エンゲージメントサーベイで従業員エンゲージメント向上を目指す!おすすめツールも4つ紹介
従業員エンゲージメントとは、従業員が所属企業に対し愛着を感じている状態で、従業員と企業間に絆があることをいいます。従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が自ら率先して企業に貢献したいと、積極的に業務に就くため、生産性向上や業績向上といったことが期待できるでしょう。
従業員エンゲージメント向上のためには、様々な施策がありますが、どの施策が効果的かはそれぞれの企業によって異なります。まずは自社の課題を洗い出し、それに応じた施策を行います。
ただ、当初から計画通りに従業員エンゲージメントが向上していく訳ではありません。試行錯誤を繰り返すこともあるでしょう。このようなとき、従業員エンゲージメントが向上しているかどうか、確かめるために行うものが「エンゲージメントサーベイ」です。
エンゲージメントサーベイを行い現状を客観的に評価し、把握することにより、従業員エンゲージメントを高める施策を勧め、効果が薄いこと、逆効果になるようなことは廃止できます。そのため、より効率的に従業員エンゲージメント向上のための施策を導入できるようになるでしょう。この記事では、エンゲージメントサーベイとは何か、その必要性、具体的な実施方法について解説します。
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エンゲージメントサーベイの必要性
エンゲージメントは絆や忠誠心、サーベイは調査を表します。ビジネスにおけるエンゲージメントサーベイは、一般的に従業員エンゲージメントの状態を数値化して調査することです。
従業員エンゲージメントは、従業員の気持ちを表すもので主観的なものです。そのため、あらかじめ基準を決めて数値化しておかないと、その時々で評価が偏ってしまうことも考えられます。そこで、エンゲージメントサーベイによる客観的評価が必要となります。
従業員満足度調査との違い
従業員エンゲージメントと似ている言葉に従業員満足度があります。従業員満足度は従業員が企業に対して満足感を得ているかどうかがポイントです。
そのため、エンゲージメントサーベイでは「企業への貢献意欲」「コミュニケーションは充実しているのか」「同僚や上司との人間関係」などを調査しますが、顧客満足度では「福利厚生に満足しているのか」「労働環境にどう感じているのか」といったことが調査内容になります。
ただ、従業員満足度が低い企業が高い従業員エンゲージメントを得るのは難しいことから、両者は別物ではなく密接な関係にあると言えます。
従業員エンゲージメント向上の利点
エンゲージメントサーベイは、従業員エンゲージメントを可視化し、結果的にエンゲージメントを向上させるために行われます。そこで、そもそも従業員エンゲージメントを獲得するとどのような利点があるのか解説します。
離職率の低下
マイナビの「転職動向調査2022年版」によると、2021年の20〜50代男女の正社員転職率は7.0%と、過去6年間で最も高くなりました。年代別で見てみると20代男性が14.2%、20代女性は12.5%、次いで30代男性8.7%、30代女性7.3%が転職している状況です。つまり、若い世代では、正社員であっても1割近くの人が転職を経験しています。
日本の場合、以前は終身雇用制が根付いており、新卒で入社後、定年退職するまで1つの企業に所属し続ける人がほとんどでした。しかし、このように転職を選択する人は増加していて、雇用環境は変化しているといえるでしょう。
転職する人が多くなるということは、自社に優秀な人材が流入することになりますが、逆に人材が定着しにくく、人材育成をしてもすぐに退社されるようなことになりかねません。企業としては、なるべく離職率を下げ、優秀な人材は確保しておきたいところでしょう。そこで、重要となるものが「従業員エンゲージメント」です。
株式会社リンクアンドモチベーションの2019年に行われた「エンゲージメントと退職率の関係」では、従業員エンゲージメントの向上と離職率の低下には相関関係があることを明かしています。つまり、従業員エンゲージメントが上がれば上がるほど、退職率は低くなるそうです。
優秀な人材が他社に流出することを防ぐためには、自社の従業員エンゲージメントを上げる必要があると言えるでしょう。
営業利益や労働生産性の上昇
2018年に行われた、株式会社リンクアンドモチベーションと慶応大学の共同調査では、従業員エンゲージメントが向上すると、比較的短期間に営業利益率が上がることが判明しました。「従業員エンゲージメントが営業利益に影響するためには時間がかかる」と考えられてきましたが、調査では翌四半期にはすでに営業利益を0.35%上昇させています。
従業員エンゲージメントの向上は営業利益だけではなく労働生産性にも影響しています。同調査ではエンゲージメントスコアと労働生産性には正の相関があることも判明しており、エンゲージメントが高いと労働生産性も高まることも分かりました。
労働生産性が向上すると、同じコストや時間をかけていても得られる生産量が増えます。そのため、新たなシステムや設備投資を行わなくても業績向上が期待できるでしょう。従業員の気持ちや業務に向かう姿勢が変わると、企業の利益や生産性向上につながります。
エンゲージメントサーベイを行う際に注意することは2つ
従業員エンゲージメント向上のための施策を行うときは、エンゲージメントサーベイは必須ともいえるものです。しかし、ただ闇雲に調査をしていてもなかなか効果は現れないどころか、マイナスの影響をもたらす可能性もあります。そこで、エンゲージメントサーベイを効果的に行うための注意点を2つ紹介します。
従業員が本音を記入できるような環境を作る
エンゲージメントサーベイできちんと現状を把握するためには、従業員が企業に対して忖度せず、正直に回答する環境が必要です。企業に対してあまり貢献したいと考えておらずマイナスの感情を持っていても、それを隠さずに回答できなければ正しい結果は得られません。
従業員が正直に本音を記載できるようにするためには、事前に「調査は評価には関係しないこと」「内容は公開されないこと」などを約束するようにしましょう。
また、なぜエンゲージメントサーベイを行うのか丁寧に説明し、従業員の理解を得てから調査を開始することも大切です。従業員の状態を正しく把握することにより、従業員に対する扱い方や労働環境を整えていくことも伝えておくと良いでしょう。そうすることにより、従業員に「調査に協力しよう」という積極的な気持ちが生まれやすくなります。
エンゲージメントサーベイにより得られた結果は重大な個人情報です。情報の管理は限られた人数で厳密に行い、社内外に情報が漏れないようにしてください。情報管理が適切にできていないと従業員は企業に対して不信感を抱くため、本音で回答してくれなくなる可能性があります。
従業員が負担を感じないようにする
エンゲージメントサーベイをしっかり行おうとすると、質問内容が増えてしまうかもしれません。しかし、あまりに量が多いとエンゲージメントサーベイ自体が従業員の負担になります。
また、回答を募る時期は繁忙期を避けましょう。他の業務があるなかでエンゲージメントサーベイまで対応することになると、質問数が少なくても従業員の負担は重くなります。エンゲージメントサーベイは従業員エンゲージメント向上のために行うものです。そのため、従業員のことを第一に考え、負担にならないような工夫をしましょう。
エンゲージメントサーベイの実施方法
エンゲージメントサーベイはどのように行うべきか、具体的な質問内容や実施時期について解説します。
質問内容
30年以上に渡り、従業員に対する調査をサポートしているアメリカの大手調査会社のギャラップ社では、次の12個の質問内容が効果的としています。
- 何を期待されているのか知っているか
- 適切な設備やツール(労働環境)を持っているか
- 自分が活躍するための場を与えられているか
- 過去1週間の間、成果に対して褒められたか
- 自分を励ます上司や同僚はいるか
- 自分の成長を促してくれる人は誰かいるか
- 自分の意見は尊重されているか
- 仕事に対して使命感や誇りは感じているか
- 同僚は成果に対してコミットしているか
- 親友はいるか
- 過去半年間、自分の進歩について話す機会はあったか
- 昨年1年では、学びや成長の機会を得られたか
(上記すべて職場内に限定する)
参考:GALLUP「Who's Responsible for Employee Engagement」
このように、従業員が企業から期待され、必要とされていると感じているか、成長を認め合う同僚はいるか、労働環境は適切か、仕事に対して喜びを感じているか、といったことを調査します。ただ、上記の12問はあくまで一例です。
それぞれの企業の業務内容や、自社の特性に合わせて質問はカスタマイズしましょう。企業が目指すべき課題などを洗い出し、それに即した内容にするとよいでしょう。
エンゲージメントサーベイでは質問を行い集計するだけではなく、その結果を分析することも重要です。自社で分析まで行うことも可能ですが、どうしても欲しい結果に偏ってしまいがちです。客観的で効果の高い分析をするためには、外部サービスを使うことをおすすめします。プロの企業に任せることにより、分かりやすく可視化された結果を得られることもあります。
実施頻度
エンゲージメントサーベイには頻度や目的に応じて、「センサス」と「パルスサーベイ」の2種類があります。それぞれの違いは以下の通りです。
センサス | パルスサーベイ | |
頻度 | 年1、2回(長期スパン) | 月1回程度(短期スパン) |
質問量 | 50~70項目(多い) | 3~10項目(少ない) |
業務負荷 | 高い | 低い |
課題のタイムリーな把握 | 不可能 | 可能 |
目的 | 詳細まで多面的に調査を行いたい | リアルタイムに変化を分析したい |
エンゲージメントサーベイを行ったことがなく、まずは自社の状況を知りたいという場合は「パルスサーベイ」がおすすめです。リアルタイムに現状を把握し、課題解決のための施策を検討するときに役立ちます。
従業員エンゲージメントの数値が安定してきて、パルスサーベイで大きな変化が見られなくなったときには、センサスで詳細を確かめる方法に切り替えてもよいでしょう。
エンゲージメントサーベイにおすすめのツール4選
エンゲージメントサーベイは、一般的に従業員に対するアンケート調査により行います。その際におすすめのツール4つを紹介します。
Google Forms(Googleフォーム)
Googleアカウントを持っていれば無料で使用できるツールです。専門的な知識がなくても選択肢形式や自由回答のアンケートを作成できます。Googleアカウントを所持している人、Google Formsの利用経験がある人は非常に多く、使い方に慣れている人が多い点もポイントです。
回答結果は同じくGoogleのスプレッドシートにて収集できるため、グラフや表などの可視化もしやすくなっています。
ただ、回答内容に応じて質問が変化する、といった複雑な運用方法はできません。また、高度な分析やレポートを求めている企業にとっても不向きでしょう。今後長くエンゲージメントサーベイを続けていきたい場合は、以下のような専門の有料ツールがおすすめです。
Performance Trail
Performance Trailは、株式会社イトーキが提供するエンゲージメントサーベイに特化した有料ツールです。
ビジネススタイル、ワークスタイル、ライフスタイルに項目分けされていて、ビジネススタイルの中では報酬や裁量、ワークスタイルはコミュニケーションや健康意識、ライフスタイルでは運動、休養などさらに細分化して調査できるようになっています。組織、心、身体というビジネスマンの3つの柱とも言える部分を効果的に確認可能です。
分析結果はスコアリング、可視化されるだけではなく、性別や年齢といった属性に応じた独自設定も可能です。分析結果は企業規模別のスコアと比較できるため、自社の従業員エンゲージメントの数値が高いのか低いのかも把握できます。
分析結果に応じて業務面や個人の生活習慣に対する明確なアドバイスを受けられるため、Performance Trailをきっかけにした従業員エンゲージメント向上も期待できるでしょう。
カオナビ
カオナビはエンゲージメントサーベイも可能なタレントマネジメントシステムです。
パルスサーベイやアンケートにより、企業の現状を可視化し、現在のパフォーマンスとその要因となっているものの相関関係をマトリクス分析します。具体的には縦軸にはパルスサーベイの結果、横軸には評価のようにマトリクスを設定し、該当する部分に従業員の顔写真を表示させるといったことです。
カオナビでは独自の性格診断(エニアグラム)も利用可能。それぞれの社員の得意な職務や、最適なコミュニケーションの取り方も判断できます。従業員一人ひとりに合った施策も導入可能です。
そのほか、スキル管理、人材配置シミュレーション、採用のミスマッチ・ハイパフォーマー分析など、企業に存在するさまざまな人事関係の課題に対応できます。
Wevoxエンゲージメント
Wevoxエンゲージメントは、「はかる→みえる→きづく→かわる」という組織の変化を起こすサイクルを促すサービスです。
3分で回答できるエンゲージメントサーベイを実施(「はかる」)し、結果を可視化・分析(「みえる」)します。これにより自社のエンゲージメントの状態に「きづく」ことができます。結果に応じて施策を導入していけば、組織は「かわる」ため、組織を良い方向に変えていくサイクルを起こすきっかけとなるでしょう。
従業員がアンケートに回答するときに、新たに会員登録やログインなどをする必要はありません。社内のチャットアプリなどから回答できるため、従業員にかかる負担も少なめです。閲覧制限設定なども細かく設定できることから、アンケート結果などの個人情報を厳密に管理することもできます。
1人あたり月300円から利用できますが、1ヶ月の無料トライアルもあります。試しに利用したい企業におすすめです。
まとめ
自社の従業員エンゲージメントの状態を把握するためには、エンゲージメントサーベイにより客観的に数値化することが必要です。
従業員エンゲージメントが高まっていると、従業員が積極的に企業に対して貢献したいと考えている状態になります。結果として、営業利益や労働生産性の向上につながるため、従業員エンゲージメント向上のための対策は自社の発展のために重要な役割を果たすでしょう。
エンゲージメントサーベイのやり方は、自社でアンケートを配布し結果を数値化する方法でもできます。しかし、適切なフィードバックや詳細な分析結果が欲しいのであれば、外部有料サービスの活用がおすすめです。