自治体の事例に見る「災害発生時に適切な情報公開を行うための取り組み」

2018年は大規模な災害が相次ぎました。

2月には北陸を中心とした豪雪。6月には大阪北部地震。7月には西日本から中部地方、北海道など広範囲にわたった平成30年7月豪雨。9月には強力な台風21号の上陸に続き、北海道胆振東部地震が発生したほか、ゲリラ雷雨の被害も各地で報告されています。

災害の発生時、住民の生死を左右するのが自治体や消防、警察などからの「情報公開」です。被災時の混乱の中、次々と集まる情報を精査し、適切な情報公開を行うための取り組みを、2つの自治体の事例でご紹介します。

 

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1本のメールが不必要な心配を解消

6月18日7時58分に大阪北部地震が発生したのは、筆者の中学校3年生の娘がちょうど京都への修学旅行2日目の行程をスタートさせるタイミングでした。

その直後から、関西の交通機関が次々と運転を見合わせたり、ブロック塀倒壊、停電やガス供給が停止されるなどのニュースが続々報道されていました。ただし、娘の学校からは、8時12分以降随時メールが保護者に配信され、一行に被害はないことや、予定されている行程の変更がないことなどを知ることができました。そのため、各種の報道を耳にして、関西に拠点のある取引先のことなどが頭をよぎる中、娘については「状況がわからない」という心配をする必要がなかったのです。

もしこのメールがなければ、私も含め多くの保護者が、子どもの通う中学校に問い合わせの電話をかけ、学校側はその対応に手一杯になってしまったことでしょう。

予期せぬ災害が発生した際に、欲しいと思っている情報を速やかに得ることができれば、被災者や離れた場所にいるその家族は余計な心配をする必要もなく混乱しないのだと、この経験をもとに実感しました。

事例1:紙の地図やホワイトボードによる災害情報集約の限界を解消

必要な情報を速やかに得たいという思いは、住民に情報を供給する側である自治体にとっても切実でしょう。

今年4月に熊本市役所で震災対処実動訓練を見学させていただく機会がありました。2016年の熊本地震からちょうど2年を迎える節目で行われた訓練は、災害対策本部に集まってくる情報を精査し、適切な指示や情報公開、情報提供を行えるかという点を重視して実施されました。

熊本市役所は市庁舎の構造上、災害対策本部はフロアがまたがる3部屋に分かれて設置されるため、2年前の熊本地震被災の際には、紙やホワイトボードに記載した情報では、各部屋の間で迅速に情報共有ができなかったという課題が浮き彫りになりました。

そこで今回の訓練では、各部屋に設置した3台の電子黒板「xSync Board」遠隔会議ソリューション「xSync Prime Collaboration」でつなぎ、すべての部屋から同じ地図情報やホワイトボード画面にリアルタイムでの書き込みを共有し、遠隔会議で対応を協議する検証を行いました。

「xSync Board」を活用したやり取りの例 イメージ

訓練では、指揮室の市長が別フロアから上がってくる情報を元に、避難勧告を行うシナリオが用意されていましたが、対象エリアの地図を見た市長が「避難勧告のエリアを広げた方が良いのでは?」と訓練予定にない質問を行い、想定よりも広い範囲での避難勧告を発令する訓練を行うなど、被災の体験に基づいた訓練となり、臨機応変な対応が求められる有事での実践を強く念頭に置いたものでした。

熊本市役所様の事例はこちら

熊本市役所の震災対処実動訓練で活用された
遠隔会議ソリューション「xSync Prime Collaboration」の紹介動画。
2拠点、3拠点からでも同時に書き込んでの共有ができることが分かります。

※こちらの動画は、動画配信プラットフォーム「Qumu(クム)」で配信しています。

事例2:タブレット感覚で操作できるディスカッションテーブルを訓練で検証

有事を想定した訓練の事例としてもう1つ、宮崎県庁における国民保護訓練をご紹介します。宮崎県庁でも、災害や緊急時に紙の地図に付箋紙などで情報を集約してもスペースに限界があることや、同じ場所の情報でもどれが最新か判断しづらく優先度がつけにくいこと、さらには消防や警察などの外部機関と情報共有できない点が課題となっていました。

宮崎県庁では、南海トラフ地震を想定した2017年8月の防災訓練に続き、今年2月には県内でのテロを念頭においた国民保護訓練でディスカッションテーブル「xSync Table」を活用。地理情報システム(GIS)に写真やテキストの情報を集約する実証実験を行いました。

2018年2月実施の大規模訓練の様子 イメージ

訓練の結果、関係者全員がテーブルを囲むカタチで入力された災害情報を確認しつつ必要事項を書き込むことができ、さらに大型モニタとの連携で、大勢の関係者が同時に視覚的な情報を共有できることが評価されました。

宮崎県庁様の事例はこちら

宮崎県庁の訓練で活用されたディスカッションテーブル「xSync Table」の紹介動画。
文字情報、写真、動画などを関係者がテーブルを囲んで情報を整理し、対応を協議できます。

※こちらの動画は、動画配信プラットフォーム「Qumu(クム)」で配信しています。

日常で活用しているからこそ緊急時にも使いこなせるツールに

2つの自治体での訓練は、今すぐ災害などが発生した際の対応を念頭に置いた実践的なものでした。「xSync Prime Collaboration」「xSync Board」だけでなく、従来の紙やホワイトボードによる運用も並行して訓練は行われました。その結果、いずれの自治体でも、従来の運用との比較が体験でき「有事の情報共有には有効」という手応え感をじていただけた一方で、いざという時に使いこなすためには「xSync Prime Collaboration」「xSync Board」の運用を精査し、さらなる実践的な訓練も必要という声も聞かれました。

熊本市長は訓練後の訓示でまさにこの点に言及され、電子黒板「xSync Board」を活用した遠隔会議ソリューションは、災害時だけでなく日常の会議でも使用しておくべきと指摘されていました。

まとめ:展示会やセミナーでぜひデモを体験してください

今回の記事では、災害などの緊急対策ソリューションの「xSync Prime Collaboration」と「xSync Table」「xSync Board」を紹介しましたが、実際にご覧いただくと、よりその活用イメージがハッキリと認識いただける製品です。

というのも、展示会やセミナーでのデモをご覧になった方の多くが、「おっ!」という反応を示しているのを何度も目にしているからです。展示会やセミナーは、自治体の災害対策の部門の方や消防関連の方が中心ですが、それだけに「実際の現場でこういうツールがあったら…」と実感されるようです。

xSync Prime Collaborationと連携したxSync Board イメージ

ブイキューブでは、災害対策や危機管理に関する展示会への出展や、デモルームでのセミナーを随時開催しています。紙ベースやホワイトボードでの情報共有に不安をお持ちの方、最新の情報共有のツールを業務に生かしたいとお考えの方は、ぜひ展示会やセミナーにご参加ください。


山田 哲也
著者情報山田 哲也

大学では国文学専攻だったものの、いつの間にかIT系のB to Bのコンテンツ制作が主業務に。趣味は野球観戦(特に北海道日本ハムファイターズ)や古典芸能観賞(歌舞伎、落語など)。

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