スマートグラスで遠隔作業支援を効率化!メリットとおすすめ製品を紹介

遠隔支援とは、現場作業員と熟練指導者が映像・音声をネットワーク上で共有し、離れたところにいてもリアルタイムで技術指導などの遠隔サポートを行うことです。

この遠隔支援では、現場でインターネット環境に接続できるデバイスが必要となります。スマートフォンやタブレットでも行うことができますが、こうしたシーンで今大きく注目されているのが「スマートグラス」です。

ここでは、

  • なぜスマートグラスが注目されているの?
  • メリットは?
  • おすすめ製品は?

といった疑問を感じている人を対象に、遠隔支援におけるスマートグラスの導入メリットやその活用事例、おすすめ製品について解説していきます。

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遠隔作業支援とは

遠隔作業支援とは、映像・音声をネットワークを介して共有することで、熟練の技術者が現場の作業員に対して、離れたところからリアルタイムでサポートを行うことです。主に工場や建設現場、医療や農業などの現場で活用されます。

遠隔支援を活用することで、熟練指導者が現場に赴くことなく、現場の保守・メンテナンスなどの業務にあたる作業員を手助けすることができ、緊急の問題が発生した時にも、熟練の技術者の指示のもと、スムーズな対応が可能です。

そのメリットをまとめると、主に以下の5つを挙げることができます。

  • 現場の作業効率改善
  • 現場における二次被害の防止
  • 社内研修への活用
  • 記録やデータ分析
  • 立ち会いや視察の効率化(遠隔臨場)

特に工事や建設現場では、作業員が現場で撮影した映像を共有し、熟練者が遠隔地から作業をサポートするといった形で活用が進んでいます。

スマートグラスを活用した遠隔作業支援

スマートグラスを活用した遠隔作業支援

▼詳細

RealWear製音声認識型スマートグラス

概要

こうした遠隔作業支援では、作業者側のデバイスとして「スマートグラス」を導入する動きが広がっています。

スマートグラスは、主にメガネ型のウェアラブル端末の総称で、メガネのように頭部に装着して使用することができる端末のこと。カメラやマイクはもちろん、GPSなども搭載しており、メガネのグラスに文字や資料といった情報を重ねて表示するといった機能も備えています。

遠隔作業支援では、「Web会議システム」に対し、現場の作業者からはインターネット環境に接続できる情報共有デバイスで、指示者側からは社内のPCもしくはスマートフォン・タブレット端末を使って接続します。

従来、作業者はスマートフォンやタブレット端末で現場から接続する方法が一般的でした。しかし、そうした端末は操作時や撮影時に片手がふさがってしまうため、高所や狭所といった危険な作業現場では使用できない・使用が敬遠されることがありました。

スマートグラスはこうした課題を解決するもので、ウェアラブル(身につけられる)のため、作業を妨げることなく安全に指示者と通信できるほか、作業者の視界とほぼ同じ映像を支援者と共有できるといったメリットがあります。そのため、特に遠隔作業支援の現場では、スマートグラスの導入が急速に進んでいます。

スマートグラスを活用するメリット

作業者の視界と同じ映像を共有できる

メガネ型のスマートグラスは、多くの場合メガネの「つる」に当たる部分に高画質・高精細なカメラとスピーカー、マイクを備えています。

そのため、スマートフォンやタブレット端末と比較して、より作業者の目線に近い画角で映像を撮影することができ、作業者の視界とほぼ同じ映像を遠隔地の指示者と共有することが可能になります。

従来の手持ち端末より情報の精度をさらにアップさせることができるため、指示者とのコミュニケーションの効率化が期待でき、またリアルタイムな指示もより的確に与えることができます。

ハンズフリーで作業をしながらでも状況を共有できる

遠隔作業支援におけるスマートフォン・タブレット端末の最大のデメリットは、撮影時に作業者の手がふさがってしまうことでした。高所や狭所などの現場では、万一の事故に備えて常に両手は空けておくことが基本です。スマートグラスであれば、常にハンズフリーな体勢でいられるので、安全を十分に確保しながらスムーズな遠隔作業支援を行うことができます。デバイスによっては、ハンズフリーの状態を高めるために機器の操作も音声で行えるものもあります。

また、スマートグラスはメガネのレンズに当たる部分に画像や文字情報を投影することもできます。このため、現場作業に紙ベースのマニュアルや作業指示書を持参したり、ノートPCやタブレット端末でPDF画像などを随時確認したりする必要がなくなります。

作業者は現場から視線を大きく外したり視界を損なったりすることなく、必要な情報を常に見ながら安全に作業続けることができるのです。

スマートグラスの選定ポイント

スマートグラスは各社から多様な種類の製品がリリースされています。遠隔作業支援に導入する場合、どのような製品を選ぶべきか、以下の6つのポイントに沿って解説します。

接続

スマートグラスがコードレスか否かは重要な選定ポイントです。通信用の機器やマイク・スピーカーとケーブル接続が必要だと、作業環境によっては扱いにくい場合があります。スマートグラス自体に通信機能、スピーカーやマイクが内蔵されているものであれば、ケーブルの取り回しが不要なため、使いやすく、また断線の心配もありません。

操作

音声による操作に対応しているスマートグラスも販売されています。音声入力に対応したスマートグラスでは、機器に手を触れることなく、「カメラを起動」「〇〇に電話」といったように使用者の声だけで操作が可能なので、完全にハンズフリーで作業を進めることができます。

堅牢性

スマートグラスには、工事現場や建設現場といった利用シーンを踏まえて「防水性」「防塵性」「防爆性」を備えたものもあります。ただ、屋内の安定した環境であれば、こうした機能は不要かもしれません。遠隔作業支援にスマートグラスを導入する場合は、現場の環境を事前に想定し、どの程度の堅牢性が必要なのか十分に検討しましょう。

映像

製品によって最も差が付きやすいのが画質です。メガネのレンズ部に当たる部分に表示させる映像や画像は、4K画質に対応したものもありますが、高画質であるほどデータ通信量やバッテリーの使用量は増加します。画質の良さとスムーズなコミュニケーション、あるいはバッテリーの持ちは相関関係にあるため、バランスを考えて選ぶ必要があります。

同様に、スマートグラス側で撮影・送信する映像も、どの程度の画質を求めるのかは利用シーンによって異なります。また、ズーム機能があるスマートグラスでは作業者が被写体に必要以上に近づく必要がないため、利用シーンによっては安全確保の観点からメリットが大きい場合もあります。そのほかにも暗所での撮影など、カメラ機能にはさまざまな差があるため、選定時によく確認しましょう。

マイク

工事現場や建設現場では、周囲の騒音が大きく、相手の声が聞こえにくい・自分の声がノイズにかき消されてしまうという場合も考えられます。

こうした場合を想定して、騒音が大きい場所でもクリアに聞こえるスピーカーを備えているもの、また、ノイズキャンセリング機能を備えたスマートグラスもあります。これも利用シーンを踏まえた上で、必要か否かを検討しましょう。

装着

スマートグラスはメガネと同じように装着するのが一般的ですが、製品によってはヘルメットをかぶったときにズレてしまう、ヘルメットと干渉して装着できないといったこともあります。そのため、ヘルメットをかぶった状態での装着を前提とする場合には、ヘルメットへの装着機能がついているものを選びましょう。

遠隔支援ソリューションを活用した企業成功事例5選

実際に遠隔作業支援でスマートグラスを導入している企業の成功事例をご紹介します。

1.検査員が装着したメガネ型ウェアラブル端末を活用し、水処理機器の現場検査を遠隔支援

1.検査員が装着したメガネ型ウェアラブル端末を活用し、水処理機器の現場検査を遠隔支援

水処理の総合エンジニアリング大手・オルガノ株式会社(東京都江東区)では、コニカミノルタとブイキューブが共同開発した遠隔作業支援システムを運用しており、水処理プラントの施工や検査時における本社と現場のコミュニケーションといったシーンで、スマートグラスを導入し、現場業務の効率化を図っています。

オルガノが導入したのは、コニカミノルタのスマートグラス「WCc」(ウェアラブルコミュニケーター)に、ブイキューブが開発した遠隔作業支援アプリケーション「Smart Eye Sync」(スマートアイシンク)を搭載したシステム。音声や映像を通じて水処理プラント建設現場の監督者が本社にいる設計者の指示やアドバイスを受けることで、現場で施工に関わるさまざまな対処事項を円滑化しています。

「WCc」は軽量な片眼タイプで、普段着用している保護メガネの上からでも装着可能。シースルーであることから視界をふさがず、両手を空けることができるので作業現場で安全に使えるとして、同社では、週次の定例ミーティングなどにも活用。業務の様々なシーンで大幅な効率化を実現しています。

2.サービスパートナー企業へのメンテナンス研修を「スマートグラス+遠隔会議システム」で支援

2.サービスパートナー企業へのメンテナンス研修を「スマートグラス+遠隔会議システム」で支援

エプソンブランドの情報機器の販売を手掛けるエプソン販売では、機器メンテナンスに関するサービスパートナー企業向けの研修を、ビジュアルコラボレーションツール「V-CUBE コラボレーション」とスマートグラスを活用した遠隔研修に切り替えました。

この遠隔研修では、講師役がスマートグラスをかけ、手元の作業を遠隔で見せながらポイントを説明できるようにしているほか、研修に参加しているサービスパートナー企業による実技研修もスマートグラスで講師側に映像を送ってもらい、遠隔でチェックするという研修スタイルを実現しています。

今後は、社内研修だけではなく、メンテナンスの現場となるお客様先で「こんな紙詰まり状態になっている」という映像をスマートグラスから「V-CUBE コラボレーション」で共有し、リアルタイムで指示を出す、といった新しい活用法も模索していると言います。

3.音声認識スマートグラスで「遠隔臨場」を実現ハンズフリーで作業効率大幅アップにも

3.音声認識スマートグラスで「遠隔臨場」を実現ハンズフリーで作業効率大幅アップにも

国や自治体が発注元となった港湾工事などで豊富な実績を持つりんかい日産建設では、工事現場で必要となる監督官の現場臨場を遠隔化。新技術情報提供システム「NETIS」に登録されている「V-CUBE コラボレーション」と、同製品と親和性の高い「RealWear」製の音声認識型スマートグラスを導入し、「遠隔臨場」を実現しました。

同社の建設現場は国や自治体からの受注案件が多く、これまでは監督官が実際に現場を訪れて「段階確認」「材料確認」「立会」などを実施してきました。これを現場と監督官を直接オンラインでつなぐ形で遠隔化。現場からの中継にはフィールドワーク用途に特化した「RealWear」製の音声認識型スマートグラスを活用し、作業者がハンズフリーで写真や動画を撮影できます。安全かつスムーズに検査が可能になりました。

音声入力に対応し、大音量かつノイズキャンセル機能も備えた同スマートグラスでは、カメラコードやイヤホンコードなどが一切なく、音声で操作ができるため、作業者は完全ハンズフリーで作業。監督官の指示に従い、両手で計測機器を持ちながら材料の実寸が測れるなど、従来は複数人で行っていた作業を一人で行えるようになるため、臨場に伴う作業が大幅に効率化しました。

4.防爆仕様スマートグラスやiPad、電子黒板と遠隔会議の連携で工場での点検業務を遠隔支援して効率化

4.防爆仕様スマートグラスやiPad、電子黒板と遠隔会議の連携で工場での点検業務を遠隔支援して効率化

三井・ダウ ポリケミカルでは、安全対策の一環として、同社の大竹工場で運転状態の監視や現場作業の遠隔支援を行うシステムを導入。音声認識で操作可能なRealWear製の防爆仕様スマートグラス「HMT-1Z1」も同時に採用し、工場における点検業務を遠隔化・効率化しています。

同工場では、Web会議システム「V-CUBE コラボレーション」と、カメラの起動やフラッシュなどを音声認識で操作可能なRealWear製の防爆仕様スマートグラス「HMT-1Z1」を導入。点検者が現場での点検業務をハンズフリーで行い、その映像を支援者が遠隔で確認しつつ、防爆仕様のiPad、電子黒板も組み合わせて効率的な遠隔作業支援のソリューションを確立しました。

これにより、同工場が従来抱えていた、点検業務を行う現場ではDCS(統合生産制御システム)の画面を見ることができず非効率だったこと周辺の音が大きい環境下ではPHSのハンディフォンではコミュニケーションが取りづらいこと安全性をより高める必要があることなどの課題が解決したといいます。

まとめ|スマートグラスのメリットは大きい

遠隔支援はさまざまな現場の作業を効率化させることが目的ですが、スマートグラスはそうしたシーンで非常に大きなメリットを秘めており、急速に浸透しつつあります。

指示者が作業者の視界をリアルタイムに共有できるだけでなく、現場で映像を撮影しつつ作業を行う側の安全確保にもつながります。

さまざまな利点があるスマートグラスですが、各社の製品を選ぶ際には、どのような場面での利用を想定しているのか、まずは自社の導入シーンを詳しく検討する必要があるでしょう。先述した選定ポイントを抑えつつ、利用シーンに適したスマートグラスを導入・遠隔化し、作業の効率化・円滑化につなげてもらえればと思います。

山本脩太郎
著者情報山本脩太郎

ブイキューブのはたらく研究部 編集長?部長? 2018年株式会社ベーシックに新卒入社。 インサイドセールスを経て、マーケティングメディアferretの編集部でインタビュー記事を中心とした企画・執筆などを担当。 同時期に数社のコンテンツマーケティング支援・インタビュー取材を経験。 2020年3月に株式会社ブイキューブに入社。

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