5分で理解!労働基準法改正による残業時間変化で見るべきポイント

2019年4月から、働き方改革関連法が施行され、労働基準法の時間外労働の上限規制にも改正が行われました。

この改正によって、残業時間の扱いも変わりましたが、企業経営においてどのような対応をしていけばよいのかという視点で、詳しく知りたいと考えておられる人事労務担当者や経営企画担当者の方も多いようです。また、残業時間の扱い方は重要ですが、それだけでなく、生産性を維持しながら残業を減らす方策なども同時に考えていく必要があります。

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労働基準法は労働基準に関する法制度

労働基準法は、第二次世界大戦後の1947年に定められた日本の労働基準を定めた法律です。労働基準は、企業に勤める人の労働時間、休憩時間、休日などの労働条件の最低限の基準のことを言います。憲法で規定された労働基準を定めているのが労働基準法です。

参考:労働基準に関する法制度・厚生労働省

また、働く人の最低限の労働基準が企業において守られているかを労働基準監督署が設置されて監視しています。労使で合意した労働契約でも、労働基準法で決められた最低限の労働条件を満たしていなければ認められず、最低基準に自動的に置き換えるという民事上の効力を定めています。

このように労働基準法は労働条件の最低条件を定めていますが、近年では、かつての終身雇用制や年功序列制度が崩壊しつつあり、労働環境そのものが大きく変わってきています。そのため労働基準法も、その変化に対応して適宜、改正が行われているのです。

現代は、少子高齢化によって労働人口が減少に転じていることから、働き方改革が叫ばれるようになり、女性の社会進出、夫婦共稼ぎが当たり前になっています。さらに働き方改革を進めるためには、労働条件そのものの考え方も変えていく必要が出てきています。

2019年の労働基準法の改正で残業時間に上限

労働基準法は、昨年の国会で成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」の中で改正が行われました。

この労働基準法の改正では、問題になっていた働き過ぎに対する2008年の改正からさらに踏み込んで、労働時間法制の見直しが行われています。

労働基準法の改正について
・時間外労働(残業)の上限(月45時間、年間360時間)の罰則付き規制
・年次有給休暇の取得推進(年5日の時季指定の取得義務)
・フレックスタイム制の活用
・高度プロフェッショナル制度の創設(裁量労働制)
・勤務間インターバル制度の促進
・労働時間の状況把握の義務化

なお、高度プロフェッショナル制度、勤務間インターバル制度、労働時間の状況把握義務化は、裁量労働制の採用のための制度になっています。

企業の労務管理としては、まず気になるのは残業時間の上限規制であり、それには罰則も付いています。これまでも上限時間は努力目標として取り入れられてきましたが、はっきりと上限を明記し、それを守らなかった場合には罰則が設けられたのは初めてです。

時間外労働の上限規制の変化

引用:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 - 厚生労働省

最近では、過労死問題ブラック企業など、社会問題として取り上げられている状況もあり、働き過ぎや働く人の健康確保が大きな問題となっており、それに対する法的な措置がとられたのです。

ただ、今回の労働基準法の改正では、大企業と中小企業で導入の実施時期が違っています。大企業の場合は、資本力があり、スタッフも揃っています。それに比べて、中小企業の場合には、制度導入のための社内規定の変更措置や、残業削減のためにかかる資金負担も大きいために、中小企業には1年間の猶予時間が与えられているのです。

残業時間の上限を越えたら罰則が適用

労働基準法の残業時間の上限は、月45時間、年間360時間になっていますが、それをどのように運用し、それを越えた場合の罰則の適用はどのように行われるのでしょうか。

まず、残業時間については、労使で36協定によって定める限度時間には上限が設けられることになります。これまでは、36協定を結ぶことで、繁忙期など臨時的な特別な事情がある場合は、実質的には残業時間の上限を外すことが可能でした。しかし、今回の改正では、36協定における残業時間にも、上限(年720時間、単月100時間未満、平均80時間以内)が設けられました。その上限を越えた場合には、企業側が罰則を受けることになったのです。

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引用:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

一般に健康確保の観点から見た場合、過労死ラインは2〜6ヵ月平均で月間80時間と言われており、それを意識した残業時間の上限が設けられました。この上限を越えた場合には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が適用されます。 

時間外・休日労働時間と健康障害リスクの関係

引用:過労死等防止啓発パンフレット(PDF:5237KB) - 厚生労働省

割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止

これまで、残業時間は月60時間を越えた場合には、その越えた残業時間に対しては割増賃金率(50%以上)で支払う必要がありましたが、中小企業はその適用は猶予されてきました。新たな人件費の発生や、人材確保が難しく、経営に与える影響が大きいと判断されていたためです。

しかし、今回の労働基準法改正によって、この割増賃金率の適用猶予は2023年4月1日に廃止されることになっています。したがって、中小企業においては、生産性などの向上によって、長時間の残業時間を抑制するとともに、優秀な人材を確保するため職場環境の見直しが急務になっています。

参考:働き方改革関連法のポイント_働き方改革について_厚生労働省

残業代にも変化? どのように変わる? 

このように、今回の労働基準法改正は、企業側は残業代や人件費にもその影響が出てきます。従業員にとっても、残業削減による残業代の減少という影響が出てくることになります。実質的な残業の上限時間が決まってくるため、残業時間を減らさざるを得なくなるのです。

すなわち、管理職の立場とその部下の方の場合には次のような状況の変化が考えられ、企業にはその対策が求められるのです

管理職 残業削減は求められるが、ノルマや数字は変わらないので、追いつかない部下の業務もひきうけ疲弊する。
部下 残業代が減って意欲を失ったり、上司からの仕事の進捗管理が厳しくなり、疲弊する。実質の業務時間が減るので、業務の生産性向上や自己管理能力が問われる。  

企業は、上記のような疲弊した状態になることを極力避けるように、生産性向上のための設備、制度の見直しが求められます。

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企業側で取り組むべきポイント

現代社会は、少子高齢化の影響から労働人口も減少局面に入り、新しい人材の確保は難しくなりつつあります。その上に、労働基準法改正で、残業時間は削減せざるを得なくなっています。今まで通りの規模で企業活動を継続的に行うためには、生産性を維持する必要がありますが、人材と労働時間という点において制約を受けざるを得ないのが現状なのです。

すなわち、今後、残業時間を減らしていくためには、生産性を向上させて同じ仕事にかかる時間を短縮し、従業員には過度なノルマを与えず、生産性を維持させる必要があります。

このような状況において企業に求められるのは、このピンチをチャンスに変える変革力です。それによって、職場環境が改善し、新たな人材も採用しやすくなり、企業の継続性も担保できるのです。

時間外労働の抑制に加え、働き方の見直しで生産性向上を 

残業という時間外の労働を抑制するためには、企業は、職場の働き方を見直して、生産性を向上させることが求められます。

単純に労働時間だけを短縮する努力を従業員だけに求めてしまうと、従業員への過度なプレッシャーや業務量がのしかかってきます。過労にはならなくても、大きなストレスを受け、パワハラの被害を意識するケースも出てきやすいのです。

労働時間を短縮するためには、制度設計、給与体系などの見直しが必要であり、その労務管理制度とともに、生産性向上のためのツールと職場風土を整えなければなりません。

労働管理制度の整備と、職場の働き方を大きく変えられる機械化、システムの導入は企業にとって待ったなしのところまで来ているのです。

そのために、厚生労働省などの行政側も、助成金制度を充実させてその支援を行っています。

残業しなくても生産性を向上できる仕組みづくり

残業しなくても生産性を向上させて業務を行えるようにするためには、労働管理制度の新たな設計や職場風土の改善が大切です。その中で一番効果が早く見込めるのが生産性向上のためのツールの導入です。これらに対しても、厚生労働省による「時間外労働等改善助成金」も用意されており、事業規模に上限はありますが、少ない負担で導入も可能です。

参考:時間外労働等改善助成金 - 労働条件等関係助成金のご案内 - 厚生労働省

また、業務改善ツールには下表のようなものがあります。

目的 ツール例 具体的な効果
労働時間の縮減・コミュニケーションの円滑化 Web会議、ビジネスチャット、クラウドファイル共有 会議室ではなくWeb会議による時間効率のアップ、チャットでのリアルタイムな会話、移動時間の削減、ワークライフバランスの最適化、集中力・モチベーション維持
顧客対応管理の生産性向上 POSレジシステム、顧客・在庫・帳票管理システム 在庫管理の短縮・顧客管理業務の効率化
データ共有 クラウドファイル共有、業務集約コミュニケーションツール どこからでもファイルにアクセス可能、
コミュニケーションプラットフォームの統一、無駄なツールの削除
勤怠・スケジュール管理 クラウド上の勤怠管理ツール、タスク管理ツール、スケジュール管理ツール 勤怠申請の高速化、スケジュールの見える化

※事業規模やツールにより助成金の対象にならないものもあります。

これらのツールを使い職場の生産性を上げることによって、自ずと残業時間を減らしていくことが可能となります。

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労働基準法改正についてのまとめ

2019年4月より施行されている働き方改革関連法の中で、労働基準法も、残業時間の上限と罰則が設けられました。企業においては、生産性の向上によって残業時間の削減を行わざるを得ない状況が生まれています。

少子高齢化によって新たな人材の確保も難しくなっており、職場の働き方改革による生産性向上は急務となります。

企業側に求められている対応は、「制度とツールと組織風土」を変革し企業活動を維持することです。一方で、全てを同時に変えるということは、企業にとって大きな負担と時間がかかります。「制度とツールと組織風土」を整えなければ継続的に生産性の向上は望めません。まずは、取り掛かれるものから取り掛かり、管理職や上層部が率先して働き方改革を実践していくことが企業活動の継続のための大きな一歩となるのです。

労働基準法について

当サイトのコンテンツや情報において、可能な限り正確な情報を掲載にし、併せて様々な情報をお伝えするよう努めています。一方で、法案の更新などにより、誤情報が入り込んだり、情報が古くなったりすることもございます。最新の情報は総務省行政管理局が運営するe-Govに掲載の労働基準法をご確認ください。

山田 陽一
著者情報山田 陽一

デザイン制作会社、広告代理店、フリーランスを経てブイキューブへ入社。社会の働き方の変化を実感し、ブイキューブの活動に共感。ブイキューブサービスを世の中に広く伝えるため、マーケティング プロモーション周りのディレクション・デザインを担当。

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