メタバースとVRの違いは?VRゴーグル必要の有無やビジネス向けメタバースも解説!

コロナ禍の中、テレワークの普及や外出自粛などを背景に、オンラインコミュニケーションのニーズが高まっています。そのなかで注目されている分野が、仮想空間上で社会生活を体験できる「メタバース」です。メタバースの実用化にあたっては高品質な通信が必須でしたが、5Gの普及が後押しになるとみられています。

メタバースは主にゲーム世界での表現・コミュニケーション技法として利用されていましたが、ビジネスでの活用例も増えてきています。しかし、まだまだ世間の理解度は十分とは言えません。

たとえば、仮想空間を扱う技術として、メタバースはVRとしばしば誤解されています。そのため、メタバースのバーチャルオフィスやオンラインビジネスなどビジネス活用では、「従業員や参加者にVRゴーグルが必要なのでは?」と懸念する方も多いようです。

本記事では、メタバースとVRの違いについて解説しながら、ビジネス向けのメタバースの事例について紹介します。

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メタバースとVRの違い

メタバースとVR(Virtual Reality:仮想現実)の違いを簡単に表現すると、「メタバースは仮想空間そのもの、VRは体験のための手段・技術」です。それぞれの違いについて見ていきましょう。

メタバースとは

メタバースとはインターネット上に作られた仮想の「空間」を意味します。メタバース内では、ユーザーはアバター(自分の分身となるキャラクター)として行動し、周囲の人(アバター)とコミュニケーションや作業を行える点が特徴的です。

メタバースでは、基本的に各ユーザーは自分の意思で活動します。そのため、チャットや物(データ)のやりとりなど、「コミュニケーション」や「共同作業」に重きが置かれています。

たとえば、メタバースによるバーチャルオフィスでは、各ユーザー(従業員)の状態を「会議中」「在籍中」などのステータスから確認可能です。また、チャットや音声で会話をする際、現実の会話と同様に相手のアバターが自分に近づくようになっているため、話す相手を視覚的に認識してスムーズに会話に入れます。

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VRとは

VRとは「仮想現実」を意味し、「実際に起こっていないことを仮想的に体験する」ことを目的とした「手段」技術」です。

VRでは「体験」に重きが置かれており、自身の視覚や聴覚に訴えて現実で起こっているかのように錯覚させます。現実では起こりえない状況や危険を伴う場面も再現できるため、ゲームやシミュレーション、トレーニングなどの分野でよく利用されています。

たとえば、視界を覆うような形のVRゴーグルは、その現実のような体験を再現可能です。視界の360°すべてにひとつなぎの映像を表示することで、実際にその空間に自分がいるような感覚を実現します。デバイスによっては、音が聞こえてくる角度や距離なども制御できるため、現実の体験と錯覚するようにできます。

メタバースとVRの関係

メタバースとVRは別のものですが、対立するような関係ではありません。たとえば、メタバース空間でより臨場感を楽しむためにVRを使うこともあります。メタバース空間にVRを取り入れれば、実際に仮想空間にいるような体験ができるでしょう。

しかし、メタバースでは必ずしもVRによる体験は要りません。アバターを介して社会生活を営めることが重要であり、現実的な体験はあくまでオプションのひとつとして考えるべきです。

逆に、すべてのVRにおいてもメタバース空間が必要とは限りません。たとえば、現実にあるジェットコースターのVR映像はメタバースとは言いません。

世界を旅できるGoogle EarthにもVR版がありますが、メタバースのようにアバターはありませんし、周囲の人々とコミュニケーションを取れるわけでもありません。任天堂の人気ゲーム「どうぶつの森」シリーズはメタバースの例ですが、VRゴーグルを必要とせずに楽しめます。

VRを用いたメタバースの例

メタバースでVRを用いる例はまだ多くありませんが、両者を組み合わせることで仮想空間内で現実さながらの体験を期待できます。オンラインイベントやトレーニングなどさまざまな場面での活用が期待できる分野です。

Horizon Workrooms

Horizon Workrooms

出典:Horizon Workrooms

企業名をMetaに変更したFacebook社のビジネス向けメタバース「Horizon Workrooms」は、仮想の会議スペースに集まって会議や共同作業を行うためのプラットフォームです。

同社のVRデバイスであるQuest2の使用が推奨されていますが、VR環境がない場合でも、ビデオ通話を使って参加できます。VRデバイスを使うことで視界は360°仮想空間に変わり、話者の位置なども音の聞こえ方に反映されるなど、高い没入感によって会議に集中できるところが特徴的です。

仮想空間内では、国内外を問わず遠距離にいる同僚と会議室に集まって会議を行うことが可能で、ジェスチャーによる反応にも対応しているため、グローバルなコミュニケーションも行いやすいでしょう。

また、専用のデスクトップアプリを使うことで、手元のコンピュータの映像をメタバース内に表示可能で、仮想空間内でのパソコン作業や他メンバーへの画面共有にも対応しています。ホワイトボードやカレンダーを一緒に見て書き込むといった共同作業もできるため、実際に対面して行う会議さながらの体験が可能です。

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メタバースのサービス例について詳しく知りたい方は別記事「メタバースを用いたバーチャルオフィスのサービス例と利用状況を徹底解説」で解説しています。

VRを用いないメタバースの例

ビジネス向けのメタバースではVRを用いないケースが多く見られます。VRゴーグルは没入感を高めてくれますが、自宅(自室)やオフィスのような環境でなければ利用しにくいという点がデメリットです。VRにこだわらなければ、自宅の好きなスペースや外出先などからも仕事がしやすくなります。

RISA

RISA

出典:RISA

株式会社OPSIONが提供するメタバースオフィス「RISA」は、オフィスのように「話しかけやすい」リモートワーク体験を提供するサービスです。

仮想空間に作られたオフィスにアバターが出社(ログイン)し、互いの状況を確認したり近づいて話しかけたりできます。DMやグループチャットだけでなく、ワンクリックで音声通話ができるため、話しかけることのハードルが低くなり、コミュニケーションをしやすいという特徴があります。

RISAは、「場所を問わない働き方を実現しつつ、オフィス出社時のように集まって仕事をしている体験を得られ、コミュニケーションも従来のテレワークより活発になった」とユーザーから好評です。

Viebela

Viebela

出典:Viebela

Viebelaはメタバースによるバーチャルオフィスのプラットフォームで、さまざまな国で導入されています。日本ではガイアリンク社が代理店です。ViebelaもVRゴーグルで参加可能ではありますが、基本的にはVRがなくても利用できます。

Viebelaは仮想空間を自由に作って利用できるという特徴があり、メタバースのイベント会場やオフィスを作成できるため、コンサートや展示会、会議、研修など幅広い使い方ができるでしょう。

ガイアリンク社が作成したGAIA TOWNでは、Virbelaを使って実現できることが、実際の利用体験を通して確認できるようになっています。

仮想空間内に設置されたスクリーンに動画やWebページを表示したり、アバターどうしで音声通話やチャットを行ったり、ジェスチャーが豊富に用意されていたりと、コミュニケーションを促すための機能も豊富です。

まとめ

メタバースは仮想空間を意味し、社会生活に欠かせないコミュニケーションや共同作業が重視されています。メタバースにはVRゴーグルに対応したものもありますが、VR体験やVRデバイスが必須ということではありません。

ビジネス用途のメタバースが使われることも少しずつ増えてきており、オンラインコミュニケーションの手段の1つとしてこれから注目がますます高まっていくでしょう。ビジネス向けのメタバースでは、セキュリティやコンプライアンスへも配慮されているため、コミュニケーションツールとして安心して使えます。

コミュニケーションが希薄になりがちなテレワークをより充実したものにするために、ビジネス向けメタバースの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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