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栄養ドリンクのCMで「24時間戦えますか」という言葉がありましたが、その時代は世間一般としては仕事に偏っていた時代だったといえるかもしれません。

 

一方で現在は「働き方改革」を入口に、企業の生産性をあげるだけでなく、個人の仕事とプライベートのバランス、つまりは「ワークライフバランス」を保つための環境を、企業は積極的に取り入れていく時代となりました。

 

ここではそんな「ワークライフバランス」について、メリット・デメリットを踏まえたうえで企業事例を紹介していきます。

ワークライフバランスとは?

「ワーク・ライフ・バランス」を直訳すると、「仕事と生活の調和」という意味になります。「仕事」に偏重するのではなく、育児や介護、さらには趣味や学習などの「仕事以外の時間」、その両方を充実させる働き方・生き方のことを指します。

 

働き方改革にともない、「ダイバーシティ」や「テレワーク」などいろいろな言葉が飛び交うようになりました。

 

このなかでワークライフバランスは、とくに個人の生き方を指します。その生き方を実現するための手段として「テレワーク」であったり、「残業の削減」であったりといった環境を企業は整える必要があります。

 

ではワークライフバランスのメリット・デメリットにはどのようなものがあるのか。以下で紹介していきます。

ワークライフバランスのメリット

働く人にとっては、ワークライフバランスが実現すれば、仕事以外の時間の充実につながる可能性があります。仕事以外の時間が確保しやすくなり、休息の時間が増えることで心身が健康に保てたり、家族との時間が増えることで本人だけでなく周りの家族も充実感を得られたり。これが引いては、さらに仕事で力を発揮する原動力となるでしょう。

 

また最近ではブログやYouTubeなど、自分が創作したものを多くの人に知ってもらう手段が増えています。趣味の様子を公開していたら、結果的にそれが仕事につながるといった可能性も考えられます。

 

一方で企業にとっては、従業員の満足度が高まることで離職率が低下し、定着率が向上する可能性が考えられます。またワークライフバランスを推進する企業として、外部へのPRにつながり、結果として優秀人材が確保しやすくなるなどのメリットも考えられます。

 

このように個人の生き方を表す「ワークライフバランス」ですが、個人だけでなく企業にとってもメリットはあるのです。

ワークライフバランスのデメリット

仮にワークライフバランスを実現しようとして、残業時間を削減する施策を導入した場合、従業員にとっては給料の削減につながる恐れがあります。

 

中原淳氏の著書「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? 」のなかでは、従業員のうち全体の60.8パーセントが「基本給だけでは生活に足りない」と答えているといったデータを紹介。つまり残業代を含めた給料によって、日頃の生活費を賄っているという人が一定数いることが分かります。

 

またワークライフバランスを重視するからといって、当然、これまでの業務の一部がなくなるわけではありません。そうなると短時間で、これまでと同様の成果を求められるため、休憩時間も仕事に充てたり、仕事を持ち帰って家でやったりと隠れ残業が発生する恐れがあります。

 

ワークライフバランスを実現しようと思って、目に見える時間は削減したかのように思えても、現実は残業代の発生しないサービス残業が常態化する可能性もあるのです。こういったワークライフバランスを実現するための施策によって、デメリットが発生することも考慮したうえで、企業は働く環境を整備する必要があると言えるでしょう。

ワークライフバランスに取り組む企業事例15選

では、実際にワークライフバランスの実現に取り組む企業について、以下では紹介していきます。

事例1:従業員本人だけでなくその家族の理解にも取り組む(株式会社栄水化学)

 

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(画像引用元:株式会社栄水化学

 

株式会社栄水化学」では、年に2回、社長、統括部長との3者面談を設定して対話するほか、社長に直接言いにくいことに関しては、総括部長が相談に乗るように。

 

さらに、従業員の子どもと家族を職場に招く「職場訪問」の機会を設けたり、従業員の子どもの誕生、入学式、卒業式、成人式等を職場で祝ったりと、従業員本人だけでなく、その家族のことも理解するような取り組みを行っているといいます。

 

ひょうご仕事の生活のバランス企業」へも認定されており、特に女性が職場に多く、女性にとって働きやすい環境を意識した経営が行われているそうです。

事例2:年休を100%取得した者にさらに休暇を上乗せ(株式会社お佛壇のやまき)

 

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(画像引用元:株式会社お佛壇のやまき

 

株式会社お佛壇のやまき」では、定時退社と年次有給休暇の消化を徹底すると共に、年休を100%消化した者に対して、追加で休暇を10%上乗せして、さらに金一封を付与。 

 

家族旅行などの利用を目的として連続5日間の休みを取得する「ファミリー休暇制度」 などを導入。利用する際は、3万円を支給しているといいます。その結果、年休消化率も98%を達成。業績も40%向上するに至りました。

 

その背景には、同社の代表取締役社長の浅野氏の経験が強く影響しており、40歳の時に静岡大学人文社会学部へ入学、卒業論文に「ファミリーフレンドリー」企業について研究。100社以上のワークライフバランスについて調査したとのこと。2007年から就業規則に「家族と過ごす時間を増やすことに配慮」した項目を追加しました。

事例3:ノー残業デーを従業員自ら設置(株式会社オーシスマップ)

 

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(画像引用元:株式会社オーシスマップ

 

株式会社オーシスマップ」では、「家族の日」としてノー残業デーを従業員自らが設定し、全社共有のスケジュールに反映。 従業員は業務のスケジュールに加え、家族の行事や誕生日等を入力して開示する。

 

働き方を見直して以降、残業時間は大幅に削減。産前・産後休業、育児休業取得者も増え、復職率は100%となっているそうです。

 

さらに同社はワーク・ライフ・バランス推進や子育て支援の取組が評価され、「ひょうご仕事と生活のバランス企業表彰」を始め、様々な企業表彰を受賞。メディアにも多く掲載されることで、応募者が増え、募集に費用をかけなくても人材が集まるようになったといいます。

事例4:子どもが小学6年生になるまで自宅勤務を認める(茅沼建設工業株式会社)

 

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(画像引用元:茅沼建設工業株式会社

 

茅沼建設工業株式会社」では、特別休暇として育児看護特別休暇、家庭教育サポート特別休暇(子どもの学校行事のために使える特別休暇)を導入。さらに育児短時間勤務制度を特例により、子どもが小学校6年生になるまで認めました。

 

建設業は残業が多いことが当たり前になっており同社も同様の状況であったそう。しかし、当時の従業員には結婚・出産・育児期を迎える30代の女性従業員がいたことから、平成18年に「育児・介護休業に関する規定」を制定し、雇用環境の整備(働き方の見直し、労働条件の整備)を行ったとのことです。

 

もともとは炭坑地域であり、慣習的に上下関係が強く、長時間働くことが普通であった男性社会から、このような仕組みと労働条件に変更したことにより、取り組みが評価され、企業表彰の受賞、さらにはメディアへ掲載されるようになりました。 

事例5:チーム単位で「定時に帰ろうプロジェクト」を実施(三桜工業株式会社)

 

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(画像引用元:三桜工業株式会社

 

三桜工業株式会社」では「定時に帰ろうプロジェクト」と題し、外部コンサルタントの力を借りながらチーム単位で、始業・終業時にその日の自分の業務内容をチームメンバーに情報共有(朝メール・夜メール)。さらに業務効率改善のための話し合いを行う場として「カエル会議」を定期的に実施しました。

 

それぞれがチームごとに別れ、始業時間と就業時間に自分の業務予定をメンバーに共有、相互間で業務改善のフィードバックを行うなどをしているとのことです。

 

結果としてチーム内のコミュニケーションが活性化。これまで上から下への業務指示が中心だったのが、リーダーへの報告・連絡・相談がしやすくなり、チームの雰囲気も明るくなったといい、取り組み前と比較し4年間で売上高が約50%上昇したといいます。

事例6:妊娠がわかった時点で業務の割り振り・引き継ぎを実施(株式会社NITTOH)

 

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(画像引用元:株式会社NITTOH

 

株式会社NITTOH」では、妊娠がわかった時点で、業務の割り振り・引継ぎを実施。さらに2ヵ月に1度、育児休業中の社員には申請事項の手続きも兼ねて、総務部から電話を入れて様子を聞いているといいます。

 

男女とも仕事と家庭を両立させることができる職場作りを目指して、環境整備に取り組み、看護休暇と短期時間制度を導入。さらには、男性従業員が子供の出生時に休暇を取得できる制度を導入しています。いずれの取得率も100%となっているそう。

 

また必要により半年に1度、育児休業中の社員宅に総務部の女性が訪ねて、会社の現状を伝えたり、育児の様子を聞いたりしているそうです。 

事例7:短時間勤務希望者に対して30分単位で労働時間を選択できる仕組みを導入(小林記念病院)

 

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(画像引用元:小林記念病院

 

小林記念病院」では、常勤者と同様の業務に従事する医療資格者を対象に、現在は子育てなどの理由から短時間勤務を希望している者に対して、所定労働時間を設定しない30分単位での労働時間を選択できる仕組みを導入。給与は常勤時給与を時間換算として支払うことで、育児後も復帰しやすい環境を整備しています。

 

その中心となっているのが当病院が掲げる従業編フィロソフィである「オタガイサマ・システム」。オ(大きな心で)タ(互いの幸せを願う)ガ(がんばるママ)イ(活かされる)サ(さわやかママ)マ(満足する職場)というものです。

 

このフィロソフィを元に、休業・両立・自己啓発・就業継続を図り、質の高い医療とて歩い看護・介護を提供しているとのことです。

事例8:3パターンの時短勤務を導入(愛知製鋼株式会社)

 

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(画像引用元:愛知製鋼株式会社

 

愛知製鋼株式会社」では、子が小学校 3 年生を修了するまで取得することができる、勤務時間は 4・5・6時間の3パターンから選択が可能な仕組みを導入。さらに婚姻時には、結婚特別休暇として5労働日以内の休暇(有給)も付与しているといいます。

 

さらに総合職と一部技能職を対象に、フレックスタイム制(0~24時でコアタイムなしのフレックスタイム制)を導入。現在、全従業員の約3割程度が利用し、社員のなかには育児短時間勤務制度があることで、第2子以降においても働くことをあきらめずに済んだといいます。

 

それらを実現するため、社員の意識改革にも勤めており「退社時間表示パネル(カエルパネル)」や「時間管理当番(カエル番長)」などを決め、退社時間に向かって仕事をやりきる後押しをしているそうです。

事例9:育児や介護がある人を対象に時短勤務を導入(株式会社エステム)

 

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(画像引用元:株式会社エステム

 

株式会社エステム」では、正社員は育児(子が小学校 3 年生修了まで)や介護(介護終了まで)、さらにうつ病などの病気により、原則6時間の短時間勤務が可能。時短勤務を設けることによって時間に制限がある分、仕事の優先順位を決め、メリハリのある働き方へと変わってきたといいます。

 

また、社内の仕組みとして人事考課に「ワークライフバランスを推進しているか」を問う条項を入れているよう。その理由に、「社員が幸せになり、働き続けられる環境を作りたい」、「制度は、社員全員が平等に使えるものでなくてはならない」という前提があるからだそうです。

事例10:注意勧告によりサービス残業の禁止を徹底(株式会社デンソーITソリューションズ)

 

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(画像引用元:株式会社デンソーITソリューションズ

 

株式会社デンソーITソリューションズ」では適正労働時間管理者を設置し、所定外労働時間の削減を実施。同社では、残業・休日出勤などは事前申請制としています。

 

また、就業終了時間と正門通過時間に30分以上の差異があるにも関わらず、残業申請のない場合は、注意勧告を実施。サービス残業の禁止も徹底しているといいます。

仕事の段取りは、ある程度通勤途中に考えておくなど、会社で効率的に働くための工夫をする従業員が増えたようです。

事例11:「ストップ深夜残業活動」で22時以降の残業を禁止に(トヨタファイナンス株式会社)

 

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(画像引用元:トヨタファイナンス株式会社))

 

トヨタファイナンス株式会社」では、ノー残業デーを部署単位で設定。さらに「ストップ深夜残業活動」と題し、22時以降の深夜残業を原則禁止にしているといいます。従業員のなかには、時間外労働を削減するための制度がきちんと整備されていることで、安心して働けるといった声もあるようです。

 

また、全社員の40%を占める女性社員が安心して働ける職場環境を整えるため、短時間勤務制度の導入、育児休業、介護休業などを取り入れているそう。加えて、社員に広く周知するためにガイドブックを配布するなどして、制度が形骸化しないようにし、利用しやすい職場風土の醸成に力を入れているといいます。

事例12:全従業員の勤務時間を把握・管理(日東工業株式会社)

 

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(画像引用元:日東工業株式会社

 

日東工業株式会社」では全従業員の勤務時間を把握・管理し、月45時間を超える従業員に関しては、所属部課長を通して勤務実態を調査しています。また、2ヵ月で140時間を超えた従業員は、産業医との面談を実施。休日出勤に関しては、可能な限り振替休日の取得を推奨しているそう。

 

育児短時間勤務制度の拡充を3歳から9歳まで拡充し、復職率も100%を保っているそう。フリーバカンス休暇制度やリフレッシュ休暇制度も制定し、継続的かつ健康的に勤務を続けられる環境を目指し、制度を発展させ続けているとのことです。

事例13:時間外労働の事前申請制で無駄な残業を削減(株式会社日本保育サービス)

 

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(画像引用元:株式会社日本保育サービス

 

株式会社日本保育サービス」では、勤怠管理マニュアルの作成や周知を徹底し、時間管理や残業の概念を再認識させることを目的として従業員の意識改革を実施。また時間外労働を事前申請制にすることにより、無駄な残業を省き、時間外労働の削減に努めているといいます。

 

そのキャッチコピーは「もう転職しなくて大丈夫、ずっと働ける保育園」。そのキャッチコピーを体現するかのように、土日祝日の出勤時は、平日振替休日を。さらには、毎年100人以上が育休、約9割が復職しているとのことで、男性育休取得率も25%と業界では高い水準を誇っているそうです。

事例14:育児休業によって会社を辞めずに子どもと向き合う期間を創出(国立大学法人 愛知教育大学)

 

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(画像引用元:国立大学法人 愛知教育大学

 

国立大学法人 愛知教育大学」正規職員は3歳まで、また非常勤職員・任期付職員は 1歳半までの育児休業制度を導入。子どもがある程度大きくなるまで、フルタイムの仕事を持ちながらじっくりと子どもと向き合う育児ができたことに対して、満足感を得ているといった従業員の声も聞かれるようです。

 

それだけではなく、男女共同参画を進め、女性管理職等への登用推進目標値を設定、女性管理職を増加させ、さらなる女性の活躍しやすい環境の整備を進めているといいます。

事例15:中途採用者には勤続10年目で1週間のリフレッシュ休暇を付与(財団法人中部電気保安協会)

 

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(画像引用元:財団法人中部電気保安協会

 

財団法人中部電気保安協会」では、勤続10年・20年・40年目に2日間、30 年目には旅費とともに1週間のリフレッシュ休暇を付与。

 

中途採用者は勤続10年で、旅費とともに1週間のリフレッシュ休暇を付与しているといいます。また育児短時間勤務制度(9:30~16:10 まで勤務) も導入。「時間が短い分、業務に集中して取り組める」といった声も挙がっているようです。

ワークライフバランスの定義は人や企業によって柔軟に変わるもの

ワーク・ライフ・バランスとは、ただ単にこれまで以上にプライベートの時間を増やすという意味ではありません。仕事とプライベート、どちらを重視したいかは人によって異なります。また子育てや介護、さらには年齢を重ねるにつれて変わっていくものです。

 

ワーク・ライフ・バランスについては、個々人や企業が自分・自社に合ったやり方をそれぞれ考えていきましょう。