決算説明会をオンラインで開催するには?準備内容やスケジュールなど、開催のポイントを紹介

決算説明会は、法的な開催義務はありませんが、証券アナリストや投資家に自社の業績や成長戦略をアピールできる貴重な場です。参加者数の拡大やコスト削減、感染防止対策等から、オンラインで開催する企業が増えてきています。日本経済新聞によると、コロナ禍では企業の66%がオンライン等の形式で行うなど、決算説明会の遠隔開催化が急速に進みました。

この記事では、決算説明会の基本的な内容と株主総会との違い、オンライン化するメリット、会場開催とオンライン開催それぞれの準備内容とスケジュール等を解説します。オンライン決算説明会のメリットや注意点を理解し、オンライン化を検討する際にご活用ください。

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決算説明会の基本をおさらいしよう

決算説明会の基本をおさらいしよう

オンライン化を検討する前に、まず決算説明会についての基本的な内容を押さえて理解を深めましょう。

決算説明会とは

「決算説明会」とは、主に証券アナリストや機関投資家を対象に、決算・業績の報告や将来的な事業展望等を説明する会です。IR活動や上場企業による情報開示活動のひとつでもあります。

日本IR協議会「2022年IR活動の実態調査」によると、企業がオンラインで実施しているIR活動のうち、「国内向け決算説明会」は68.7%と、「国内のアナリスト・投資家との面談」(72.3%)に次いで2番目でした。IR活動に注力している企業は、決算説明会のオンライン開催にも力を入れていることが伺えます。

決算説明会と株主総会との違い

決算説明会と混同されるものとして「株主総会」が挙げられますが、この2つは開催時期や目的が大きく異なります。

 

開催時期

開催の目的

法的な制限

決算説明会

四半期ごと(年4回)

本決算後と中間決算後(年2回)

業績・成長戦略の報告

投資家との信頼関係構築

なし

株主総会

毎事業年度の終了後

(年1回)

株式会社に関する事項について決議するため

あり

開催時期

決算説明会の開催時期は、四半期ごとの年4回、または本決算後と中間決算後の年2回、決算短信の開示日当日か翌日に開催されるのが一般的です。

上場企業には決算短信の開示義務があり(有価証券上場規程404条)、遅くとも決算期末期45日以内に開示するのが適当とされています(45日ルール)。

参考:決算短信・四半期決算短信 作成要領等|東京証券取引所

東京証券取引所は上場企業に、決算短信の他にも積極的な情報開示を要請しており、そのひとつが決算説明会の開催です。ただし、決算説明会には法的な開催義務はありません。

参考:決算短信等|東京証券取引所

これに対して、株主総会は毎事業年度の終了後に開催するよう定められており(会社法296条1項)、法的な開催義務があります。

開催する目的

決算説明会の開催目的は、主に証券アナリストや機関投資家に対する業績報告や成長戦略のプレゼンテーション、株価対策や企業認知度の向上、参加者との信頼関係の構築等です。日本証券経済研究所「証券レビュー第59巻第5号」では、決算説明会の実施企業とそうでない企業とでは、アナリストカバレッジの有無に差が生じる調査結果が出ています。

一方、株主総会の開催目的は「株式会社に関する一切の事項」について決議するためです(会社法295条1項)。ただし、取締役会設置会社では、一切の事項を決議する権限は取締役会に委譲されており、株主総会での決議事項は会社法・定款の各規定事項に限定されます(会社法295条2項)。

まとめると、開催期限と目的が法律で定められている株主総会と違って、決算説明会は開催期限と目的に法的な縛りはありません。開催しないのも自由です。しかし、自社の業績や戦略に対する投資家等への理解を深めたいならば、決算説明会はぜひ開催すべきです。

準備内容と運営スケジュール

では、実際に決算説明会を会場で開催する場合に必要な準備内容を、スケジュール順に解説します。

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まず、社内に日程を打診して決算説明会の日時と内容を決定し、並行して資料の作成を始めます。次に、会場を選定・予約し、参加者に郵便やメール等で案内を送ります。

会場開催の場合に負担が大きいのが、会場の選定と設営準備、リハーサルや当日の運営です。自社以外で開催する場合は、複数の会場候補を見学し、選定後も設営プラン立案のための事前見学や、設営準備・搬入の手間が生じます。リハーサルでは、参加者の動線確認や誘導方法の検討、トイレや駐車場の把握、空調・音響設備の確認も必要です。当日の運営では受付や誘導に加えて、コロナ禍では万全な感染対策も求められます。

決算説明会をオンライン化するメリット

このように、決算説明会の会場開催は会場関連の準備が大変なこともあり、前述したようにコロナ禍ではオンライン決算説明会に切り替える企業が急増しました。では、決算説明会のオンライン化により、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

メリット1:来場できない投資家へアプローチができる

コロナ禍でオンライン決算説明会が普及しつつある今、現地に出向く必要があり1日に複数会への参加が難しい会場開催型は、投資家に敬遠される恐れがあります。決算説明会をオンライン化できれば、遠方等の理由で従来は来場できなかった投資家やアナリストの参加を促進でき、参加者数の大幅な増加も可能です。

具体例として、三井松島ホールディングス株式会社では個人投資家にも機関投資家と同様の情報発信が必要だと考え、個人投資家の参加を促進するべく、大人数の参加者にも対応できるよう決算説明会をオンライン化しました。

自社の会議室から配信可能で、かつ大人数の同時接続にも耐えられる配信環境の選定により、大規模なオンライン決算説明会を実現し、参加者数の増加へとつなげることができました。

関連記事:三井松島ホールディングス株式会社 様 | オンラインイベント・ウェビナー配信 導入事例

メリット2:会場のコスト削減

会場開催の決算説明会では、自社だけでは参加者を収容できない場合に、外部の会場を借りると10万単位で会場費を支払わなければなりません。一方、オンライン決算説明会は収容スペースが不要なため、自社の会議室での開催が可能となり会場費を削減できます。

メリット3:感染防止対策

会場開催の決算説明会では物理的な接触があるため、感染症の防止対策にかける手間やコストが必要です。さらに、感染を恐れる参加者からキャンセルされるリスクもあります。これに対して、物理的な接触がゼロになるオンライン決算説明会は、それ自体が最高の感染防止対策であると言ってよいでしょう。

デメリット1:インターネット回線が悪いと情報が伝わらない可能性がある

このように、決算説明会のオンライン化には多くのメリットがありますが、安定した配信環境を選ばないと、音声や映像が途切れて必要な情報が視聴者に伝わらないデメリットが生じます。しかし、後述する対策を事前に行っておけば、このようなデメリットは完全に克服可能です。

オンライン決算説明会の種類

オンライン決算説明会は次の3種類に分けられます。それぞれの違いを理解して、開催目的や自社の状況に合った形態を選びましょう。

 

会場参加

オンライン参加

オンデマンド視聴

特徴

ハイブリッド配信

×

参加者は会場とオンラインの2つから参加方法を選べる

完全オンライン配信

×

×

参加者は好きな場所から参加できる

オンデマンド配信

×

×

視聴者は好きな時に好きな場所から視聴できる

ハイブリッド配信

決算説明会を会場で開催しながら、同時にその内容をライブ配信する形態です。参加者は会場とオンラインの、どちらか好きな参加方法を選べます。

完全オンライン配信

決算説明会を会場で開催せずに、自社の会議室等から配信のみ行う形態です。参加者は全員、オンラインでリアルタイムに質疑応答等を行います。

オンデマンド配信

ライブ中継した決算説明会の映像がオンデマンドシステム等にアーカイブ(保存)され、参加者が好きな時にオンラインで視聴する形態です。

オンライン開催の場合の準備内容とスケジュール

では、実際に決算説明会をオンラインで開催する場合に必要な準備内容を、会場開催の場合と比べながらスケジュール順に解説します。

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オンライン開催では、会場開催と比べると「会場の選定」が「配信ツールの選定」に代わり、「会場の設営準備」の工程が削られています。

「リハーサル」や「当日の運営」も、会場開催と比べると負荷を大幅に軽減可能です。会場移動や備品搬入は不要、かかる手間は自社会議室への配信機材の設営や音響確認程度で済みます。当日も受付や感染対策が不要なため、最小限の動員スタッフで済むのもメリットです。

配信ツールの選定

決算説明会のオンライン開催では会場の選定が不要な代わりに、ライブ配信に不可欠な「配信ツール」を選定します。

選定のポイントは、視聴者が参加しやすい形式かどうかが重要です。おすすめは、アプリ不要でマルチデバイスに対応している配信ツールです。視聴者はURLをクリックすればすぐ視聴でき、ダウンロード等の事前準備も不要なため、参加へのハードルを確実に下げられます。さらに、チャットやアンケート機能など、視聴者が参加しやすい入室方法や質疑応答機能を備えた配信ツールを選べば、視聴者とのコミュニケーションの活性化も可能です。

参加者への案内

オンライン開催では会場開催に比べて、より参加しやすい形式で参加者に案内を送ることができます。たとえば、前述したマルチデバイス対応配信ツールの採用により、オンライン決算説明会のURLを掲載したメールを送信すれば、参加者はURLをクリックするだけで決算説明会にアクセス可能です。会場に出向く手間が必要な会場開催型より参加率は上がりやすくなります。

オンライン開催で一番心配な通信障害。どう解決する?

実際に決算説明会をオンライン開催する上で、最も心配なのは通信障害です。しかし、事前に十分な対策を行えば、発生の可能性をほぼゼロにすることも可能です。

回線が安定している配信場所を選ぶ

通信障害はインターネット回線が貧弱で不安定な場合に発生します。通信障害を防ぐには、大人数の同時接続に耐えられるような安定した回線が備わっている配信場所を選ぶことが重要です。自社の会議室等から配信したい場合は、事前に回線や機器構成の調査を行い、必要なら補強します。最初のオンライン化で不安なら、外部の配信専用スタジオを活用する方法も効果的です。

障害が起きた後の対応フローを決めておく

通信障害の原因の最たるものとして、大人数の同時接続による接続機器への負荷が挙げられます。対策として、回線や機材の予備を複数用意(冗長化)しておけば、障害が発生しても予備への切り替えにより対応が可能です。このように、障害の発生原因を洗い出しておき、事前に原因ごとの対応フローを決めておけばトラブルにも万全に対応できます。

配信のプロにお任せする

とは言え、事前知識がない場合、社内スタッフのみで上記の対応を行うのはなかなか困難です。配信関連はプロに依頼し、社内スタッフは決算説明会の企画充実に専念するのも有効な戦略です。他社でのオンライン化の実績豊富な専門スタッフなら、豊富な運用実績をもとに、配信設計やシステム選定、実際の配信を包括的にサポートし、企画の実現に最適な配信方式を提案してくれます。

関連記事:オンライン決算説明会支援サービス

最後に|株主総会・取締役会でもオンライン化は進んでいる

決算説明会は、証券アナリストや投資家に自社の業績や成長戦略をアピールできる貴重な場です。集客やコスト削減、感染防止対策等のメリットから、オンラインで開催する企業が増加しています。

さらに、決算説明会だけではなく、株主総会や取締役会でもオンライン化が進行しています。東洋経済新報社によると、株主総会のオンライン化(バーチャル株主総会)を一部採用した企業は、前年比で2割増の374社にも上りました。

決算説明会のオンライン化を検討するなら、株主総会や取締役会も合わせてオンライン化するのが効率的です。投資家や株主に対する企業からの情報開示が求められる昨今、自社における情報発信のオンライン化をぜひトータルで検討してみてください。

注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説

バーチャル株主総会については「注目されるバーチャル株主総会とは?背景や注意点を解説」で詳しく解説しています。

池下菜都美
著者情報池下菜都美

株式会社ブイキューブに新卒入社。 ビジュアルコミュニケーションに関する複数製品のインサイドセールスを経験。現在は、マーケティングコミュニケーショングループにてイベントDX領域における広告運用およびオウンドメディアの編集、ナーチャリングを担当。趣味は映画とダンス。

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