ワークライフバランスに必要な取り組みとは?21の企業好事例を解説

現在、働き方改革の推進やライフスタイルの多様化により、誰もが仕事だけでなく私生活も一緒に充実させる「ワークライフバランス」を実現する取り組みが、さまざまな企業で行われています。少子高齢化による人手不足などの課題に対応するため、今後はますます重視されていくことでしょう。

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しかし、実際にワークライフバランスを自社でも実現させるために行うべき取り組みというと、なかなか良いアイデアが思い浮かばない方も多いのではないでしょうか。日本におけるワークライフバランスの歴史はまだ浅いため、難しく感じるのも無理はありません。

そこで、本記事ではワークライフバランスの意味やメリット・デメリットの説明、そして実際にワークライフバランスを導入して成功した企業の好事例をもとに、自社でも行うべき施策を解説していきます。

ワークライフバランスとは、仕事とプライベートを両立するライフスタイルのこと

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ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和を意味する言葉です。仕事だけに重きをおくのではなく、育児や介護、さらには趣味や学習といった「プライベートの時間」を充実させることで、両方のバランスを取るライフスタイルを指します。

もともとワークライフバランスとは、1980年代のアメリカで誕生した概念。ワークライフバランスの考え方が日本に渡り、普及し始めたのはバブル崩壊後の1990年代以降です。それまでは、定年退職まで1社に勤め、ある意味で「会社に忠誠を誓う」のが当たり前の「仕事一筋」な生き方が主流でした。

しかし、国内の経済停滞による雇用不況で経済的な豊かさを企業に求められなくなったことや、男女雇用機会均等法など社会における女性活躍への期待も一因となって、男性も女性も仕事以外の物事に対して熱中できるような生き方が注目を集め始めたのです。

ワークライフバランスが実現すれば、社員にとっては仕事以外の時間の充実につながる可能性があります。仕事以外の時間が確保しやすくなり、休息の時間が増えることで心身が健康に保てたり、家族との時間が増えることで本人だけでなく周りの家族も充実感を得られたり。これが引いては、さらに仕事で力を発揮する原動力となるでしょう。

一方で企業にとっては、従業員の満足度が高まることで離職率が低下し、定着率が向上する可能性が考えられます。またワークライフバランスを推進する企業として、外部へのPRにつながり、結果として優秀人材が確保しやすくなるなどのメリットも考えられます。

しかし、ワークライフバランスも良い面ばかりではありません。例えば社員にとっては、経営側がワークライフバランス実現のために残業規制をした場合、そのぶん給料が減ります。その上、仕事量の調整が行えなければ、今までの就労時間で行っていた業務を短時間で終わらせなければいけないため、持ち帰り残業が増えることも考えられます。

こういったデメリットが発生することも視野に入れた上で、経営側は社内全体でワークライフバランスをどう実現するかという課題を深く考えていく必要があるでしょう。

実際にワークライフバランスに取り組む企業の好事例21選

ワークライフバランス実現のための具体的な施策を紹介する前に、実際にワークライフバランスの実現に成功している企業を、その企業が行った施策とともに紹介していきます。

以下の事例を見て頂くことで、ワークライフバランスへ取り組むことで社内全体の生産性向上や社員の心身の健康にも繋がっていくことが伺えるかと思います。

社長自らが改革を決意し、社員の声を集めて一つひとつを解決|株式会社ライフィ

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株式会社ライフィ」は、2019年度に「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」の大賞を受賞した実績を持つ、働き方改革を積極的に推進している企業です。

2014年に社長自らが大病を患ったことをきっかけに、社長自らワークライフバランスへの取り組みをスタートさせました。

「気づきBOX」という意見箱を設置して職場に対する社員の生の声を集め、社内全体で一人ひとりに問題意識を共有することで解決する取り組みや、「短縮労働時間制度」や「選べる出勤時間制度」の実施により、労働時間の削減や柔軟な働き方を促進。そのほか、新卒社員でも初年度から一律20日の有給休暇を支給するなどの施策も行っています。

経営者が自ら行動に移すことで生まれた、経営側のトップダウンではない社員全体の取り組みが、良質なワークライフバランスの施策を実現させたといえるでしょう。

従業員のさまざまなライフステージに配慮した両立支援を実現|社会福祉法人あいのわ福祉会

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社会福祉法人あいのわ福祉会」では、福祉施設で働く従業員一人ひとりの育児・介護・治療などさまざまなライフステージに応じた取り組みを行っています。

ライフイベントを迎えた従業員がキャリアを中断せずに働き続けられるよう、まず最初は管理職を含めた法人全体の意識改革から始めました。

その後、独自のワークライフバランスへのガイドブックを従業員全員に配布する取り組みを行ったことで、従業員の育児休暇からの復帰率3年連続100%を達成し、さらに「ガイドブックが決め手になった」という求職者も増加。管理職のマネジメント力を強化することで、従業員一人あたりの残業時間を3年間で約50%削減した実績もあるそうです。

社内の周知と休暇取得へのハードルを下げたことが、最大の成功の要因といえるでしょう。

多様な勤務形態を導入することで、社員一人ひとりの生活を充実|アクトインディ株式会社

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アクトインディ株式会社」では、フレックスタイム制やテレワーク制度など、社員のプライベートを重視した取り組みを行い、働き方の柔軟化を実現させました。

「子どもと毎日夕飯を一緒に食べられる働き方をしたい」という社員の声をもとに、子どもが小学校を卒業するまで育児短時間勤務を利用可能とするなど、親子の時間を柔軟に持てる環境を整備。子育て中の優秀な人材の応募も増加したそうです。

また、同社では上記のような取り組みのほかに「書籍手当」「墓参り手当」「母の日・父の日手当」「お出掛け手当」など、ユニークな制度も。経営者から家族や親戚と過ごすことを強く推奨する取り組みにより、社内からの満足度も高いといいます。

相互にフォローし合う活発なコミュニケーションの実現で、ワークライフバランスを成功|株式会社ウィルド

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株式会社ウィルド」では、社内の信頼関係を構築することが生産性向上につながるという理念のもと、社員相互のコミュニケーションの活発化や休暇取得の促進などを行うことで、ワークライフバランスに積極的に取り組んでいます。

社長がワークライフバランスに関するセミナーに参加したことで、長時間労働が当然とされていた当時の社内環境を改善することを決意。小規模な企業であることを活かし、社員一人ひとりの平均年次有給取得率を毎月全員で共有した結果、2017年度には68.2%の取得率を記録するなど高い数値を達成しました。

また、毎月に1回、社長と社員のマンツーマンで食事を行いながら面談をするという取り組みも。仕事上の悩みや他の社員には話しづらいことなど、コミュニケーションを濃密にすることによって、会社内で助け合い精神が生まれたそうです。

全社員がテレワークを活用することで、多様なライフスタイルを支援|TRIPORT株式会社

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TRIPORT株式会社」では、社内全体でテレワークを導入、また短時間勤務の社員採用を行うことで、柔軟な働き方を実現しました。

同社は2014年の創業以降、事業が急成長していく中で人材の確保が急務となっていました。そこで、時間的・場所的な制約がある社員でも活躍できる職場づくりのためテレワークを導入。

データ共有や勤怠管理のクラウド化などIT設備を整備し、パソコンさえあればどこでも働ける・社員同士でコミュニケーションができる環境を作り出しています。

また、1日4~6時間の勤務を週5日で行う「短時間正社員」や、私生活の状況に合わせて1週間の労働時間を日単位で調整できる「短時間勤務」も導入しており、社員の満足度が上昇。同時に社員の離職率は創業以来0%を達成しているそうです。

「100人いれば、100通りの人事制度」を理念に自由な働き方を実現(サイボウズ株式会社)

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サイボウズ株式会社」では、社員一人ひとりの生活を尊重した働き方を導入しています。『日本における「働きがいのある会社」ランキング 中規模部門(従業員100-999-999人)』には2014年から毎年上位にランクインしており、2019年は第2位に輝きました。

具体的には、ウルトラワークと呼ばれる在宅勤務制度や子連れ出勤制度、誕生日会などの施策を導入しています。中でも画期的なのが2018年からスタートした働き方宣言制度。社内のグループウェアに出勤時間や在宅勤務日といった具合に仕事をする時間を「宣言」し、自分の働き方を自分で決めることができるようにしています。

このように働き方についての選択肢が増えた結果、2005年には28%あった離職率が現在では4%前後に落ち着きました。

女性社員だけでなく男性社員の育児休暇取得も促進し、誰でも気軽に育児参加できる働き方を実現(株式会社資生堂)

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株式会社資生堂」では、 男女ともに育児・介護をしながらキャリアアップできる会社を実現すべく、さまざまな仕事と家庭の両立支援を積極的に行っています。

同社は事業の特性上、比較的女性社員が多く、女性の働き方については常に時代の最先端を歩んでいした。しかしその一方で、数少ない男性社員については制度利用がなかなか進まない現状に悩まされていたそうです。

そこで、男性社員の育児休業取得を促進。2週間以内の育児休業を有給化し、条件付きで繰り返し取得できるように制度を改定しました。これにより、2017年度には男性社員の育児休業取得者数が18人となり、男性でも気軽に育児参加できるような環境が整備されました。

年休を100%取得した者にさらに休暇を上乗せ(株式会社お佛壇のやまき)

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株式会社お佛壇のやまき」では、定時退社と年次有給休暇の消化を徹底するとともに、年休を100%消化した者に対して、追加で休暇を10%上乗せして、さらに金一封を付与するという画期的な取り組みを行っています。 

取り組みのきっかけは、社長が従業員の接客態度改善の案を考えていた時でした。売上成績が良い従業員の働き方を分析したところ、その従業員たちは「残業をしておらず、きっちり有給休暇を取っている」ということが判明しました。

そこで、社長自身がワークライフバランスの重要性を理解し、社内全体でも経営戦略として掲げようと決めたそうです。

家族旅行などの利用を目的として、連続5日間の休みを取得する「ファミリー休暇制度」 などを導入。利用する際は、その社員に3万円を支給しているといいます。その結果、年休消化率も98%を達成。業績も40%向上するに至りました。

子どもが小学6年生になるまで自宅勤務を認める施策を推進|茅沼建設工業株式会社

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 「茅沼建設工業株式会社」では、特別休暇として育児看護特別休暇、家庭教育サポート特別休暇(子どもの学校行事のために使える特別休暇)を導入。さらに、子どもが小学校6年生になるまで短時間勤務を認める育児短時間勤務制度を実施しました。

建設業は残業が多いことが当たり前になっており、同社も同様の状況であったそう。しかし、当時の従業員には結婚・出産・育児期を迎える30代の女性従業員がいたことから、平成18年に「育児・介護休業に関する規定」を制定し、雇用環境の整備(働き方の見直し、労働条件の整備)を行ったとのことです。

慣習的に上下関係が強く、長時間働くことが普通の男性中心の業界でした。しかし、このような仕組みと労働条件に変更したことにより、同社の取り組みが外部に表かされるように。その結果、企業表彰の受賞、さらにはメディアへ掲載されるようになりました。 

チーム単位で「定時に帰ろうプロジェクト」を実施し、コミュニケーションが活性化|三桜工業株式会社

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 「三桜工業株式会社」では、「定時に帰ろうプロジェクト」と称して、外部コンサルタントの力を借りながらチーム単位で業務効率の改善を行う取り組みをスタートさせました。具体的には始業時と終業時にその日の日報を所属チーム内に情報共有したり、業務効率改善のための会議を行ったり、などです。

もともとは、同社の経営層では以前から長時間労働を問題視しており、社内でもいろいろな取り組みを行っていたそう。

しかし、取り組みの効果は薄く、短期間でワークライフバランスを実現させるには①「外部からの知(外部コンサルティング)の導入、②『やる時間』の創出、③主体的な行動を引き出す、④成功事例をつくる」の4つだと分析しました。

社長の積極的なワークライフバランスの情報発信、また管理職への意識改革の研修の実施なども合わせて行った結果、どのチームでも業務改善とチームの雰囲気の活性化が実現できたそうです。

従業員本人だけでなくその家族の理解にも取り組む(株式会社栄水化学)

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株式会社栄水化学」では年に2回、経営層との面談を通すことで、社内の風通しを良くする取り組みを行っています。社長・統括部長との3者面談を設定して対話するほか、社長に直接言いにくいことに関しては、総括部長が相談に乗るように。

もともとは「せっかく縁あってこの会社で働いている人には、できる限り長く、気持ちよく働いて欲しい」という社長の考えのもと、個人の事情を配慮した施策を行うことを経営層で決意。

社員の子どもと家族を職場に招く「職場訪問」の機会を設けたり、社員の子どもの誕生、入学式、卒業式、成人式等を職場で祝ったりと、社員本人だけでなく、その家族のことも理解するような取り組みを行っているといいます。また、ああえて制度化せず、個人の事情に合わせて柔軟に対応していることも特徴です。

 「ひょうご仕事の生活のバランス企業」へも認定されており、特に女性が職場に多く、女性にとって働きやすい環境を意識した経営が行われているそうです。


ノー残業デーを従業員自ら設置(株式会社オーシスマップ)

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株式会社オーシスマップ」では、社員一人ひとりのスケジュールを共有することで、お互いに休みを取りやすくする環境づくりを徹底しています。

例えば、「家族の日」と題してノー残業デーを社員自らが設定し、全社共有のスケジュールに反映。 社員は業務のスケジュールに加え、家族の行事や誕生日等を入力して開示することによって、事務的な会話だけではない、プライベートの話題も含めた活発なコミュニケーションを取れるようにしています。

 働き方を見直して以降、残業時間は大幅に削減。産前・産後休業、育児休業取得者も増え、復職率は100%となっているそうです。

 さらに同社はワーク・ライフ・バランス推進や子育て支援の取組が評価され、「ひょうご仕事と生活のバランス企業表彰」を始め、様々な企業表彰を受賞。メディアにも多く掲載されることで、応募者が増え、募集に費用をかけなくても人材が集まるようになったといいます。

妊娠がわかった時点で業務の割り振り・引き継ぎを実施(株式会社NITTOH)

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 「株式会社NITTOH」では、妊娠がわかった時点で、業務の割り振り・引継ぎを実施。さらに2ヵ月に1度、育児休業中の社員には申請事項の手続きも兼ねて、総務部から電話を入れて様子を聞いているといいます。

 男女とも仕事と家庭を両立させることができる職場作りを目指して、環境整備に取り組み、看護休暇と短期時間制度を導入。さらには、男性従業員が子供の出生時に休暇を取得できる制度を導入しています。いずれの取得率も100%となっているそう。

 また必要により半年に1度、育児休業中の社員宅に総務部の女性が訪ねて、会社の現状を伝えたり、育児の様子を聞いたりしているそうです。

短時間勤務希望者に対して30分単位で労働時間を選択できる仕組みを導入(小林記念病院)

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「医療法人愛生舘 小林記念病院」では、従業員の育児や介護に関して先進的な取り組みを行っています。例えば、院内における保育所の設置や、子どもが6歳になるまで取得できる育児短時間勤務制度などです。そのほか、誕生日にもらえるアニバーサリー休暇や3日間の連続休暇など、工夫された休暇制度が充実しています。

こういった同病院のワークライフバランス実施の中心となっているのが、病院全体で掲げる理念である「オタガイサマ・システム」。オ(大きな心で)タ(互いの幸せを願う)ガ(がんばるママ)イ(活かされる)サ(さわやかママ)マ(満足する職場)というもの。

平成14,5年ごろの看護師の大量退職を契機として、病院改革のための施策をスタートさせたそうです。

この理念を元に、休業・両立・自己啓発・就業継続を図っているとのこと。「病院全体がワークライフバランスに力を入れているからありがたい」といった生の声も上がっており、社員の満足度が高く、育児や介護を行う社員に非常に有用な施策であるといえます。

3パターンの時短勤務を導入(愛知製鋼株式会社)

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愛知製鋼株式会社」では、社員の家族への配慮まで幅広くサポートする取り組みを行っています。

特に育児に関しては、子どもが小学校3年生を修了するまで、毎日4・5・6時間勤務のいずれかから選択できる「育児短時間勤務制度」を活用できたり、子どもの人数に応じた「育児特別休暇」を申請できたりといった充実した支援制度があります。

女性だけではなく、男性にも育児休暇が認められています。また、たとえ出産や結婚、育児を理由に退職をしたとしても、再雇用制度も整えられているため、人材の定着にも役立っているようです。

育児や介護がある人を対象に時短勤務を導入(株式会社エステム)

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 「株式会社エステム」では、正社員は育児(子が小学校3年生修了まで)や介護(介護終了まで)、さらにうつ病などの病気を患った場合に、原則6時間の短時間勤務が可能な制度を導入しています。

時短勤務は業務の時間に制限がある分、仕事の優先順位を決め、メリハリのある働き方へと変わってきたといいます。

 また、社内の仕組みとして人事考課に「ワークライフバランスを推進しているか」を問う条項を入れているそう。その理由に、「社員が幸せになり、働き続けられる環境を作りたい」、「制度は、社員全員が平等に使えるものでなくてはならない」という前提があるからだそうです。

注意勧告によりサービス残業の禁止を徹底(株式会社デンソーITソリューションズ)

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 「株式会社デンソーITソリューションズ」では、第三者の適正労働時間管理者を設置し、所定外労働時間の削減を実施しました。同社では、残業や休日出勤などは事前申請制としています。

また、サービス残業禁止を浸透させるため、就業終了時間とオフィスの正門通過時間に30分以上の差異があるにも関わらず残業申請のない場合は、その社員に対して注意勧告の実施も。不正打刻や残業の削減のため、徹底した取り組みを行っているといえます。

仕事の段取りはある程度通勤途中に考えておくなど、会社で効率的に働くための工夫をする社員が増えたようです。

「ストップ深夜残業活動」で22時以降の残業を禁止に(トヨタファイナンス株式会社)

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 「トヨタファイナンス株式会社」では、ノー残業デーを部署単位で設定するという細かい取り組みを実施しています。さらに「ストップ深夜残業活動」と題し、22時以降の深夜残業を原則禁止にしているといいます。

社員のなかには、時間外労働を削減するための制度がきちんと整備されていることで、安心して働けるといった生の声もあるようです。

また、全社員の40%を占める女性社員が安心して働ける職場環境を整えるため、短時間勤務制度の導入、育児休業、介護休業などを取り入れているそう。加えて、社員に広く周知するためにガイドブックを配布するなどして、制度が形骸化しないようにし、利用しやすい職場風土の醸成に力を入れているといいます。

全従業員の勤務時間を把握・管理(日東工業株式会社)

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日東工業株式会社」では、時間外労働を防ぐために全社員の勤務時間を把握・管理することを徹底しています。

月45時間を超える社員に関しては、所属部課長を通して勤務実態を調査しています。また、2ヵ月で140時間を超えた従業員は、産業医との面談を実施。休日出勤に関しては、可能な限り振替休日の取得を推奨しています。

育児短時間勤務制度が適用される子どもの年齢範囲を3歳から9歳まで広げることで、一旦退職した社員の復職率も100%を保っているといいます。フリーバカンス休暇制度やリフレッシュ休暇制度も制定し、継続的かつ健康的に勤務を続けられる環境を目指し、制度を発展させ続けています。

今後はテレワークの導入も考えることで、ワークライフバランスのさらなる実現のために取り組んでいくとのことです。


時間外労働の事前申請制で無駄な残業を削減(株式会社日本保育サービス)

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株式会社日本保育サービス」では、勤怠管理マニュアルの作成や周知を徹底し、時間管理や残業の概念を再認識させることを目的として従業員の意識改革を実施。

また時間外労働を事前申請制にすることにより、無駄な残業を省き、時間外労働の削減に努めているといいます。

そのキャッチコピーは「もう転職しなくて大丈夫、ずっと働ける保育園」。そのキャッチコピーを体現するかのように、土日祝日の出勤時は、平日振替休日を導入。年間休日も114日から125日へと増加させ、一人ひとりが充実したプライベートの時間を確保できるようになりました。

さらには、毎年100人以上が育休、約9割が復職しているとのことで、男性育休取得率も25%と業界では高い水準を誇っています。経営側としても「ワーク」だけでなく「ライフ」の面も見つめ直す良いきっかけになったそうです。

中途採用者には勤続10年目で1週間のリフレッシュ休暇を付与(財団法人中部電気保安協会)

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 「財団法人中部電気保安協会」では、継続して働いている社員に厚い待遇を設けています。勤続10年・20年・40年目の社員には2日間、30 年目の者には旅費とともに1週間のリフレッシュ休暇を付与し、社員のモチベーション向上にも繋げています。

 中途採用者の場合は、勤続10年で旅費とともに1週間のリフレッシュ休暇を付与しているのだそう。

また育児短時間勤務制度(9:30~16:10 まで勤務) も導入することで、子どもと触れ合う時間が十分に取れただけでなく、「時間が短い分、業務に集中して取り組める」といった声も挙がっているようです。

ワークライフバランスはどのように実現すればいいのか?

ワークライフバランスに取り組む企業の好事例をご紹介しましたが企業がワークライフバランスの促進を行う上で最も重要なことは結局のところ一体何なのでしょうか。

それは企業、そして個人の両方が意識改革を行うことです。しかし、「意識改革」と言うだけなら簡単で、実際に行うにはやはり社内だけでがむしゃらに努力するのは厳しいものがあります。

そこで本章では、一体どのようにすればワークライフバランスをより実現できるのか、国が行っている支援体制や企業が取り組むべき施策について解説していきます。

国からの支援体制

ワークライフバランスの実現にあたり、国はさまざまな支援策を打ち出しています。例えば専門家による無料相談やIT機器を導入するための助成金などです。

1.育児・介護プランナー(社会保険労務士、中小企業診断士)による無料支援

育児や介護を理由に離職せざるを得ない社員は、多くの企業において一定数いるのではないでしょうか。

少子高齢化社会が加速し、人材の確保がだんだんと厳しくなる現在。やむを得ない事情で離職する人たちを救い、企業への定着率を上げるためには、育児・介護と仕事の両立支援のノウハウを提供してくれる社会保険労務士・中小企業診断士といった専門家の支援を受けられる仕組みが必要です。

厚生労働省はワークライフバランスに取り組む中小企業に対して、「育児プランナー、介護プランナーの訪問支援」を行っています。

Web上からも申し込みが可能なため、是非活用してみてはいかがでしょうか。

2.両立支援助成金

両立支援助成金」も、厚生労働省が行っている助成金制度です。この制度には5種類あり、男性が育児休暇を取得した場合・女性が育児休暇を取得している間に代わりの人材を企業が確保できた場合・一度退職した従業員を再雇用した場合に分けられています。具体的な名前は以下の通りです。

  1. 出生時両立支援コース
  2. 介護離職防止支援コース
  3. 育児休業等支援コース
  4. 再雇用者評価処遇コース
  5. 女性活躍加速化コース

▶自社の目的や課題、また助成金を受ける条件に合わせてこうした制度を活用することが重要です。この制度の詳細や支援を受ける際の注意点について詳しく知りたい方は、別記事「ワークライフバランスの意味とは?憲章から紐解く定義と実現の方法」もあわせてお読みください。

3.時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

同じく厚生労働省が実施する「時間外労働等改善助成金」には、長時間労働の削減とワークライフバランスを実現するためにテレワークを導入する中小企業に対して、実施に要した費用を負担する助成金制度があります。

支給対象となるのは、新規でテレワークを導入する企業であることと同時に、以下のいずれにも該当する事業主であることが必要になります。

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出典:厚生労働省「時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

企業が取り組むべき施策

自社でもワークライフバランスを実現しようとした場合、言うまでもなく最も重要なのは「社内全体の意識改革」です。しかしそれ以外にも、勤務体制の面で行うべき取り組みがあります。

ここでは企業の事例を参考にしながら、ワークライフバランス実現に取り組むべき4つの施策についてまとめていきます。

1.フレックスタイム制の導入

フレックスタイム制とは、社員が自分自身で1日の始業と終業時刻を決めて仕事をする、という制度です。この制度を導入することで、労働時間を効率的に分配することが可能になります。

例えば、全員が顔を揃えて働く必要性がない会社では無駄な残業を減らし、生産性を上げることができます。また、従業員側にとっても、通勤ラッシュを避けることができるというようなメリットがあります。

2.短時間勤務制度の導入

短時間勤務制度を導入することにより、育児や介護などで通常の就業時間の業務では難しい社員も、離職せずに仕事ができるようになります。

3歳以下の子どもを持っている社員には法律で適用が義務づけられていますが、子どもが3歳を超えても育児はずっと続いていくもの。

ワークライフバランスの実現には、小学校低学年を修了するまで短時間勤務を適用させるようにするなど、工夫した取り組みが必要といえます。

3.テレワークの導入

テレワークは、出社をしなくてもオフィスから離れた場所で仕事をするという勤務形態のことです。Web会議システムやチャットツールといったITツールを上手く活用し、オフィスコストの削減や従業員の生産性向上などが望めます。

また、出社義務がないことから、育児や介護をしなければならない従業員のワークライフバランスにも配慮した働き方だといえます。

※現在、働き方改革の推進に伴い、テレワークを含めた多様な働き方はますます重要になってきています。もしも、この記事を読んでいる方の中にテレワークの導入を検討していて、かつテレワークに役立つツールを探している方がいらっしゃいましたら、「ワークスタイル変革時代のコミュニケーションツール」をお読みください。この資料はどなたでも無料でダウンロードできます。

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4.さまざまな休暇制度の整備と、取得の徹底

紹介した企業の好事例では、ほとんどの企業で育児休暇をはじめとしたさまざまな休暇制度を駆使した取り組みが行われていました。

よって、ワークライフバランスの実現にあたっては、休暇制度を整備し、社員が100%休暇を取れるようにすることは前提事項と言っても過言ではないでしょう。

未だに日本国内では、「上司が有給休暇を取っていないから自分も取りづらい」と考えてしまう人も少なくありません。社内の誰もが休暇を取りやすくするためには、上層部から休暇取得の徹底を行う必要があります。

まとめ|ワークライフバランスの定義は人や企業によって柔軟に変わるもの

ワークライフバランスとは、ただ単にこれまで以上にプライベートの時間を増やすという意味ではありません。

時代に合ったワークスタイルを導入することはもちろん、社員一人ひとりのライフスタイルや生活事情に寄り添った取り組みを行うことで、初めてワークライフバランスの実現ができるものであるといえます。

仕事とプライベート、どちらを重視したいかは人によって異なります。また子育てや介護、さらには年齢を重ねるにつれて変わっていくものです。

本記事で紹介した企業事例や国からの支援制度を参考にしながら、ぜひ自社に合ったワークライフバランスのやり方を探ってみてはいかがでしょうか。

戸栗 頌平
著者情報戸栗 頌平

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在東京在住。2019年はフィリピンに在住し日本企業のBtoB活動を遠隔支援、場所にとらわれない働き方を通じ、マーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。Facebookは こちら。Twitterは こちら。LinkedInは こちら。ウェブサイトは こちら

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