メタバースはビジネスを変える?メタバース活用例6選とメタバースの今後について解説

メタバースはユーザー同士の交流を楽しむコミュニケーションゲームなどで活用されることが主でした。そのため、ゲームを趣味とする一部の人にはメタバースはよく親しまれていましたが、メタバースを知らない、使ったことがない、という人も多くいたことでしょう。

しかし、2020年ごろに始まった新型コロナウイルス感染症をきっかけとして、ゲーム以外の分野でもメタバースへの注目が高まりつつあります。

人同士が接触することによる感染症の拡大を抑えるために、企業はテレワークを導入したり、オンライン上で顧客や取引先とやり取りしたりしなければならなくなりました。そこで、オンラインコミュニケーションでも対面のように会話するために、メタバースオフィスやメタバースで接客するシステムを構築する企業も出てきています。

総務省の令和4年情報通信に関する現状報告の概要で引用されているStatista(Grand View Research)によると、世界のメタバース市場規模は2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されています。今後はゲームやメディアなどのエンターテインメント業界だけではなく、ほかの領域でも活用されると言えるでしょう。

そこで、この記事ではメタバースのビジネス分野における活用例を6つ紹介します。今後どのように活用されていくのか展望についても解説します。

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メタバースのビジネス分野での活用例

メタバースのビジネス分野での活用例はさまざまなものがありますが、中でもよく使用される以下の3つについての活用例を紹介します。

  • オンラインイベント
  • メタバースオフィス
  • バーチャルショップ

メタバースを使用したオンラインイベント

通常のオンラインイベントでは、イベントを配信で視聴する、Web会議で会話する、といった方法が主でした。しかし、メタバースを活用すると、人々は仮想空間内を自由に歩き回れるようになるため、オンラインイベントでできることの幅は大きく広がります。

メタバースを使ったオンラインイベントの活用例について詳しく紹介します。

社内イベント

社内イベント

社内イベントにメタバースを導入すると、少人数で雑談したり、会場内を自由に移動したりできるようになります。

新型コロナウイルス感染症の影響により、社内イベントを対面形式で行うことが難しくなり、オンラインに変更するケースが増えています。その際、普段使用しているようなWeb会議ツールで開催することも可能ですが、100人、1,000人規模となると社員同士の対話は困難です。

これでは社内イベントの目的として代表的である「従業員同士のコミュニケーションを活発にする」「社員同士で新しいつながりをつくる」といったことは達成できません。

メタバースによる仮想空間を会場とし社内イベントを行えば、参加者はアバターを介して会場内を歩き、自ら積極的にイベントに参加できるようになります。その場で、普段あまり会話してこなかった他部署の人と関わりができることもあるでしょう。

また、メタバースの空間を自由に作り出せるという特徴も、Web会議ツールには無い点です。空間をリアルなホールやライブ会場にすれば、参加者が実際に会場に訪れているような気持ちにできます。草原や森林など、自然あふれる空間にしてのんびりとした雰囲気にすることも可能です。

そのほか、メタバース内でレーザービームや花火の打ち上げなど派手な空間演出もできるため、動画配信を見るだけのときより会場を盛り上げられます。

メタバースを利用しての社内イベントでは、Web会議ツールを使用しての社内イベントには無い、没入感や多様な演出が可能です。

新製品発表会

新製品発表会

新型コロナウイルス感染症の影響により、新製品発表会をリアルな会場ではなく、ライブ動画や、録画動画の配信で行うことが多くなりました。しかし、Web会議ツールなどではどうしてもコミュニケーションが一方的になりがちで、会場の臨場感や高揚感を再現することは難しいというデメリットがあります。

そういったオンライン開催のデメリットを補うものが、メタバースです。メタバースでは、自分がアバターとなって会場に行くことから、オンラインでありながら発表会に訪れている人の数や盛り上がりを感じやすくなります。

また、メタバースでは現実では到底不可能な演出を再現することも可能です。自社のイメージキャラクターが会話しながら新製品を紹介したり、新製品のイメージに合わせた非日常的な空間を創り出したりできます。顧客やメディアに対して、強い印象を与えられるでしょう。

実際に、メタバースで新製品発表会を行う企業もすでに出てきています。

2022年4月、デル・テクノロジーズは新製品発表会をメタバースによる空間で開催しました。参加者はWebブラウザがあれば参加可能で、アカウント登録などもせずに誰でも会場に入れる仕組みです。参加者はマウスドラッグにより直感的にアバターを動かし、スクリーンに映し出された映像を見たり、新製品を体験したりしました。

アバター同士が邪魔してしまいスクリーンが見にくい、技術的な問題で展示機の拡大表示や撮影はできない、といった課題は残しつつも、リアルの新製品発表会に近い演出に成功しています。

※参考:これから流行る?「メタバース」で新製品発表会

展示会

展示会

展示会では、その場で直接参加者に直接商品説明ができたり、質問に応えられたりすることが大きなメリットです。その場で参加者と関係を築けるため、自社のことを知らなかった、興味がなかった参加者を自社の顧客にできる可能性があります。

しかしオンライン展示会となると対面してのコミュニケーションができず、展示場の魅力を享受できません。この問題を解決するものとして、メタバースによる展示会が期待されています。

メタバース展示会であれば、参加者はアバターを使って会場内を自由に歩き回れますし、出展している企業側が参加者に近づいて話しかけることもできるようになります。オンラインでありながら、リアル会場での展示会のようなコミュニケーションをとれるようになるでしょう。

メタバースで作り上げた展示ブースは再利用することも可能です。リアル会場での展示会では、開催の度に資料や展示物を運び込まなければならないため、コストや手間の削減につながります。

ライブやコンサート

ライブやコンサート

アーティストが開催するライブやコンサートも、新型コロナウイルス感染症をきっかけとし、オンライン配信で行うことが増えてきました。行動制限が解除され、会場でライブやコンサートを開催するようになった今でも、同時にライブ配信を行うケースが目立ちます。

ライブやコンサートをライブ配信することにより、会場に足を運べない人も視聴できるようになり、さらなる売上向上を目指せるでしょう。2023年現在音楽業界では、ライブ配信をより臨場感あふれるものにし、視聴者を満足させるためにメタバースでのライブ配信に注目が高まっています。

2021年11月には、世界的に有名であるジャスティン・ビーバーがメタバースでのライブ配信を開催しました。ライブではジャスティン・ビーバーがアバター姿で最新の楽曲を配信しましたが、曲に合わせて空間を草原や海辺に変えるなど、メタバースならではの演出で会場を盛り上げたそうです。

※参考:PANORA VIRTUAL REALITY JAPAN「Avex USAの出資先「Wave」が、ジャスティン・ビーバー初のメタバースライブを開催」

メタバースオフィス

メタバースオフィスとは、仮想空間上にオフィスを構築することです。メタバースオフィスにアバターを配置し、アバターを通じて雑談や会議、面談などを行います。

メタバースオフィスにはさまざまな種類があり、それぞれ機能は異なりますが、基本的にアバター同士が近づくと声が聞こえるようになり、離れると声は届きません。会話可能か、離席中か、ステータスを表示させられるものも多く、手が空いている人に近づいて話しかけるなど、実際のオフィスに近いコミュニケーションがとれるようになります。

テレワークは従業員が通勤しなくても済む、オフィスを縮小でき経費削減につながる、といったメリットがあるものですが、コミュニケーションが減るデメリットもあります。

内閣府「第5回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、テレワーク利用拡大の課題とテレワークで不便な点として、「社内での気軽な相談・報告が困難」、「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」といったものが多くあげられます。

メタバースオフィスはアバターで近づいて話しかける、言葉でコミュニケーションをとれる、という特徴があるため、上記のような課題を解決する手立てになるでしょう。

メタバースによるバーチャルショップ

メタバースでのバーチャルショップでは、アバターを使って現実の店舗のように店内を歩き回りながらショッピングします。

アバター同士で会話ができるため、消費者は店員に近づいて商品に関する説明を受けたり、友人と会話しながら買い物をしたりできます。オンラインショップなので、遠方でなかなか会えない友人ともショッピングが楽しめるようになるでしょう。

メタバースによるバーチャルショップはオンラインとオフラインのメリットをかけ合わせたような性質となっており、CVR向上も期待できます。売上向上を目指すECサイトによって、メタバースのバーチャルショップは大きなチャンスとなるでしょう。

企業でのメタバース活用の意向

メタバースのビジネス活用は注目が高まり始めています。

2022年のPwCコンサルティングの日本企業1,000社超を対象としたメタバースの利活用に関する調査によると、自社でのビジネスへの活用に関心があるという企業は、わずか10%でした。しかし、87%の企業が「メタバースはビジネスチャンスである」と回答しています。

また、メタバースに興味がある企業に限定すると、具体的な案件を進行中である企業は23%、予算化まで済んでいる企業は7%、検討中である企業が47%です。表面上はメタバースを使用したサービスや商品はまだ目立たないかもしれませんが、近年中はどうなるか分からない状況です。

今後競合他社に勝ち抜くためにも、企業としてメタバース活用は重要なポイントといえるでしょう。

※参考:PwCコンサルティング「メタバースは「ゲーム・エンタテイメントのための仮想空間」からビジネス活用のフェーズへ

まとめ

メタバースではオンライン上に創られた空間である一方、オフラインのようにコミュニケーションを取れます。そのためオンラインとオフラインのメリットを掛け合わせたような性質を持っていると言えるでしょう。メタバースはエンターテイメント業界でよく活用されていますが、ビジネス分野での活用に対する期待が高まっています。

社内イベントやバーチャルオフィスといった社内での活用や、バーチャルショップやライブ配信など、様々な用途で活躍するでしょう。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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