企業はメタバースにどう向き合うべきか?参入企業と活用事例を紹介

「メタバース」という言葉を日常で見聞きするようになり、今後はアバターを使って仮想空間で行動する機会が増えそうだと感じている人も少なくないでしょう。

事実、Statista(Grand View Research)の調査によると、2021年には日本円で4兆2640億円だったメタバースの世界市場は、2030年には20倍に近い78兆8705億円まで拡大することが予想されています。

とはいえ、現状でどのような企業がメタバースに参入しているのか、今後のビジネスでメタバースをどう活用すべきなのかといった点については、まだイメージがわかない人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、既にメタバースに参入している企業や、ビジネスとしての参入分類、活用事例などの情報を解説します。メタバースを日本企業がどう捉えているかという調査結果も紹介するので、企業の経営者の方などはぜひ参考にしてください。

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メタバースに参入している企業紹介

メタバースに参入している企業は複数ありますが、どのような形で参入しているのかは企業によって異なります。そこでまずは、メタバースの各種サービスがイメージできるよう、既に参入済みの企業と、その特徴をいくつか紹介します。

株式会社ブイキューブ

ビジュアルコミュニケーションツールの開発・販売などを行う弊社、株式会社ブイキューブは、創業以来の高いデジタル技術を背景にメタバースに関連する複数のサービスを提供しています。

具体的には、オンラインイベントプラットフォームの「EventIn」や「Touchcast」、バーチャルオフィスツール向きの「EventIn Workplace」など、多彩なシステムの提供・サポートが可能です。2022年4月には、VRゴーグルなどのヘッドセットなしでメタバースを体感できる個室型VR空間「メタキューブ」も発表しました。

ブイキューブのメタバース関連サービスは、「いつでも」「どこでも」コミュニケーションが取れることを念頭に開発されているため、ユーザーの誰もが使いやすさを実感しやすいのが特徴です。

例えば、メタバースで多数のブースを設置するイベントを開催した際も、1つの画面で他のブースに移動できる仕様で高い回遊率を実現しました。また、バーチャルオフィスには「雑談」「共同作業」「会議室」といったスペースの区分を設け、オンラインでは判断が難しいとされてきた「今、話しかけていいかどうか」を視覚的に確認できるようにしています。

実際に、企業説明会や大学のオープンキャンパス、研究者が集う国際会議など、さまざまなシーンで弊社のメタバース技術が採用されています。

導入事例はこちら

oVice株式会社

oVice(オヴィス)株式会社は、バーチャルオフィスやオンラインイベントで使用可能なメタバース「oVice」の開発・提供を行う企業です。

オヴィスのバーチャルオフィスは「従来のチャットやビデオ通話よりもシームレスでカジュアルなやり取りができるかどうか」という点が重視されています。

例えば、アバターを近づけるだけで会話が始められる仕様で、社員同士の雑談が生まれやすい空間を実現しているのも特徴のひとつです。これにより、「おはよう!今日は寒いね」といった、ちょっとした会話が生まれやすくしています。

また、バーチャルオフィス内で行われているミーティングは参加者以外でもアバターを近づけると内容が聞こえるため、他部署との情報共有を簡単にできるのもポイントです。

パーソルマーケティング株式会社

パーソルマーケティング株式会社は、メタバースの導入に必要な人材派遣や人材教育、環境構築支援、運営支援などをトータル的に行う企業です。

アメリカのメタバースプラットフォーム「Virbela(バーベラ)」の日本公式販売代理店である株式会社ガイアリンクとも提携しているので、自社のメタバースを構築したいといったニーズにも対応しています。

「Virbela」は、バーチャルオフィスや講演会、展示会やライブイベントと、多様なニーズごとに自由なメタバースを構築できるのが強みです。サービス自体は海外発ではありますが、ガイアリンクが日本向けに内容をカスタマイズしているため、英語に対応できない企業でも問題なく利用できます。

メタバースの導入を検討する際は、知識・経験を持つ社員の不足が課題となることもあるでしょう。パーソルマーケティングはメタバースの構築に必要な人材を派遣したり、教育したりできるので、デジタル分野に自信のない企業にとっては頼りになる存在です。

株式会社NTTコノキュー

株式会社NTTコノキューは、XR(Extended Reality)事業の推進を目的に2022年に設立された、NTTドコモの子会社です。同社は、メタバースプラットフォーム「XR World」やVRゴーグルなどのXRデバイス、デジタルツインといった、先端技術によるビジネスを展開しています。

メタバースプラットフォームの「XR World」は、アプリやVRヘッドセットなどは不要で遊べるメタバースで、パソコンやタブレット、スマートフォンからアクセスできるマルチデバイス型です。

ユーザーはアバターを操作しながらXR World内を探索したり、他のユーザーとコミュニケーションをとったりできます。また、アニメやアーティストとのコラボで作り上げたエリアへ行けば、同じ趣味や興味を持つ人との出会いもあるでしょう。

NTTコノキューは現在、メタバースにユーザーを集める段階にあるためイベントを積極的に実施していますが、今後は収益化につながるビジネスモデルの確立も目指しているそうです。

クラスター株式会社

クラスター株式会社は、2022年に100万ダウンロードを達成したメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」を開発・運営する企業です。

クラスターのメタバースには、ユーザーが「Creator Kit」を使って自分の好きな世界を創造できるという特徴があります。そのため、「cluster」にはさまざまな空間が存在し、探索するだけでも楽しめるのがポイントです。もちろん、他のユーザーとアバターを介してコミュニケーションをとったり、イベントやゲームに参加したりすることもできます。

また同社は、音楽ライブなどに代表されるメタバースのイベント領域を強みとしているため、イベント用メタバースの提供から企画・運営までをサポートするサービスを法人向けとして展開中です。

KDDI株式会社

「au」に代表される携帯電話事業でおなじみのKDDI株式会社も、メタバースに参入している企業のひとつです。2020年5月には先ほど紹介したclusterの技術を用いて、渋谷区公認のメタバースプラットフォーム「バーチャル渋谷」をリリースしました。

2023年春には新たなメタバースプラットフォームである「VC(ブイシー)」の提供が予定されており、アーティストによるライブやイラストレーターなどの展示会ができるようになります。KDDIは、都市連動型メタバースという形で、特に現実世界との連動にこだわっているのが特徴です。

例えば、メタバースで購入した商品が、現実に自宅へ届けられるといった仕組みの構築を目指しています。これにより、メタバースは単なるバーチャル空間ではなくなるため、将来的には経済圏としても機能するイメージです。

また同社は、現実世界の街が、そこに暮らす人や事業を営む企業によって作られていくように、将来的にはメタバースの世界もユーザーによって作られるものにする意向を持っています。したがって今後の展開によっては、こうしたメタバースへさまざまな企業が出展する可能性もあるでしょう。

キヤノンUSA

カメラやプリンターなどの精密機器メーカーであるキヤノン株式会社の米国法人、キヤノンUSAもメタバースに参入しています。サービスとしては、2023年2月にVRアプリ「Kokomo(ココモ)」を米国とカナダで先行配信予定です。

Kokomoは、VRヘッドセットとスマートフォンのみで話し相手が目の前にいるかのような世界を実現するアプリで、離れて暮らす家族や友人などとリアルに近い形での対話を可能とします。

これまで紹介したように、メタバースの多くはアバターを介して利用する形となっています。しかし、「家族や友人など自分にとって大切な人とは、直接話したいと考える人も少なくないはずだ」というのが同社の考えです。

実際、コロナ禍の移動制限で離れて暮らす人とビデオ通話をした経験のある人は、「ビデオ通話は必ずしも相手が目の前にいるような感覚をもたらしてはくれない」と実感したのではないでしょうか。

したがって、キヤノンUSAのこだわりは、実際の人間をバーチャル空間でも3Dで再現する技術にあります。Kokomoの場合、まずは1対1の対話を想定して開発されていますが、将来的には複数人での対話も視野に入れているそうです。

メタバースへの参入分類と活用事例

一口に「メタバース」といっても、企業のニーズによってさまざまな活用方法が考えられます。そこで次に、どのようなシーンでメタバースが活躍するのかを参入分類ごとに見ていきましょう。

メタバースプラットフォーム

メタバースの参入分類として最も大規模であるものが、プラットフォームの構築です。このタイプのメタバースは、不特定多数のユーザーがアバターを介してやって来ることを想定して作られています。

各ユーザーは他のユーザーとチャットや音声によるコミュニケーションをとったり、音楽ライブなどのイベントに参加したりし、それぞれ自由に過ごすのが基本のスタイルです。また、利用時はアバターを操作するため、実際の顔を出すことがない分SNSのような気軽さがあります。

今回紹介した企業のなかでは、NTTコノキューの「XR World」やクラスターの「cluster」、KDDIの「VC」などが該当します。現在は仕事やレジャーといった生活の全てをメタバースに再現するところまでは到達できていませんが、商業やエンタメ分野への進出は顕著です。

こうしたプラットフォームを企業が活用する事例としては、メタバースプラットフォームへの出展がイメージしやすいでしょう。

例えば、米VRChatのメタバースプラットフォーム「VRChat」は、バーチャルマーケットを定期的に開催しています。このバーチャルマーケットでは洋服や飲食物などのリアル商品も販売でき、アパレルや雑貨を展開する株式会社ビームスや株式会社大丸松坂屋百貨店などが出展しています。

メタバースイベントツール

メタバースの参入分類には、法人向けのツールを提供するタイプのものもあります。そのひとつが、ブイキューブやクラスターが参入しているメタバースイベントツールです。

メタバースイベントツールとは、合同採用説明会や講演会、展示会などのイベントをメタバースで実施するのをサポートするシステムを指します。具体的には、ステージやブースなどの空間設営や会場内での動画配信、参加者とのコミュニケーションといった、現実のイベントにあるような要素をメタバースで実現させることが可能です。

これにより、自社でシステムを開発するのが難しい企業でも、メタバースでイベントを開催できるようになっています。また、来場者にとっても、アバター操作による臨場感が楽しめる点や、どこからでも参加できる点がメリットです。

実際の活用事例としては、デジタルクリエイターの各種支援を行う株式会社ボーンデジタルの会社説明会があります。ボーンデジタルは、ブイキューブのメタバースイベントツールである「EventIn」を導入し、CG・映像分野に特化した就職フェス「CGWORLD JAM ONLINE」を主催しました。

このタイプのイベントの場合、説明会と個別面談を別のシステムで管理しなければならなかったり、参加者が説明会の途中入退出をためらってしまったりする点が課題となることがあります。しかしEventInは、会社説明会やグループ面談、個別面談などを同じシステム内で完結でき、参加者が各企業の説明会に気軽に入退出できる「お試し視聴」も実装しています。

実際ボーンデジタルも、主催者・参加者双方の利便性を考慮したシステムを採用の決め手として挙げています。

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オンラインオフィスツール

オンラインオフィスツールは、メタバースにバーチャルオフィスを構築するためのシステムです。このタイプのツールを使うと、実際のオフィスのように社員ごとのデスクや会議室、休憩スペースといった空間をメタバースとして構築できます。

なお、先述のブイキューブやoViceが、オンラインオフィスツールの提供を行う企業です。

バーチャルオフィスは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる出社制限でテレワークが拡大したことをきっかけに注目を集めるようになりました。社員それぞれがアバターを介してオフィス内にいる様子がわかるため、チャットやビデオ通話に比べて気軽に相手に話しかけやすいからです。

実際ブイキューブでは、提供する「EventIn Workplace」によって自社のバーチャルオフィスを常設中です。2022年には、テレワーク以外に新卒内定者ツアー時にも活用されました。参加者からは、在宅勤務でも組織としての一体感が感じられるといった感想が得られています。

テレワークは社員の働き方の自由度を高める一方で、業務以外のコミュニケーションの減少や孤独感を生じさせるといった課題もあります。より現実に近い形で社員同士のつながりを維持したい場合は、オンラインオフィスツールの導入がおすすめです。

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VRデバイス

メタバースに参入する企業のなかには、メタバースの利用環境をより良いものにするためのデバイスを提供するところもあります。ブイキューブの「メタキューブ」やキャノンUSAの「Kokomo」もこのタイプに分類されるデバイスです。

特に、VRゴーグルはバーチャル空間を体験するデバイスとしてよく知られるため、イメージしやすい人も多いのではないでしょうか。このタイプのデバイス開発に参入する企業の間では、現在、小型化や軽量化への取り組みが熱心に行われています。

もともとVRゴーグルは重さが500gを超えるものもあり、使用時に重たく感じたり、首が疲れたりする点が指摘されているからです。なお、シャープ株式会社が2023年1月に発表した、約175gの超軽量VR用ヘッドマウントディスプレイも、その課題解消へとつながるデバイスのひとつです。

一方で、VRヘッドセットを社内で利用する場合、人数分のデバイスを用意しなければならなかったり、VR酔いが起きたりする点が課題となることがあります。メタキューブは防音個室ブースに映像を投影するため、ヘッドセットが必要なく、デバイスの使い回しによる衛生面も気になりません。

遠隔地との会議が多い場合や、不動産・観光などの案内をする場合などは、こうしたデバイスも活躍する可能性があります。

※参考:【シャープがVRゴーグルをつくる!?】約175g※超軽量VR用ヘッドマウントディスプレイ!プロトタイプをご紹介します

※参考:フィジタルリアリティなメタバース体験を実現する個室型VR空間「メタキューブ」を発表

メタバースビジネスの今とこれから

メタバースビジネスの今とこれから

メタバースが活用されるシーンが今後増えそうなことは感じるものの、他社の動きがどうなっているのかを知りたいという人も少なくないでしょう。そこで最後に、メタバースビジネスの現状と今後について紹介します。

ロンドンを本拠地とするPwCコンサルティング合同会社が2022年に実施した「メタバースのビジネス利用に関する日本企業1000社調査」によると、以下のような結果が見えてきました。

  • 回答者の87%がメタバースはビジネスチャンスになると捉えている
  • 活用意向としてBtoBを想定する企業は37%、BtoCが44%となっている
  • メタバースの活用を既に推進・検討している企業は38%に上る

メタバースをビジネスチャンスと考える企業は、「新規ビジネスの創出」「営業力の強化」「顧客サービスの向上」などを目的とする傾向です。具体的な活用領域としては、オンラインミーティングやイベント・セミナー、マーケティング・販促が注目を集めています。

また、既にメタバースの活用を推進・検討している企業はまだ4割以下ですが、そのうちの半数は実現時期を1年以内としているため、今後数年でメタバースの活用が一気に広がっていく可能性はあるでしょう。

まとめ

メタバースに参入する企業が増えるに従って、ビジネス領域における活用シーンにもさまざまな可能性が考えられるようになってきました。

現在はツールを用いることでバーチャルオフィスやオンラインイベントなどを実現させる事例が目立ちますが、今後の動きによってはビジネスチャンスはさらに広がっていくでしょう。

例えば、メタバースプラットフォームの利用が浸透し、出展などがしやすい環境も整備されれば、仮想空間に新たな経済圏が誕生することになります。これにより、自社の商品の販路が増えたり、メタバースの接客を専門に行う人材を雇用したりすることもあるかもしれません。

今後自社でメタバースを導入する際は、まずは活用の目的を明確にし、それに適したツールやサービスを検討してみてください。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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