロナウイルスの感染防止対策
メタバースが注目を浴びる要因は、私たちの日常に大きな影響をもたらしている新型コロナウイルスの影響もあります。感染防止対策の一環としてオンラインでのコミュニケーションの拡大が一気に加速しました。より現実に近く、臨場感のあるオンライン環境でコミュニケーションを取りたいという人々のニーズにメタバースが応えるのではないかと期待されています。
Facebookの社名変更と本格参入
2021年10月にアメリカのFacebook社が社名をMetaへ変更し、メタバース事業に本格参入したことも背景にあります。この出来事をきっかけに他企業もメタバース事業へ続々と参入を表明しています。
カナダの調査会社の予測によると、メタバース市場規模は2020年に5.5兆円だったのが、2028年には100兆円近くまで拡大するのではないかといわれています。
メタバースの効果
メタバースを使うことで、イベントやサービス提供など今までにない効果を得られます。これまで以上の体験・演出が実現できるため、さまざまな分野で可能性が広がるでしょう。メタバースで得られる3つの効果をお伝えします。
オンラインコミュニケーションの没入感・体験の向上
メタバース上のコミュニケーションは、アバターを通じて実際に対話しているような感覚になれます。そのため、より没入感のある体験が可能となるでしょう。
従来のオンラインコミュニケーションは、2次元のWeb会議・電話による通話・文字を使用したチャットが中心でした。インターネットの普及や通信技術の向上により、遠隔地ともコミュニケーションが取りやすくなりましたが「感情やニュアンスが伝わりづらい」「一体感が感じられない」などの課題も挙げられます。
U-SiteのWeb会議に関する調査では、「発言のタイミングがつかみづらい」「相手の表情を読み取りづらい」といった不満が上位に上がっており、必ずしもスムーズなコミュニケーションが実現できているとはいえない状況です。
しかし、メタバースではアバターの動きに合わせた映像や音の出力が可能です。アバター同士の距離が近づくにつれ音声が大きくなる、オフィスに人がいるかどうか可視化されて在席状況が一目で分かるなど、より現実に近い環境でコミュニケーションできるようになります。
「メタバースが活用される分野」の項目でも紹介した、メタバースによるバーチャルオフィスを例に挙げてみましょう。
バーチャルオフィスでは、同じ空間でデスクをはさみながら会話やミーティングが行えます。ホワイトボードに書き込んだ文字も現実世界と同じように見られるため、まるでオフィスで仕事をしているような感覚を味わえるでしょう。
文字や映像のみのコミュニケーションよりも感情表現をリアルかつ豊かにできるため、オンライン上でありながら、より没入感のある体験を実現します。
現実では不可能な演出の実現
メタバース内のアバターや背景は3DCGによって作成されるため、さまざまなコンテンツをメタバース空間上に構築可能です。
そのため、現実では物理的に不可能、あるいは高額なコストがかかるような演出もメタバースなら実現できます。実在する建造物やコンサート会場では到底再現できない演出をすることにより、実際に足を運んで参加するイベントとはまた違う体験を提供できるでしょう。
例えば、日産自動車はメタバース上に実在のギャラリーを忠実に三次元化した、バーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING(ニッサン クロッシング)」をオープンしました。
メタバース内の車に触れながらデザインのポイントを紹介するデザイントークイベントや、電気自動車「日産アリア」に乗って、VRChat上で地球温暖化の影響を体験する環境ツアーなどを開催しています。
また、2022年には新型軽電気自動車「日産サクラ」の発表会を開催し、見学や試乗をメタバース空間で提供しました。仮想空間の中ではありますが、実際にハンドルを操作した走行や充電体験ができるため、従来のオンラインイベントにはない臨場感ある演出に成功しています。
今後はメタバース上の「NISSAN CROSSING」に「日産サクラ」を展示するとともに、不定期でスタッフによる車両の案内・説明サービスを開始するとのこと。リアルに近い店舗体験ができるでしょう。
※参考:レスポンス「【日産 サクラ】メタバース上で試乗できる!…史上初、VRで新型車お披露目」
物理的制約を受けない体験
メタバースでは、インターネット環境があればどこからでも参加できる点もメリットといえるでしょう。距離や移動手段などの問題で諦めていたイベントへの参加、遠方にしかないショップでの買い物など、メタバース上では住む場所やハンディキャップの制約が解消されます。
ショッピング体験を例に挙げてみましょう。現在もECサイトを利用すれば、店舗に足を運ぶことなくどこからでも買い物できますが、メタバースならアバターを介して遠方の家族や友人と一緒にショッピングを楽しめます。普段は敷居が高い店舗もアバターが行動することでハードルが下がり、入店しやすいと感じるかもしれません。
事業者側としてはブランドの世界観を十分に表現しながら、実店舗を持たずに低コストで運営できるメリットがあります。エリアを限定することなくマーケティングができるため、顧客層の拡大も期待できるでしょう。
また、3DCGで作られた商品は、360度あらゆる角度から商品が見られるためより商品の魅力も伝えやすいといえます。現実世界にCGコンテンツを重ね合わせて表示させる「AR機能」を導入すれば、商品のサイズ感や設置イメージの確認に活用でき、返品や交換のリスクを減らせます。
企業のメタバースの活用意向
PWCコンサルティングの調査によると、メタバースの活用意向がある企業はBtoB企業が37%、BtoC企業が44%となりました。活用したい領域としては、「オンラインミーティング」や「オンラインイベント・セミナー」が最多です。
次いで「マーケティング・販促」「営業・提案」となっていることから、BtoB企業・BtoC企業ともにマーケティングや販売・営業の領域でのメタバース活用を期待していることが分かります。
また、活用目的としては67%が既存事業の拡大を目指しているものの、具体的に進行中の企業は10%にとどまりました。理由としては、解決すべき課題に「導入目的の明確化」や「人材の育成」「費用対効果の説明」が上位にあがっており、活用イメージが定まっていないと考えられます。
メタバース内の法整備やVR機器の普及など解決すべき課題は残りますが、メタバースの市場規模は今後拡大すると予測されています。制約を受けないメタバースがもたらす可能性は図りしれず、多くの企業がビジネスチャンスを見出していると言えるでしょう。
まとめ
メタバースはユーザーがアバターを使って社会生活を送れる仮想世界です。かつてはSFの世界の話でしたが今や実現に向かっています。ゲームやアート、音楽といったエンターテインメント分野での活用が目立ちますが、ビジネスにおいても実用化が進んでいるのも事実。仮想通貨による投資やメタバース事業を新しいビジネスチャンスと位置づける人々も少なくありません。人類の社会生活へ大きな影響を及ぼす可能性のあるメタバースの動向には今後も注目です。